自律神経失調症の治し方6選!今日から始めるセルフケアで楽になる

なんだかよくわからないけれど、いつも体がだるい、めまいや動悸がする、夜眠れない…。病院で検査をしても「特に異常なし」と言われ、どうしたら良いのか分からず悩んでいませんか。そのつらい症状は、もしかしたら「自律神経失調症」が原因かもしれません。

自律神経の乱れは、ストレスや生活習慣など、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。しかし、原因がはっきりしないからこそ、「治らないのでは…」と不安に感じてしまう方も少なくありません。

この記事では、自律神経失調症の治し方について、その原因や症状の理解から、病院での治療法、そしてご自身で取り組めるセルフケアまで、医師監修のもと詳しく解説します。あなたのつらい症状を改善するきっかけを見つけ、回復への一歩を踏み出しましょう。

自律神経の働きとは

自律神経は、私たちの意思とは関係なく、呼吸、心拍、体温、消化、血圧などを24時間自動でコントロールしている神経です。体内の環境を一定に保つために、非常に重要な役割を担っています。

自律神経は、以下の2つの神経から成り立っています。

  • 交感神経:体を活動的にする神経。「車のアクセル」のような役割で、日中や緊張・興奮した時に活発になります。
  • 副交感神経:体をリラックスさせる神経。「車のブレーキ」のような役割で、夜間や休息時に活発になります。

この2つの神経がシーソーのようにバランスを取り合うことで、私たちは心と体の健康を維持しています。しかし、このバランスが崩れてしまうのが「自律神経失調症」の状態です。

自律神経失調症が起こる原因

自律神経のバランスが崩れる原因は一つではなく、複数の要因が重なって起こることがほとんどです。

ストレス(精神的・身体的)

過度なストレスは、自律神経のバランスを乱す最大の原因です。仕事や人間関係などの精神的ストレスだけでなく、過労、睡眠不足、寒暖差といった身体的ストレスも大きく影響します。

生活習慣の乱れ

不規則な食事、夜更かし、運動不足などの乱れた生活リズムは、自律神経のオン・オフの切り替えを妨げ、バランスを崩す原因となります。特に、夜遅くまでスマートフォンやパソコンの光を浴びることは、交感神経を刺激し、心身の休息を妨げます。

体質や性格

もともと環境の変化に敏感であったり、ストレスを溜め込みやすかったりする体質や性格も、自律神経失調症の一因となることがあります。また、女性ホルモンの変動(月経周期、妊娠、更年期など)も自律神経の働きに影響を与えやすいと言われています。

自律神経失調症の主な症状

自律神経は全身の器官をコントロールしているため、バランスが崩れると心身に様々な症状が現れます。症状は人によって千差万別で、日によって現れる症状が違うこともあります。

身体症状

  • 全身の症状:慢性的な疲労感、だるさ、微熱、ほてり、めまい、立ちくらみ
  • 頭・首・肩:頭痛、頭重感、首や肩のこり
  • 循環器:動悸、息切れ、胸の圧迫感
  • 消化器:吐き気、食欲不振、胃もたれ、便秘、下痢
  • その他:多汗、手足のしびれや冷え、耳鳴り、頻尿、不眠

精神症状

  • イライラ、不安感、焦燥感
  • 気分の落ち込み、憂うつ
  • 集中力や記憶力の低下
  • 感情の起伏が激しくなる

症状の現れ方(タイプ別)

症状の現れ方から、いくつかのタイプに分けられることもあります。

  • 本態性型:もともとの体質が原因で、体力に自信がない虚弱体質の人に多い。
  • 神経症型:心理的な影響が強く、自分の体の不調にとても敏感になる。
  • 心身症型:ストレスが身体症状として現れやすい。日常生活のストレスが原因。
  • 抑うつ型:心身症型がさらに進行し、気分の落ち込みなどうつ病に近い症状が見られる。

病院での自律神経失調症の診断と治療

セルフケアで改善しない場合や、症状が日常生活に支障をきたしている場合は、専門の医療機関を受診することが重要です。

何科を受診すべきか

自律神経失調症を疑う場合、どの科を受診すればよいか迷うかもしれません。

  1. まずは内科やかかりつけ医へ:動悸や腹痛など、特定の身体症状が強い場合は、まずその症状に対応する科(循環器内科、消化器内科など)や、かかりつけの内科を受診し、他の病気が隠れていないか調べてもらうことが大切です。
  2. 心療内科・精神科:身体的な病気が見つからず、ストレスが原因と考えられる場合や、不安感、うつ気分など精神的な症状が強い場合は、心療内科や精神科が専門となります。
  3. 婦人科:更年期や月経周期に伴う不調が疑われる女性は、婦人科への相談も選択肢の一つです。

病院での診断プロセス

自律神経失調症には、血液検査や画像検査のような明確な診断基準がありません。そのため、診断は主に以下のプロセスで行われます。

  • 問診:症状の内容、始まった時期、生活習慣、ストレスの状況などを詳しくヒアリングします。
  • 各種検査:症状の原因となる他の病気(心臓病、甲状腺疾患など)がないことを確認するために、血液検査、尿検査、心電図、レントゲンなどの検査を行うことがあります。
  • 心理テスト:不安や抑うつの度合いを測るために、心理テストを行うこともあります。

これらの結果を総合的に判断し、他の病気の可能性が除外された上で「自律神経失調症」と診断されるのが一般的です(除外診断)。

主な治療法

病院での治療は、薬物療法と精神療法を組み合わせながら、生活習慣の指導を並行して行うことが基本となります。

薬物療法(薬の種類と効果)

薬は、つらい症状を和らげて心身を休ませ、セルフケアに取り組む気力を回復させるために用いられます。あくまで対症療法であり、根本的な治癒を目指すものではありません。

薬の種類 主な効果・目的
抗不安薬 不安や緊張、イライラを和らげる。
抗うつ薬 憂うつな気分を改善し、意欲を高める。SSRIなどが用いられる。
睡眠導入剤 つらい不眠を改善し、心身の休息を助ける。
自律神経調整薬 自律神経のバランスを直接的に整えることを目指す。
漢方薬 全身のバランスを整える。体質や症状に合わせて処方される。

これらの薬は医師の指示に従って正しく服用することが非常に重要です。自己判断で中断したり量を調整したりしないでください。

精神療法・カウンセリング

薬物療法と並行して、ストレスへの対処法を身につけるための精神療法が行われることがあります。

  • カウンセリング:専門家と対話する中で、自分のストレスの原因や考え方の癖に気づき、解決の糸口を探ります。
  • 認知行動療法:ストレスを感じやすい物事の捉え方(認知)を、より柔軟でバランスの取れたものに変え、適切な行動がとれるように練習していく治療法です。

その他の治療法

理学療法士による運動指導や、管理栄養士による食事指導など、多角的なアプローチが行われることもあります。

自力でできる!自律神経を整えるセルフケア(治し方)

病院での治療と合わせて、あるいは軽度の不調であれば、自分自身で生活を見直すセルフケアが改善の鍵となります。これが、自分でできる「自律神経失調症の治し方」の基本です。

生活習慣の見直しで改善

不規則な生活は自律神経の乱れに直結します。まずは生活の土台を整えましょう。

質の高い睡眠を確保する

睡眠は心身を回復させる最も重要な時間です。

  • 毎日同じ時間に起き、朝日を浴びる:体内時計がリセットされ、夜の自然な眠気につながります。
  • 就寝前のスマホ・PCは控える:ブルーライトは交感神経を刺激し、眠りの質を低下させます。
  • 寝具やパジャマを見直す:自分に合った快適なものを選びましょう。
  • 眠れない時は無理に寝ようとしない:一度ベッドから出て、リラックスできることをして眠気が来るのを待ちましょう。

バランスの取れた食事(避けるべき食品も)

1日3食、決まった時間にバランスの良い食事を摂ることが基本です。

  • 積極的に摂りたい栄養素
    • ビタミンB群:神経の働きを正常に保つ。豚肉、玄米、豆類など。
    • トリプトファン:精神を安定させるセロトニンの材料。乳製品、大豆製品、バナナなど。
    • GABA:リラックス効果。発酵食品、トマト、かぼちゃなど。
  • 避けるべき食品・飲み物
    • カフェイン:コーヒー、紅茶、緑茶など。交感神経を刺激するため、特に午後は控えめに。
    • アルコール:一時的に寝つきが良くなるように感じますが、睡眠の質を大きく低下させます。
    • 精製された糖質・ジャンクフード:血糖値の乱高下を招き、心身の不調につながりやすいです。

適度な運動を取り入れる

激しい運動はかえって交感神経を刺激しすぎるため、心地よいと感じる程度の軽い運動がおすすめです。

  • ウォーキング:1日20~30分程度、景色を楽しみながら歩くと気分転換にもなります。
  • ストレッチ・ヨガ:深い呼吸を意識しながら行うことで、副交感神経が優位になりリラックス効果が高まります。

効果的な入浴法

シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる習慣をつけましょう。

  • 38〜40℃程度のぬるめのお湯に、15〜20分程度ゆっくり浸かるのが理想です。
  • これにより副交感神経が優位になり、心身がリラックスモードに切り替わります。就寝の1〜2時間前に入浴を済ませると、スムーズな入眠につながります。

ストレスを軽減する方法

ストレスをゼロにすることは困難ですが、上手に付き合い、解消する方法を見つけることが大切です。

リラクゼーションやツボ押し

  • 腹式呼吸:意識的にゆっくりと深く息をすることで、副交感神経を刺激できます。「鼻から4秒吸って、口から8秒かけてゆっくり吐く」などを試してみましょう。
  • アロマテラピー:ラベンダーやカモミールなど、リラックス効果のある香りを活用するのも良い方法です。
  • ツボ押し:手のひらの中心にある「労宮(ろうきゅう)」や、手首の内側にある「内関(ないかん)」などを、気持ち良いと感じる強さで押してみましょう。

気分転換と休息

  • 意識的に休息時間をとる:忙しい中でも5分でもよいので、仕事や家事から離れてぼーっとする時間を作りましょう。
  • 趣味に没頭する:好きな音楽を聴く、映画を観る、本を読むなど、自分が心から楽しめる時間を持つことが大切です。
  • 自然に触れる:公園を散歩したり、森林浴をしたりするだけでも心身はリフレッシュされます。

サプリメントや健康食品の活用(補助的に)

食事で補いきれない栄養素を、サプリメントで補助的に摂ることも一つの方法です。ビタミンB群、GABA、テアニンなどが含まれたものが知られていますが、あくまで食事の補助と捉えましょう。利用する際は、かかりつけの医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

自律神経失調症はどれくらいで治る?治ったきっかけは?

多くの方が気になるのが「いつ治るのか」ということでしょう。

治療期間の目安

自律神経失調症が改善するまでの期間には、大きな個人差があります。症状の重さや原因、生活習慣などによって、数ヶ月で良くなる人もいれば、数年単位でゆっくり付き合っていく人もいます。大切なのは、焦らずに自分のペースで治療やセルフケアを続けることです。

回復を早めるポイント・治った人の共通点

回復した人には、いくつかの共通点が見られます。

  • 焦らない・完璧を目指さない:「早く治さなきゃ」という焦りが新たなストレスになります。「今日は昨日より少し楽かも」といった小さな変化を喜びましょう。
  • 自分を責めない:症状が出るのはあなたのせいではありません。「怠けている」などと自分を責めず、まずはしっかり休むことを自分に許可してあげてください。
  • 治ったきっかけは人それぞれ:治った人のきっかけとして、「ストレスの原因だった職場を離れた」「信頼できる医師に出会えた」「生活習慣を根本から見直した」など、様々な体験談が聞かれます。自分にとっての改善のきっかけを探すことが大切です。

再発予防のためにできること

症状が改善した後も、再発を防ぐために健康的な生活習慣を続けることが重要です。ストレスが溜まったと感じたら早めに休息をとる、無理をしすぎない、といったセルフマネジメントを心がけましょう。

病院受診の目安と専門家への相談

セルフケアは非常に重要ですが、専門家の助けが必要な場合もあります。

こんな時は医療機関へ

以下のような場合は、一人で抱え込まずに医療機関を受診しましょう。

  • セルフケアを1ヶ月以上続けても症状が改善しない、または悪化する
  • めまいや動悸がひどく、日常生活に支障が出ている
  • 気分の落ち込みが激しく、何もする気になれない
  • 「死にたい」と考えてしまうことがある(この場合は、すぐに精神科やいのちの電話などに相談してください)

病院や専門家の選び方

良い治療のためには、信頼できる専門家との出会いが不可欠です。

  • 話をじっくりと親身に聞いてくれる
  • 治療方針や薬について、分かりやすく説明してくれる
  • 質問しやすい雰囲気がある
  • 医師やカウンセラーとの相性が良いと感じる

いくつかの医療機関を訪ねてみて、自分が安心して相談できる場所を見つけるのも良いでしょう。


免責事項
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。身体の不調を感じた場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。また、この記事で紹介する治療法やセルフケアの効果には個人差があります。

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