50代キャリア女性必見!ミッドライフ・クライシスとうつ病
50代の働く女性は、多くの悩みを抱えやすい傾向にあります。
自身の年齢に伴う心身の不調、仕事で担う重要な役割、親の介護、子どもの成長に伴う金銭的な問題や家庭問題と、肉体的にも精神的にもそのストレスは計り知れません。
40~50代はライフステージの変化が激しく、人生への葛藤や危機を感じるセンシティブな時期でもあります。心理学の世界では、こうしたミドル世代に訪れる心理的葛藤を「ミッドライフ・クライシス」と呼び、欧米ではすでに社会問題として捉えているそうです。
今回は、うつ病発症にもつながりかねないミッドライフ・クライシスがどんなものかをお話ししつつ、その対処法についてご紹介していきます。
40~50代でなりやすい「ミッドライフ・クライシス」とは
ミッドライフ・クライシスとは、カナダの精神分析学者エリオット・ジャックの名付けた40~50代の時期に訪れる心理的葛藤を指す言葉で、日本語では「中年の危機」と訳されます。
自分のこれまでの人生やアイデンティティ、今後の人生について葛藤や不安を感じやすい心理状態に陥ります。毎日「心がしんどい」状態が続き、自分ではどうにもできない無力感や焦燥感を感じやすくなるのです。
10~20代前半にかけて訪れる思春期の心理状態に近いことから、「第二の思春期/思秋期」とも呼ばれます。
自覚がないことも多いものの、実際にはかなり多くの人がミッドライフ・クライシス状態であることがさまざまな調査で報告されています。心理学者のユングは、中年の危機に早くから注目していたことが知られていますし、アメリカの心理学者ダニエル・レビンソンは、「何も特別なことではなく、正常な中年の80%が中年期に大きな危機を迎える(ミッドライフ・クライシスになる)」と断言しています。
有名な俳優などもミッドライフ・クライシスを公言しており、コロナ禍によりその傾向はさらに強まっていることが懸念されています。
女性がミッドライフ・クライシスになる理由
歳を重ねることによる不安は男女ともに尽きません。
しかし、女性はそもそも一生を通じてライフステージの変化が大きく、さまざまな不安にぶつかりやすい傾向があります。特に50代女性は、以下の4つがきっかけとなり、心のバランスを崩しやすくなるといわれています。
1. 女性ホルモンの変化による若さの喪失と老いへの不安
女性ホルモン(エストロゲン)は40代後半から急激に減少し、更年期障害などの症状を感じる人が増えます。
エストロゲンは不安や焦りを抑制するホルモン「セロトニン」の働きに大きく関わっているため、更年期障害の主な症状であるホットフラッシュ、冷え、疲れやすさなどの身体症状のほか、焦り、不安、怒り、憂うつなどの精神症状も生じやすくなります。
50代女性の4割が自分の更年期障害を疑う症状が出ているものの、そのうち実際に病院にかかる人は1割程度だという報告もあります。体の不調だけでなく精神的な健康のためにも、更年期障害の治療は必要であることを覚えておきましょう。
また、エストロゲンの分泌量は、若々しさなどの見た目にも大きく影響します。
エストロゲンが減少すると、肌の張りや透明感が失われていきます。筋力の低下によるたるみ、代謝が低下し丸みを帯びた体型、崩れた姿勢など、自分の姿を見るたび「もう若くない」「老けた」と感じ、その喪失感と不安で自信を失いやすくなるのです。
2. 空の巣症候群と人生目標の見失い
仕事の面では、この年齢からのキャリアに対して不安を募らせたり、仕事を辞めてからの老後が不安になったりと、心配の矛先が変わってくる時期です。
最近はSNSなどで同世代の人のプライベートが簡単に知れてしまうことが、かえって人と自分を比べる結果となり、ミッドライフ・クライシスが加速されやすいのではないかとう見方もあります。
また、50代といえばちょうど子どもが親から巣立つ時期。母としての役割を失ったむなしさが「空の巣症候群」となり、人生の目標を見失いやすいといわれています。
3. 女友だちと分かり合えない焦燥感、パートナーとのすれ違い
女友だちに相談しても、価値観の違いを感じやすいのも50代ころの特徴です。
どれほど仲のいい女友だちであっても、50代にもなればライフスタイルや生き方への価値観、子どもの進路なども違います。昔のように話に花を咲かせても、共感しきれない寂しさを感じやすくなるでしょう。
とはいえ、パートナーとの対話でも異性であることによる視点や価値観の違いで、どれだけ話しても不完全燃焼に終わることが多くなりがちです。
このように、友だちや家族がいても孤独を感じるという50代は少なくありません。
4. 生活環境の大幅な変化
親の介護が始まった、子どもは巣立ったけど夫の定年で世話をする相手が変わった、など生活環境が大きく変わるのもこの時期です。
このような変化に対応するために使われる心身のエネルギーは、主に精神的な負担を感じさせる傾向が強いでしょう。
ミッドライフ・クライシスを乗り切っていく方法
1. 自分を再定義する
過去のライフスタイルを振り返り、クライシスになった要因を探ってみましょう。どんなものにストレスを感じ、何を成し遂げてきたのか自分の軌跡を知ることで、次の目標が見つかるかもしれません。
その上で、周囲の評価や価値観は一旦脇におき、「自分はどうありたいか」を自分軸で考えてみましょう。
今の自分をしっかり見つめ、どんな自分も「自分である」と認めてあげることも大切です。
2. 新しいことに挑戦する
新しい価値観は、新たな挑戦から生まれるものです。
いい年だから今更と思うのではなく、いくつになっても何だってできるという自信を持つために、新しいことに挑戦してみましょう。
今すぐ思い付かなければ、普段日課にしていることの中にいつもと違うエッセンスを加えるだけでも、気持ちは変わります。
3. 大きな決断は先延ばしにする
これは「逃げ」ではありません。
離婚、転職、引っ越しなど人生に関わる決断は、迷いや不安があるときにしてはいけません。
心が揺れ動いているときの決断は、決して自分の本意ではないということを覚えておきましょう。
4. 専門家に相談してみる
精神科医など専門家に心のもやもやを相談してみるのも手です。
悩みや不安は大きな心のストレスになりやすく、うつ病発症にもつながります。また、ミッドライフ・クライシスとうつ病はどちらも「心のしんどさ」が現れますが、厳密にどちらによる症状なのか判断するのは非常に難しいのです。
万が一うつ病を発症してしまった場合は、治療に多くの時間と労力がかかります。
そうなる前に、専門家による診断をしっかりと受けておくことが、自分との向き合い方にも影響していくでしょう。
また、うつ病治療に用いられるTMS治療も、悩みで疲れた心をほぐす一つの手段です。
TMS治療はうつ症状やストレスによって疲弊した状態を、磁気刺激によって改善させていく治療です。
副作用はほとんどないため、こうした治療を上手に利用していくことも、メンタル不調を早期回復させていくための助けとなるはずです。
まとめ
50代のキャリア女性は、不調を感じても簡単には休めない忙しい方がほとんどです。
心がしんどい状況が長引くと、どうにもできない焦りから自分を追い詰めてしまう人も多いでしょう。しかし、ミッドライフ・クライシスというものがあり、それによって起こりうる不調があることだけでも理解しておくと、捉え方が変わります。
大事なのは、今の自分を心から愛し、未来に希望を持つことです。
その思考の変換は、うつ病を予防することにもつながります。
忙しく、悩みの多い年齢だからこそ、今とこれからを楽しく生きる自分なりの方法を見つけていきましょう。
参考URL
「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果(2022年7月26日)|厚生労働省
更年期障害の可能性があると考えている人の割合(図表1)|厚生労働省
50代女性の4割が更年期障害を疑う―厚労省調査:「病院には行かない」が多数派|Japan Data
50代女性が直面する不安と変化…「中年の危機」の原因・対策法|All about
大人が迎える第二の思春期“ミッドライフクライシス”とは【臨床心理士が解説】|Women’s Health
アラフォーの8割が経験する「うつの危機」?|健康ポータル
中年期特有の心理的危機「ミッドライフ・クライシス」とは|EPARKビューティー
ミッドライフクライシスの8つの乗り越え方|ソクラテスのたまご
中年期の約80%が襲われる“しんどい”の正体とは!『ミッドライフ・クライシス』発売|PR TIMES
【プロフィール】
牧野 絵美
ライター・編集者、心理カウンセラー。人間観察が趣味で、取材や執筆においても対話と心理描写を得意とする。若いころは自身の繊細さに振り回され、うつ病を繰り返した。自分との向き合い方をつかんだ今は、誰にでも人生は変えられるということを伝えていきたい。
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