うつ病の診断書はすぐもらえる?もらい方・期間・費用を解説

うつ病かもしれないと感じ、心身ともにつらい状況で「仕事を休みたい」「公的な支援を受けたい」と考えたとき、必要になるのが医師が発行する「診断書」です。
しかし、うつ病の診断書をどうやってもらえば良いのか、費用はいくらかかるのか、提出することにデメリットはないのか、多くの疑問や不安がつきまとうことでしょう。

この記事では、うつ病の診断書が必要になる具体的なケースから、もらい方の手順、費用、そして提出する際の注意点やデメリットまで、網羅的に解説します。
あなたが安心して適切な一歩を踏み出すための情報をお届けします。

うつ病の診断書とは?基本を解説

うつ病の診断書とは、医師が患者の病状を医学的に証明するための公的な書類です。
単に「うつ病である」と書かれているだけでなく、その状態や治療に必要な期間、日常生活や就労において配慮すべき点などが記載されています。

診断書の目的と役割

診断書の主な目的は、客観的な証拠として自らの状態を第三者に説明することです。

職場に休職を申し出る際や、公的な支援制度を利用する際に、口頭での説明だけでは信憑性が不十分な場合があります。
医師という専門家が作成した診断書を提出することで、あなたの申し出に医学的な根拠があることを示し、手続きを円滑に進めることができます。

診断書に記載される主な内容

診断書に記載される内容は、提出先や目的に応じて異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。

  • 患者情報: 氏名、生年月日、住所など
  • 病名: 「うつ病」「うつ状態」など、医師の診断に基づいた病名
  • 症状の経過と現在の状態: いつからどのような症状があり、現在どのような状態か
  • 治療内容: 投薬内容や精神療法など
  • 療養に関する指示: 「〇ヶ月間の自宅療養を要する」といった具体的な休養期間
  • 就労に関する意見: 「時間外労働の制限」「業務内容の軽減」など、復職を見据えた配慮事項
  • 発行日と医療機関情報: 診断書の発行日、病院名、医師名、捺印

提出先(会社や公的機関)が指定するフォーマットがある場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。

うつ病診断書が必要となる「主なケース」

うつ病の診断書は、主に以下のような場面で必要となります。

休職・欠勤・休学

仕事を一定期間休む「休職」や、学校を休む「休学」を申し出る際に、その理由を証明するために診断書の提出を求められることが一般的です。
就業規則や学校の規定で定められている場合がほとんどで、診断書があることで安心して療養に専念できます。

傷病手当金の申請

健康保険の被保険者が、病気やケガで連続して4日以上会社を休み、給与の支払いがない場合に受け取れるのが「傷病手当金」です。
この申請手続きには、医師が「労務不能」と認めたことを証明する診断書(意見書)が必須となります。

障害年金の申請

うつ病などの精神疾患によって、日常生活や仕事に著しい支障が出ている場合、「障害年金」を受給できる可能性があります。
この申請には、病状や生活状況を詳細に記した専用の診断書を医師に作成してもらう必要があります。

自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳の申請

  • 自立支援医療(精神通院医療): うつ病の治療にかかる医療費(診察代・薬代)の自己負担額を軽減できる制度です。申請には医師の診断書が必要です。
  • 精神障害者保健福祉手帳: 税金の控除や公共料金の割引など、様々な福祉サービスを受けるために必要な手帳です。申請には、初診日から6ヶ月以上経過した時点での診断書が必要となります。

医療費控除

年間の医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除「医療費控除」の申請自体に診断書は不要です。
しかし、通院のための交通費などを医療費として計上する際に、税務署から通院の事実を証明するよう求められた場合に、診断書が役立つことがあります。

うつ病診断書を「もらう病院」と「流れ」

うつ病の診断書は、医師の診断に基づいて発行されます。
ここでは、どこで、どのようにしてもらえば良いのかを解説します。

精神科・心療内科の選び方

うつ病の診断や治療は、精神科または心療内科が専門です。

診療科 主な対象
精神科 気分の落ち込み、不安、不眠、幻覚など、心の症状が中心の場合
心療内科 ストレスが原因で起こる頭痛、腹痛、動悸など、体の症状が中心の場合

どちらを受診すべきか迷う場合は、まずは予約の取りやすい方や通いやすい方を選んで相談してみましょう。
必要に応じて、適切な診療科を紹介してもらえます。

初診から診断書発行までの流れ

一般的に、診断書が発行されるまでの流れは以下の通りです。

  1. 病院の予約: まずは電話やインターネットで初診の予約を取ります。
  2. 初診(問診): 医師があなたの症状や生活状況について詳しくヒアリングします。これまでの経緯や現在のつらさを具体的に伝えましょう。
  3. 検査(必要に応じて): 心理検査や血液検査など、診断の補助となる検査を行うことがあります。
  4. 診断: 問診や検査の結果を総合的に判断し、医師が病名を診断します。うつ病と診断されるまでには、複数回の通院が必要になることが少なくありません。
  5. 診断書の発行依頼: 医師に診断書が必要な理由(休職のため、など)を伝え、発行を依頼します。
  6. 診断書の受け取り: 病院の窓口で受け取ります。発行には数日から1週間程度かかる場合があります。

注意点
原則として、初診当日に診断書が発行されるケースは稀です。医師が正確な診断を下すためには、症状の経過を継続的に観察する必要があるためです。

医師に症状を正確に伝えるコツ

診察時間は限られています。
自分の状態を正確に伝えるために、事前に準備をしておくとスムーズです。

  • 症状をメモにまとめる: いつから、どんな症状(気分の落ち込み、眠れない、食欲がない、疲れやすい、集中できない等)があるか、箇条書きでメモしておきましょう。
  • 日常生活への影響を伝える: 「仕事でミスが増えた」「朝起きられない」「趣味を楽しめなくなった」など、具体的なエピソードを伝えることで、症状の深刻さが伝わりやすくなります。
  • 正直に話す: 「こんなことを言ったら変に思われるかも」と気にする必要はありません。つらいと感じていることをありのままに話すことが、適切な診断への第一歩です。
  • 診断書が必要な理由と提出先を伝える: 「会社に休職を申請するため」「傷病手当金の申請のため」など、目的を明確に伝えましょう。

過去の診断書を「あとから発行」できる?

通院履歴があれば、過去の時点での診断書を後から発行してもらうことも可能な場合があります。
例えば、「1ヶ月前から休職していたが、会社に提出するために診断書が必要になった」といったケースです。

ただし、カルテの保存期間(法律で5年間)が過ぎていたり、当時の状態を正確に証明するのが難しいと医師が判断したりした場合は、発行できないこともあります。
まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。

うつ病診断書の「費用」と「発行期間」

診断書の発行には、健康保険が適用されないため自費での支払いとなります。

診断書にかかる費用相場

診断書の発行費用は医療機関によって異なりますが、一般的な相場は2,000円~5,000円程度です。
傷病手当金や障害年金の申請で使うような、複雑な内容の診断書の場合は、5,000円~10,000円程度かかることもあります。

事前に医療機関のホームページで確認するか、電話で問い合わせておくと安心です。

診断書発行にかかる期間

発行までにかかる期間も医療機関や内容によって様々です。

  • 簡易な診断書: 即日~数日
  • 複雑な診断書(年金用など): 1週間~2週間以上

提出期限がある場合は、余裕をもって医師に発行を依頼することが重要です。

うつ病診断書を「もらうデメリット」と「注意点」

診断書は療養や支援に繋がる大切な書類ですが、取得する前に知っておきたい注意点も存在します。

職場への影響(知られる範囲など)

診断書を職場に提出すると、上司や人事担当者など、手続きに関わる一部の人には病状を知られることになります。

ただし、プライバシー保護の観点から、診断書に記載された病名や詳細な症状を本人の同意なく他の従業員に漏らすことは禁じられています。

提出する診断書にどこまで記載してもらうか(例えば、病名を「うつ病」ではなく「抑うつ状態」としてもらうなど)は、医師と相談することも可能です。

病歴となることの影響

医療機関でうつ病と診断されると、その記録(カルテ)が残ります。
これが「病歴」となり、将来的に以下のような場面で影響が出る可能性がゼロではありません。

  • 生命保険や住宅ローンの加入: 新たに保険やローンを申し込む際、告知義務があります。病状によっては加入が難しくなったり、条件が付いたりする場合があります。

ただし、症状が回復し、治療が終了してから一定期間が経過すれば問題なく加入できるケースも多いため、過度に心配しすぎる必要はありません。

費用や受診の負担

前述の通り、診断書の発行には費用がかかります。
また、診断書をもらうためには定期的な通院が必要となり、時間的・金銭的な負担が生じます。

診断書を「嘘」で取得することの危険性

症状を偽って診断書を取得し、休職や手当金の不正受給をすることは、絶対にやめてください。

これは詐欺罪にあたる可能性のある犯罪行為です。
発覚した場合は、受け取った手当の返還はもちろん、懲戒解雇や法的な責任を問われる可能性があります。
また、本当に治療が必要な人の妨げにもなりかねません。

うつ病診断書の発行を「断られる」のはどんな時?

医師に依頼しても、診断書の発行を断られるケースもあります。

診断基準を満たさない場合

医師が診察した結果、国際的な診断基準(後述)に照らし合わせて、うつ病の診断に至らないと判断された場合です。
気分の落ち込みがあっても、それが病的なレベルではないと判断されると、診断書は発行されません。

受診回数や期間が不足している場合

特に初診時など、まだ十分な診察が行われておらず、医師が患者の状態を正確に把握できていない段階では、診断書の作成を保留されることがあります。
信頼関係を築き、継続的に通院することが重要です。

診断書の目的に疑義がある場合

休職を繰り返している、不自然な要求をするなど、診断書の利用目的に医師が疑問を持った場合、発行を慎重に判断することがあります。
医師との信頼関係が何よりも大切です。

うつ病の「診断基準」とは?

医師は、個人の経験や勘だけでうつ病を診断しているわけではありません。
世界保健機関(WHO)や米国精神医学会が作成した、国際的な診断基準が用いられます。

DSM-5/ICD-10に基づく基準

主に使われるのは以下の2つです。

  • DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版): 米国精神医学会が作成。
  • ICD-10(国際疾病分類第10版): WHOが作成。(現在はICD-11に移行中)

これらの基準には、「抑うつ気分」や「興味・喜びの喪失」といった中核症状に加え、睡眠障害、食欲の変化、疲労感、思考力・集中力の低下などの項目が定められており、一定数以上の項目が一定期間以上続く場合にうつ病と診断されます。

医師の総合的な判断の重要性

ただし、診断基準はあくまで診断のツールの一つです。
最終的には、チェックリストに当てはめるだけでなく、患者さん一人ひとりの話を聞き、表情や様子を観察し、各種検査結果なども含めて総合的に判断する医師の専門的な知見が最も重要となります。

うつ病診断書に関する「よくある質問」

最後に、うつ病の診断書についてよく寄せられる質問にお答えします。

Q. セルフチェックで診断書はもらえますか?

A. もらえません。
インターネット上のセルフチェックは、あくまで受診のきっかけや目安とするためのものです。
診断書は、医師の診察に基づいてのみ発行されます。
セルフチェックでうつ病の可能性が高いと出た場合は、専門の医療機関を受診してください。

Q. 診断書なしで利用できる支援はありますか?

A. あります。
お住まいの自治体やNPO法人が運営する相談窓口、電話相談サービス(「こころの健康相談統一ダイヤル」など)は、診断書なしで誰でも無料で利用できます。
まずは話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。

Q. 診断書の内容は会社にどこまで伝わる?

A. 提出した範囲で伝わりますが、プライバシーは保護されます。
診断書に書かれている内容(病名、必要な休養期間、就労上の配慮など)は、人事担当者などに伝わります。
しかし、その情報を本人の許可なく他の従業員に共有することはプライバシーの侵害にあたります。
どこまで情報を開示するか不安な場合は、提出前に医師に相談しましょう。

Q. 診断書提出後の流れは?

A. 主に会社の人事担当者や上司と面談を行います。
診断書を提出した後、休職期間や休職中の連絡方法、復職に向けた今後の流れなどについて具体的な話し合いが行われます。
休職中は、傷病手当金の申請手続きなどを並行して進めることになります。
まずはゆっくりと療養に専念することが最優先です。


免責事項
本記事は、うつ病の診断書に関する一般的な情報を提供するものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。
心身の不調を感じる場合は、必ず専門の医療機関を受診してください。
また、各種制度の利用にあたっては、必ず管轄の窓口にご確認ください。

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