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受験うつ、親のサポート講座!【パート2】
受験うつ勉強法講座 第4弾

「受験うつ」を乗り越え、志望校への合格を手にするには、親子のコミュニケーションがとても重要です。しかし、現実には多くの親が間違ったコミュニケーションの取り方をしてしまっていて、愛情とは裏腹に、結果として子どもの症状を悪化させる大きな要因となっています。これは、とても残念なことで、今すぐ改善していただきたいのです。ここでは、「受験うつ」に関する実際の症例をもとに、親が注意しなければならない4つのポイントについてわかりやすく解説していきましょう。

本郷赤門前クリニックの開設以来、受験生のうつ病治療に数多く携わってきた吉田たかよし先生による、新型うつの対処法と勉強方法をご紹介します。
吉田たかよし先生プロフィール

本郷赤門前クリニックの症例

Dさん 高校3年生(男子)全国屈指の進学校に在学
受験うつ(気分変調性障害)

ご両親はセミナーや書籍を通して子どもは褒め(ほめ)て育てるのが望ましいということを学び、幼少期から実践していました。「お前は算数がよくできるな!」、「漢字をいっぱい覚えて偉いぞ!」といった具合に、お子さんの良い点を見つけては積極的に褒めてあげたそうです。こうした努力が功を奏し、Dさんは小学生の頃から意欲的に勉強に取り組むようになり、中学受験では全国屈指の名門進学校に合格することができました。これで自信を深めたご両親は、大学受験に向けて、褒めて育てる教育をさらに徹底することにしました。
ところが、そんなお子さんに、うつの症状が現れてきたのです。しかも、ご両親がお子さんを元気づけようと少し大げさに褒めてあげると、逆に泣き出すようになり、困惑されたご両親がお子さんを伴って来院されました。

ドクター吉田たかよしの解説

親が大げさに褒め(ほめ)ると「受験うつ」が悪化する!

最近は褒める(ほめる)ことの大切さが広く知られるようになり、子どもを積極的に褒めるように心がける親が増えてきました。これは、一般論としては正しいことで、実際に上手に褒めることにより勉強へのヤル気が高まる効果を証明した研究が数多く発表されています。

しかし、「受験うつ」の子どもに限っていえば、安易に褒めることは要注意です。なぜなら、深刻なうつ状態に陥ると、親から褒められることによって心の負担が増し、逆にネガティブな心理状態になってしまう場合が少なくないからです。「うつ病の患者さんを励ましてはいけない」ということは、ご存知の方が多いと思います。頑張ろうと思っても頑張れないのがうつ病だからです。にもかかわらず、無理に励ますと、頑張れないことによる心の悩みを深め、心理的に追い詰めてしまいます。

実は、「受験うつ」のお子さんを安易に褒めると、これと同じような心の負担を押し付ける結果になってしまうことが多いのです。うつの状態になると、心の中で不安感が膨張するため、ものごとを否定的な方向に歪めて捉えるようになります。このため、試験で高得点を取るなど仮に良いことが起こったとしても、それが偶然に起こったことにすぎず、本試験では良い点が取れないだろうと考えます。

一方、親が大げさに褒めると、親は合格して当たり前だと期待しているに違いないと「受験うつ」の子どもは判断します。この幻の期待感が心の負担となってしまうのです。こうした問題を生じかねないので、「受験うつ」に限っていえば、褒めるということ自体に注意が必要です。

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Dさんのご両親には、心に負担をかける大げさな褒め言葉は、できる限り口にするのを避けるようにしていただきました。その代わり、Dさんの良い点を見つけたら、事実として客観的に指摘してあげるようにしていただきました。たとえば、「微分積分の成績が前回よりも上がっているね」、「英単語の暗記を毎日、続けているね」など、主観的な論評を避け、事実の指摘に留めるのです。さらに、模擬テストの成績表を見せる、英単語の練習帳の記録を見せるなど、できる限り根拠となる証拠を併せて示すことも心がけてもらいました。これにより、Dさんは徐々に自信を取り戻し、前向きに受験勉強に取り組めるようになりました。

ドクター吉田たかよしの解説

抽象的な褒め(ほめ)言葉ではなく、
良い点を具体的に指摘する!

抽象的な褒め(ほめ)言葉は心に負担をかけるので控えていただきたいのですが、お子さんの良い点を指摘することは、親が積極的に行うべきです。うつ状態に陥ると、良いことは思い出さず、悪いことだけを集中して思い出すようになります。これは「選択的記憶再生」と呼ばれている現象で、「受験うつ」の場合は特に成績について、こうした記憶の偏りが顕著になります。その結果、受験の結果に関してネガティブなことばかりを考えるようになり、「受験うつ」がさらに悪化してしまうのです。

こうした悪循環を断ち切るため、親は子どもの受験勉強の経過をしっかり観察し、良い点を見つけたら、はっきりと言葉で指摘してあげるべきです。このとき、大事なのは、客観的な事実として淡々と伝えてあげることです。親が過剰に喜びを表現すると、合格への期待を押し付けることになるため、逆効果です。また、できれば根拠となる証拠も一緒に示してあげれば、子どもの自信を支えて上げることができます。「受験うつ」になると、自分の能力について懐疑的になるため、口先だけで良い点を指摘しても、なかなか受け入れられません。しかし、模擬テストの成績表など、物証となる根拠を示してあげると、「受験うつ」のために封印されていた自信が徐々に回復してくるのです。

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家庭内でのDさんとご両親の会話を録音していただき、クリニックで分析したところ、会話の分量は「ご両親⇒お子さん」が7割、「お子さん⇒ご両親」が3割ほどと、ご両親が話す時間が親子のコミュニケーションの中で多くを占めていました。これを「ご両親⇒お子さん」が3割、「お子さん⇒ご両親」が7割へと逆転させ、ご両親が積極的にお子さんの話に耳を傾けていただくように心がけてもらいました。それまで受験に対する不安感をお子さんが一人で抱え込むことが多かったのですが、ご両親に悩みを打ち明けるようになってからは心の重荷が軽減され、次第に心が落ち着くようになりました。

ドクター吉田たかよしの解説

親が話すのは3割、子どもの話しを聞くのは7割が目安!

親は子どもを元気づけようと、励ましたり褒めたりしようとする場合が多いのですが、子どもが「受験うつ」に陥ったら、真っ先に心がけるべきなのは、親が話し手ではなく聞き手に回るということです。

コミュニケーションは話す側が主導権を握り、聞く側はそれに合わさなければなりません。「受験うつ」に陥った場合は、たとえ親が良かれと思って話したことでも、子どもにとっては心の負担になることもあるので注意が必要です。ぜひ、親御様にやっていただきたいのは、子供の言葉にひたすら耳を傾けてあげることです。「受験うつ」の場合は、勉強に対する不安が心の中で渦巻いています。それを一人で抱え込むと不安が不安を生み、どんどん増殖して症状を悪化させます。しかし、親に悩みを聞いてもらえば、心に整理がつくため負担感が軽減されます。コミュニケーション全体のバランスとしては、親が話すのは3割、子どもの話しを聞いてあげるのが7割といった程度が一つの目安になります。

「受験うつ」になると、言葉がすぐに出てこなくなることもあるので、「子どもは話したがっていない」と誤解してしまう親が少なくありません。でも、じっくり腰を落ち着けて子どもの言葉を待ってあげると、トツトツと悩みを打ち明けてくれる場合が多いのです。焦らずに、子どもの言葉を引き出すまでの沈黙の時間を大切にして下さい。

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コミュニケーションのあり方を改善してもらったところ、Dさんはご両親に受験勉強の悩みを次々と打ち明けるようになりました。ところが、その悩みに対してご両親は、どうアドバイスをしたらいいのかわからず、苦し紛れに「大丈夫だよ」、「そのうち、うまくいくようになるよ」といった明らかにその場しのぎにすぎない気休めの言葉を口にしてしまいました。Dさんは心が傷ついて、「いい加減なことを言わないでよ」と強く反発したそうです。

これに対し私は、受験の悩みに関して、ご両親にはその場で安易に答えを出すのをやめ、一緒に悩んでいただくようにご指導しました。Dさんは悩みを一人で抱え込むのではなく、ご両親にも背負ってもらえるようになり、心は少しずつ安定していきました。さらに、ご両親にはお子さんから聞いた悩みをノートに書き留めてもらい、医療面や脳機能に関しては私に、教育面については学校や塾の先生に相談した上で、時間をかけてじっくりと解決策を見つけ出すようにしてもらいました。

ドクター吉田たかよしの解説

親は子どもの悩みに安易に答えを出さず、
一緒に悩んであげる!

受験というのは、誰かが必ず不合格になるという厳しい現実の上に成り立っているものです。さらに「受験うつ」になると、その困難さがいっそう厳しさを増すので、そもそも受験勉強の悩みについては、親が簡単に答えを出せるようなものではありません。医師や教師など専門家に相談をするなどして、じっくりと時間をかけて解決策を見つけ出してあげるべきです。

親にとって最も大事なのは、子どもと一緒に悩んであげることです。これは、単なる精神論ではありません。一人で悩みを抱え込むよりも誰かに一緒に悩んでもらったほうが、脳内で生じる苦しみの反応は軽減するということが、神経心理学の実験によって証明されています。

脳機能についても教育についても親が専門家ではないことは、子どもにもわかっています。にもかかわらず親に悩みを打ち明ける本当の目的は、目の前で解決策を示してもらいたいということではなく、心の奥底で悩みを共有してもらいたいという思いを持っているからです。そんな気持ちに真正面から向き合うことが大切です。

困難を乗り越えた先に、本物の親子関係がある!

情報化社会の伸展とともに、一般的には、親子の関係は冷え続ける一方です。しかし、「受験うつ」をきっかけに親子のコミュニケーションを見直し、結果として絆を深めることとなったご家族を、私は数多く見届けています。「受験うつ」はご本人にとってもご家族にとっても、本当につらいものであるのは事実です。でも、困難を乗り越えた先にこそ、かけがえのない本物の親子関係があると私は確信しています。決して希望を捨てないでください。

講師プロフィール

吉田たかよし

本郷赤門前クリニック院長
医学博士 心療内科医師
http://docor-t-yoshida.jimdo.com/

1964年生まれ。灘中学校・高等学校、東京大学工学部を卒業後、1989年にNHKに入局。個性派アナウンサーとして『ひるどき日本列島』や野球実況などを担当。NHKを退職後、東京大学大学院医学博士課程修了。本郷赤門前クリニックを開設し院長を務め、受験生を専門に扱う。現在では脳医学や自律神経機能の学習への応用研究に取り組む。人間情報学会理事・ヘルスケア部会長。

主な著書『最強の勉強法』(PHP出版)『子供がヤル気を出す家庭の秘密』(角川書店)

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