メトトレキサートは、主に免疫の働きを調整することで、関節リウマチをはじめとする炎症性疾患の治療に用いられる医薬品です。体内の細胞が増殖するプロセスに関わる「葉酸」の働きを抑えることで効果を発揮しますが、これによって様々な効果と同時に注意すべき副作用も存在します。この薬剤について正しく理解することは、治療を安全かつ効果的に進める上で非常に重要です。この記事では、メトトレキサートの効果、作用機序、正しい服用方法、注意すべき副作用や禁忌、そしてよくある疑問について、医療情報に基づき分かりやすく解説します。

効果・効能：どんな病気に使われる？

メトトレキサートは、自己免疫疾患や炎症性疾患など、体の免疫システムが関与する様々な病気に対して効果を発揮します。主な適応疾患は以下の通りです。

関節リウマチへの効果

関節リウマチは、自己の免疫が関節を攻撃し、炎症や破壊を引き起こす自己免疫疾患です。メトトレキサートは、関節リウマチ治療において最も重要な薬剤（アンカー・ドラッグ）の一つとされており、多くの患者さんで第一選択薬として使用されます。

メトトレキサートが関節リウマチに効果があるのは、主に以下の作用によるものです。

• 炎症の抑制: 関節の炎症を引き起こす免疫細胞の働きを抑えます。これにより、関節の腫れや痛み、こわばりといった症状を軽減します。
• 病気の進行抑制: 骨や軟骨の破壊は、関節リウマチの進行に伴って起こる重要な問題です。メトトレキサートは、これらの組織を破壊する細胞の活動を抑え、病気の進行を遅らせる効果が証明されています。
• 全身症状の改善: 関節リウマチは関節だけでなく、全身に様々な症状（疲労感、微熱など）を引き起こすことがありますが、メトトレキサートはこれらの全身症状の改善にも寄与します。

メトトレキサートは、症状を一時的に抑えるだけでなく、病気自体の活動性を抑え、長期的に関節機能を維持するために非常に有効な薬剤です。

その他の適応疾患（乾癬など）

関節リウマチ以外にも、メトトレキサートは様々な炎症性疾患に使用されます。

• 乾癬（かんせん）: 皮膚の細胞が異常に増殖し、赤みやかゆみ、鱗屑（うろこ状の皮膚のかけら）を伴う斑点ができる慢性の皮膚疾患です。メトトレキサートは、皮膚細胞の過剰な増殖を抑え、炎症を鎮めることで症状を改善します。尋常性乾癬、関節症性乾癬などに使用されます。
• 乾癬性関節炎: 乾癬に合併して関節に炎症が起こる病気です。関節リウマチと同様に、関節の炎症や破壊を抑制する目的で使用されます。
• その他: 適応外使用となる場合もありますが、重症のクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患、血管炎などの膠原病の一部にも、他の治療法で効果が不十分な場合などに使用されることがあります。

これらの疾患においても、メトトレキサートは免疫系の異常な働きを調整することで、炎症や病気の進行を抑える効果が期待されます。

作用機序：なぜ効果があるのか

メトトレキサートの作用機序は、主に葉酸（ビタミンB9）の代謝を阻害することに基づいています。これは、細胞が増殖するために必要なDNAやRNAの合成に葉酸が重要な役割を果たしているからです。

葉酸代謝への影響

メトトレキサートは、体内で葉酸が活性型となるために必要な酵素「ジヒドロ葉酸還元酵素（DHFR）」の働きを強く阻害します。これにより、葉酸の利用が制限され、細胞の増殖に必要な核酸（DNAやRNA）の合成が妨げられます。

この作用は、細胞分裂が活発な細胞ほど強く影響を受けます。関節リウマチや乾癬のような病気では、炎症に関わる免疫細胞や皮膚細胞が異常に増殖しています。メトトレキサートは、これらの細胞の増殖を抑えることで、過剰な免疫反応や炎症を鎮める効果を発揮するのです。

また、メトトレキサートには、アデノシンという物質の放出を促進する作用も知られており、このアデノシンが抗炎症作用を持つことも、メトトレキサートの治療効果に一部寄与していると考えられています。

このように、メトトレキサートは葉酸代謝阻害を主な機序として、細胞の増殖抑制と抗炎症作用をもたらし、様々な自己免疫疾患や炎症性疾患の症状を改善・抑制します。

用法・用量と服用時の注意点

メトトレキサートは、その効果を最大限に引き出しつつ、副作用のリスクを最小限に抑えるために、厳格な用法・用量が定められています。特に重要なのが「週1回投与」という点です。

標準的な飲み方・投与頻度（週1回）

関節リウマチや乾癬の治療において、メトトレキサートは通常、週に1回、決められた総量をまとめて服用または注射します。
例えば、「1週間のうちの同じ曜日（例: 毎週水曜日）に、朝食後に〇錠をまとめて飲む」というような指示がされます。

• なぜ週1回なのか？
  メトトレキサートは、前述のように葉酸代謝を阻害することで効果を発揮しますが、この作用は正常な細胞の活動にも影響を及ぼします。毎日服用すると、骨髄細胞（血液を作る細胞）や消化管の細胞など、正常な細胞の回転が速い組織にも強いダメージを与え、重篤な副作用のリスクが飛躍的に高まります。週1回という投与間隔は、炎症に関わる細胞に十分な効果を発揮させつつ、正常な細胞がある程度回復する時間を与えるために設定されています。
• 投与量
  開始量は患者さんの状態や疾患によって異なりますが、通常は少量（例えば週6mgや8mg）から開始し、効果や副作用を見ながら徐々に増量されることがあります。日本では、関節リウマチの場合、最大投与量は週16mgと定められています（注射剤の場合は一部異なる場合あり）。

指定された曜日、時間、量を守って服用することが、安全かつ効果的な治療のために最も重要です。自己判断で量や回数を変更することは絶対に避けてください。

葉酸（フォリアミン）との併用について

メトトレキサートの治療では、副作用を軽減する目的で、ほぼ必ず「葉酸製剤（例: フォリアミン錠）」が併用されます。

• なぜ葉酸を飲むのか？
  メトトレキサートは病気の原因となる異常な細胞の増殖を抑える一方で、正常な細胞（特に回転が速い細胞）にも影響を与え、口内炎、吐き気、下痢、肝機能障害、骨髄抑制（白血球や血小板の減少など）といった副作用を引き起こす可能性があります。これらの副作用は、メトトレキサートによる葉酸不足が原因の一つと考えられています。葉酸製剤を補充することで、メトトレキサートの病気に対する効果を大きく損なうことなく、正常な細胞へのダメージを軽減し、副作用の発現を抑えることができます。
• 葉酸の飲むタイミング
  葉酸製剤は、メトトレキサートを服用する日とは別の曜日に服用するのが一般的です。例えば、メトトレキサートを水曜日に服用する場合、葉酸製剤は木曜日や金曜日に服用するように指示されます。これは、メトトレキサートの効果を邪魔しないようにするためです。葉酸の服用方法やタイミングについても、必ず医師または薬剤師の指示に従ってください。

葉酸製剤の併用は、メトトレキサート治療を安全に継続するために非常に重要です。自己判断で葉酸製剤を中断したり、服用し忘れたりしないようにしましょう。

服用期間中の注意すべき生活習慣（飲酒、感染症）

メトトレキサート服用中は、いくつかの生活習慣上の注意点があります。

• 飲酒: メトトレキサートは肝臓に負担をかけることがあるため、飲酒は控えるべきです。特に大量の飲酒や継続的な飲酒は、肝機能障害のリスクを著しく高めます。アルコールの摂取量については、必ず主治医に相談してください。
• 感染症: メトトレキサートは免疫の働きを抑えるため、感染症にかかりやすくなったり、かかった場合に重症化したりするリスクがあります。手洗いやうがい、マスク着用などの基本的な感染予防策を徹底することが重要です。また、風邪や発熱、咳などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、メトトレキサートを服用中であることを必ず伝えてください。生ワクチンの接種は通常避けるべきですが、不活化ワクチンや組み換えワクチンについては接種が推奨される場合もありますので、医師に相談しましょう。
• 喫煙: 喫煙は、メトトレキサートの副作用である間質性肺炎のリスクを高める可能性があるため、禁煙することが強く推奨されます。
• 妊娠・授乳: 後述しますが、メトトレキサートは妊娠中・授乳中は絶対禁忌です。妊娠の可能性がある期間は避妊を徹底し、妊娠を希望する場合は事前に医師と相談し、十分な期間（男女ともに）休薬する必要があります。

これらの注意点を守ることは、メトトレキサート治療を安全に続けるために非常に重要です。不明な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。

副作用とリスク：「やばい」と言われる理由は？

メトトレキサートは効果的な薬剤ですが、その作用機序から様々な副作用のリスクも伴います。「やばい」といった表現でインターネットなどで検索されることがあるのは、主に以下の副作用が原因と考えられます。しかし、これらのリスクを正しく理解し、適切な対策やモニタリングを行うことで、多くの場合は安全に管理できます。

発生しやすい代表的な副作用

メトトレキサートで比較的よく見られる副作用には以下のようなものがあります。多くは軽度ですが、症状が出た場合は医師に相談が必要です。

• 消化器症状: 口内炎、吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振など。葉酸製剤の併用で軽減されることが多い副作用です。
• 肝機能障害: 肝臓の数値（AST, ALTなど）の上昇。定期的な採血検査でチェックし、異常が見られれば減量や休薬が行われます。
• 骨髄抑制: 白血球、赤血球、血小板といった血液細胞の減少。特に白血球が減ると感染症にかかりやすくなります。これも定期的な採血検査で監視されます。重症化すると命に関わることもあります（後述）。
• 脱毛: 髪の毛が薄くなることがあります。他の抗がん剤治療で見られるような重度の脱毛は稀ですが、個人差があります。
• 倦怠感: 疲労感やだるさを感じることがあります。

これらの副作用は、葉酸製剤を併用し、定期的な検査で早期に発見・対処することで、多くの場合コントロール可能です。

特に注意すべき重大な副作用

メトトレキサートで最も注意が必要な、頻度は低いものの重篤化する可能性のある副作用は以下の通りです。これらの副作用は、早期発見と迅速な対応が非常に重要です。

• 間質性肺炎: 肺の組織に炎症が起こり、酸素を取り込みにくくなる病気です。初期症状としては、息切れ、空咳、発熱などがあります。メトトレキサート服用中にこれらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、薬剤師や医師に相談する必要があります。喫煙者や高齢者でリスクが高いとされます。
• 骨髄抑制（重症化）: 白血球や血小板などの減少が重度に進行すると、重篤な感染症や出血のリスクが高まります。定期的な血液検査は、これを早期に発見するために不可欠です。
• 重い感染症: 免疫力が低下することで、普段なら重症化しないような感染症（肺炎、敗血症、日和見感染など）が重症化するリスクがあります。発熱が続く、体調が著しく悪いなどの場合は注意が必要です。
• 肝機能障害（重症化）: 肝臓の数値が著しく悪化したり、肝不全に至るリスクもゼロではありません。継続的な肝機能のモニタリングが重要です。
• 腎機能障害: 腎臓から排泄される薬のため、腎機能が低下していると薬が体に蓄積しやすくなり、副作用のリスクが高まります。投与量を調整したり、腎機能障害がある場合は禁忌となったりします。
• 消化管障害: 口内炎や下痢が重症化したり、消化管に出血や潰瘍ができたりする可能性があります。

これらの重大な副作用のリスクがあることが、「メトトレキサートはやばい」と感じさせる理由の一つかもしれません。しかし、これらのリスクを把握し、定期的な診察や検査をきちんと受けることで、多くの場合は安全に治療を続けられます。

副作用への対策と対処法（葉酸の役割）

メトトレキサートの副作用を管理し、安全に治療を続けるためには、以下の対策が重要です。

• 定期的な診察と検査: 医師の指示通りに定期的な血液検査、肝機能検査、腎機能検査、胸部レントゲン検査などを受けることが最も重要です。これらの検査によって、副作用の兆候を早期に発見できます。
• 葉酸製剤の併用: 前述の通り、葉酸製剤（フォリアミンなど）を適切に併用することで、口内炎や吐き気、骨髄抑制などの副作用を軽減できます。医師の指示された量とタイミングを守って服用しましょう。
• 症状が現れたらすぐに連絡: 服用中にいつもと違う症状（特に息切れ、空咳、発熱、ひどい吐き気や下痢、口内炎、体のあざができやすい、出血が止まりにくいなど）が現れた場合は、次回の診察を待たずに、速やかに主治医または薬剤師に連絡してください。
• 生活習慣の改善: 禁煙、節酒、十分な休養、バランスの取れた食事など、健康的な生活を送ることも副作用リスクの軽減につながります。
• 感染予防: 手洗い、うがい、人混みを避けるなどの感染予防策を徹底しましょう。

メトトレキサート治療は、効果とリスクのバランスを取りながら行われます。医師は患者さんの状態を総合的に評価し、最適な用量と対策を検討しています。不安な点は医師や薬剤師に遠慮なく質問し、治療について十分理解した上で臨むことが大切です。

禁忌事項：服用してはいけないケース

メトトレキサートは、特定の状態にある患者さんや、特定の薬剤を服用している患者さんには使用できません。これを「禁忌」と言います。禁忌事項を守らないと、重篤な健康被害を引き起こす可能性が高まります。

妊娠・授乳中の絶対禁忌とその理由

妊娠中および授乳中の女性は、メトトレキサートの服用は絶対禁忌です。

• 理由: メトトレキサートは細胞の増殖を抑える作用が強いため、胎児の細胞分裂や成長に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。催奇形性（赤ちゃんの奇形を引き起こす性質）が非常に高く、流産や先天異常のリスクが大幅に上昇します。また、母乳中に移行するため、授乳中の赤ちゃんにも有害な影響を与える可能性があります。
• 避妊と休薬期間: 妊娠を希望する女性、およびパートナーが妊娠する可能性のある男性も、メトトレキサート治療中は適切な避妊を行う必要があります。妊娠を計画する際には、治療を終了し、男女ともに個人差はありますが、通常は服用中止後、数ヶ月間（例: 3ヶ月以上）十分に期間を空けてから妊娠を試みる必要があります。具体的な休薬期間については、必ず主治医と慎重に相談してください。

妊娠の可能性が少しでもある場合は、安易な服用は絶対に避け、必ず医師に相談しましょう。

特定の疾患がある場合の禁忌

以下のような特定の疾患や状態がある場合も、メトトレキサートは禁忌または慎重投与となります。

• 重度の肝機能障害: メトトレキサートは肝臓で代謝されたり、肝臓に負担をかけたりするため、肝機能が著しく低下している場合は薬が体内に蓄積しやすく、重篤な副作用（肝不全など）のリスクが高まります。
• 重度の腎機能障害: メトトレキサートは主に腎臓から排泄されます。腎機能が著しく低下していると薬が体内に蓄積しやすくなり、毒性が増強されるため禁忌となります。
• 骨髄機能障害: 骨髄の働きが悪く、すでに白血球、赤血球、血小板などが減少している状態では、メトトレキサートによる骨髄抑制が重症化し、命に関わるリスクが高まります。
• 活動性感染症: 体のどこかに強い感染症がある状態（例: 肺炎、敗血症など）でメトトレキサートを使用すると、免疫抑制作用により感染症がさらに悪化し、重篤化するリスクが非常に高まります。
• 活動性消化性潰瘍または潰瘍性大腸炎: 消化管に出血や潰瘍がある場合、メトトレキサートがこれらを悪化させる可能性があります。
• 肺疾患: 特に間質性肺炎の既往がある場合や、活動性の肺疾患がある場合は、メトトレキサートによる間質性肺炎のリスクが高まるため禁忌となることがあります。
• アルコール中毒: アルコールは肝臓に負担をかけるため、アルコール中毒の患者さんでは肝機能障害のリスクが著しく高まります。

これらの他にも、患者さんの全身状態や併存疾患によっては禁忌や慎重な投与が必要となる場合があります。ご自身の既往歴や現在の健康状態について、正確に医師に伝えることが非常に重要です。

なぜメトトレキサートは禁忌があるのか

メトトレキサートの禁忌事項は、主にその作用機序（細胞増殖抑制、免疫抑制、葉酸代謝阻害）と、薬が体内で代謝・排泄される経路（主に肝臓、腎臓）に関連しています。

例えば、肝臓や腎臓の機能が低下していると、薬がスムーズに体外へ排泄されず、血液中の濃度が高くなりすぎてしまい、毒性が強く出てしまう可能性があります。骨髄機能が低下している状態では、メトトレキサートの骨髄抑制作用によって、さらに血液細胞が減少し、重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。

また、免疫抑制作用があるため、すでに活動性の感染症がある場合は、病原体と戦う体の力が弱まり、感染症が制御不能になる危険性があります。

これらの禁忌事項は、メトトレキサートの治療によって得られるメリットよりも、患者さんの生命や健康に対するリスクがはるかに高くなる状況を示すものです。医師は、患者さんにメトトレキサートを処方する前に、これらの禁忌事項に該当しないか、慎重に確認を行います。患者さん自身も、自身の健康状態について正確な情報を医師に伝えることが、安全な治療を受けるための第一歩となります。

商品名と剤形（錠剤、注射剤など）

メトトレキサートは、様々な製薬会社から製造・販売されており、いくつかの商品名と剤形があります。

代表的な商品名（リウマトレックス、メトジェクトなど）

日本の医療現場でよく使用されるメトトレキサートの商品名には、以下のようなものがあります。

• リウマトレックス®カプセル/錠: 最も古くから関節リウマチ治療に使われている錠剤・カプセル製剤です。多くの場合、関節リウマチ治療の第一選択薬として使用されます。
• メトレート®カプセル/錠: リウマトレックスのジェネリック医薬品（後発医薬品）です。有効成分は同じメトトレキサートであり、効果や安全性に大きな違いはありませんが、薬価が安いというメリットがあります。
• メトジェクト®皮下注: メトトレキサートの注射剤（自己注射キット）です。2022年に発売され、主に自己注射が可能な患者さんに使用されます。錠剤やカプセルを複数個服用するのが難しい場合や、消化器系の副作用が強い場合などに選択されることがあります。

これらの薬剤は、いずれも有効成分はメトトレキサートですが、商品名や剤形、含まれている量などが異なります。医師は患者さんの状態や希望に応じて、最適な薬剤を選択します。

注射剤の特徴

メトジェクト®などの注射剤は、主に皮下注射で週1回投与されます。自己注射が可能になれば、通院回数を減らせるというメリットがあります。

• 自己注射のメリット: 通院の負担軽減、時間や場所を選ばずに投与できる。
• 自己注射の注意点: 正しい手技の習得が必要、注射部位の反応（痛み、赤み、腫れなど）が出る可能性、使用済みの注射器の適切な廃棄方法。

注射剤は、錠剤・カプセルと比べて体内への吸収率が安定していることや、消化管を通らないため消化器系の副作用（吐き気、口内炎など）が軽減される可能性があるといった特徴もあります。ただし、注射が苦手な患者さんには不向きな場合があります。

どの剤形を選択するかは、疾患の状態、患者さんの年齢、併存疾患、生活スタイル、薬剤に対する好みなどを総合的に考慮し、医師と患者さんが話し合って決定します。

添付文書の確認方法と重要性

医薬品には、その薬の全てに関する情報が記載された「添付文書」が必ずついています。メトトレキサートにおいても、添付文書は非常に重要な情報源です。

• 添付文書とは: 薬の有効成分、効能・効果、用法・用量、使用上の注意（副作用、禁忌、相互作用など）、薬の性質、保管方法などが詳細に記載されています。製薬会社が作成し、厚生労働省の承認を得た公的な文書です。
• 確認方法: 添付文書は、通常、薬剤の箱の中に入っています。また、インターネット上でも確認できます。
  • 医薬品医療機器総合機構（PMDA）のウェブサイトにある「医療用医薬品情報検索」で、薬の商品名や一般名（メトトレキサート）を入力して検索すると、最新の添付文書を閲覧できます。
  • 各製薬会社のウェブサイトでも公開されている場合があります。
• 添付文書の重要性:
  • 正確な情報源: 添付文書は、薬に関する最も正確で最新の情報を提供しています。インターネット上の情報には誤りや古い情報が含まれている可能性もあるため、信頼できる情報源として添付文書を活用することが重要です。
  • 副作用・禁忌の確認: どのような副作用が起こりうるのか、どのような場合に薬を使用してはいけないのか（禁忌）、どのような薬と一緒に飲んではいけないのか（相互作用）などが詳しく記載されています。患者さん自身がこれらの情報を確認することで、リスクを理解し、注意すべき点を知ることができます。
  • 医師・薬剤師との情報共有: 添付文書の内容について不明な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に質問しましょう。専門家からより詳しい説明を受けることで、薬に対する理解が深まります。

ただし、添付文書は専門家向けに書かれている部分もあり、全てを患者さん自身が完全に理解するのは難しい場合もあります。最も重要なのは、添付文書の情報も参考にしながら、必ず医師や薬剤師から直接説明を受け、不明な点を解消することです。自己判断で添付文書を読んで薬の使い方を変更したり、服用を中止したりすることは絶対に避けてください。

よくある疑問（Q&A形式）

メトトレキサート治療を受けている方や、これから治療を開始する方がよく抱く疑問とその回答をQ&A形式でまとめました。

メトトレキサートを服用すると太る？

Q: メトトレキサートを飲み始めてから体重が増えたような気がします。メトトレキサートで太ることはありますか？

A: メトトレキサート自体に、直接的に体重を増やす作用は基本的にありません。 関節リウマチなどの炎症性疾患では、病気の活動性が高い時期は食欲不振や体の消耗によって体重が減少することがあります。メトトレキサートによって病気の炎症が抑えられ、体調が改善すると、食欲が回復して体重が元に戻ったり、少し増えたりすることは考えられます。

また、関節リウマチの治療では、メトトレキサートと並行してステロイド剤が使用されることがよくあります。ステロイド剤には、食欲増進や体液貯留、脂肪のつき方の変化（中心性肥満など）によって体重が増加しやすいという副作用があります。 もし、メトトレキサートと一緒にステロイドを服用している場合は、ステロイドの影響で体重が増加している可能性が高いです。

体重の変化が気になる場合は、自己判断せず、医師に相談してください。体重増加の原因を特定し、必要に応じて食事や運動に関するアドバイス、あるいは薬剤の調整が行われることがあります。

個人輸入は安全？医師の処方が必要な理由

Q: インターネットでメトトレキサートが安く販売されているのを見ました。個人輸入はしても大丈夫ですか？

A: メトトレキサートをインターネットなどで個人輸入して使用することは、非常に危険であり、絶対におすすめできません。

• 偽造薬・品質の保証なし: 個人輸入で入手できる医薬品の中には、有効成分が全く含まれていない、量が全く違う、不純物が混入している、または全く別の有害な物質が含まれているといった偽造薬が多く存在します。品質管理がされておらず、効果がないだけでなく、健康被害を引き起こすリスクが非常に高いです。
• 用法・用量の誤り: メトトレキサートは週1回という特殊な用法・用量があり、葉酸製剤の併用も必須です。医師の専門的な知識と指導なしに服用すると、量やタイミングを誤り、重篤な副作用（骨髄抑制、間質性肺炎など）を引き起こす危険性が極めて高いです。
• 禁忌・副作用の見落とし: ご自身の病状や体質、服用中の他の薬との飲み合わせによっては、メトトレキサートを使用してはいけない場合（禁忌）や、特に注意が必要な場合があります。医師の診察なしに服用すると、これらの重要な情報が見落とされ、予期せぬ重篤な健康被害につながる可能性があります。
• 健康被害救済制度の対象外: 個人輸入した医薬品によって健康被害が生じても、「医薬品副作用被害救済制度」などの公的な補償制度の対象になりません。

メトトレキサートは、医師による厳格な管理のもとで使用されるべき薬剤です。ご自身の安全と健康を守るため、必ず医療機関で医師の診察を受け、正規のルートで処方された薬剤を使用してください。安易な個人輸入は、命に関わるリスクを伴います。

まとめ：メトトレキサート治療を正しく理解するために

メトトレキサートは、関節リウマチや乾癬など、様々な炎症性・自己免疫性疾患に対して非常に効果的な薬剤です。過剰な免疫反応や細胞増殖を抑えることで、病気の症状を軽減し、進行を抑制する働きがあります。週1回という特殊な用法・用量や、葉酸製剤との併用など、他の薬剤とは異なる服用方法が特徴です。

その強力な作用ゆえに、副作用のリスクも伴います。特に、間質性肺炎や重度の骨髄抑制、肝機能障害などは注意が必要な副作用であり、「やばい」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの副作用は、定期的な診察と検査、適切な葉酸製剤の併用、そして服用中の体調変化に注意することで、多くの場合、早期に発見し適切に対処することが可能です。

また、妊娠中・授乳中の女性や、特定の重篤な合併症がある方など、メトトレキサートを服用してはいけない「禁忌」に該当するケースがあります。禁忌事項を無視して服用することは、非常に危険です。

メトトレキサート治療を安全かつ効果的に行うためには、以下の点が非常に重要です。

• 医師の指示を厳守する: 週1回という決められた曜日、時間、量を正確に守って服用（または注射）し、葉酸製剤も医師の指示通りに服用する。
• 定期的な診察と検査を受ける: 医師から指示された頻度で必ず通院し、血液検査やレントゲン検査などを受ける。
• 体調の変化に注意し、相談する: 服用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに医師や薬剤師に連絡し相談する。
• 生活習慣に注意する: 過度な飲酒や喫煙を避け、感染予防に努める。
• 妊娠・授乳の可能性について必ず医師に伝える: 妊娠希望の有無や、妊娠の可能性、授乳の状況について医師に正確に伝える。
• 個人輸入は絶対に避ける: 信頼できる医療機関で処方された正規の薬剤のみを使用する。

メトトレキサートは、正しく使用すれば多くの患者さんの症状を大きく改善し、病気の進行を抑えることができる、非常に有用な薬剤です。治療に対する不安がある場合は、一人で抱え込まず、医師や薬剤師にしっかりと相談し、疑問を解消することが大切です。医療チームと連携を取りながら、ご自身の病気と向き合い、安全な治療を続けていきましょう。