六月病の要因と対処法

六月病とは?

六月病とは?

年度の切り替わりで新しい環境になり2か月がたちました。何とか環境に馴染もうとしていた4月に比べるとだいぶ楽になってきたのではないでしょうか。人によっては新しい友人ができたり、仕事や学業に楽しみを見いだしたりと良い方向に動き始めているかもしれません。
その一方で「なんとなくやる気が出ない」「疲れが溜まっている」「休日の後も疲れが取れない」等の症状を訴える人が6月頃から増え始めるといわれており、これらの症状を総称して「六月病」と呼びます。

六月病の症状

六月病の代表的な症状として以下のものが挙げられます。ご自身の生活を振り返りながら確認してください。

やる気や集中力の減少

新生活にも慣れ始め、4月当初に感じていた緊張感が薄れ、無気力になることがあります。日常生活にメリハリが無くなり、何事に対してもモチベーションを維持することが難しくなります。集中力や注意力が散漫になるケースもあります。

慢性的な疲労感

2か月で生活リズムなど基礎的な部分は掴み始めたものの、まだまだ覚えなければならないこと、できるようにならないといけないものがたくさんあり、4月とは違ったストレスがかかります。その結果、睡眠などに悪影響を及ぼし、疲労感が蓄積され続けていきます。

精神面の不安定

疲労が蓄積されることで些細なことでイライラする、漠然とした不安感に襲われるなどの心理面での不安定さが現れることがあります。

以上のような症状から六月病は自身の肉体的・精神的健康度が損なわれるだけではなく、周囲の人との対人関係も悪化させる恐れがあります。症状には個人差があるので、人によってはいずれかの症状が強く出たり、頭痛や胃痛として現れたりする場合があります。

五月病との違い

前回取り上げた「五月病」と症状が似ており、どちらも正式な医学用語ではないため、医療機関では適応障害やうつ病と診断されるケースが多くありますが、異なる部分があります。
五月病は新しい環境に慣れるためにストレスがかかり症状が出てくるのに対し、六月病は新しい環境に慣れ始めたころに症状が出てきます。これは五月病と六月病がそれぞれ異なる要因で発症することが原因とされています。

六月病の要因

六月病の要因として次の3点が大きく関係していると考えられます。

4月からの慢性的なストレス

体温が上がれば汗をかく、逆に体温が下がれば筋肉を強張らせ体温を維持しようとするように、人は外部からの刺激に対応しようと無意識的に反応します。体力があるうちはある程度の時間耐えられますが、汗をかく水分を失ったり、体温維持のカロリーが不足したりすることで、環境に適応できなくなっていきます。
これと同じように4月からの新生活に適応しようと長い間ストレスに対抗してきたものの、エネルギー不足により少しずつストレスに耐え切れなくなり、六月病として症状が現れてしまいます。

梅雨による自律神経の乱れ

私たちの体は、自律神経系(交感神経と副交感神経)のバランスを調整しながら対応しています。交感神経は活動時に、副交感神経はリラックスしているときに活発になる自律神経です。6月は梅雨に伴う湿度や気圧の変化で自律神経のバランスが崩れやすく、ストレスも感じやすいです。

日照時間の減少

また、悪天候により日光を浴びる時間が少なくなるためセロトニンが分泌されにくくなります。セロトニンとは脳内ホルモンの1つであり、別名“幸せホルモン”と呼ばれています。日光を浴びることでセロトニンを分泌する神経が活発に働き、セロトニンが分泌され、ストレス緩和、睡眠の質の向上などの効果があるとされています。6月は1年で最も晴れる日が少ないといわれているので、セロトニンの恩恵を十分に受けることができず、六月病を発症・悪化させてしまいます。

六月病の予防

五月病の予防

心身を休める

新しい環境は、自分で思っている以上に疲労している場合があります。
心身の疲れには、まずは休息をとることが大切です。翌日に疲れを残さないように、睡眠時間をしっかり確保しましょう。

生活習慣の見直し

バランスの良い食事、適度な運動、良質な睡眠はメンタルの安定に欠かせません。仕事が忙しいためコンビニ弁当やカップ麺などで簡単に済ませる、休日をだらだらと寝て過ごしては心身ともに健康な状態になるのは難しいかもしれません。今一度現在の生活について振り返り改善してみてください。
セロトニンの分泌を促すという点においては朝食と運動は重要です。6月は日照量が少ないため、太陽が出ている機会を逃さないために、早起きをして朝食をきちんと取り、晴れている日は少しの距離でも歩いて通勤・通学するなど工夫してみてください。
どうしても時間がない場合は、朝食にバナナと牛乳、お昼休憩に5分だけ散歩をするなど、できるところからでもいいので試してください。

やる気の低下に対する対処

仕事や学校生活に慣れてきたため気が抜けてしまい、モチベーションが保てないなら、自分で何か目標を決めることでやる気を高めることができます。心理学ではこれを「動機付け」と呼びます。
動機付けは外発的動機付けと内発的動機付けに分けられており、外発的動機付けは他者からの評価や昇進・昇給を目標とするので結果がわかりやすいですが自分ではコントロールできない部分があることが特徴です。
反対に内発的動機付けは「こうなりたい」「これができるようになりたい」という自分の思いを目標にするので、細かく目標を設定することができますが、高すぎる目標を設定してしまうと継続するのが難しくなってしまうという欠点もあります。
外発的動機付けと内発的動機付けはそれぞれ長所と短所があるので、「会社では○○を目指す」「プライベートでは××を頑張る」と上手く使い分け、適切な目標を掲げることで日常生活にメリハリが生まれ、モチベーションを回復・維持することができます。

リラクゼーション

気圧の変化についてはコントロールできないので、プライベートな時間にリラックスできる環境づくりを行っていきましょう。自宅では仕事のことを考えないよう意識し、アロマやお香をたく、好きな音楽をかけるなどして積極的に副交感神経の働きを強くする環境を作っていきましょう。ゆっくりお湯につかる、趣味の時間を大切にすることも自律神経を整えることに繋がります。

早めに医療機関に相談しましょう

前述のとおり、六月病には様々な症状があり、それぞれ個人差があります。
六月病かなと思ったときは、医療機関を受診し医師や心理師に相談してください。薬物療法で頭痛や胃痛、睡眠問題の改善を促し、カウンセリングを受けることによって自分自身を見つめ直し、現状を改善する手がかりを探すことで六月病の治療を行っていきます。
六月病は適応障害やうつ病と診断されることがあります。決して甘えや心が弱いわけではありません。一人で抱え込まず、専門家に相談することで早期治療を行うことが健康な状態に戻る一番の近道なのです。

おわりに

六月病は特に新入社員に多いと言われています。環境に慣れ始めたが故の気の緩み、4月からのストレス、悪天候による気圧の低下や日照時間の不足など、様々な要因が絡み合って六月病を引き起こします。
「そのうち治るだろう」「ただ疲れているだけ」と楽観的に考え、そのままにしておくと症状がひどくなり、うつ病や適応障害として治療が必要になる可能性もあります。
少しでも異変があれば生活習慣を変えてみたり、医療機関を受診したりする等の対応を行ってみてください。

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参考文献:
井上敏明(2005)『適応障害とカウンセリング』, 朱鷺書房
下山晴彦(2007)『認知行動療法:理論から実践的活用まで』, 金剛出版

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