大人のADHD診断で悩みを解消!診断基準や受診方法をわかりやすく解説

大人のADHD診断について関心をお持ちですね。
もしかしたら、長年感じてきた「生きづらさ」や「他の人との違い」の原因がADHDにあるのかもしれない、そうお考えかもしれません。

本記事では、「大人のADHD 診断」を検討されている方に向けて、ADHDが大人でどのように現れるか、正式な診断はどのように行われるのか、ご自身でできるセルフチェックの限界と活用法、そして専門機関での診断プロセスや病院の選び方まで、体系的に解説します。
診断後の治療や支援についても触れますので、ご自身の特性を理解し、より良い日常生活を送るための一歩を踏み出すための情報として、ぜひ最後までお読みください。

大人が「自分はADHDかもしれない」と感じてから、実際に医療機関で診断を受けるまでにはいくつかの段階があります。
多くの場合、まず日常生活や仕事での困りごとを自覚し、インターネットなどで情報を集めることから始まります。
次に、ADHDの特性に当てはまるかを確認するためにセルフチェックを試みる方も多いでしょう。
セルフチェックの結果や日頃の困りごとを踏まえ、専門の医療機関を受診する、というのが一般的な流れです。

医療機関での正式な診断は、医師による問診や検査などを通じて慎重に行われます。
診断が確定した場合は、その特性と向き合い、困りごとを軽減するための様々な対策や支援が提案されます。
診断を受けることだけが目的ではなく、診断を通じて自分自身への理解を深め、より生きやすい方法を見つけることが重要です。

医療機関での正式な診断プロセス

大人のADHDの診断は、精神科医や心療内科医といった専門医によって行われます。
診断プロセスは医療機関によって多少異なりますが、一般的には以下のような流れで進みます。

初診から診断確定までの一般的な流れ

  1. 予約・問診票の記入
    事前に医療機関に予約を取り、初診時に現在の困りごとやこれまでの生育歴、家族構成、学歴、職歴などを記入する問診票を受け取ります。
    ウェブサイトからダウンロードできる場合もあります。
    この問診票は診断の重要な手がかりとなるため、できるだけ詳しく、正直に記入することが大切です。
  2. 予備的な面談・説明
    初診の面談では、現在の困りごとや受診のきっかけ、問診票の内容について医師や心理士から質問を受けます。
    この段階で、診断プロセス全体の流れや、どのような検査が行われるかなどの説明があります。
  3. 心理検査・知能検査
    ADHDの診断を補助するために、さまざまな検査が行われることがあります。
    • 知能検査(WAIS-IVなど)
      全体的な知的能力だけでなく、得意な分野と苦手な分野のばらつき(プロフィールの凹凸)を確認し、ADHDの特性との関連を探ります。
    • ADHDに関する質問紙
      CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)やASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)など、大人向けのADHD特性評価スケールに回答します。
      これらの質問紙はセルフチェックとしても使用されますが、医療機関ではより詳細なバージョンや、第三者(家族など)からの評価を含む場合もあります。
    • その他の心理検査
      注意力や実行機能(計画・組織化能力など)を評価するコンピューターテスト(CPTなど)が行われることもあります。
      また、うつ病や不安障害など、ADHDと合併しやすい他の精神疾患の可能性を評価するための検査が行われることもあります。
  4. 医師による診断面接
    検査結果や問診票の内容、本人からの聞き取り、可能であれば家族からの情報などを総合的に評価し、医師が診断を行います。
    診断基準(DSM-5など)に基づき、症状が複数環境(家庭、学校、職場など)で継続的に認められるか、幼少期からの特性か、そしてそれらの特性が社会生活や学業、職業生活において clinically significant な困難を引き起こしているかなどが慎重に検討されます。
  5. 診断結果の説明・治療方針の相談
    診断が確定した場合、医師から診断名とその根拠、今後の治療方針について説明があります。
    診断がつかない場合でも、困りごとに対する具体的なアドバイスや、別の疾患の可能性について説明があるでしょう。
    治療方針としては、薬物療法、精神療法(認知行動療法など)、ペアレントトレーニングやSST(ソーシャルスキルトレーニング)の要素を取り入れた心理教育、環境調整など、様々な選択肢があり、個々の状況に応じて検討されます。

診断プロセスは、一回の受診で終わることは少なく、通常は数回にわたる面談や検査を経て、数週間から数ヶ月かかる場合もあります。
これは、ADHDの診断が、単一の検査や医師の一度の印象だけで決まるものではなく、様々な情報を総合的に判断する必要があるためです。

診断の精度を高めるための準備

診断の精度を高め、スムーズにプロセスを進めるためには、受診する側もある程度の準備をしておくことが有効です。

  • 現在の困りごとを整理する
    いつ、どのような状況で、具体的にどのような困りごと(忘れ物が多い、締め切りを守れない、会議中に集中できない、衝動的に発言してしまう、片付けられないなど)が起きているのかを具体的にメモしておきましょう。
    具体的なエピソードがあると、医師は特性の現れ方をより深く理解できます。
  • 生育歴を振り返る
    幼少期から現在に至るまでの、学業成績、友人関係、集団行動での様子、親からの指摘、趣味や興味の移り変わり、大きなライフイベントなどを可能な範囲で思い出しておきましょう。
    通知表や卒業アルバム、親御さんからの話なども参考になります。
    ADHDの診断基準では、12歳以前に特性の一部が現れていることが要件の一つとなるため、幼少期の情報は非常に重要です。
  • 家族に相談してみる
    可能であれば、親御さんや兄弟など、幼少期から関わりのあった家族に、当時の自分の様子について聞いてみましょう。
    家族からの客観的な視点での情報は、医師が診断を行う上で貴重な参考資料となります。
  • 服用中の薬や既往歴を伝える
    現在服用している薬や、過去にかかった病気、アレルギーなどがあれば正確に伝えてください。
    これは、診断だけでなく、診断後の治療法を検討する上でも重要です。
  • 受診の目的を明確にする
    なぜ診断を受けたいのか、診断によって何を得たいのか(例: 困りごとの原因を知りたい、適切な支援を受けたい、自分自身を受け入れたいなど)を自分の中で整理しておくと良いでしょう。

これらの準備をしておくことで、限られた診察時間を有効活用でき、医師もより正確な情報を得やすくなります。

大人のADHDの診断基準(DSM-5準拠)

ADHDの診断は、世界的に広く用いられている診断基準に基づいて行われます。
現在、主に使われているのはアメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版(DSM-5)です。
DSM-5におけるADHDの診断基準は、主に「不注意(inattention)」と「多動性・衝動性(hyperactivity and impulsivity)」の2つの症状群に分けられ、それぞれに具体的な項目が挙げられています。
大人のADHD診断では、これらの項目が子ども期(12歳以前)から存在し、かつ現在も継続していることが重要視されます。

不注意の診断基準項目

不注意に関する項目は以下の9つです。
これらのうち、大人(17歳以上)の場合は5つ以上、子ども(16歳以下)の場合は6つ以上が該当し、かつ社会生活や学業、職業生活に支障をきたしている場合に、不注意優勢型のADHDや混合型のADHDの診断基準を満たす要素となります。

  1. 学業や仕事、その他の活動において、しばしば詳細に注意を向けられなかったり、不注意な間違いをしたりする(例:不注意で間違いやすい、学校の課題や仕事、その他の活動で詳細を見過ごしたり失ったりする)。
  2. 課題や遊びの活動で、しばしば注意を持続させることが困難である(例:講義、会話、長時間の読書で集中を持続することが難しい)。
  3. しばしば、話しかけられているのに聞いていないように見える(例:直接話しかけられた時に心がここにあらず、あるいは他のことを考えているように見える)。
  4. しばしば、指示に従えず、学業や仕事、その他の活動の完遂ができない(例:作業を開始するが、すぐに集中力を失い、脱線する)。(反抗的な行動や指示が理解できないためではない)
  5. しばしば、課題や活動を順序立てることが困難である(例:仕事や作業を組織化することが困難、道具や持ち物を順序立てて置くことが困難、時空間を把握することが困難、時間を管理することが困難、期日を守ることが困難)。
  6. しばしば、精神的努力の持続が必要な課題(学業や宿題、書類仕事など)を避ける、嫌う、あるいは嫌々行う(例:宿題や書類仕事のような課題に精神的な努力が必要な場合、そのようなことをしたがらない、あるいは嫌々始める)。
  7. しばしば、課題や活動に要求される物をなくす(例:学業や仕事に必要な物、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話など)。
  8. しばしば、外からの刺激によって容易に注意をそらされる(注:青少年および成人の場合、無関係な考えも含む)。
  9. しばしば、日々の活動を忘れてしまう(例:毎日の用事を済ませることを忘れる、電話を返すのを忘れる、請求書を払うのを忘れる、約束を忘れる)。

これらの項目は、単に「うっかりが多い」といったレベルではなく、その頻度や程度が同年代の人と比べて著しく高く、かつ日常生活や社会生活に具体的な支障をきたしている場合に診断上の意味を持ちます。

多動性・衝動性の診断基準項目

多動性・衝動性に関する項目は以下の9つです。
こちらも、大人(17歳以上)の場合は5つ以上、子ども(16歳以下)の場合は6つ以上が該当し、かつ社会生活や学業、職業生活に支障をきたしている場合に、多動性・衝動性優勢型のADHDや混合型のADHDの診断基準を満たす要素となります。

  1. しばしば、手足をそわそわ動かしたり、椅子に座っている時にをもじもじしたりする。
  2. しばしば、座っているべき状況で席を離れる(例:教室、職場、または他の着席が期待される状況で、自分の席を離れる、歩き回る)。
  3. しばしば、落ち着きなく走り回ったり、高いところに登ったりする(注:青少年および成人の場合、極端な落ち着きのなさやそわそわ感に限定されるかもしれない)。
  4. しばしば、静かに遊んだり、余暇活動に参加したりすることが困難である。
  5. しばしば、「駆り立てられているような」あるいは「エンジンがかかっているような」感じがしてじっとしていることができない。
  6. しばしば、過度にしゃべる。
  7. しばしば、質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう。
  8. しばしば、順番を待つことが困難である(例:列に並んでいる時、会話に参加している時)。
  9. しばしば、他人を遮ったり、干渉したりする(例:会話やゲームに割り込む、他人の活動に割り込む)。

大人の場合、子どもの頃のような走り回る多動性は目立たなくなり、代わりに「落ち着きのなさ」や「じっとしていられない感じ」、「頭の中が常に回転している感じ」といった内的な多動性として現れることが多いです。
また、衝動性は、衝動買い、カッとなりやすい、熟考せずに行動する、といった形で現れることがあります。

大人におけるADHDの現れ方と診断基準の適用

DSM-5の診断基準は子どもの特性をベースに作られていますが、大人にも適用されます。
しかし、大人の場合、子どもの頃と比べて特性の現れ方が変化することが一般的です。

  • 不注意
    子どもの頃から続く忘れ物やケアレスミスに加え、仕事での計画性のなさ、優先順位付けの困難、時間管理の苦手さ、締め切り遅延などが目立つようになります。
    複数の作業を同時にこなすのが苦手だったり、会議や長時間の作業に集中を持続させるのが困難だったりすることも多いです。
  • 多動性
    子どもの頃に比べて物理的な多動性は減り、内的な落ち着きのなさや、長時間じっとしていられない、貧乏ゆすりが止まらない、などといった形で現れることが多いです。
    常に何かをしていないと落ち着かない、といった感覚を持つ人もいます。
  • 衝動性
    衝動買い、過食、ゲームやインターネットへの過度の没入、衝動的な転職、熟考せずに発言して後悔する、怒りのコントロールが難しい、といった形で現れることがあります。
    順番待ちが苦手だったり、他人の話を遮ってしまったりすることもあります。

大人のADHDの診断では、これらの特性が単に「性格」や「だらしなさ」として片付けられるレベルではなく、社会生活や職業生活に具体的な困難(例:仕事でミスが多く評価が下がる、遅刻が多く人間関係に支障をきたす、金銭管理ができないなど)を引き起こしているかどうかが重要な判断基準となります。
また、これらの特性が他の精神疾患(うつ病、不安障害、双極性障害など)や身体疾患、薬物などが原因ではないことを確認する必要もあります。
幼少期からの継続性も診断には不可欠です。

大人のADHDセルフチェックテスト

ADHDの診断は専門医が行うものですが、「もしかして自分はADHDかも?」と感じた際に、手軽に現在の特性傾向を確認する方法として、セルフチェックテストがあります。
これは正式な診断ではないことに注意が必要ですが、医療機関を受診するきっかけとなったり、自身の困りごとを客観視したりする上で役立ちます。

無料で試せる主なチェックリストやテスト

インターネット上には、無料で利用できる大人のADHDセルフチェックテストが多数存在します。
代表的なものとしては以下のようなものがあります。

  • ASRS-v1.1(Adult ADHD Self-Report Scale)
    世界保健機関(WHO)とADHDに関する世界保健連盟(WHAADC)が作成した、大人向けのADHD特性評価スケールです。
    不注意と多動性・衝動性に関する18項目で構成されており、特に最初の6項目(スクリーニングバージョン)はADHDの可能性を簡便にチェックするために広く利用されています。
    多くの医療機関のウェブサイトなどでも公開されています。
  • CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)
    こちらも大人向けのADHD評価スケールですが、ASRSよりも項目数が多く、より詳細な評価が可能です。
    自身で回答する「自己記入式」と、家族やパートナーなど近親者が回答する「観察者評価式」があり、医療機関での診断プロセスで用いられることが多いですが、一部の項目がセルフチェック用に公開されている場合もあります。
  • 各医療機関や支援団体のオリジナルチェックリスト
    上記のASRSやCAARSを参考に、医療機関やADHDに関する支援団体が独自に作成・公開しているチェックリストも多数存在します。

これらのチェックリストは、特定の質問に対して「まったくない」「めったにない」「ときどき」「しばしば」「非常によくある」といった段階で回答し、その合計点などからADHDの傾向の有無や強さを判定する形式が一般的です。

セルフチェックで分かること、分からないこと

セルフチェックで分かること:

  • ADHDの特性傾向があるか
    診断基準項目に挙げられているような不注意や多動性・衝動性の特性が、自分にどの程度当てはまるかの傾向を知ることができます。
  • 受診を検討するきっかけ
    チェックリストで高い点数が出た場合、「もしかしたら本当にADHDかもしれない」と考え、専門機関への受診を具体的に検討するきっかけになります。
  • 自己理解の一助
    自分自身の困りごとや行動パターンを客観的に捉え、理解する上でのヒントになります。

セルフチェックでは分からないこと(限界):

  • 正式な診断
    セルフチェックはあくまで「傾向を知る」ためのものであり、これだけでADHDと診断されることは絶対にありません。
    正式な診断は、医師による問診や検査、生育歴の確認などを通じて総合的に判断されます。
  • 他の疾患の可能性
    ADHDと似た症状を示す他の精神疾患(うつ病、不安障害、双極性障害、発達障害の別のタイプなど)や、身体疾患の可能性を除外することはできません。
    セルフチェックの結果だけで自己判断することは危険です。
  • 症状の程度や背景の深掘り
    チェックリストは表面的な症状を拾うものであり、その症状がどの程度深刻なのか、いつから続いているのか、どのような状況で現れやすいのか、といった詳細な背景を把握することはできません。
  • 診断基準への厳密な当てはまり
    DSM-5の診断基準は、単に項目の数だけでなく、症状が社会生活に支障をきたしているか、幼少期から続いているかなど、複数の複雑な要素を総合的に判断して適用されます。
    セルフチェックだけでは、これらの基準への厳密な当てはまりを確認することはできません。

セルフチェックの結果、ADHDの傾向があるように感じた場合、以下の行動を検討しましょう。

  1. すぐに自己判断しない
    セルフチェックの結果を鵜呑みにせず、「あくまで傾向があるかもしれない」と冷静に受け止めましょう。
  2. 専門の医療機関に相談する
    ADHDの診断や相談を受け付けている精神科医や心療内科医を受診することを強くお勧めします。
    セルフチェックの結果を持参すると、医師に相談する際の糸口になります。
  3. 困りごとを具体的に整理する
    受診に備えて、セルフチェックで当てはまった項目に関連する、具体的な困りごとやエピソードを整理しておきましょう。
  4. 診断以外の可能性も考慮する
    ADHDの可能性だけでなく、うつ病や不安障害など、他の原因で困りごとが生じている可能性も視野に入れ、医師に相談してください。

セルフチェックは、自分自身の特性に気づき、専門家のサポートを求めるための一歩となり得ますが、それだけで全てを判断せず、必ず専門家の意見を仰ぐことが重要です。

ADHDのグレーゾーンとは?大人の特徴

ADHDに関心を持って情報を集めていると、「グレーゾーン」という言葉を耳にすることがあります。
これは、正式な診断基準は満たさないものの、ADHDの特性の一部を持っていることで、日常生活や社会生活で何らかの困難を感じている状態を指すことが多いです。
医学的な正式名称ではありませんが、当事者やその周囲の人々の間で、診断の有無に関わらず特性による困りごとを説明する際に使われることがあります。

グレーゾーンの定義と診断との違い

グレーゾーンに明確な医学的定義はありません。
一般的には、以下のような状態を指して使われることが多いようです。

  • 診断基準の一部は満たすが、全てではない
    例えば、不注意の項目はいくつか当てはまるが、診断に必要な項目数には満たない。
    あるいは、幼少期からの継続性が明確に確認できない、などのケースです。
  • 症状の程度が診断基準を満たすほどではない
    特性は存在するものの、それが社会生活や職業生活に著しい困難を引き起こしているとまでは言えない、というケースです。
  • 診断は受けなかった(受けられなかった)が特性はある
    医療機関を受診したが診断には至らなかった、あるいは診断は受けていないが、自身の困りごとをADHDの特性として捉えている、というケースです。

診断との最も大きな違いは、「診断基準を満たし、医師によって正式に診断されているかどうか」です。
診断を受けた場合は、その診断名に基づいた医学的な治療や、公的な支援制度の利用、職場での合理的配慮の検討などが可能になります。
一方、グレーゾーンの場合は、診断名がないため、これらの医学的・社会的なサポートを公式に受けることが難しい場合があります。

グレーゾーンの大人の具体的なあるある特性

グレーゾーンの大人の特性の現れ方は様々ですが、診断されたADHDの特性と共通する困りごとを感じることが多いです。
以下にいくつかの「あるある」な特性を挙げます。

  • 不注意関連
    • 部屋やデスクが散らかっていて、片付けられない。
      必要な物が見つからない。
    • 頼まれたことや自分でやろうと思ったことをすぐに忘れてしまう。
      メモを取ってもそのメモをなくす。
    • 仕事や作業中に気が散りやすく、一つのことに集中し続けるのが難しい。
    • 簡単な書類の確認でケアレスミスが多い。
    • 締め切りが近づくまで物事に取り掛かれない(先延ばし)。
    • 時間管理が苦手で、待ち合わせや仕事に遅刻することがある。
  • 多動性・衝動性関連
    • 会議中や電車の中で、じっとしているのが苦痛で、手足を動かしたり姿勢を変えたりしてしまう。
    • 頭の中が常に色々な考えでいっぱいで、落ち着かない感じがする。
    • 会話中に相手の話が終わる前に話し始めてしまう。
    • 思いついたことを深く考えずに口に出してしまい、後で後悔する。
    • 衝動買いをしてしまうことがある。
    • 飽きっぽく、色々なことに手を出すが、最後までやり遂げられないことが多い。

これらの特性は、誰にでもある程度当てはまることもありますが、グレーゾーンの場合は、これらの特性によって「他の人よりも困ることが多い」「頑張っているのにうまくいかない」と感じることが多い点が特徴です。
しかし、その困りごとの程度が、診断基準で求められるほど「著しい困難」ではないため、診断には至らない、という状態です。

グレーゾーンでも対策や支援は可能か

グレーゾーンだからといって、困りごとを諦める必要はありません。
診断がなくても、ADHDの特性に対する理解に基づいた対策や支援は十分に可能です。

  • 自己理解を深める
    自分の特性(得意なこと、苦手なこと、どのような状況で困りやすいかなど)を正確に理解することが第一歩です。
    ADHDに関する書籍やウェブサイトで情報を集め、自分に当てはまる部分を確認してみましょう。
  • 環境調整や工夫
    苦手な部分を補うために、生活や仕事の環境を調整したり、工夫を取り入れたりします。
    例えば、
    • 忘れ物対策として、外出前に持ち物リストを確認する、物の定位置を決める。
    • 集中力維持のために、タイマーを使って作業時間と休憩時間を区切る、集中できる環境を作る。
    • 時間管理のために、複数のアラームを使う、To-Doリストを作成する。
    • 衝動的な行動を抑えるために、衝動が起きた際に一時的にその場を離れる、一度立ち止まって考える癖をつける。
  • 相談できる場所を探す
    診断が出ていなくても、困りごとについて相談できる専門家や支援団体があります。
    • カウンセリング
      認知行動療法など、特性による困りごとへの対処法を学ぶことができる場合があります。
    • 精神科医・心療内科医
      グレーゾーンであっても、困りごとの相談に乗り、具体的なアドバイスや、他の精神疾患の可能性について診察してくれる医師はいます。
      まずは相談してみる価値があります。
    • 発達障害者支援センター
      地域によっては、診断の有無に関わらず、発達障害の特性を持つ本人や家族からの相談を受け付けている場合があります。
  • 自助グループ
    同じような特性を持つ人々が集まる自助グループに参加することで、経験談を共有したり、具体的な対処法を知ったりすることができます。

グレーゾーンであっても、自分の特性を理解し、適切な対策や支援を活用することで、困りごとを軽減し、より自分らしく生きることが可能です。
診断の有無にこだわりすぎず、まずは困りごとへの対処に焦点を当ててみましょう。

大人のADHD診断を受けられる医療機関

大人のADHDの診断を受けたい場合、主に精神科や心療内科を受診することになります。
しかし、全ての精神科や心療内科で大人のADHD診断に対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。

専門医(精神科・心療内科など)の選び方

ADHDの診断は専門性が求められるため、大人を対象としたADHD診療の経験が豊富な医師がいる医療機関を選ぶことが重要です。

  • 大人のADHD診療に対応しているか確認する
    医療機関のウェブサイトや電話で、「大人のADHDの診断や治療に対応していますか?」と事前に問い合わせましょう。
    小児科や児童精神科は子どものADHDが専門の場合が多いですが、大人のADHDを診ている場合もあります。
  • 予約方法と待ち時間
    ADHDの専門外来は予約が取りにくく、数ヶ月待ちということも珍しくありません。
    ウェブサイトで予約状況を確認したり、電話で問い合わせたりして、予約の取りやすさや待ち時間を確認しましょう。
  • アクセス
    定期的な受診が必要になる場合もあるため、自宅や職場から通いやすい場所にあるかどうかも考慮しましょう。
  • 医師との相性
    診断や治療は医師との信頼関係が重要です。
    可能であれば、初診の際に医師との相性を確認し、安心して相談できると感じられるかどうかも考慮に入れると良いでしょう。
  • オンライン診療
    最近では、大人のADHD診療にオンライン診療を取り入れている医療機関もあります。
    遠方の場合や、通院に抵抗がある場合に選択肢となります。
    ただし、初診は対面診療が必要な場合や、オンライン診療では実施できない検査がある場合もあるため、事前に確認が必要です。
  • 口コミや評判
    インターネット上の口コミや評判も参考になりますが、個人の主観が大きく影響するため、あくまで参考程度に留めましょう。

医療機関を探す際は、自治体の精神保健福祉センターや、ADHDに関する患者会・支援団体のウェブサイトで、大人のADHDに対応している医療機関リストが公開されている場合もあります。

受診前に準備することリスト

診断の精度を高めるためにも、受診前には以下の準備をしておくと良いでしょう。

  • 現在の困りごとのリストアップ
    いつ、どこで、具体的にどのような困りごとが起きるのかを箇条書きなどで整理します。
    具体的なエピソードをいくつか準備しておくと、医師に伝わりやすいです。
  • 生育歴の整理
    幼少期(特に小学生の頃)の様子、学業成績、友人関係、担任の先生からの評価、親からの指摘などを思い出せる範囲で整理します。
    可能であれば、通知表や母子手帳、卒業文集なども参考になることがあります。
    親御さんなど、幼少期を知る家族に当時の様子を聞いてメモしておくのも有効です。
  • 問診票の事前記入
    医療機関から事前に問診票を入手できる場合は、じっくり時間をかけて記入しておきましょう。
  • 服用中の薬や既往歴の確認
    現在服用している全ての薬(市販薬、サプリメントなども含む)の名前、量、服用期間や、過去にかかった病気、アレルギーなどを正確に把握しておきます。
    お薬手帳を持参すると良いでしょう。
  • 健康保険証、医療証、マイナンバーカード
    受診に必要なので忘れないようにしましょう。
  • 紹介状
    かかりつけ医がある場合や、他の医療機関から紹介された場合は、紹介状を持参しましょう。
    必須ではありませんが、これまでの医療情報が伝わることで診断がスムーズに進む場合があります。

これらの準備をすることで、医師への情報提供がスムーズになり、診断プロセスを効率的に進めることができます。

診断にかかる費用と期間の目安

大人のADHDの診断にかかる費用と期間は、医療機関や受ける検査の内容によって異なりますが、目安としては以下のようになります。

費用:

  • 診察料
    初診料、再診料がかかります。
    保険診療の場合、3割負担であれば数千円程度です。
  • 検査費用
    知能検査や心理検査、脳波検査など、行う検査によって費用は大きく変わります。
    保険適用される検査が多いですが、数千円から1万円以上かかることもあります。
  • 合計
    診断プロセス全体を通して、保険適用の場合、数千円から数万円程度が目安となることが多いです。
    ただし、自由診療のクリニックや、保険適用外の特殊な検査を受ける場合は、さらに高額になる可能性があります。
    正確な費用については、受診前に医療機関に問い合わせるのが確実です。

期間:

  • 初診予約までの待ち時間
    人気のある医療機関や専門外来では、数ヶ月待ちとなることも珍しくありません。
  • 診断確定までの期間
    初診から診断確定までは、通常は数週間から数ヶ月かかることが多いです。
    これは、複数回の診察や検査が必要となるためです。
    検査結果が出るまでに時間がかかったり、他の疾患の可能性を慎重に検討したりする場合もあります。

費用の例(3割負担の場合)

項目 内容 費用目安(1回あたり) 備考
初診料 最初の診察 1,000円~2,000円 医療機関によって異なる
再診料 2回目以降の診察 500円~1,500円 医療機関によって異なる
心理検査費用 WAIS-IV、CAARS、CPTなど(複数回にわたる場合も) 数千円~1万円以上 検査の種類や数によって変動が大きい
合計(目安) 初診から診断確定まで(複数回の受診含む) 数千円~数万円 検査内容や回数により大きく異なる

※上記はあくまで目安であり、医療機関や個々の状況によって大きく変動します。
必ず事前に医療機関に確認してください。

ADHDと診断された場合の対応と今後の生活

専門医によってADHDと正式に診断された場合、それは長年の困りごとの原因が明らかになったということです。
診断はゴールではなく、その特性を理解し、より自分らしく生きるためのスタート地点となります。
診断後は、医師と相談しながら、困りごとの軽減するための様々な対応や支援を検討していきます。

診断後の治療の選択肢(薬物療法・非薬物療法)

ADHDの治療は、主に「薬物療法」と「非薬物療法」を組み合わせて行われます。
どちらか一方だけでなく、両方を組み合わせることでより効果的な結果が得られることが多いです。

  • 薬物療法
    ADHDの主な特性(不注意、多動性、衝動性)の改善に効果があるとされている薬がいくつかあります。
    • 中枢神経刺激薬
      メチルフェニデート徐放錠(コンサータ)、リスペリドン(アトモキセチン)などがあります。
      脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の働きを調整し、集中力や衝動性のコントロールを改善する効果が期待されます。
      コンサータは登録制のため、処方できる医療機関が限られます。
    • 非刺激性薬
      アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ)、ブロバンセリン(ビバンセ)などがあります。
      こちらも脳内の神経伝達物質に作用し、効果が現れるまでに時間がかかる場合がありますが、効果が持続する特徴があります。
    薬物療法は、医師の診断に基づき、個々の症状や体質に合わせて慎重に選択・調整されます。
    効果や副作用の現れ方には個人差があり、定期的な診察で効果を確認しながら進めます。
    薬はADHDそのものを治すものではなく、特性による困りごとを軽減し、他の治療法や環境調整の効果を高める補助的な役割を担います。
  • 非薬物療法
    薬を使わずに、特性による困りごとへの対処法を学んだり、生活習慣を改善したりする方法です。
    • 心理教育
      ADHDに関する正しい知識を学び、自身の特性を理解することを目的とします。
      本人だけでなく、家族や職場の理解も深めることが重要です。
    • 認知行動療法(CBT)
      不注意や衝動性に関連する非適応的な思考パターンや行動を特定し、より建設的な思考や行動を身につけるための訓練を行います。
      時間管理、計画立案、感情コントロールなどのスキルを学ぶのに役立ちます。
    • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
      人間関係におけるコミュニケーション能力や対人スキルを向上させるためのトレーニングです。
    • ペアレントトレーニング/支援者向け研修
      家族や職場の同僚など、周囲の人がADHDについて理解し、本人への適切な接し方やサポート方法を学ぶためのものです。
    • 環境調整
      困りごとが起きやすい環境(職場や家庭など)を、特性に合わせて調整する工夫です。
      例えば、集中しやすいように物理的に仕切りを作る、忘れ物防止のために物の定位置を決める、タスク管理ツールやアプリを活用するなどです。
    • 生活習慣の改善
      十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、ADHDの症状を安定させるのに役立つことがあります。

これらの治療法や支援は、個々の困りごとやライフスタイルに合わせてオーダーメイドで組み合わせていきます。
診断を受けた医療機関で、どのような選択肢があるのか相談してみましょう。

日常生活や仕事での困りごとへの具体的な対策

ADHDの特性による日常生活や仕事での困りごとに対しては、診断の有無に関わらず、様々な具体的な対策を講じることができます。
診断を受けたことで、自身の特性をより深く理解し、効果的な対策を見つけやすくなります。

日常生活での対策例:

  • 忘れ物、失くし物対策
    • 玄関先に「今日の持ち物」リストを貼り、出かける前に必ず確認する。
    • 鍵や財布、携帯電話などの貴重品の定位置を決め、「帰宅したらすぐに所定の場所に戻す」習慣をつける。
    • よく使う物は透明なケースや箱に入れる。
    • TODOリストや買い物リストをアプリで作成し、常に携帯する。
  • 時間管理、遅刻対策
    • 予定時刻より早めに準備を始めるように、リマインダーや複数のアラームを設定する。
    • 移動時間を実際よりも長めに設定する。
    • 時間が見える場所に時計を複数置く。
    • タイマーを使って作業時間を区切り、「この時間だけはこれに集中する」と決める。
  • 片付け、整理整頓対策
    • 「一度に全てやろう」とせず、小さな範囲や短い時間で区切って片付ける(例: 「机の上の一角だけ5分片付ける」)。
    • 「使う場所の近くに収納する」ルールを作る。
    • 「とりあえず置き場」を作らない。
    • 定期的に物を捨てる習慣をつける。
  • 衝動性対策
    • 衝動買いしそうな時は、一度立ち止まって本当に必要か考える時間を持つ(例: 24時間考える、リストに加えてから買う)。
    • カッとなりやすい状況を把握し、感情が高ぶってきたら一度その場を離れる、深呼吸をするなどのクールダウン方法を身につける。

仕事での対策例:

  • タスク管理
    • やるべきことを全て書き出す(タスクの洗い出し)。
    • タスクを小さく分解し、具体的な行動レベルにする。
    • 優先順位をつけ、「今日やるべきこと」を明確にする。
    • タスク管理ツール(アプリ、手帳、ホワイトボードなど)を活用する。
  • 集中力維持
    • 集中しやすい環境を作る(静かな場所を選ぶ、ノイズキャンセリングイヤホンを使うなど)。
    • 集中したい時間帯を決めて、その時間に重要なタスクを行う。
    • ポモドーロテクニック(25分作業+5分休憩を繰り返す)など、集中と休憩を意図的に区切る方法を取り入れる。
  • コミュニケーション
    • 会議や会話の内容をメモする習慣をつける。
    • 重要な指示は復唱して確認する。
    • 不明な点は遠慮せずに質問する。
    • メールやチャットは、簡潔に要点をまとめて書く練習をする。
  • 職場での合理的配慮
    診断を受けた場合、症状によって業務遂行に困難が生じていることについて、事業主に相談し、業務内容や環境の調整(例: 集中しやすい席への配置、口頭だけでなく書面での指示、休憩時間の確保など)を求めることができる場合があります。
    これは「合理的配慮」と呼ばれ、障害者雇用促進法などに基づいています。
    産業医や人事担当者に相談してみましょう。

これらの対策は、あくまで一般的な例です。
自分自身の特性と困りごとを深く理解し、試行錯誤しながら、自分に合った方法を見つけていくことが重要です。

相談できる専門機関や支援制度

ADHDと診断された場合、医療機関での治療に加え、様々な専門機関や支援制度を利用することができます。

  • 精神科・心療内科
    診断や治療(薬物療法、精神療法)、定期的な経過観察を行います。
    困りごとについて継続的に相談できる主治医を見つけることが重要です。
  • 発達障害者支援センター
    発達障害に関する専門的な相談支援機関です。
    診断の有無に関わらず相談できる場合が多く、本人や家族からの相談、就労支援、生活支援、利用できる社会資源の情報提供などを行います。
    地域ごとに設置されています。
  • 精神保健福祉センター
    こころの健康に関する相談機関です。
    精神疾患全般に関する相談を受け付けており、必要に応じて専門機関を紹介してくれます。
  • 就労移行支援事業所、就労継続支援事業所
    障害のある方が一般企業への就職を目指す(就労移行支援)または、雇用契約を結ばずに働く場や生産活動の機会を得る(就労継続支援)ためのサービスを提供する事業所です。
    ADHDと診断され、手帳を取得している場合などに利用を検討できます。
  • 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
    精神疾患により長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に交付される手帳です。
    取得すると、様々な福祉サービスや割引などが受けられる場合があります。
    ADHDも対象となり得ますが、取得の可否や等級は、症状の程度や困りごとの状況によって判断されます。
    主治医に相談してみましょう。
  • 自立支援医療制度(精神通院医療)
    精神疾患で通院による医療を受けている方の医療費の自己負担額を軽減する制度です。
    ADHDも対象となります。
  • 相談支援事業所
    障害のある方が、障害福祉サービスなどを利用するための計画作成や相談を行う事業所です。
  • ハローワークの専門窓口(障害者専門窓口)
    障害のある方の就職に関する相談や支援を行います。

これらの機関や制度は、診断の有無、症状の程度、お住まいの地域などによって利用できるものが異なります。
まずは主治医や地域の相談支援機関(発達障害者支援センターなど)に相談し、ご自身の状況に合わせて利用できる支援について情報収集することをお勧めします。

ADHD診断を受けない選択肢とその影響

「診断を受けるかどうか」は、非常に個人的な選択です。
診断を受けることにはメリットもデメリットもあり、必ずしも全ての方が診断を受けるべき、ということではありません。
診断を受けないという選択をすることもありますし、診断基準は満たさない「グレーゾーン」である場合もあります。

診断のメリットとデメリット

診断を受けることのメリット:

  • 困りごとの原因が明確になる
    長年感じていた「なぜかうまくいかない」という困りごとの原因が、ADHDという特性によるものであると理解できます。
    これにより、自分自身を責める気持ちが軽減され、自己肯定感が向上する場合があります。
  • 適切な治療や支援に繋がる
    診断に基づいて、症状を軽減するための薬物療法や、特性に合った非薬物療法(心理教育、CBTなど)を受けることができます。
  • 利用できる公的な支援制度がある
    診断名があることで、障害者手帳の取得、自立支援医療制度の利用、発達障害者支援センターなどの専門機関の利用、職場での合理的配慮の相談などが可能になる場合があります。
  • 周囲の理解を得やすくなる
    家族や職場など、周囲の人に特性を説明しやすくなり、理解や協力を得やすくなる場合があります。
  • 同じ特性を持つ人との繋がり
    診断をきっかけに、患者会や自助グループに参加し、同じような経験を持つ仲間と交流することで、孤立感が軽減されたり、役立つ情報を得たりできます。

診断を受けることのデメリット:

  • 診断結果によるショック
    診断名がつくことで、一時的にショックを受けたり、落ち込んだりする可能性があります。
  • ラベリングへの抵抗
    「ADHDである」というラベルが貼られることに対し、抵抗を感じる場合があります。
  • 保険加入への影響
    診断名がつくと、将来的に生命保険や医療保険への加入が難しくなったり、保険料が高くなったりする可能性があります(ただし、近年は緩和される傾向もあります)。
  • 就職や転職への影響
    診断名を伝えることで、採用や昇進に不利になるのではないかという不安を感じる場合があります(必ずしも不利になるわけではありませんが、配慮が必要な場合はオープンに相談する方が良い結果に繋がることもあります)。
  • 診断プロセスにかかる時間や費用
    前述の通り、診断を受けるまでには時間も費用もかかります。

診断を受けるかどうかは、これらのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身の価値観や現在の困りごとの状況を踏まえて慎重に判断することが重要です。

診断が不要と感じるケース

以下のような場合は、必ずしも診断を受ける必要はないと考える人もいます。

  • 困りごとの程度が軽微である
    特性による困りごとが、日常生活や社会生活に著しい支障をきたすほどではない場合。
  • 自己理解や工夫で十分に対応できている
    自身の特性を理解し、自己流の工夫や環境調整などで困りごとにある程度対処できている場合。
  • 診断名にこだわらない
    診断名が付くことよりも、困りごとへの具体的な対策や自分らしい生き方を見つけることに関心がある場合。
  • 診断のデメリットが大きいと感じる
    特に保険加入や就職などへの影響を懸念し、診断を受けることのリスクが大きいと感じる場合。

診断はあくまで「特性」に対する医学的な名称を付ける行為であり、「病気である」という側面もありますが、「生まれ持った脳の特性である」という側面もあります。
診断によって自身の特性を客観的に捉え、適切なサポートを受けることで、より自分らしく生きられるようになる人もいれば、診断を受けなくても自分なりのやり方で人生を切り拓いていく人もいます。

診断がなくてもできる困りごとへの対処法

診断を受けない選択をした場合や、グレーゾーンである場合でも、ADHDの特性による困りごとへの対処法はたくさんあります。

  • ADHDに関する知識を学ぶ
    診断基準や特性について学び、自分に当てはまる困りごとやその背景にあるメカニズムを理解します。
  • 具体的な工夫や環境調整を試す
    前述の「日常生活や仕事での対策例」で挙げたような、タスク管理ツールの活用、集中できる環境作り、忘れ物防止の工夫などを積極的に取り入れます。
    自分に合う方法が見つかるまで、色々な方法を試してみることが大切です。
  • 相談できる人を探す
    友人や家族、信頼できる同僚など、話しやすい人に困りごとについて相談してみましょう。
    自分一人で抱え込まず、他者の視点やサポートを得ることも有効です。
  • カウンセリングやコーチング
    ADHDに詳しいカウンセラーやライフコーチに相談し、困りごとへの対処法や目標達成に向けたスキルを学ぶことも選択肢の一つです。
    医療機関での診断がなくても利用できる場合があります。
  • 自助グループへの参加
    診断の有無を問わない自助グループもあります。
    同じような特性を持つ人との交流を通じて、共感を得たり、具体的なアドバイスをもらったりできます。
  • 一般的な自己啓発やビジネススキル
    時間管理、タスク管理、コミュニケーションなどに関する自己啓発書やセミナーも、困りごとへの対処に役立つ場合があります。

診断を受けることは、適切なサポートへの扉を開く重要なステップとなり得ますが、それが全てではありません。
診断の有無にかかわらず、自分の特性を理解し、困りごとを軽減するための努力を続けることが、より良い人生を送る上で何よりも大切です。

まとめ|大人のADHD診断を検討されている方へ

大人のADHD診断は、長年抱えてきた困りごとの原因を理解し、自分自身の特性を受け入れるための一歩となり得ます。
診断プロセスは専門的なものであり、医師による問診や様々な検査を経て慎重に行われます。
診断基準(DSM-5)に照らし合わせ、幼少期からの継続性や、特性による具体的な困難の程度が総合的に判断されます。

セルフチェックは、ご自身の特性傾向を知る手軽な方法ですが、あくまで参考であり、正式な診断ではありません。
セルフチェックの結果を踏まえ、専門の医療機関(精神科・心療内科)を受診することを検討される場合、事前に困りごとや生育歴を整理しておくと、診断プロセスがスムーズに進むでしょう。

診断が確定した場合でも、診断に至らない「グレーゾーン」である場合でも、ADHDの特性による困りごとに対しては、様々な対策や支援があります。
薬物療法と非薬物療法を組み合わせた治療、日常生活や仕事での具体的な工夫、そして発達障害者支援センターなどの専門機関や支援制度の利用などです。

診断を受けることにはメリットもデメリットもあり、これは個人の選択です。
診断名が付くことで得られるサポートがある一方、診断を受けなくても自己理解や工夫、相談などを通じて困りごとを乗り越えることも可能です。

もしあなたが「もしかしてADHDかも」と感じ、現在の困りごとで生きづらさを感じているのであれば、まずは一人で抱え込まず、専門の医療機関や相談機関に相談してみることをお勧めします。
あなたの特性を理解し、より自分らしく、生きやすい方法を見つけるための一歩を踏み出しましょう。

【免責事項】

本記事は、大人のADHD診断に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断を代替するものではありません。
ご自身の状態については、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指導を仰いでください。
本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた、いかなる損害についても責任を負いかねますのでご了承ください。

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