女性がうつ病になりやすい理由
うつ病になる年代は、男性は40代に多く見られ、女性は30代からうつ病になる方が増え始めます。全世代では女性のほうが多く患者総数では男性の約2倍にもなります。女性の場合、性ホルモンの変動など、生理的にも社会的にもうつ病になりやすい要素を抱えているということも有ります。特に社会環境については、就職・育児休業関連の法律は男女平等をうたっていますが、現実には女性が家事の9割、育児のほとんどを担うなど、負担になる状態に置かれているのが実情です。

生理的な要因
ホルモンの変化があり、気分に変調がある。ホルモンの関係により、うつ病を合併しやすい病気(甲状腺機能異常など)の有病率が高い。

社会的な要因
高い能力や多くの役割が求められ、「スーパーウーマン」が理想とされる風潮が、精神的に追い詰めやすい。

心的外傷
職場でのセクハラやパワハラ、DVを受けるのは女性が多い。
女性ホルモンとの関連
女性ホルモンとは、女性が妊娠・出産のできるカラダをつくるために脳が指令を出し、卵巣でつくられるエストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモンの総称です。
女性ホルモンは非常にデリケートです。
女性はホルモンの入れ替わりが激しく、これがストレス(生理学的ストレス)となります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)は、神経伝達物質のセロトニンを介して感情の調節に関わっています。このセロトニンは、気分を明るくする、興奮や不快感を鎮める働きがありますが、女性はもともとセロトニンの分泌量が男性より少ないのです。更に月経前は、エストロゲンが減ることでセロトニンが減り、落ち込みやすくなったり、イライラするという症状が出てしまいます。
それは決して、あなたの性格に問題があるわけではないのです。
体の正常な働きが感情も左右しますので、ホルモンの変動時期は情緒も不安定になるのです。月経によって、そして妊娠・出産・更年期によってホルモンは変動します。ホルモンの変動は、ストレスに対する抵抗力が低下するため、女性は男性よりもうつ病になりやすいのです。
女性のライフサイクルと女性ホルモンの変化の関係
うつ病の治し方のポイント
気分が良くなるまでには時間がかかりますが、毎日少しずつでもいいからやってみることが大切です。
大切なのは、無理をせず、1人で抱え込まないことです。症状が長く改善されないようでしたら、まずは精神科や心療内科の専門医に相談に行きましょう。それが早期回復への近道なのです。
うつ予防のポイント
- 自分の感情の動きに気付こう
- ライフスタイルを少し変えてみよう
- 家に引きこもらないように外出しよう
- ヘルシーな食生活を心がけよう
- 休養とリラクゼーションを心がけよう
- 信頼できる誰かに話を聞いてもらおう
- 軽い運動(30分の散歩など)を続けよう
- 睡眠時間はたっぷりとろう
- なるべく毎日、日の光にあたるようにしよう
うつ病の治療方法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
- 電気けいれん療法
PMDDの主な原因と対処法
「月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome。月経前緊張症)」とは、月経(生理)の3~10日ぐらい前から決まって起こるさまざまな症状のことです。個人差はありますが、毎月同じように症状が現れる人はこれらの症状は、月経が始まると自然に治まったり、軽くなったりするのが特徴です。そのうち、PMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれる精神的症状が非常に強く出てしまう症状があらわれることもあります。PMDDの有病率は、月経のある女性のうち3~8%と考えられています。
身体的症状 下腹部痛・腰痛・頭痛・めまい・吐き気など
精神的症状 イライラ・憂鬱・集中力の低下・記憶力の低下・孤独感・不安感など
PMDDの主な症状として上記があげられます。
基本的な症状はPMSと同じですが、PMDDでは特にイライラ・憂鬱感などの精神的症状が強く、時には周囲の人との関係が崩壊してしまうようなトラブルに発展したり、暴力や薬物に手を出してしまったり、さらに重篤な場合は自殺を考えたり等、深刻な症状があらわれます。そのような状態になる前に早めに婦人科、心療内科や精神科などの専門医に相談しましょう。
PMDDの主な原因
プロゲステロン(黄体ホルモン)の影響
排卵~生理前に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が、脳内物質(GABA)や水分代謝に影響を与えるため、体調が不安定になるといわれています。
脳内物質の減少
排卵後、排卵ホルモンの分泌が減ることで、セロトニン(喜びを感じる脳内物質)が急激に減少し、ネガティブな気持ちを引き起こすといわれています。
ビタミンやミネラルの欠乏
排卵後、PMSの人は、ビタミン・ミネラルの微量栄養素の欠乏状態にあるといわれています。排卵ホルモンの分泌が減ることで、セロトニン(喜びを感じる脳内物質)が急激に減少し、ネガティブな気持ちを引き起こすといわれています。
症状軽減に効果的な対処法
- エクササイズ
定期的な運動は、症状を軽減することができます。 - 食生活の変更
塩、脂肪の多い食品、カフェイン、アルコール等を控えることをお勧めします。 - 栄養補助食品
ビタミンB-6、カルシウム、マグネシウム、ビタミンE、およびトリプトファン等は効果があるようです。 - ストレス軽減
ヨガや瞑想など、リラクゼーションでストレスを減らしましょう。
PMDDに伴ううつの治療法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
- 電気けいれん療法
妊娠・産後のうつ
ずっと赤ちゃんが欲しかった……その念願が叶ったはずなのに……。妊娠がわかっても喜べない。もしくは妊娠中にうつ病に陥っていく……。妊娠中に軽度のうつ病の症状を感じる人は、1割以上もいるというデータもあるようです。
妊娠・産後のうつの原因
女性ホルモンの影響
妊娠するとhCGという女性ホルモンが大量に増加します。それによって、からだにいろいろな変化が起こるため、うつを発症しやすいケースが多くあります。また、エストロゲンやプロゲステロンという黄体ホルモンが分泌され、ホルモンバランスが崩れるためです。
ママになる不安・プレッシャー
ママになることへの不安で動揺する、またそれがプレッシャーになるなど、精神状態が不安定になってしまうためです。
妊娠中のうつ予防のポイント
- 食生活をバランスよく
- 適度にからだを動かす
- 気持ちを外に向けて外出する
- 誰かと話す機会を増やす
- しっかり休む
産後のうつ予防のポイント
- 夫など家族と産後うつについてよく話しあってみましょう
- 産科や地域の子育て支援センターなどで相談をしてみましょう
- しっかりと休養をとることもとても重要です
産前・産後のうつの治療方法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療(服用薬が限定されます)
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
育児とうつ
育児はたいへんなエネルギーを必要とします。一日中子どもと一緒で他の人と話す機会が少なくなり、自分が社会から疎外されてきているような孤独感を感じることもあります。また、育児ノイローゼとうつ病の違いは、専門の医師でなければ診断が難しいものでもあります。
育児中のうつのサイン
育児中のうつ予防のポイント
- 夫婦で協力して育児や家事を行いましょう
- 相談できる相手を見つけましょう
- 他人の家や他人の子と比べないようにしましょう
- 辛い時は周りにサポートを求めましょう
- 子どもに対するイライラを減らしましょう
- 完璧な育児や家事を求めてはいけません
育児中のうつの治療方法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
浮気・離婚によるうつ
信用していた相手に裏切られ、傷ついた結果によってうつ病になる、または離婚問題のこじれから、うつ病になってしまうということもあります。浮気や離婚問題によるうつ病というのは、意外に多いものなのです。
では何故、うつ病へと進行していってしまうのでしょうか?
それは「自分で自分を攻撃してしまう」からなのです。
浮気・離婚によるうつのサイン
症状軽減に効果的な対処法
まずは、自身の気持ちを強く持つことです。「たとえ一人に(別れることに)なったとしても、強くたくましく幸せに生きていける」と覚悟することが大切です。
ですが症状が重くなりますと思考力や判断力が低下してしまいます。まずは体調を回復させ、思考力・判断力を取り戻すことが先決ですので、専門の医療機関等に相談して下さい。
浮気・離婚によるうつ病の治療方法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
- 電気けいれん療法
更年期とうつ
女性は40代になると、卵巣の機能低下に伴い女性ホルモンの分泌が減少し、閉経を迎えます。その前後約10年が『更年期』となります。この更年期に様々な症状が心身に現れます。これが『更年期障害』です。更年期障害の症状が、うつ病の症状である場合もあるのです。
身体的症状 頭痛・ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗・手足のしびれ・便秘・めまい・肩こり・腰痛・冷え・動悸・胸やけ・頻尿など
精神的症状 不眠・憂うつ・不安・イライラ・倦怠感・集中力、記憶力、意欲の低下など
この年代になってくると、子供が自立し母親としての仕事が少なくなる等、家庭での変化や、親の介護や退職といった社会的・環境的な変化が多くなります。
このような変化から来る心理的ストレスが、更年期のうつ病に関連していると考えられます。
更年期を乗り切り、
うつを予防しましょう
更年期はいずれは訪れるものであり、60歳頃には終わり、つらい症状も無くなっていきます。自身の人生の通過点として、心の準備をしておきましょう。気構えし過ぎる必要は無いですが、ちゃんと身体の変化を理解し、健康管理に留意することが重要です。また、更年期には非常にストレスを受けやすくなります。身体と同じく心(精神面)の安定にも気を配りましょう。気分の落ち込みを「更年期のせいかな・・・」と考えず、うつ病などの可能性もありますので、気分の落ち込み・不眠・不安感・イライラなどが続くようでしたら、早めに医師に相談するなど対処しましょう。
更年期のうつ病の治療方法
- 長期的な休養をとる
- 薬による治療
- 精神療法・心理療法
- 磁気刺激治療(TMS)
- 電気けいれん療法
その他、女性に多いうつ症状
うつ病はある日突然襲ってきたりもしますので、少しでもおかしいと感じたら、一人で抱え込まずに、家族やパートナー、友人などにまずは相談してみましょう。
様々なうつの種類
白壁症候群
転勤・引っ越しなどからくる喪失感
空の巣症候群
進学や就職、結婚で子供が家を出たことを契機に
DVうつ
夫婦関係や親密な関係にある男性から女性への暴力
出張うつ
海外へ赴任などで環境の変化、言葉の壁、習慣の違い、狭い日本人社会での人間関係
喪失うつ
家族や友人、恋人など、身近な存在を突然失うことから
このように、一言でうつといっても様々な種類・症状があります。早期に回復できるよう、対策を講じるのが大切です。倦怠感などの身体症状、理由もなく涙ぐむ、睡眠障害などの精神状態がある等、少しでもおかしいと感じたら、精神科や心療内科の専門医に相談してみましょう。
よくあるご質問
女性うつに関して、よくいただく質問と回答をまとめています。
女性は長い間隔ではライフサイクルの中、短い間隔ではひと月の中でホルモンのバランスが変化します。女性ホルモンのエストロゲンが低下すると、脳内物質のセロトニンも低下し、心身に不調が出ることもあります。また、女性ホルモンの変化で自律神経のバランスが崩れることもあります。
低用量ピルの副作用にうつ症状があります。低用量ピルを服用して「眠れなくなった」「不安やイライラが出た」「食欲がなくなった」「気分が落ち込んだ」など、服用前になかった症状が出たらピルによる薬剤惹起性うつの可能性があります。ピルの服用でうつ症状が出た場合でも勝手に服用を中止することはせずに、まずは担当の医師と相談してください。
自分でできる対処法を試しても改善せず、仕事や家庭生活で支障が出てきてしまうようであれば、婦人科、心療内科、精神科に相談することをお勧めします。
下記の療法が行われています。
①低用量ピルを用いたホルモン療法
②頭痛薬、鎮痛剤を用いた対症療法
③向精神薬による投薬治療
④各種症状にあわせた漢方療法
⑤食事療法や運動療法、睡眠改善などの生活改善