【うつ病かもと思ったら】コロナで孤立しやすい今だからこそ受診
経済活動が正常化してきた現在でも、不要不急の外出や人との接触を控える毎日が続いています。コロナ感染拡大防止には必要な心掛けですが、その一方で「体調が悪くても病院に行かない」という選択による、隠された病気の存在が不安視されています。
年々増加の一途をたどる「うつ病」もその一つです。
うつ病は初期症状では、なんとなく調子が悪いといった症状もあり、外出でコロナ感染してしまうのではと心配になり、病院受診を敬遠してしまう方も少なくないようです。
しかし、うつ病は放っておくほど症状悪化もあり得る病気です。何かがおかしいと感じたときには、まずは電話で精神科や心療内科に問い合わせし、いつでも受診できる環境を整えておくようにしましょう。
最適な受診のタイミングは?
うつ病かもしれないと思っても、いざ病院に行くとなるとコロナでなくてもハードルが高く感じてしまうものです。
また、なんとなく体調が悪いといううつ病の初期段階では、病院に行くことが大げさなように感じられるかもしれません。
受診のタイミングに迷ったとき、まず大切にしてほしいのはご自身の感覚です。
「うつ病かもしれない」「受診したほうがいいかも」と思ったときが、病院に行くべきタイミングです。
うつ病は、治療開始までの期間と治療期間が同じくらいかかるといわれています。
どんな病気もそうですが、早く治療をはじめた人ほど病気は治りやすくなります。
受診の前に「様子を見る」というワンクッションを置くより、まず受診するという行動を大切にしてください。
病院に行くべき症状の目安も確認しておくと、さらに受診を迷いにくくなります。
病院に行くべき症状の目安
- ・眠れない日、または眠りの浅い日が続いている
- ・寝ても疲れがとれず、倦怠感が続いている
- ・ストレスを感じていて、2週間以上気分が落ち込んでいる
- ・悩みごとのせいで食欲がわかない、またはどんな食事もおいしくない
- ・頭がぼーっとし、集中が続かない
- ・物事の判断がしにくい
これらの症状は珍しいものではありませんので、数日程度ではあれば心配の必要はありません。激務が続いているなど明らかな原因がないのに症状が続くという場合は、うつ病の可能性もあることを覚えておきましょう。
疲れなどによる一時的なうつ状態もまた珍しい症状ではなく、本当に疲れが原因であれば2~3日で良くなるものです。
また、心身の不調に加え「人の話をしっかり聞くようにと指摘される」「ミスが増えた」などが思い当たる場合も、できるだけ早く精神科や心療内科の受診をおすすめします。
身近な人の変化に気づいたら受診を促すことも大切です
うつ病は、自分を追いこんでいく真面目な人、几帳面な人ほどかかりやすいといわれています。
頑張り屋であるがゆえ、自分の疲れに気づけない人もいます。
その特徴は、この長引くコロナ禍の中で精神的不調者が増えている理由にもつながります。
手を抜かず、苦しんでいる人を思いやり、人に迷惑をかけないようにと一生懸命生きている人ほど、心をすり減らしているのです。
うつ病の初期段階では、本人が自分の変化に気づく前に、周囲の人が心配し始めるというケースがよくみられます。
うつ病の判断は難しいですが、「以前と違う」という点がひとつの指針となります。
以下のような様子が見て取れたら、うつ病の可能性があります。
心の変化
- ・さまざまなことに悲観的になった
- ・以前は好奇心旺盛だったのに、何ごとにも興味を持たずいつもおっくうそうだ
- ・以前は笑顔が多かったのに、最近はイライラしていることが多い
- ・よく不安を口にするようになった
体の変化
- ・夜中によく起きる、またはよく眠れていない
- ・朝はぐったりしていて、なかなか起きてこなくなった
- ・急に食欲が増えた、または減った
- ・頭痛や倦怠感などをよく訴えるようになった
行動の変化
- ・会社や学校に行きたがらなくなった
- ・遅刻・欠勤などが増えた
- ・口数が極端に減った
- ・自分を否定する言葉が増えた
- ・人と会いたがらず、人付き合いが減った
周囲からは怠けているように見えてしまうこともあります。
しかし、それがうつ病の症状だった場合、そんな自分を誰よりも責めているのは本人です。
行動一つひとつがとがめられるたび、症状悪化につながってしまう可能性があるので、とがめる前にまず話を聞いてあげるように努めるといいでしょう。
また、心配だから病院に行こうとすすめても、本人が症状を自覚していないとなかなか行きたがらない場合もあります。
そんなときは、無理強いをするのではなく「何もなければそれでいいけど〝私が〟心配だから一緒に行ってほしい」と相手に寄り添った言葉で、受診を促すことが大切です。
最近では、心の健康診断「メンタルドック」を行っているクリニックもありますので、「まずは健診に一緒に行ってみない?」と軽い感じで誘ってみるのもよいかもしれません。
できるだけ早く治療をはじめることは重要ですが、無理やり精神科や心療内に連れていくと、最初の印象が悪かったために継続的な治療に通えなくなってしまう可能性もあります。
焦りすぎず、本人が治療しやすい状況を整えてあげましょう。
おおらかに構えることで、心配するあなた自身もストレスを溜め込むことなく、うつ病の人を支えていけるはずです。
迷ったら問い合わせしておく
コロナにかかるかもしれない、誰かに移してしまうかもしれない、コロナにかかった後差別されるのではないかと怖い……コロナ感染症が引き起こす不安は、「コロナうつ」という名前ができるほど心の問題と無関係ではありません。
これからまだまだ、コロナによるうつ病発症のリスクも高まっていくことは間違いないでしょう。
だからこそ受診は迷わないでほしいところですが、コロナが広がっているときに病院に行くことも確かに不安を感じるかもしれません。
そこでおすすめなのが、まずは電話で精神科や心療内科に問い合わせをしてみることです。
電話で問い合わせるとその医療機関の雰囲気がわかるだけでなく、感染対策などに対してもしっかり確認できるので、安心して受診の可否を決められます。
また、一度問い合わせておくと、改めて受診をしようと思い立ったときも初めて予約する病院という感覚が薄れているため、受診も前向きに考えられやすくなっているはずです。
「一度相談しておいたほうが良いかもしれない」と思えたときが最適な受診のタイミングですから、無理なく上手に精神科や心療内科を利用しましょう。
【プロフィール】
牧野 絵美
ライター・編集者、心理カウンセラー。人間観察が趣味で、取材や執筆においても対話と心理描写を得意とする。若いころは自身の繊細さに振り回され、うつ病を繰り返した。自分との向き合い方をつかんだ今は、誰にでも人生は変えられるということを伝えていきたい。
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