受験うつの事例とアドバイス

勉強に悩むお子様へのアドバイス方法

本郷赤門前クリニックの開設以来、受験生のうつ病治療に数多く携わってきた吉田たかよし先生による、実際の事例に基づいたアドバイスの内容をご紹介します。

CaseStudy 01 浪人生(1浪)男子の実例

受験期のうつ病とはわからずにご相談に来られた方

超難関国立大学、理系志望。小学生の頃から、興味があることには積極的に取り組むが、興味がわかないことは親が促してもやろうとしない。体調と気分の浮き沈みが激しい。目立ちたがりやで、人前で陽気に話すが、自分が話題の中心にならないとへそを曲げる。成績以上の超難関国立大学を受験して失敗。予備校に通学中。

相談に来られた経緯

何かにつけてイライラして怒りだすようになった。
「成績が悪くなったのは親のせいだ」「僕の人生をどうしてくれるんだ」とわめき、暴れる。勉強しろと言っても反発。親が言うことには、すべて反抗。そこで方針を変え、「お前なりに頑張っている」と褒めるようにしたら、「こんな人生、死んだ方がマシだ」と逆に怒りだす。朝は起床できず、昼過ぎまで寝続ける。母親が起こそうとすると、暴力を振るうこともある。しかし、起こさないと、「どうして起こさないんだ」と後から怒り出す。ご両親は手が付けられなくなり、また、受験が不安になり来院。

うつ病と告げた時の親御さんの反応

信じられない。むしろ、うつ病とは正反対の印象だったとのこと。
それまで思っていたうつ病のイメージとはかなり違うので、戸惑われたようだった。従来型のうつ病ではなく、いわゆる新型うつだと説明すると、納得された。原因がわかり、逆に少しはホッとされた様子だった。

勉強法のアドバイス

受験生が新型うつに罹患した場合は、自尊心を上手に活用するのが決め手。
新型うつの場合、過大な自尊心を抱いてしまうのが原因になることがあるが、自尊心は自己向上欲につながるため、うまくハンドリングすれば、受験にプラスに作用させられる。
一般的には不得意科目をなくすのが受験勉強の王道だが、この場合は、まずは得意科目をさらに伸ばし、自尊心を満足させることが得策。得意科目と不得意科目の成績差を自慢したがる新型うつの受験生も多い。次のステップは、不得意科目の中で得意分野を見つけ伸ばしていくこと。また、新型うつの場合は、志望校によって試験問題が合う合わないの差が極めて大きいため、過去問を詳細に検討し、自分に合った大学を厳選することが不可欠となる。

自尊心を満足させるために、
得意科目をさらに伸ばすように促す

CaseStudy 02 全国的に有名な進学校に通う現役高校3生女子の実例

親が受験生の異変に気づいた場合

超難関国立大学、文系志望。
成績は極めて優秀だった。小学校から超優等生。常にクラスのトップレベルを維持。何でも親や先生が期待する通りにしないと気が済まない性格だった。典型的なメランコリー親和型性格:真面目で几帳面、完璧主義で責任感が強い。他人に気を使いすぎる。高校3年生の春に、突然、急激に成績が悪化。

相談に来られた経緯

朝、ベッドから起き上がれない。気力を振り絞って起床しても、学校へ行く準備ができない。
常に身体のだるさを感じるようになった。不眠や食欲不振。時折、頭痛を繰り返す。
受験勉強がはかどらず、すぐに泣き出すようになった。いつまでたっても泣き止まない。
以前は、長時間にわたって粘り強く勉強ができたのに、ほんの数分で投げ出し、泣き出す。
メンタル面を安定させて受験勉強をはかどらせる目的で来院。

うつ病と告げた時の親御さんの反応

告げたときは、ショックを隠しきれない様子だった。だが、受験期のうつ病の特徴を説明すると、納得された。回復が見込めること、生活面や勉強法に配慮すれば受験を断念しなくて良いことを伝えると、ほっとされた。

勉強法のアドバイス

うつ病の急性期には、休養が不可欠。まずは治療に専念。本人は受験勉強を続けたいと訴えたが、症状が重い間は、休養をとるのが合格を勝ち取るための本当の受験勉強だと説明し、本人も納得した。4週ほどで、改善傾向がみられた。

ただし、それぞれの脳機能が一様に回復することは少なく、回復した脳機能に合致した勉強に限って行うことが必要。 脳機能の一部しか使わない英単語などの単純記憶の能力が先行して回復するケースが多い。
一般的に創造力などは回復が遅れる傾向があり、そうした分野の受験勉強は寛解期を過ぎた後に、まとめて勉強するのが合格につながる合理的な勉強スケジュールだといえる。
そのケースに該当する典型例だったので、まずは英単語と古文単語の記憶を集中的に行わせた。

急がば回れ。
まずは休養を取り、頭を休めることが大切

CaseStudy 03 中堅進学校に通う
現役高校3年生男子の実例

イジメやひきこもりで勉強できなくなった方

医学部志望。高校2年生のときに、クラス分けで上位レベルのクラスに変わる。それを期にクラスに仲の良い友人がいなくなる。英語の授業中、本当は答えがわかっていたのに、先生の問題の出し方が悪くて勘違いし、クラスで笑われる。それ以来、悔しくて同級生とうまく会話ができなくなり、クラスで孤立。ひきこもりがちに。「誰も自分を分かってくれない」次第に自室に閉じこもり、やがて家族とも話をしなくなった。

相談に来られた経緯

引きこもりが続けば、大学入試は絶望的となる。ご両親も本人も医学部への進学を希望。親子共に夢である医学部合格を実現させるため、まずはお母様がお一人で来院され、カウンセリングを行った。後日、ご自宅を訪問し、ご本人に対しカウンセリングを行った。

うつ病と告げた時の親御さんの反応

思春期特有の悩みのためだろうと思われていたそうで、うつ病は意外だったとのこと。模擬テストの答案用紙を分析し、うつ病を治療すれば医学部の合格も十分に視野に入ることを告げると、安心された。もっと早く気づいてあげられなかったのが、親として悔やまれるとのことだった。

勉強法のアドバイス

厚生労働省が定めた引きこもりの定義では、うつ病は除外されているが、現実には、うつ病が原因である引きこもりも少なくない。うつ病の急性期には、自室で休息をとることが医療的に望ましく、無理に外に出すべきではない。しかし、受験生がうつ病になった場合、回復期以降も受験勉強の名目で引きこもりを続けることになることが多く、これが生活様式の固定化を招くほか、受験勉強の効率も極端に低下させる。症状に合わせて学校に登校することが望ましいが、まずは人間関係の不安を取り除く形で自室の外で勉強する習慣をつける。クラスメートと顔を合わさない地域の図書館や学習塾の自習室で勉強するのも一つの方法だ。
また、有酸素運動を行うことが、うつ病の治療と認知機能の向上に役立つため、本人の負担にならない範囲で、勉強の合間に運動を行うのが得策。

まずはクラスメイトと顔を合わさない場所で、
勉強できる環境をつくる

CaseStudy 04 私立進学校に通う
現役高校3生女子の実例

うつ病が原因で急激な成績低下した受験生の場合

私立文系志望。まじめにコツコツ勉強し、成績はクラスで上位。ただし、融通が効かず、臨機応変に対処するのが幼いころから苦手。模擬テストで、得意科目だった国語の成績が低下。それをきっかけに、すっかり自信を喪失し、他の科目も成績が急落。

相談に来られた経緯

成績は安定していたのに、あるとき、急激に悪化。それまで、勉学に対してマジメだったのに、親から見ると急に受験勉強を怠けるようなったと見える。本人は、「不安で何も手に付かない」、「どうせ、勉強しても落ちるに決まっている」と勉強しなくなった。それでいて、「精神的に弱いから私は何をやってもうまくいかない」、「自分は頑張れないダメな人間だ」と自分を責める。意欲や脳機能を高める勉強法の指導を受けたくて来院した。イキイキとした感情がなく、現実がテレビを見ているような他人ごとの世界のように感じる。ご両親は一時期、夫婦仲が悪くなったことがあり、子どもの前で教育方針に関して大声で罵り合うこともあった。

うつ病と告げた時の親御さんの反応

両親は勉強を怠けているだけだと思っていたそう。うつ病になるとは想像もしていなかったので、目の前が真っ暗になったとのこと。さらに、「うつ病だとわかると就職も結婚もできなくなるのではないか。先生、秘密にしてもらえないか」と心配されていた。医師には刑法に基づく特に厳しい守秘義務が課されており、患者様やご家族のプライバシーは完全に保護されることを説明すると、安心された。

勉強法のアドバイス

具体的な問題があって不安になるのは当然のこと。ところが、うつ病になると、原因がよく分からないのに不安になる。受験生の場合は、そこに不合格への不安が加わるため、症状が増悪する。これを軽減するには、受験に関する不安の要因を紙に書いて整理するとよい。全科目の苦手分野や未修分野を、一覧表にしてすべて列挙すると、不安が軽減し勉強の効率も上がる。さらに、それぞれの項目に対し、やるべき対処を書き入れる。私は、これを「受験の不安に輪郭を付ける」と呼んでおり、不安感の暴走を防げる。

不安を紙に書き出して、
具体的に何に悩んでいるのかを明白にさせる

受験専用の心療内科本郷赤門前クリニックの早期合格コース

受験うつ 親のサポート対策 01親のコーチ

受験勉強にはコーチが必要!

どんなスポーツでも一流選手にはコーチがつき、練習メニューを決め、メンタル面のサポートをしています。試合で勝つためにはコーチが不可欠だというのは、スポーツの世界では常識です。ところが受験だけは、コーチがいません。塾の先生も家庭教師も教科の勉強を教えるだけで、総合的なコーチの役割は誰も果たしてくれていないのが実情です。

だから、受験生は自分自身で勉強スケジュールを決めなければなりません。
試験で落ちてしまうかもしれない不安とも、自分一人で向き合なければなりません。これが受験勉強のストレスを倍増させ、受験うつの大きな原因となっているのです。さらに、いったん受験うつの状態に陥ると、ものごとを判断し、自分がこれから何を行うのか決定する能力が極端に低下します。また、心の中で不安感が広がり、自分一人ではコントロールできなくなってしまうものです。だから、受験勉強のスケジュール管理についても、精神面のサポートについても、受験うつの方には、なおさらコーチの手助けが必要なのです。

親こそ受験勉強のコーチに適任!

受験勉強のコーチとしては、私のように受験うつの医学と勉強方法の両方に精通した人間が理想的ではありますが、指導できる機会には限りがあります。それよりも受験生と一つ屋根で暮らしているご両親のほうが、コーチとしてははるかに適任だといえます。

多くの親御様が「子どもの勉強をみるのは学力的に無理です」とおっしゃいます。しかし、コーチに求められるのは、勉強を教える先生になることではなく、スケジュールを管理し、さらに精神面で支えになってあげることです。これなら、人生の先輩であり、また誰よりも我が子を愛するご両親であれば、充分に可能なことです。中学受験までは親が子どもの勉強をみてあげても、大学受験になれば勉強に親が口を出してはいけないと思い込まれている方が少なくありません。しかし、ストレスに心が押しつぶされ、受験うつに陥ってしまった場合は、たとえお子さんが大人になった後でも、ご両親にコーチの役割を担っていただくことをおすすめしています。

CaseStudy 01 30代男性司法試験の受験生Aさん
大うつ病性障害の回復期

Aさんは、重度のうつ病(大うつ病性障害)を発症し、務めていた一流企業を退職しました。症状がいくぶん回復したところで、第二の人生を切り開くために司法試験に挑むことを決意されましたが、意欲の低下や不安感にとらわれ、受験勉強ははかどりません。そこで、Aさんは30歳を越えていましたが、私の助言で還暦を過ぎたお母様にコーチの役割を果たしていただくことにしました。これが功を奏し、Aさんは受験うつを克服して、合格を勝ち取ることができたのです。年齢には関係なくスポーツ選手にコーチが必要なように、受験うつの場合も、年齢を重ねているから受験勉強にコーチがいらないということはないのです。

「大丈夫か?」と尋ねるのは厳禁!

以前、受験うつを招いたストレス源を探るヒアリング調査をしたことがありますが、多かったのは「受験は大丈夫か?」という親からの問いかけでした。これは、試験の直前には、絶対にやめていただきたいことです。「大丈夫か?」と聞かれたら、受験生は全科目の中から大丈夫ではないことを探し、不安感を高めてしまうからです。多くの親が「大丈夫か?」と尋ねてしまう理由は、自分自身が安心したいからです。つまり、親は尋ねることで自分の不安感を子どもに転嫁してしまっているわけです。これでは本末転倒です。

「落ちても大丈夫だ!」と子供をサポート

親がコーチとして真っ先にやるべきことは、「試験に落ちても親が支えてあげるから大丈夫だ」と子どもに伝え、不合格になる恐怖心を軽減してあげることです。ただし、口先だけでは子どもの不安感は拭えません。たとえ志望校に合格できなくても、子どもの人生が立ち行くように、親が人生の路線を用意してあげるべきです。それをしっかりと子どもに理解させると、不合格の恐怖心が相対的に小さくなり、受験うつの症状が軽減されます。

CaseStudy 02 高校3年生男子 東京大学理科Ⅰ類志望のBさん
受験うつ(気分変調性障害)

Bさんは、将来は研究者を目指していて、何が何でも東大の理科Ⅰ類に入学したいとの希望でしたが、その心理的重圧からうつ症状に陥ってしまいました。親御様とカウンセリングを何度か重ね、不合格の不安を軽減するために、第一志望の入試に失敗したとしても人生が成り立つセーフティーガードを見つけてあげることになりました。そして、仮に東大に合格できなくても、ある私立大学を経て大学院で東大に進学すれば一流の研究者になるという第二の選択肢が見つかりました。その私立大学と東大の志望学科は、研究者の人材交流を行っており、第二の選択肢は極めて現実的であることが、受験生本人にも心の底から理解してもらえました。その結果、安心感がもたらされ、うつ症状自体も軽減し、結局、東大に合格することができたのです。親が第二の選択肢を用意したからこそ、第一志望の合格も勝ち取れたわけです。

生活リズムの管理が合格をもたらす!

受験うつになると、朝、普通に起床して勉強を始めるという当たり前のことができなくなります。早朝に目が覚めるケースも多いのですが、その場合も、意欲がわかず、布団から出ることがなかなかできません。その分だけ、夜は眠れなくなり、生活リズムはどんどん乱れていくのが一般的です。生活リズムが不規則になると、コルチゾールというホルモンの分泌サイクルが崩れるなど心身ともに不調をきたし、受験うつの症状は、ますます増悪します。

また、普通の人と違う生活をしているという後ろめたい思いが、受験生をさらに精神的に追い詰めます。生活リズムの管理は、受験勉強のコーチにとって最も大切な仕事だと考えてください。うつの症状が極めて重い時期以外は、朝はしっかり起こしたほうが、受験には圧倒的に良い結果がもたらされます。ただし、朝、起床してすぐに勉強しろというだけでは、受験うつのお子さんが早起きを続けるのは、現実的に不可能です。朝には、起きることが楽しみになるようなことをコーチである親が用意してあげることが必要です。1日の中で、最も楽しいことを朝に行うという生活習慣を、親が率先してデザインしてあげましょう。

受験専用の心療内科本郷赤門前クリニックの早期合格コース

受験うつ 親のサポート対策 02親子のコミュニケーション

「受験うつ」を乗り越え、志望校への合格を手にするには、親子のコミュニケーションがとても重要です。しかし、現実には多くの親が間違ったコミュニケーションの取り方をしてしまっていて、愛情とは裏腹に、結果として子どもの症状を悪化させる大きな要因となっています。これは、とても残念なことで、今すぐ改善していただきたいのです。ここでは、「受験うつ」に関する実際の症例をもとに、親が注意しなければならない4つのポイントについてわかりやすく解説していきましょう。

4つのポイント

親が大げさに褒(ほめ)めると「受験うつ」が悪化する!

抽象的な褒め(ほめ)言葉ではなく、良い点を具体的に指摘する!

親が話すのは3割、子どもの話を聞くのは7割が目安!

親は子どもの悩みに安易に答えを出さず、
一緒に悩んであげる!

CaseStudy 01 受験生Dさん(高校3年男子)の実例全国屈指の進学校に在籍

親が大げさに褒(ほめ)めると「受験うつ」が悪化する!

ご両親はセミナーや書籍を通して子どもは褒め(ほめ)て育てるのが望ましいということを学び、幼少期から実践していました。「お前は算数がよくできるな!」、「漢字をいっぱい覚えて偉いぞ!」といった具合に、お子さんの良い点を見つけては積極的に褒めてあげたそうです。

こうした努力が功を奏し、Dさんは小学生の頃から意欲的に勉強に取り組むようになり、中学受験では全国屈指の名門進学校に合格することができました。これで自信を深めたご両親は、大学受験に向けて、褒めて育てる教育をさらに徹底することにしました。

ところが、そんなお子さんに、うつの症状が現れてきたのです。しかも、ご両親がお子さんを元気づけようと少し大げさに褒めてあげると、逆に泣き出すようになり、困惑されたご両親がお子さんを伴って来院されました。

吉田たかよし先生の解説

最近は褒める(ほめる)ことの大切さが広く知られるようになり、子どもを積極的に褒めるように心がける親が増えてきました。これは、一般論としては正しいことで、実際に上手に褒めることにより勉強へのヤル気が高まる効果を証明した研究が数多く発表されています。しかし、「受験うつ」の子どもに限っていえば、安易に褒めることは要注意です。なぜなら、深刻なうつ状態に陥ると、親から褒められることによって心の負担が増し、逆にネガティブな心理状態になってしまう場合が少なくないからです。「うつ病の患者さんを励ましてはいけない」ということは、ご存知の方が多いと思います。頑張ろうと思っても頑張れないのがうつ病だからです。にもかかわらず、無理に励ますと、頑張れないことによる心の悩みを深め、心理的に追い詰めてしまいます。

実は、「受験うつ」のお子さんを安易に褒めると、これと同じような心の負担を押し付ける結果になってしまうことが多いのです。うつの状態になると、心の中で不安感が膨張するため、ものごとを否定的な方向に歪めて捉えるようになります。このため、試験で高得点を取るなど仮に良いことが起こったとしても、それが偶然に起こったことにすぎず、本試験では良い点が取れないだろうと考えます。一方、親が大げさに褒めると、親は合格して当たり前だと期待しているに違いないと「受験うつ」の子どもは判断します。
この幻の期待感が心の負担となってしまうのです。

こうした問題を生じかねないので、「受験うつ」に限っていえば、
褒めるということ自体に注意が必要です。

抽象的な褒め(ほめ)言葉ではなく、良い点を具体的に指摘する!

成績表のイメージ

Dさんのご両親には、心に負担をかける大げさな褒め言葉は、できる限り口にするのを避けるようにしていただきました。その代わり、Dさんの良い点を見つけたら、事実として客観的に指摘してあげるようにしていただきました。たとえば、「微分積分の成績が前回よりも上がっているね」、「英単語の暗記を毎日、続けているね」など、主観的な論評を避け、事実の指摘に留めるのです。

さらに、模擬テストの成績表を見せる、英単語の練習帳の記録を見せるなど、できる限り根拠となる証拠を併せて示すことも心がけてもらいました。これにより、Dさんは徐々に自信を取り戻し、前向きに受験勉強に取り組めるようになりました。

吉田たかよし先生の解説

抽象的な褒め(ほめ)言葉は心に負担をかけるので控えていただきたいのですが、お子さんの良い点を指摘することは、親が積極的に行うべきです。うつ状態に陥ると、良いことは思い出さず、悪いことだけを集中して思い出すようになります。これは「選択的記憶再生」と呼ばれている現象で、「受験うつ」の場合は特に成績について、こうした記憶の偏りが顕著になります。その結果、受験の結果に関してネガティブなことばかりを考えるようになり、「受験うつ」がさらに悪化してしまうのです。こうした悪循環を断ち切るため、親は子どもの受験勉強の経過をしっかり観察し、良い点を見つけたら、はっきりと言葉で指摘してあげるべきです。このとき、大事なのは、客観的な事実として淡々と伝えてあげることです。親が過剰に喜びを表現すると、合格への期待を押し付けることになるため、逆効果です。また、できれば根拠となる証拠も一緒に示してあげれば、子どもの自信を支えて上げることができます。「受験うつ」になると、自分の能力について懐疑的になるため、口先だけで良い点を指摘しても、なかなか受け入れられません。

しかし、模擬テストの成績表など、物証となる根拠を示してあげると、
「受験うつ」のために封印されていた自信が徐々に回復してくるのです。

親が話すのは3割、子どもの話しを聞くのは7割が目安!

子どもの話しを聞くイメージ

家庭内でのDさんとご両親の会話を録音していただき、クリニックで分析したところ、会話の分量は「ご両親⇒お子さん」が7割、「お子さん⇒ご両親」が3割ほどと、ご両親が話す時間が親子のコミュニケーションの中で多くを占めていました。これを「ご両親⇒お子さん」が3割、「お子さん⇒ご両親」が7割へと逆転させ、ご両親が積極的にお子さんの話に耳を傾けていただくように心がけてもらいました。

それまで受験に対する不安感をお子さんが一人で抱え込むことが多かったのですが、ご両親に悩みを打ち明けるようになってからは心の重荷が軽減され、次第に心が落ち着くようになりました。

吉田たかよし先生の解説

親は子どもを元気づけようと、励ましたり褒めたりしようとする場合が多いのですが、子どもが「受験うつ」に陥ったら、真っ先に心がけるべきなのは、親が話し手ではなく聞き手に回るということです。コミュニケーションは話す側が主導権を握り、聞く側はそれに合わさなければなりません。「受験うつ」に陥った場合は、たとえ親が良かれと思って話したことでも、子どもにとっては心の負担になることもあるので注意が必要です。ぜひ、親御様にやっていただきたいのは、子供の言葉にひたすら耳を傾けてあげることです。

「受験うつ」の場合は、勉強に対する不安が心の中で渦巻いています。それを一人で抱え込むと不安が不安を生み、どんどん増殖して症状を悪化させます。しかし、親に悩みを聞いてもらえば、心に整理がつくため負担感が軽減されます。コミュニケーション全体のバランスとしては、親が話すのは3割、子どもの話しを聞いてあげるのが7割といった程度が一つの目安になります。「受験うつ」になると、言葉がすぐに出てこなくなることもあるので、「子どもは話したがっていない」と誤解してしまう親が少なくありません。
でも、じっくり腰を落ち着けて子どもの言葉を待ってあげると、
トツトツと悩みを打ち明けてくれる場合が多いのです。

焦らずに、子どもの言葉を引き出すまでの沈黙の時間を大切にして下さい。

親は子どもの悩みに安易に答えを出さず、一緒に悩んであげる!

親は子どもの悩みに安易に答えを出さず、一緒に悩んであげる

コミュニケーションのあり方を改善してもらったところ、Dさんはご両親に受験勉強の悩みを次々と打ち明けるようになりました。ところが、その悩みに対してご両親は、どうアドバイスをしたらいいのかわからず、苦し紛れに「大丈夫だよ」、「そのうち、うまくいくようになるよ」といった明らかにその場しのぎにすぎない気休めの言葉を口にしてしまいました。

Dさんは心が傷ついて、「いい加減なことを言わないでよ」と強く反発したそうです。これに対し私は、受験の悩みに関して、ご両親にはその場で安易に答えを出すのをやめ、一緒に悩んでいただくようにご指導しました。Dさんは悩みを一人で抱え込むのではなく、ご両親にも背負ってもらえるようになり、心は少しずつ安定していきました。さらに、ご両親にはお子さんから聞いた悩みをノートに書き留めてもらい、医療面や脳機能に関しては私に、教育面については学校や塾の先生に相談した上で、時間をかけてじっくりと解決策を見つけ出すようにしてもらいました。

吉田たかよし先生の解説

受験というのは、誰かが必ず不合格になるという厳しい現実の上に成り立っているものです。さらに「受験うつ」になると、その困難さがいっそう厳しさを増すので、そもそも受験勉強の悩みについては、親が簡単に答えを出せるようなものではありません。医師や教師など専門家に相談をするなどして、じっくりと時間をかけて解決策を見つけ出してあげるべきです。

親にとって最も大事なのは、子どもと一緒に悩んであげることです。これは、単なる精神論ではありません。一人で悩みを抱え込むよりも誰かに一緒に悩んでもらったほうが、脳内で生じる苦しみの反応は軽減するということが、神経心理学の実験によって証明されています。
脳機能についても教育についても親が専門家ではないことは、子どもにもわかっています。にもかかわらず親に悩みを打ち明ける本当の目的は、目の前で解決策を示してもらいたいということではなく、心の奥底で悩みを共有してもらいたいという思いを持っているからです。そんな気持ちに真正面から向き合うことが大切です。

困難を乗り越えた先に、本物の親子関係がある!

情報化社会の伸展とともに、一般的には、親子の関係は冷え続ける一方です。しかし、「受験うつ」をきっかけに親子のコミュニケーションを見直し、結果として絆を深めることとなったご家族を、私は数多く見届けています。「受験うつ」はご本人にとってもご家族にとっても、本当につらいものであるのは事実です。でも、困難を乗り越えた先にこそ、かけがえのない本物の親子関係があると私は確信しています。決して希望を捨てないでください。

受験専用の心療内科本郷赤門前クリニックの早期合格コース

受験うつ 親のサポート対策 03学校との交渉

「受験うつ」を乗り越え、志望校への合格を手にするには、親子のコミュニケーションがとても重要です。しかし、現実には多くの親が間違ったコミュニケーションの取り方をしてしまっていて、愛情とは裏腹に、結果として子どもの症状を悪化させる大きな要因となっています。これは、とても残念なことで、今すぐ改善していただきたいのです。ここでは、「受験うつ」に関する実際の症例をもとに、親が注意しなければならない5つのポイントについてわかりやすく解説していきましょう。

学校との交渉のポイント

進級・卒業への最低ラインを明確にする!

学校側の問題を明らかにし、対応策を取らせる!

夏休み、冬休み、春休みは出席日数を稼ぐチャンス!

期末試験は別室受験を要求しよう!

内申書に書かない診断書を医者に書いてもらう!

子供が受験うつに陥った場合に、親がやらねばならないサポートの中で最も大切なのは、学校とタフな交渉を行うことです。受験うつになると、授業を休みがちになり、また、定期試験も受けられなくなります。子どもは学校を休んだことに対して罪悪感を覚えるため、これがストレスとなって、さらにうつの症状を悪化させることになるのです。

こうした悪循環を断つため、親は主治医としっかり相談した上で、学校と緊密に連絡を取り合い、子どもが安心して学校を休める環境を整えてあげましょう。このとき、親の交渉次第で、学校の子どもへの扱いは大きく変わってきます。時には学校側に対して上手に駆け引きを仕掛けながら、子どもにとって最小限の負担で確実に進級・卒業ができるよう道筋をつけてあげることが必要です。そうすれば、子どもは安心して学校を休むことができるので、早期の回復につながるのです。

進級・卒業への最低ラインを明確にする!

一般的には、欠席日数が3分の1を越えると進級や卒業ができないということになっています。しかし多くの場合、これは建前に過ぎず、実際にはこれより寛大な扱いをしてくれる学校が大半です。私はご家族の依頼を受け、学校と直接、交渉した経験もありますが、出席日数がゼロで卒業に持ち込めたことも少なからずあります。

その一方で、少数ではありますが、原則論を振りかざし、長期に欠席した場合は断じて卒業を認めないという学校もあります。また、本当は長期の欠席を容認する方針であっても、他の生徒への影響を考慮し、当初は厳しい目の言い方をするというのも、よく経験することです。そのような場合こそ、安心して長期に学校を休ませることが子どもの回復に不可欠なのだということを、親が粘り強く学校側に訴え、進級・卒業への最低ラインをできるだけ早期に引き出すことが必要です。これが子どもに安心感を与え、うつの回復に役立つのです。

ポイント

  • 学校側との交渉で、進級・卒業に影響が出ない出席ラインを確認しましょう!

学校側の問題を明らかにし、対応策を取らせる!

子どもがうつ病になるというのは、学校生活にも何らかの問題があるはずです。いじめや暴力の被害にあっていたら、それは論外なのですが、私がカウンセリングを行う中で多く経験しているのは、学校に理不尽な時間の使い方を強いられているケースです。高校3年生になれば、目の前に迫ってきた大学受験に全勢力を注ぎたいと思うのが当然のことです。

にもかかわらず、文化祭の実行委員に命じられたり、体育祭の準備に長い時間を取られたりすると、受験への焦りから焦燥感にとらわれるようになります。特に真面目で責任感の強い生徒は、上手に手を抜くことができず、やがて、うつに陥ってしまうというケースが、受験うつではとても多いのです。このような場合は、与えられた役割を子どもが断ると、クラスメートや先生に悪いことをしたという罪悪感が芽生え、これがストレスとなって、うつの症状をさらに悪化させてしまいます。そうならないためにも、親は学校と交渉し、あくまでも学校側から子どもの役割を解くという形式を取らせるべきです。

ポイント

  • 学校側の問題を指摘し、過度な負担から解放させましょう!

夏休み、冬休み、春休みは、出席日数を稼ぐチャンス!

うつ病のタイプにもよりますが、他の生徒と顔さえ合さなければ、学校に行くことは可能だというケースが少なくありません。このような場合は、夏休み、冬休み、春休みに登校しておき、出席日数を稼いでおくのが得策です。私がご両親に代わって学校と交渉したあるお子さんは、学期中はすべて休んでしまいましたが、その代わりに休暇中に登校することで卒業にこぎつけました。

具体的には、休みの日に職員室に顔を出し、先生に登校を確認してもらった上で、図書館や空いている教室で自習をするのですが、これで出席日数にカウントしてもらいます。中には年度末の3月31日に出席日数が規定に達し、ギリギリで卒業にこぎつけたケースもありました。

ポイント

  • 夏休みなどの長期休暇期間を利用し、出席日数を稼ぎましょう!

期末試験は別室受験を要求しよう!

うつ病になったときに、授業の欠席日数とともに問題になるのが、期末試験を受けられなくなることです。試験を受けなければ成績の付けようがなく、学校側としても卒業させるわけにはいかなくなります。この場合も、うつ病のタイプによるのですが、クラスメートとともに期末試験を受けることはできなくても、一人で受けるのなら可能であることが少なくありません。

そこで、親は学校と交渉し、別室で試験を受けることを認めてもらいましょう。少なくとも医師の診断書を提出すれば、学校側が別室受験を断ることは、まずありえません。また、どうしても試験を受けることができない場合は、他の時期に受けた試験結果の7割程度の点数を元に成績をつけてくれることもあります。
成績についても、子どもが不安に思うことが、うつの症状を悪化につながります。親は、できるだけ早期に学校と話し合い、卒業への道筋をつけて子どもを安心させてあげましょう。

ポイント

  • 1人で試験を受けられるよう、別室受験を要求しましょう!

内申書に書かない診断書を医者に書いてもらう!

一定期間、学校を休むと、必ず診断書の提出を求められます。このとき注意していただきたいのが、不用意に診断書を提出すると、子どもの将来に禍根を残す場合があるということです。
特にダメージが大きいのが、入試の願書とともに提出する内申書です。長期に学校を休んだ場合、学校側は内申書に具体的な理由を書かざるを得ません。このとき現実には、医者が書いた診断書に基づいて内申書に記載する場合が大半です。

私は、高校の教諭を対象に調査を行なったことがありますが、中には具体的な表現まで診断書の文言をそのまま転載したと打ち明けてくれた先生もいました。一方、診断書を書く医師の側は、診断書の記載が内申書を通して患者の受験の合否に影響を与えるということに対して、残念ながら意識は極めて希薄です。その結果、受験に著しく不利になる診断書を書いてしまうこともあるのです。

一般の大学入試では内申書が合否に占める割合が低いので、まだいいのですが、医学部の入試など、面接がある場合は特に注意が必要です。面接官は、内申書の記載に目を通した上で面接を行うのが一般的です。内申書によって面接の方向性があらかじめ決ってしまうので、あなどってはいけません。
また、将来、留学する場合は、高校にさかのぼって内申書の提出を求められることが多く、しかも諸外国では内申書が合否に影響する場合がむしろ主流派です。医師には内申書への影響まで考慮した上で、診断書を書くにあたって文言を慎重に吟味してもらいましょう。

ポイント

  • 内申書に響かないよう、お医者さんに相談し、
    診断書を書いてもらいましょう!

受験専用の心療内科本郷赤門前クリニックの早期合格コース

受験うつ 親のサポート対策 04受験生の食事

本郷赤門前クリニックの開設以来、受験生のうつ病治療に数多く携わってきた吉田たかよし先生による、受験生の心を守る食事についてご紹介します。

受験ストレスから心を守る
食事の極意!

魚は「うつ症状の回復」と「学力の回復」のダブルの効果!

2週に一度、夕食に大好物を食べさせ、「受験うつ」を早期に見抜く!

夕食時に子どもに話しかけ、受け答えで「受験うつ」をチェック!

食事の時間は受験や勉強に関する話題を避け、
子どもの心をリセット!

魚は「うつ症状の回復」と「学力の回復」のダブルの効果!

「うつ病の治療薬の代わりになるものを見つけたければ、魚屋へ行け!」これは、英国の脳栄養科学研究所所長、マイケル・クロフォード博士が語った言葉で、私たち心療内科医で知らない人はいないくらい有名です。実際、魚を食べると、うつ病の予防や治療に役立つことを示す研究は数多く発表されているのです。

青魚のオメガ3系脂肪酸は天然の抗うつ薬!
こうした研究のさきがけになったのは、NIH(アメリカ国立衛生研究所)のジョセフ・ヒベルン博士が1998年に「The Lancet」という権威のある医学誌に発表した調査結果でした。図のように横軸に一人あたりの魚の消費量、縦軸にうつ病(大うつ病性障害)の発病率をとり、各国の統計データをプロットしていくと、右下がりの傾向にあることが分かります。これは、魚をたくさん食べるとうつ病になりにくく、魚を食べないとうつ病になりやすいということを示しているわけです。

魚を食べないニュージーランドは、
うつ病発症率が日本の50倍!

特に衝撃的なのは、一人あたり1年間に63kgの魚を食べていた日本と、10kgしか魚を食べていなかったニュージーランドの較差です。ニュージーランドは日本と同じように周囲が海に囲まれていますが、牧畜が盛んなため魚の消費量は少ないのです。

そんなニュージーランドでは、なんと人口あたりのうつ病の発症率が、日本の50倍も高かったのです。環境面ではニュージーランドの方がのどかでストレスの少ないお国柄ですから、「やっぱり魚には何かがある」ということで、研究が一気に進みました。その結果、分かってきたのが、DHAやEPAなど魚に含まれるオメガ3系脂肪酸と呼ばれる成分が、うつ病の予防効果も発揮してくれるということです。

ですから、魚の中でも、オメガ3系脂肪酸を多く含むサバやイワシ、それにサンマなど背の青い魚が、とりわけ、うつ病を予防する効果が高いと考えられます。実際、うつ病の患者にオメガ3系脂肪酸を投与したところ、うつ病の症状が軽くなったという研究結果も発表されています。また、血液中のオメガ3系脂肪酸の濃度が高い人は、そうでない人に比べ、自殺する割合がなんと五分の一から八分の一と劇的に低かったという調査結果も報告されています。

「魚を食べると頭が良くなる」は、あながちウソではない!
「さかな、さかな、さかな~♫、さかなを食べると~♫、頭、頭、頭~♫、頭が良くなる~♫」誰もが耳に馴染んでいるフレーズだと思いますが、残念ながら魚に含まれる成分に関して脳の認知機能を高める効果が明確に証明された研究結果は得られていません。しかし、オメガ3系脂肪酸が不足している子どもは成績が悪く、この場合はオメガ3系脂肪酸を摂取させることで成績が向上したというデータは得られています。つまり、魚を食べれば食べるほど成績が良くなるというわけではありませんが、不足している場合は成績の回復が期待できるわけです。受験うつの場合は、オメガ3系脂肪酸が不足している可能性があるので、「うつ症状の回復」と「学力の回復」という一石二鳥の効果を求めて、魚をしっかり食べることをおすすめします。

2週に一度、夕食に大好物を食べさせ、「受験うつ」を早期に見抜く!

どんな病気も早期発見が重要なのですが、うつ症状は心の問題で、しかも受験生は自室にこもって勉強する時間が長いだけに、症状が重くなるまでご家族は気がつかない場合も少なくありません。そんな中、子どもの異変にいち早く気づくことができる貴重な機会として大切にしていただきたいのが食事の時間なのです。

受験うつになると、ほとんどの場合、食事の時間に何らかのSOSサインを発します。それを親は、見逃してはいけません。といっても、朝食は慌ただしくとる場合が大半ですし、昼食は自宅でとることが少ないでしょう。
だからこそ、自宅で比較的長い時間をかけて食事をとることが多い夕食こそが、うつ症状が出ていないかどうかをチェックする絶好の機会なので、ご家族が子どもをよく観察していただきたいのです。以下は、そのためのチェックポイントです。

食事中に現れる
「受験うつ」のSOSサイン!

大好物だった料理を定期的に出して、子どもの反応を観察する

おいしく感じなくなったら要注意!

子どもが食事をとる量が変化しないか観察する

食べる量が極端に減る、逆に食べる量が極端に増える、
増えたり減ったりを繰り返す、いずれも要注意!

亜鉛の不足などによる味覚障害はよく知られていますが、うつ症状が重くなっても味を感じにくくなります。ひどい場合は何を食べても味がまったく感じられなくなり、「まるで砂を食べているようだ」と話す受験生もいます。
「受験うつ」に気づくために、ぜひ、習慣にしていただきたいのは、お子さんの大好物だった料理を食べさせて、その反応を観察することです。
もともと嫌いな食べ物を美味しく感じないのは当たり前ですが、大好物の食べ物を美味しく感じなくなった場合は、うつ症状のSOSサインである可能性が高いと考えるべきです。

私がおすすめしているのは、あらかじめ子どもの好きな食べ物の中で母親が子どもに内緒で一つの料理を選んでおきます。 そして、目安として2週間に一度くらいのペースで食卓に出し、前回の反応と比較してみるのです。そうすれば、子どものわずかな変化にも母親が即座に気づくことができます。普段の食事の量も、子どものメンタル面の異変を見逃さないために、注意を払っていただきたいポイントです。脳の中でストレスの処理を行っている中枢は視床下部という部分ですが、食欲を管理している摂食中枢と満腹中枢もこの視床下部の中にあるため、ストレスの異常は食欲にダイレクトに現れます。

抑うつ症状が現れると食欲が低下する場合が多いのですが、逆に食べることでストレスを紛らわせようとして食事の量が増える場合もあります。また、食欲が不安定になり、食事の量が増えたり減ったりを繰り返す受験生もいます。

夕食時に子どもに話しかけ、受け答えで「受験うつ」をチェック!

常にストレスにさらされている受験生にとって、夕食の時間はリラクスできる数少ない機会です。また、食事によって血糖値が上昇するため、普段は勉強でカリカリしている受験生も本来は心が穏やかになるはずです。にもかかわらず、コミュニケーションに異常が現れていれば、子どもはメンタル面で何らかの問題を抱えていると考えられるのです。

夕食は、隠されている心のSOSサインを親が見つけ出してあげられる好機です。ぜひ、親のほうから積極的に子どもに言葉をかけ、どんな答えが返ってくるか耳を傾けてください。

夕食時に子どもに話しかけ返事に以下の兆候が現れたら要注意!

  • 子どもの口数が極端に減る
  • 何度も同じような内容の話や言葉を繰り返す
  • 会話のキャッチボールがスムーズにできなくなる
  • イライラしながら親や学校の不満ばかりを口にする
  • 「もうダメだ」といったネガティブな発言ばかりをする

食事の時間は受験や勉強に関する話題を避ける!

多くの親は、食事のとき、受験や勉強に関することを子どもに問いただそうとしますが、これは絶対にやめてください。普段の受験勉強でストレスを抱え込んでいる子どもにとって、食事はメンタル面をリセットする貴重な時間です。そこで親が受験や勉強の話をしたら、子どもの心はズタズタになります。

多くの親は、勉強の進み具合や模擬テストの成績を話題にするのは、子どものために子どもを気づかってのことだと思っています。でも、それは親のカン違いである場合が少なくありません。
実は子どもの成績に関して親自身が不安を感じていて、親のストレスを子どもに転嫁しているのが、子どもに勉強の話をする親の心理の実態である場合が少なくありません。

「子どもが不合格になるのが怖い・・・」
「子どもが落ちたら、近所で私が恥をかく・・・」
「いい学校に進学してくれないと、会社で自分の立場がない・・・」

そんな親のエゴについて、ストレスに押しつぶされてデリケートになっている子どもの心は見逃しません。子どもは傷つきメンタル面で一気に不安定になってしまいます。以下のチェックポイントを参考に、夕食のときの話題を厳選してください。

夕食時に避けた方がいい話題

  • 受験勉強の進み具合
  • 模擬テストの成績
  • 苦手科目の対策
  • 志望校の選択
  • 勉強の計画
  • 兄弟や友だちとの比較

夕食時に積極的に
話してもらいたい話題

  • 食べている料理について
  • 睡眠など子供の日常生活
  • 子どもの趣味
  • スポーツ
  • 社会問題
  • 天気
  • 幼少期の思い出