ADHDあるある|「これ私だ!」と共感する日常の困りごと

「もしかして自分、ADHDかも?」と思ったことはありませんか?
忘れ物が多かったり、つい思ったことを口にしてしまったり…。
そんな、ADHD(注意欠如・多動症)の方によく見られる「あるある」な経験は、多くの人が共感できるものかもしれません。

この記事では、大人のADHDに特有の「あるある」な特徴や困りごとを、不注意・多動性・衝動性といった特性ごとに詳しく解説します。
さらに、女性・男性での現れ方の違いや、ご自身の傾向を手軽に確認できるチェックリストもご紹介します。

あなたやあなたの周りの人が抱える「あるある」の背景を理解し、より良い毎日を送るためのヒントを見つけてみましょう。

大人のADHDにあるあるな特徴とは?

大人のADHDの特性は、主に「不注意」と「多動性・衝動性」の2つに分けられます。
どちらの特性が強く出るか、あるいは両方が混在するかは人それぞれです。
ここでは、それぞれの特性に関する「あるある」なエピソードを見ていきましょう。

不注意に関するあるある

不注意特性が強い場合、日常生活や仕事で「うっかり」が頻発することがあります。

  • 物をどこに置いたか忘れる: 「スマホはどこ?」「鍵がない!」と、毎日探し物をしている。
    冷蔵庫に財布を入れてしまった、なんてことも。
  • 約束やタスクを忘れる: 大事な会議の予定をすっかり忘れていたり、友人との約束をすっぽかしてしまったりする。
  • 話の途中で意識が飛ぶ: 会議中や人との会話中に、他の考えが浮かんで話の内容が頭に入ってこない。
    相槌は打っているものの、後から「何の話だっけ?」となる。
  • 単純なミスが多い: 書類の誤字脱字、計算間違いなど、注意すれば防げるはずのケアレスミスを繰り返してしまう。
  • 片付けが極端に苦手: 部屋が散らかっている状態が当たり前。
    どこから手をつけていいかわからず、掃除を始めても途中で他のことに気を取られてしまう。

多動性・衝動性に関するあるある

多動性・衝動性特性が強いと、じっとしていることや、行動をコントロールすることが難しくなります。

  • じっとしていられない: 会議中や映画館で貧乏ゆすりをしたり、ペンを回したり、そわそわと落ち着きがない。
  • 思ったことをすぐ口にする: 会議で人の発言を遮って意見を言ったり、相手が傷つくかもしれない一言をポロッと口にしてしまったりする。
  • 衝動買いをしてしまう: 必要ないものまで「欲しい!」と思ったら我慢できずに買ってしまう。
    後から後悔することも多い。
  • おしゃべりが止まらない: 話し始めると夢中になり、相手が退屈していることに気づかず一方的に話し続けてしまうことがある。
  • 順番待ちが苦手: レジの行列や渋滞など、待つことが苦痛でイライラしてしまう。

タイプ別ADHDのあるある

ADHDは、特性の現れ方によって主に3つのタイプに分類されます。
ご自身の「あるある」がどのタイプに近いか見てみましょう。

不注意優勢型のあるある

このタイプは、多動・衝動性はあまり目立たず、不注意の特性が強く現れます。
おとなしく、ぼーっとしているように見えることが多いため、特に女性や学童期に見過ごされやすい傾向があります。

  • 物事を先延ばしにする癖がすごい。
  • 忘れ物や失くしものが日常茶飯事。
  • 仕事や作業の段取りを考えるのが苦手。
  • 集中力が続かず、外部の刺激ですぐに注意が逸れる。
  • 「夢見がち」「天然」と言われることが多い。

多動性・衝動性優勢型のあるある

不注意は目立たず、多動性や衝動性の特性が前面に出るタイプです。
子どもの頃、特に男の子に多く見られるとされていますが、大人になっても特性が続く場合があります。

  • 常に体を動かしていないと落ち着かない。
  • 貧乏ゆすりや指で机を叩く癖がある。
  • 人の話を最後まで聞く前に話し始めてしまう。
  • 感情の起伏が激しく、カッとなりやすい。
  • リスクを考えずに行動してしまうことがある。

混合型のあるある

不注意と多動性・衝動性の両方の特性を併せ持つタイプです。
大人のADHDではこのタイプが最も多いとされています。

  • 片付けが苦手で部屋は散らかっているのに、じっとしているのも苦手で常に何かしている。
  • 重要なタスクを先延ばしにしているのに、衝動的に始めた趣味には没頭する。
  • 会議では上の空かと思いきや、突然核心をつく発言をして周りを驚かせる。
  • 状況によって「不注意」と「多動・衝動性」のどちらが強く出るかが変わる。

ADHDのあるある具体的な困りごと【生活・仕事・人間関係】

ADHDの特性は、具体的な生活シーンでさまざまな「困りごと」として現れることがあります。

日常生活のあるあるな困りごと

  • 金銭管理が苦手: 衝動買いやお金の計算ミスが多く、気づいたらお財布が空っぽになっている。
    公共料金の支払いを忘れがち。
  • 時間の管理ができない: 遅刻の常習犯。
    約束の時間に間に合うように逆算して行動するのが難しい。
  • 健康管理が疎かになる: 食事や睡眠が不規則になりがち。
    面倒で歯医者や病院の予約を先延ばしにしてしまう。
  • 家事が回らない: 掃除、洗濯、料理など、複数の工程がある家事を順序立ててこなすのが苦手で、家の中が混乱しがち。

仕事や学業でのあるあるな困りごと

  • 納期を守れない: タスクの優先順位付けや時間配分がうまくいかず、締め切り直前になって焦る、あるいは間に合わない。
  • マルチタスクができない: 複数の仕事を同時に頼まれるとパニックになり、どれも中途半端になってしまう。
  • 集中力が続かない: オフィスなど周りに刺激が多い環境だと、自分の仕事に集中するのが難しい。
  • コミュニケーションでの失敗: 会議で空気が読めない発言をしたり、上司や同僚への報告・連絡・相談を忘れたりする。

人間関係でのあるあるな困りごと

  • 失言で人を傷つける: 思ったことをフィルターを通さずに言ってしまうため、悪気なく相手を怒らせたり、傷つけたりすることがある。
  • 約束を破って信頼を失う: 予定を忘れたり、ダブルブッキングしたりして、友人や恋人との関係が悪化することがある。
  • 感情のコントロールが難しい: ささいなことでカッとなったり、急に落ち込んだりして、周りを困惑させてしまう。
  • 人の話を聞けない: 相手が話している最中に自分の話したいことが浮かぶと、話を遮ってしまいがち。

ADHDあるある:性別による違い(女性・男性)

ADHDの特性の現れ方には、性別による傾向の違いが見られることがあります。
これは、社会的に期待される役割やホルモンの影響などが関係していると考えられています。

女性によく見られるあるある

女性のADHDは、不注意が目立つ一方で多動性が内面化しやすく、「見過ごされやすい」のが特徴です。

  • 内面的な多動(頭の中が常に忙しい): 常に複数の考えが頭の中を駆け巡り、心配事やアイデアでいっぱい。
  • 過剰適応: 周囲に合わせて「ちゃんとしなきゃ」と無理をしすぎて、人知れず疲れ果てている。
  • おしゃべり: 次から次へ話題が飛ぶマシンガントークになりがち。
  • 感情の波が激しい: ささいなことで傷ついたり、感情的になったりする。
    PMS(月経前症候群)の症状が重い人も多い。
  • 片付けられない: 家事や育児など、マルチタスクを求められる場面で混乱しやすい。

男性によく見られるあるある

男性のADHDは、子どもの頃から多動・衝動性が目立ちやすく、「問題行動」として認識されやすい傾向があります。

  • 目に見える多動性: 落ち着きがなく、体を動かしていないと気が済まない。
  • カッとなりやすい: 衝動的に怒りを爆発させてしまうことがある。
  • リスクを恐れない行動: 危険な運転をしたり、ギャンブルにのめり込んだりすることがある。
  • 依存症との関連: アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症に繋がりやすい傾向がある。
  • 仕事が続かない: 衝動的に退職したり、人間関係のトラブルで職場を転々としたりすることがある。

ADHDあるあるをチェックしてみよう【診断ではない】

ここまで読んで、「自分にも当てはまるかも」と感じた方もいるかもしれません。
以下のチェックリストは、ADHDの傾向を簡易的に確認するためのものです。

【重要】これは医学的な診断ではありません。あくまで自己理解を深めるための参考としてご活用ください。

ADHDの傾向があるかチェックリストで確認

過去6ヶ月間で、以下のことがどのくらいの頻度でありましたか?
「全くない(0点)」「まれに(1点)」「時々(2点)」「頻繁に(3点)」「非常に頻繁に(4点)」で点数をつけてみましょう。

パートA:不注意

  • 1. 仕事や活動で、不注意な間違いをよくする。
  • 2. 課題や遊びの活動中に、注意を持続させることが難しい。
  • 3. 直接話しかけられているのに、聞いていないように見えることがある。
  • 4. 指示に従えず、学業や仕事をやり遂げられない。
  • 5. 課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
  • 6. 精神的な努力の持続が必要な課題(書類仕事など)を避ける、または嫌々行う。
  • 7. 課題や活動に必要なものをよく失くす(例:おもちゃ、書類、鉛筆、本、道具)。
  • 8. 外部からの刺激によって、すぐに注意が逸れてしまう。
  • 9. 日々の活動(例:約束を守る、電話をかけ直す)で忘れっぽい。

パートB:多動性・衝動性

  • 1. 手足をそわそわ動かしたり、席でもじもじしたりする。
  • 2. 座っているべき教室や職場の場面で、席を離れてしまう。
  • 3. 落ち着かない感じがする。
  • 4. 静かに遊んだり、余暇活動につくことができない。
  • 5. じっとしていられず、まるで「エンジンで動かされているように」行動する。
  • 6. しゃべりすぎる。
  • 7. 質問が終わる前に、出し抜いて答えてしまう。
  • 8. 順番を待つことが難しい。
  • 9. 他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする(例:会話やゲームに割り込む)。

考え方のヒント
パートA、パートBのそれぞれで、太字で示された項目(パートAの最初の6項目、パートBの最初の4項目)の中で4つ以上に「時々」以上(2点以上)がつく場合、その特性の傾向が強い可能性があります。

※このチェックリストは、世界保健機関(WHO)が作成したASRS-v1.1スクリーナーを参考に、一般向けに分かりやすくしたものです。
正確な評価には専門家の判断が必要です。

ADHDかもしれないと思ったら

チェックリストで多くの項目に当てはまったり、日々の困りごとが深刻で「生きづらさ」を感じたりしているなら、一人で抱え込まずに専門家へ相談することを検討してみましょう。

  • 専門の医療機関: 精神科や心療内科の中には、大人の発達障害を専門にしているクリニックがあります。
    ウェブサイトなどで確認して受診するのが良いでしょう。
  • 公的な相談窓口: 各都道府県や指定都市に設置されている「発達障害者支援センター」では、本人や家族からの相談に応じており、情報提供や助言を行っています。

診断を受けることで、自分の特性を客観的に理解し、適切な対処法やサポート(薬物療法、カウンセリング、環境調整など)に繋がることができます。
また、職場などで「合理的配慮」を求める際にも役立ちます。

ADHDの「あるある」は、決してあなたの怠慢や努力不足が原因ではありません。
それは脳の機能的な特性によるものです。
特性を正しく理解し、自分に合った工夫やサポートを見つけることが、困りごとを減らし、あなたらしく生きるための第一歩となるはずです。


免責事項
本記事は、ADHDに関する情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
心身の不調や発達に関するお悩みについては、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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