老人性うつとは

老人性うつのイメージ

一般的にうつ病は、働き盛りの30~40代に発症するという傾向があります。しかし、高齢者に多く発症するうつ病もあるのです。これを「老人性うつ病(高齢者うつ病)」と言います。「うつ病全体の5%ほどが老人性うつ病」だと言われています。老人性うつ病は、働き盛りの人がかかるうつ病とは異なり、仕事のストレスではなく「退職した」「配偶者を亡くした」といった環境の変化が原因で発症することが多いです。また、老人性うつ病は認知症と区別がつきにくいという特徴があります。これは「元気がない」「落ち込んでいる」「ぼーっとしている」という症状が共通しているためです。

老人性うつ病が認知症と間違われる原因

診察のイメージ

認知機能や記憶力の低下を自覚して医師の診断を受けた方の中には「実は老人性うつ病だった」という場合もあります。認知症と老人性うつ病が間違えやすい最大の原因は、認知症に「抑うつ」と呼ばれる症状があるためです。さらには認知症の初期段階の症状として半数近い方がうつ状態を患うという傾向があるため、老人性うつ病を認知症と誤認されてしまうことも珍しくないのです。

老人性うつの症状

老人性うつ病

老人性うつ病によって現れる症状はさまざまで、人によって異なります。
また心身の不調を老人性うつ病ではなく「年齢のせい」にしてしまうケースが多く、治療が遅れて認知症になってしまうというケースもあるので注意が必要です。老人性うつ病の症状は次の通りだと言われています。

主な症状

  • 気分が落ち込む
  • 肩こり
  • 感情が乏しくなって無表情になる
  • 頭痛
  • 興味関心を持たなくなる
  • 耳鳴り
  • 食欲がなくなる
  • 吐き気
  • 注意力、集中力の低下
  • 睡眠不足(不眠)など

老人性うつの原因

慢性的に喪失感や不安を抱く

先にも紹介しましたが、老人性うつ病の原因は環境の変化を中心に次のようなものが挙げられます。以下のように、慢性的に喪失感や不安を抱いた場合は、老人性うつ病を発症する恐れがあります。また「仕事を退職した後に没頭できる趣味がない」という方も老人性うつ病になる可能性があると言われています。

老人性うつ病は、環境の変化で現れることが多く、またその症状も誰しもに現れる「気落ち」であったりすることから周囲の人も“環境の変化による一時的なもの”と捉えてしまうことがあります。実は一時的な症状ではなく、うつ病である可能性も考えられるので、身近にうつ病と思われる方がいる場合は、今回ご紹介した症状や原因と照らし合わせてみて下さい。また老人性うつ病に関する正しい知識を深めて、事前に予防できるようにしておくことも大切ですよ。

主な原因

  • 身近な人との死別
  • 子どもの独立
  • 仕事の引退
  • 体力や健康状態の低下
  • 住み慣れない土地への引っ越し
  • 薬の飲み合わせ

老人性うつ病と認知症を見分けるには

うつ病と認知症は症状が似ているため医師でも判断が難しいケースがあります。
身内に老人性うつ病または認知症だと思われる方がいる場合は、次の違いに注意して考えてみてください。似ているとされる老人性うつと認知症ですが、下記のような違いから見分けることができます。基本的に「本人が症状を自覚しているかどうか?」が判断の基準だと考えましょう。身近に老人性うつ病または認知症だと思われる方がいる場合は、ここで紹介した内容を参考にしてよく観察してみると良いでしょう。

記憶障害

記憶障害

認知症の場合、記憶障害が多くみられますが、老人性うつ病では起こりません。
老人性うつ病の場合、記憶障害はないものの、何を聞かれても「わからない」と答えてしまう傾向があります。そのため、判断が難しくなるケースもあります。

不安感

不安感

高齢になると物忘れが増えてきます。老人性うつ病の方は自分で物忘れに気付いて、それをきっかけに不安感を抱いたり、落ち込んでしまったりすることがあります。認知症の場合は物忘れに自ら気づくことは基本的にありません。

発病

発病

認知症は徐々に症状が進行するため気づきにくいという特徴がありますが、老人性うつ病は突然症状が現れたり、時間帯によって強く出たり、複数の症状が同時に現れることがあります。

睡眠

睡眠

老人性うつ病の方は自分が眠れないことに悩みを抱えています。しかし認知症の場合、問題行動を本人が起こすため、不眠の悩みはありません。

質問に対する回答

質問に対する回答

老人性うつ病の方は、考えた結果「わからない」と答えることが多くなります。反対に認知症の場合は質問に対して、見当違いな回答をしたり、その場を取り繕う所作がみられます。

老人性うつの人との接し方

老人性うつの人との接し方

社会の高齢化が進む中、60代以降の高齢者にもうつ病や神経症と診断される人が増えてきています。
こうした高齢者のうつは「老人性うつ」と呼ばれ、若い世代のうつとは要因や症状に異なる部分もあります。家族など身近な高齢者が「老人性うつ」になった場合、どのように接するのが良いのかを知っておきましょう。

「老人性うつ」の人との接し方、
4つのポイント

ゆっくりできる環境を作る

うつ病の人にとって、ゆっくり休養を取ることは有効な対策となります。
一般的に、うつ病にかかる人は責任感の強い人が多く、体調が悪くても家事などの作業に無理をしがちな傾向があります。周りの人は、こうした作業を代わってあげるなど、本人がゆったりと休める環境を作るのが大切です。

「休ませすぎ」には注意が必要

無理をさせないように気づかうのが大切だとお伝えしましたが、一方で、老人性うつの場合は、「休ませすぎ」にならないように気を配る必要もあります。
高齢の方は筋力などが衰えやすいものです。老人性うつになることで体調不良などからさらに気力や体力が低下しやすくなります。「休んだほうが良いから」と何もせずに過ごしていると、寝たきりや認知症につながるリスクもあります。周囲の人は、本人が適度に心身に刺激を受けられるような機会を作ってあげることも心がけてください。

一緒に趣味や遊びを楽しむ

脳を活性化させるとともに楽しい気持ちや前向きな気持ちを感じさせてくれるものです。手工芸や写真、囲碁や将棋、カラオケなど、高齢者にも楽しみやすい趣味はいろいろとあります。本人に合いそうな趣味を勧めてあげたり、一緒に楽しんだりするのも老人性うつの改善に効果的だと言えるでしょう。

身体を動かす機会を作る

適度な運動は、筋力の衰えを防ぐばかりでなく、気持ちにも良い影響を与えてくれます。また、高齢になると睡眠が浅くなったり、なかなか寝付けなかったりする人が多く、こうした睡眠障害も老人性うつの一つの原因となっています。日中に適度に身体を動かすことで、快眠を得やすくなる効果も期待できます。緑豊かな場所へ一緒に散歩などに出かけたり、簡単な体操などを一緒に行ったりと、なるべく身体を動かす機会を作ってあげるようにするのも大切なことです。

よくあるご質問

老人性うつに関して、よくいただく質問と回答をまとめています。

老人性うつか認知症かきちんと知るにはどうしたらよいですか? 

自己判断はせずに、早めに専門家に相談しましょう。
認知症の初期症状にうつ症状が認められる場合もありますので、老人性うつと認知症を誤認してしまうことがあります。
老人性うつと認知症によるうつ症状では、するべき検査や治療がまったく違います。老人性うつか認知症かきちんと把握するためには、医師の診察を受けることがまず大切です。