うつ病の新たな治療法「TMS治療」
磁気刺激治療(TMS)とは、うつ病に対する新しい治療方法です。TMS治療や経頭蓋磁気刺激法などと言われています。医療先進国のアメリカ発の治療方法で、日本の厚生労働省にあたるアメリカ食品医薬品局(FDA)から、2008年に認可を得ています。2017年に日本でも一部機器が厚生労働省から認可を受け、2019年6月に一部の大学病院等で保険が適用され、安く治療が受けられるようになりました。ただし、治療対象には各種条件があり、誰でも受けられる状況ではありません。
TMS治療のポイント
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薬物療法などの、従来の治療とは全く異なる画期的な治療法
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副作用がほとんどない
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うつ病は脳の機能低下によって起こるため、そのメカニズムに基づいた治療法
このような方に
お勧めの治療です
副作用が少なく安全性が高い
うつ治療
磁気を用いて脳の特定の部位に働きかけ、脳血流を増加させることによって低下した機能を元に戻していきます。薬物治療や電気けいれん療法(ECT)に比べ、副作用が少なく安全性が高いのが特長です。2012年にNHKで特集番組で放送されたのをきっかけに、日本国内でも一気に注目が高まりました。
「磁気刺激治療」「TMS」「TMS治療」「経頭蓋磁気刺激法(けいとうがいじきしげきほう)」「rTMS(repetitive T14Tanscranial M7Mgnetic S16Simulationの略称)」などさまざまな呼び方があります。しかし、当サイトでは、なるべく専門用語を用いず分かりやすく解説するため「磁気刺激治療」あるいは「TMS」と表記します。
また、うつのほか、精神科疾患や神経内科疾患など臨床研究段階では効果があるといわれており、すでに日本国内で、脳卒中後のリハビリ治療として、磁気刺激治療が利用されています。
うつ病の原因は?
うつ病の原因は、実はいまだにはっきりとは解明されていませんが、大きな原因は3つ挙げられます。
うつ病の原因
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過剰なストレス
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性格的傾向
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遺伝要因
これらの影響で脳の神経伝達物質のバランスが崩れたり、脳の血流量や代謝が衰えたりすることが大きく関係していると考えられています。
以前は心の病と考えられていたうつ病も、最近の脳科学研究の進展により「脳の疾患である」という考えが主流です。
なぜ磁気刺激治療(TMS)がうつに効果的なのか
右図は、脳の血流や代謝の様子の画像です。
うつ病を発症している脳は、血流や代謝が低下していることが分かります。
脳の構造
脳の各部位で喜怒哀楽の感情や、睡眠、食欲をコントロールしています。
背外側前頭前野(DLPFC)の機能
脳の左側の背外側前頭前野(DLPFC)の活動が低下し、逆に扁桃体(へんとう体)が過剰に活発に反応する状態を、うつ病のメカニズムと考えています。
背外側前頭前野について
判断、意欲、興味をつかさどる
機能が低下すると、やる気がなくなる
扁桃体(へんとう体)のバランスを整える
扁桃体(へんとう体)は、不安、悲しみ、自己嫌悪、恐怖などの感情をつかさどる。機能が低下すると、これらの感情が強く出てしまいます。
磁気刺激治療(TMS)による治療
脳の左側の背外側前頭前野(DLPFC)を磁気刺激で活性化させ、意欲や思考力を正常に機能させ、二次的に扁桃体(へんとう体)の過剰な活動を抑制させるのが、磁気刺激治療(TMS)の治療方法です。回数を重ねることで、うつ症状が徐々に改善します。
何回の治療で改善するかは、症状によって個人差はありますが、30回程度です。
うつ病は再発率が高い病気と言われていますので、効果を持続させるための再発予防にもTMSは継続的に効果があります。
副作用について
磁気刺激治療(TMS)は薬と比較して、副作用がほとんどない危険性の少ない治療です。
想定される副作用
Janicak PG, et al.J Clin Psychiatry 69;222-232,2008 Rosenquist PB,et al.Psychiatry Res.2013