アスペルガー症候群の主な特徴とは?ASDとの違いも解説

アスペルガー症候群は、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれる発達障害の一つに含まれる概念です。
対人関係やコミュニケーションの困難さ、特定の興味や活動への強いこだわりといった特徴が見られます。
これらの特性は、子供の頃から見られることが多く、成長するにつれて日常生活や社会生活の中でさまざまな困りごととして現れることがあります。
アスペルガー症候群の特徴を理解することは、本人だけでなく、家族や周囲の人々が適切なサポートを行い、より円滑な人間関係を築くために非常に重要です。
この記事では、アスペルガー症候群の主な特徴を、大人と子供それぞれの具体的な例を交えながら分かりやすく解説します。
また、診断や相談先についてもご紹介し、自己理解や周囲の理解を深めるための一助となることを目指します。

アスペルガー症候群は、過去に独立した診断名として用いられていましたが、2013年に改訂されたアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)以降、自閉性障害、広汎性発達障害などとともに「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの診断名に統合されました。

ASDは、「対人コミュニケーションと相互作用における持続的な困難さ」「限定された興味や反復的な行動、活動」という、主に二つの領域における特性を中核とする発達障害です。
これらの特性は、子どもの頃から現れ、社会的な状況で困難を引き起こします。

アスペルガー症候群という言葉は現在も広く使われており、一般的には、ASDの中でも知的発達に遅れがなく、幼少期に言語発達の明らかな遅れがなかった場合を指すことが多いです。

高機能自閉症との違い

DSM-5によるASDへの統合以前は、自閉性障害は知的な遅れを伴う場合、高機能自閉症は知的な遅れはないが言語発達に遅れが見られた場合、アスペルガー症候群は知的な遅れも言語発達の遅れもなかった場合、というように区別されていました。

現在では、これらの区別は用いられず、知的発達の状況と言語能力の状況は、ASDの診断後の「特定因子」として付記される形になっています。
つまり、かつて高機能自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれていた人たちは、現在では「知的発達の遅れを伴わないASD」として診断されることになります。

ただし、臨床現場や日常会話では、便宜上、旧来の名称である「高機能自閉症」や「アスペルガー症候群」が使われることも少なくありません。
重要なのは名称の区分ではなく、その人がどのような特性を持っているのか、そしてどのような困りごとがあるのかを理解し、適切な支援につなげることです。

ASD(自閉スペクトラム症)とは

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつき脳機能の発達に偏りがあることによって起こる発達障害です。
「スペクトラム」という言葉が示すように、その特性の現れ方や程度は人によって非常に多様です。
知的発達に遅れがある方もいれば、平均かそれ以上の知的能力を持つ方もいます。
また、言語能力の程度もさまざまです。

ASDの診断基準は、以下の二つの主要な領域における持続的な困難さに基づいています。

  • 社会的コミュニケーションおよび相互作用における持続的な欠陥:
    • 相互の感情のやり取りの欠如
    • 非言語的コミュニケーション行動の理解と使用の困難さ(視線、表情、身振りなど)
    • 対人関係を発展させ維持することの困難さ
  • 限定された、反復的な様式の行動、興味、活動:
    • 常同的または反復的な体の運動、物の使用、あるいは話し方
    • 同一性への固執、融通の利かない日常へのこだわり
    • 極めて限定され固執した興味、または強度や対象において異常な興味
    • 感覚入力に対する過敏さまたは鈍感さ、あるいは環境に対する並外れた関心

これらの特性は、幼少期に始まり、個人の社会生活、学業、職業活動などに臨床的に意味のある障害を引き起こしている場合に診断されます。
アスペルガー症候群は、これらの特性のうち特に言語発達の遅れが目立たなかった場合に、かつて使われていた概念であると理解すると良いでしょう。

アスペルガー症候群の主な特徴

アスペルガー症候群(現在のASDの一部)の主な特徴は、大きく分けて「コミュニケーションの困難さ」「限定された興味や強いこだわり」「社会性の困難さ」「感覚過敏または鈍麻」「不器用さ」の5つに集約されます。
ただし、これらの特性はすべての人に同じように現れるわけではなく、その程度や組み合わせは一人ひとり異なります。

コミュニケーションの困難さ

アスペルガー症候群の人は、言葉でのコミュニケーション能力に問題がない場合でも、会話のニュアンスや場の空気を読み取ることが苦手な傾向があります。

非言語的サインの理解が苦手(視線・表情・ジェスチャー)

人は、言葉だけでなく、視線、表情、声のトーン、身振り手振りといった非言語的なサインからも多くの情報を得て、コミュニケーションを円滑に進めています。
しかし、アスペルガー症候群の人の中には、これらの非言語的サインを読み取るのが苦手な人が少なくありません。

  • 視線: 会話中に相手と視線を合わせることが難しかったり、逆に相手の視線に気づきにくかったりします。
  • 表情: 相手の表情から、その人が嬉しいのか、怒っているのか、悲しんでいるのかといった感情を読み取るのが難しいことがあります。
    笑顔で話していても、内心では困っていることに気づけないといった場合があります。
  • ジェスチャー: 相手が手ぶりで示している意味が分からなかったり、自分が話すときに適切なジェスチャーを使えなかったりすることがあります。
  • 声のトーン・抑揚: 相手の声のトーンや抑揚から、感情や冗談なのか真剣なのかといった意図を汲み取るのが難しい場合があります。

これらの苦手さから、悪気はないのに相手を怒らせてしまったり、「話を聞いていない」と誤解されたりすることがあります。

会話のキャッチボールが難しい(一方的な話し方・行間)

会話は本来、お互いに話をしたり聞いたりしながら進めるキャッチボールのようなものです。
しかし、アスペルガー症候群の人は、この会話のテンポや流れに乗るのが苦手なことがあります。

  • 一方的な話し方: 自分の興味のある話題や知っていることについて、相手の反応に関係なく一方的に長く話し続けてしまうことがあります。
    相手が話題を変えようとしても気づかず、同じ話題に戻ってしまうこともあります。
  • 行間を読むのが苦手: 言葉にされない相手の気持ちや意図(いわゆる「行間」)を読み取るのが難しいです。
    そのため、相手が遠回しに言っていることや、皮肉、比喩、社交辞令などを文字通りに受け取ってしまい、話が噛み合わないことがあります。
    例えば、「ちょっと寒いね」と言われたときに、「そうですか」と答えるだけで、相手が窓を閉めてほしいと思っていることに気づかないといったケースです。
  • 質問の意図が分からない: 相手がなぜその質問をしているのか、その背景にある意図を推測するのが難しいことがあります。
  • 場の空気を読むのが苦手: その場で話すべきこととそうでないことの区別がつかず、不適切な発言をしてしまうことがあります。

これらの特性から、「自己中心的だ」「話が通じない」などと誤解されてしまうことがあります。

言葉を文字通りに解釈する

アスペルガー症候群の人は、言葉を比喩や慣用句、冗談としてではなく、文字通りの意味で捉えがちです。

例えば、「猫の手も借りたいほど忙しい」と言われたときに、「本当に猫を連れてくれば手伝ってくれるのだろうか?」と考えてしまったり、「頭を冷やしてきなさい」と言われたときに、「本当に頭を冷やしに行かなければならないのか?」と思ってしまったりすることがあります。

慣用句やことわざ、比喩表現は、社会の中で円滑なコミュニケーションを図る上で非常に重要ですが、これらを文字通りに受け取ってしまうことで、混乱したり、相手との間で誤解が生じたりすることがあります。

限定された興味や強いこだわり

アスペルガー症候群の人の大きな特徴の一つに、特定の物事や活動に対する非常に強く、限定された興味を持つことがあります。

特定の分野への過剰な熱中

興味を持った分野に関しては、驚くほど深く、詳細な知識を習得することがあります。
それは、その分野の研究者顔負けの専門知識であることも珍しくありません。

  • 興味の対象は、鉄道の時刻表、特定の歴史上の人物、昆虫の種類、天文学、アニメ、特定のジャンルの音楽など、非常に多様です。
  • 一度興味を持つと、そのことばかり考えてしまったり、関連する情報を際限なく集めたり、話し続けたりします。
  • 興味のないことには全く関心を示さず、必要な情報であっても頭に入りにくいことがあります。

この特性は、ある分野で専門家として成功する原動力となることもありますが、一方で、他の人との共通の話題を見つけにくく、人間関係を築く上でのハードルとなることもあります。

ルーティンへのこだわり(変化を嫌う)

決まった手順や習慣、予定通りに物事が進むことを好む傾向が非常に強いです。
予測できない変化や、計画外の出来事に対して強い不安や抵抗を感じることがあります。

  • 毎日のスケジュールや行動パターンが決まっており、それを崩されることを嫌がります。
    例えば、通勤ルート、食事の順番、寝る前の行動などが固定されていることがあります。
  • 予定が急に変更になったり、予期せぬ出来事が起こったりすると、混乱したり、強い不快感を示したりします。
  • 物の配置や順番にもこだわりがあり、それが崩れると落ち着かなくなることがあります。

この特性は、規則やルールを守るのが得意という長所にもつながりますが、変化の多い現代社会では、柔軟な対応が求められる場面で困難を感じやすくなります。

こだわりの具体的な例(大人)

大人のアスペルガー症候群に見られるこだわりの例は多岐にわたります。

  • 服装: 特定の素材やデザインの服しか着られない、季節に関係なく同じような服を着る。
  • 食事: 食べるものや食べ方が決まっている、特定の食品しか口にしない、外食先が決まっている。
  • 通勤・通学: 毎日同じルートを通る、同じ時間に家を出る。
  • 趣味: 特定のアイドルやキャラクター、歴史上の人物などに異常なほど詳しく、それ以外の話題には興味を示さない。
    関連グッズを大量に集める。
  • 情報収集: 興味のあるテーマについて、インターネットなどで何時間も調べ続け、関連情報をファイリングするなど徹底的に管理する。
  • ルール: 自分が正しいと思ったルールや手順を頑なに守り、他人にもそれを強要しようとすることがある。
  • 時間: 時間に非常に厳格で、少しの遅れも許容できない、あるいは逆に時間の管理が極端に苦手で遅刻が多い。

これらのこだわりは、周囲から見ると「融通が利かない」「変わっている」と映ることがありますが、本人にとっては安心感を得るため、あるいは効率を追求するための重要な行動である場合があります。

社会性の困難さ

アスペルガー症候群の人は、他の人の気持ちや意図を推測することが苦手なため、集団の中でスムーズに関係を築いたり、場の状況に合わせて臨機応変に対応したりすることに難しさを感じることがあります。

他者の気持ちや意図の理解が難しい(場の空気)

  • 相手が何を考えているのか、どう感じているのかを想像するのが難しいです。
    そのため、相手を傷つけてしまうような不用意な発言をしてしまったり、相手が助けを求めていることに気づけなかったりします。
  • 集団の中で「場の空気」を読み取ることが苦手です。
    例えば、みんなが真剣な話をしているときに場違いな冗談を言ったり、賑やかな場面で急に黙り込んでしまったりすることがあります。
  • 暗黙のルールや常識、社交辞令といった、言葉にならない社会の約束事を理解するのが難しいです。
  • 人との適切な距離感が分からず、初対面なのに馴れれしくしすぎたり、逆に親しい相手でも距離を置きすぎたりすることがあります。

これらの困難さから、人間関係でトラブルを抱えやすく、孤立してしまうことがあります。

集団行動や臨機応変な対応が苦手

  • 複数の人で協力して何かを進める共同作業が苦手なことがあります。
    自分のやり方に固執したり、他の人のペースに合わせるのが難しかったりします。
  • 学校や職場で、グループでの話し合いやチームでのプロジェクトに参加することに抵抗を感じることがあります。
  • 予定が急に変更になったり、想定外の出来事が起こったりした場合に、どのように対応すれば良いか分からず、パニックになったり混乱したりします。
  • 複数のことを同時に行うマルチタスクが苦手なことがあります。

このような特性は、変化の多い環境や、多くの人との協調が求められる場面で、大きなストレスや困難を引き起こす原因となります。

感覚過敏または鈍麻

アスペルガー症候群を含むASDの人の中には、感覚の受け止め方に偏りがある人が少なくありません。
特定の種類の感覚刺激に対して過剰に反応する「過敏さ」と、逆に反応が鈍い「鈍麻さ」の両方、あるいはどちらか一方が見られます。

特定の音・光・触覚などへの過敏さ

感覚過敏の例として、以下のようなものがあります。

  • 聴覚: 特定の音(蛍光灯のブーンという音、時計の秒針の音、人の咀嚼音など)が非常に不快に感じられ、耐えられない。
    人混みの騒音が苦手。
  • 視覚: 蛍光灯のちらつきや強い光が眩しく感じる。
    特定の色や模様を見ると疲れる、落ち着かない。
  • 触覚: 特定の素材の服(ウールなどチクチクするもの、タグなど)が着られない。
    人に触られるのが苦手。
    ハグされると強い不快感を感じる。
  • 嗅覚・味覚: 特定の匂いが苦手、特定の食品の食感が苦手、好き嫌いが極端に多い。
  • 固有受容覚・前庭覚: 自分の体の位置や動きが掴みにくい(体がふらつく、よく転ぶ)、じっとしているのが苦手で常に動いていたい、あるいは逆に特定の動き(ブランコなど)を極端に怖がる。

これらの過敏さがあるために、特定の場所(騒がしい場所、蛍光灯の多いオフィス、特定の素材の制服がある学校など)が苦痛に感じられ、日常生活に支障をきたすことがあります。

一方、感覚鈍麻の例としては、以下のようなものがあります。

  • 痛み: 怪我をしても痛みに気づきにくい。
  • 温度: 暑さや寒さを感じにくく、体調を崩しやすい。
  • 空腹・満腹感: お腹が空いているかどうかが分からず、食事を忘れたり、食べ過ぎたりする。
  • 特定の感覚を追求: 強い圧迫感を好む(体にぎゅっと巻きつくようなものを好む)、同じ動きを繰り返すことで落ち着く(手をひらひらさせる、体を揺らすなど)。

感覚の偏りは、本人の生きづらさや行動パターンに深く関わっています。

不器用さ(運動能力)

アスペルガー症候群の人の中には、微細運動や粗大運動といった運動能力に不器用さが見られることがあります。

  • 微細運動: 箸をうまく使えない、字が丁寧に書けない、ボタンを留めるのに時間がかかる、靴ひもを結ぶのが難しいなど、手先の細かい作業が苦手です。
  • 粗大運動: ボールを投げる・捕る、走る、跳ぶといった全身を使う運動が苦手です。
    体がぎこちない、転びやすい、ダンスや体操のような体の使い方が難しいことがあります。
  • バランス感覚: バランスをとるのが苦手な場合があります。

これらの運動の不器用さは、体育の授業や集団での遊び、日常生活の様々な場面で困難を引き起こすことがあります。
周囲から「運動神経が悪い」と単純に片付けられてしまうこともありますが、これは脳の特性によるものであり、練習だけで克服するのが難しい場合もあります。

【年代別・タイプ別】アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群(ASD)の特性は、その人の年齢や性別、置かれた環境などによって現れ方が異なります。
ここでは、年代別やタイプ別の特徴について解説します。

大人のアスペルガー症候群の特徴(あるある)

子供の頃はあまり目立たなかった特性が、社会人になり仕事や複雑な人間関係に直面したことで顕著になり、大人になってから診断を受けるケースも増えています。

大人のアスペルガー症候群の「あるある」な例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 職場で「報連相(報告・連絡・相談)」が苦手で、必要な情報を共有し忘れたり、タイミングを間違えたりする。
  • 上司からの曖昧な指示が理解できず、どう行動すれば良いか分からなくなる。
  • 複数の業務を同時並行で行うマルチタスクが苦手で、一つのことに集中しすぎて他の業務が疎かになる。
  • 興味のある分野の仕事には驚異的な集中力を発揮するが、興味のない定型業務にはミスが多い。
  • 同僚との雑談が苦痛で、休憩時間も一人で過ごすことが多い。
  • 飲み会や社員旅行などの集団行動が苦手で、どう振る舞えば良いか分からず疲弊する。
  • 相手の表情や声のトーンから感情を読み取れず、気づかぬうちに失礼な態度をとってしまう。
  • 自分の専門分野になると、相手の興味に関係なく延々と話し続けてしまう。
  • 予定変更や急な残業、職場のレイアウト変更など、変化に弱い。
  • 特定の音や匂い、室温などが気になって集中できない。
  • 冗談や社交辞令が理解できず、真に受けてしまう。

これらの「あるある」は、本人の努力不足や性格の問題として捉えられがちですが、実際はアスペルガー症候群の特性に由来する困難である場合があります。

仕事や人間関係での困りごと

大人のアスペルガー症候群の人が最も困難を感じやすいのが、仕事と人間関係です。

仕事での困りごと:

  • 指示の理解: 曖昧な指示や抽象的な表現が理解できず、具体的な指示を求めないと動けない。
  • 優先順位付け: 複数の業務を振られたときに、どれから手をつけるべきか、どれが重要かを判断するのが難しい。
  • タスク管理: 業務を細分化して計画的に進めるのが苦手で、締め切りに間に合わないことがある。
  • 報告・連絡・相談: 必要な情報を共有し忘れたり、適切なタイミングで報告や相談ができなかったりする。
  • チームワーク: チームで目標を共有し、協力して業務を進めるのが難しい。
    自分のやり方に固執したり、他のメンバーとの連携がうまくいかなかったりする。
  • 変化への対応: 業務内容の変更、異動、新しいツールの導入など、変化に適応するのが難しい。

人間関係での困りごと:

  • コミュニケーション: 相手の気持ちや意図を読み取れず、会話が続かない、的外れな発言をする、一方的に話す。
  • 対人距離: 他人との適切な距離感が分からず、近すぎたり遠すぎたりする。
  • 共感: 相手の感情に共感したり、立場に立って物事を考えたりするのが難しい。
  • 場の空気: 集団の雰囲気や暗黙のルールが分からず、浮いてしまう。
  • トラブル: 悪気はないのに、不用意な言動で相手を怒らせたり、誤解されたりして人間関係のトラブルに発展しやすい。
  • 友人関係: 共通の興味がない人との関係を維持するのが難しい。
    深い人間関係を築くのが苦手。

これらの困りごとは、自己肯定感を低下させ、自信を失う原因となることがあります。

過剰適応のリスク

大人のアスペルガー症候群の中には、自分の特性に気づいていない、あるいは気づいていても、周囲に合わせようと無理な努力をする「過剰適応」をしてしまう人がいます。

過剰適応は、特性によって感じる生きづらさを隠し、社会的に「普通」であろうと振る舞うことです。
例えば、苦手な雑談を頑張って合わせる、集団行動が苦手でも無理に参加する、感情を読み取るのが苦手でも表情を作って乗り切ろうとする、といった行動です。

一時的には社会生活を送る上で役立つように見えますが、脳や心には常に大きな負荷がかかっています
この状態が長く続くと、慢性的な疲労感、ストレス、燃え尽き症候群、うつ病、不安障害などを発症するリスクが高まります。

過剰適応は、周囲からは「問題なくやっている」ように見えるため、本人が困難を抱えていることに気づかれにくく、支援に繋がるのが遅れるという側面もあります。

子供のアスペルガー症候群の特徴

子供の場合、アスペルガー症候群(ASD)の特性は、家庭や幼稚園、学校といった集団生活の中でより顕著に現れることが多いです。

子供に見られるアスペルガー症候群の主な特徴の例:

  • 他の子供と目を合わせようとしない。
  • 友達と一緒におもちゃで遊ぶよりも、一人で特定の遊び(ミニカーを並べる、特定のキャラクターの人形だけを使うなど)に熱中する。
  • ごっこ遊びで、役になりきったり、他の子と役割分担したりするのが難しい。
  • 自分の好きなこと(恐竜の名前、電車の種類など)について、相手の興味に関係なく話し続ける。
  • 特定の感覚刺激(服のタグ、大きな音、特定の食べ物の食感など)を極端に嫌がる。
  • いつも決まった道順でしか通園・通学したがらない。
  • 予定変更があるとパニックになったり、強い抵抗を示したりする。
  • 新しい環境や初めての場所が苦手。
  • 友達の気持ちを理解できず、トラブルになりやすい(順番が待てない、相手の嫌がることをしてしまうなど)。
  • ルールを文字通りにしか理解できず、臨機応変に対応できない。
  • 運動が苦手で、体の使い方がぎこちない。
  • 字が汚い、箸の持ち方がぎこちないなど、手先の不器用さがある。

これらの特徴は、単なる「わがまま」「内気」「落ち着きがない」として見過ごされてしまうことも少なくありませんが、本人が社会生活を送る上で大きな困難を感じているサインである場合があります。

学校生活での困りごと

子供のアスペルガー症候群の特性は、特に学校生活で顕著な困りごととして現れやすいです。

  • 学習面: 興味のある特定の教科(理科、社会など)には熱中して驚異的な知識を発揮するが、興味のない教科には全く集中できない。
    先生の指示を正確に理解できない、板書を写すのが苦手、作文や発表など抽象的な課題が苦手といった困難が見られることがある。
  • 対人関係: 友達の感情や意図を読み取れず、遊びの輪に入れなかったり、仲間外れにされたりしやすい。
    言葉を文字通りに受け取ってしまい、友達の冗談やからかいに傷つきやすい。
    自分のこだわりやルールを友達に押し付けてしまう。
  • 集団行動: クラスの活動や行事(運動会、学芸会など)にスムーズに参加するのが難しい。
    朝の会や帰りの会など、決まった手順での行動が苦手なことがある。
  • 感覚: 教室の騒音、チャイムの音、体育館の光などが気になって集中できない。
    制服の素材や体操服の肌触りが苦手で着られない。
    給食の特定のメニューが食べられない。
  • 変化: 時間割の変更、休日の予定、遠足や修学旅行など、普段と違う予定や環境の変化に強い不安を感じる。
  • ルール: 学校の暗黙のルール(廊下を走らない、席を立たないなど)が分からず、先生に注意されることが多い。

これらの困りごとが続くと、学校に行くこと自体が苦痛になったり、不登校につながったりするリスクもあります。
学校や家庭での理解と適切なサポートが不可欠です。

軽いアスペルガー症候群のサイン

「軽いアスペルガー症候群」という医学的な診断名はありませんが、特性が比較的目立ちにくく、日常生活を送る上で大きな支障はないように見えるが、本人としては生きづらさを感じている、いわゆる「グレーゾーン」の状態を指して使われることがあります。

軽いアスペルガー症候群のサインとして、以下のようなものが考えられます。

  • 人付き合いはできるが、どこかぎこちない、または深く親しい友人が少ない。
  • 「ちょっと変わっているね」と言われることが多い。
  • 空気が読めないと言われることがあるが、本人はなぜそう言われるのか分からない。
  • 特定の趣味や興味に驚くほど詳しいが、それ以外の話題にはついていけないことがある。
  • 変化があると少し戸惑うが、何とか対応できる。
  • 特定の音や匂いが気になることがあるが、我慢できないほどではない。
  • 冗談や皮肉を真に受けてしまうことがあるが、後で気づいたり、人に聞いたりして理解できる。
  • 集団行動はできるが、終わると非常に疲れる。
  • 仕事や学業は一定レベルでこなせるが、対人関係やチームワークが必要な場面でつまずきやすい。
  • 他人への共感が少し苦手だと自覚している。

これらのサインは、特性の程度が軽いために、本人も周囲も発達障害であることに気づきにくい場合があります。
しかし、本人にとっては、これらの特性が原因で慢性的なストレスを抱えていたり、自分を責めてしまったりすることがあります。
もし、このようなサインに心当たりがあり、生きづらさを感じているのであれば、専門機関に相談してみることも考えてみましょう。

女性のアスペルガー症候群の特徴(大人・チェック)

女性のアスペルガー症候群(ASD)は、男性に比べて診断されにくい傾向があると言われています。
これは、女性がコミュニケーションや社会的なルールを観察し、模倣することで特性をカモフラージュする「カモフラージュ(擬態)」が得意な場合があるためです。

そのため、女性のアスペルガー症候群は、子供の頃にはあまり目立たず、大人になってから、人間関係のトラブルや、子育て、仕事といった複雑な社会生活に直面した際に困難を感じ、「もしかして?」と気づくケースが多く見られます。

大人の女性に見られるアスペルガー症候群の特徴として、以下のようなものが挙げられます。

  • 人間関係: 表面上は社交的に振る舞えるが、会話のキャッチボールや本音での深い関わりが苦手で、親しい友人が少ない。
    人に合わせすぎてしまい、自分の意見が言えない、または無理をして疲弊する。
    人の気持ちを理解するのが難しく、トラブルになりやすいが、その原因が自分にあることに気づきにくい。
  • 興味・こだわり: 男性と同様に特定の興味に深く没頭するが、その対象がアニメ、特定の俳優やアーティスト、読書、特定の分野の学習など、女性が一般的に興味を持ちやすい分野であるため、周囲に気づかれにくいことがある。
    収集癖が強い。
  • 感覚過敏: 男性と同様に、特定の音、光、触覚、匂いなどに過敏さを示すことがある。
    特に、肌着の縫い目やタグが耐えられない、特定の化粧品の匂いが苦手、人混みが苦痛といった形で現れることがある。
  • 仕事: 細かい作業や定型業務は得意だが、臨機応変な対応やチームでの協調が苦手。
    同僚との雑談や飲み会が苦痛。
    仕事とプライベートの切り替えが難しい。
  • カモフラージュによる疲弊: 周囲に溶け込もうと無理をして、常に緊張状態にあり、強いストレスや疲労を感じている。
    家に帰るとぐったりして何もできない、うつ病や適応障害、不安障害などを併発しやすい。
  • 不器用さ: 料理の手順が覚えられない、片付けが苦手、運転が苦手など、日常生活における不器用さが見られることがある。

インターネット上には「女性アスペルガーチェックリスト」のようなものも存在しますが、これはあくまで目安であり、自己判断は禁物です。
もし、これらの特徴に心当たりがあり、日常生活で困難や生きづらさを感じている場合は、専門の医療機関や相談機関に相談することが重要です。

アスペルガー症候群かもしれないと感じたら(診断・相談)

もしご自身やご家族、身近な人がアスペルガー症候群(ASD)の特性に当てはまるかもしれないと感じ、日常生活や社会生活で困難を感じている場合は、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大切です。
適切な診断を受けることで、特性を理解し、必要なサポートや支援につなげることができます。

診断のプロセス

アスペルガー症候群を含むASDの診断は、医師(精神科医、小児科医、児童精神科医など)が行います。
特定の検査機器を使って診断できるものではなく、問診や行動観察、様々な心理検査の結果を総合的に判断して行われます。

一般的な診断のプロセスは以下の通りです。

  • 相談・初診: まずは専門の医療機関(精神科、心療内科、児童精神科など)を受診します。
    予約が必要な場合が多いため、事前に確認しましょう。
    現在の困りごと、生育歴、家族構成などを尋ねられます。
  • 問診: 本人や家族(特に幼少期の様子を知っている保護者)から、これまでの発達の状況、学校や職場での様子、対人関係、興味やこだわり、感覚の偏りなどについて詳しく話を聞きます。
    可能であれば、母子手帳や連絡帳、通知表など、幼少期の記録を持参すると参考になります。
  • 行動観察: 診察室や待合室などでの本人の様子を観察します。
    医師とのやり取りや、待っている間の行動などから、コミュニケーションや対人関係の特性、反復行動などを確認します。
  • 心理検査: 知的能力を測る検査(WAIS、WISCなど)や、ASDの特性の傾向を測る質問紙検査(AQ、PARSなど)、対人スキルの検査など、いくつかの心理検査が行われることがあります。
    これらの検査結果は、診断の参考情報となります。
  • 総合的な評価と診断: 上記の問診、行動観察、心理検査の結果などを総合的に評価し、DSM-5-TRなどの診断基準に照らし合わせて、医師が診断を下します。
    特性の程度や、併存する可能性のある他の疾患(ADHD、知的障害、不安障害など)についても評価されます。

診断には時間がかかる場合があり、複数回の診察や検査が必要となることもあります。
診断結果は、本人が自身の特性を理解し、今後の支援や環境調整を検討する上で非常に重要な情報となります。

診断テストについて

前述の診断プロセスで行われる「診断テスト」は、単独でASDの診断を下すものではありません
あくまで医師が総合的に判断するための参考情報として用いられます。

代表的な心理検査としては、以下のようなものがあります。

  • 知能検査 (WAIS-IV, WISC-V): 知的な発達の状況や、得意なこと・苦手なことの偏りを把握するために行われます。
    全体的なIQだけでなく、言語理解、視覚-空間、流動性推理、ワーキングメモリ、処理速度といった下位検査のバランスを見ることが、ASD特性に関連する認知機能の偏りを理解する上で重要です。
  • 自閉スペクトラム症関連の質問紙検査 (AQ, EQ, PQ, RMETなど): ASDの特性の傾向を自己評価または他者評価(保護者や配偶者など)で測る質問紙です。
    例えば、AQ(Autism-Spectrum Quotient)は、社会的スキル、コミュニケーション、想像力、こだわり、細部への注意などに関する質問に答えることで、自閉傾向の強さを測ります。
  • PARS (Pervasive Developmental Disorder Autism Society Japan Rating Scale): 幼少期の様子を聞き取り、ASDの特性を評価するための半構造化面接です。
    保護者への詳細な質問を通じて、乳幼児期からの発達経過や特性の現れ方を確認します。
  • ADHDに関する検査 (ADHD-RS, CAARSなど): ASDとADHDは併存することが多いため、ADHDの特性の有無や程度を確認するために行われることがあります。

これらの検査は、あくまで個人の特性の傾向や認知機能を数値化するものであり、その結果だけで診断が決まるわけではありません。
診断は、必ず専門医による詳細な問診や行動観察と組み合わせて行われます。
インターネット上の簡易的なチェックリストは、あくまで参考程度にとどめ、専門家への相談をおすすめします。

相談できる専門機関

アスペルガー症候群(ASD)の診断や、関連する困りごとについて相談できる専門機関はいくつかあります。

機関名 相談内容の例 対象者
精神科・心療内科 診断、二次障害(うつ病、不安障害など)の治療、特性に関する医学的アドバイス 主に成人
児童精神科・小児科 子供の診断、発達の相談、学校や家庭での対応のアドバイス 主に児童・思春期
発達障害者支援センター 発達障害に関する全般的な相談、情報提供、関係機関との連携、ペアレントトレーニングなどの支援プログラムの紹介 成人・子供
保健所・市町村の相談窓口 発達に関する相談、医療機関や支援機関の紹介、子育て相談、福祉サービスの案内 全年代
障害者就業・生活支援センター 仕事に関する相談、就職活動の支援、職場定着支援、日常生活に関する助言 働く障害者
ハローワーク(専門窓口) 発達障害のある人のための就職相談、求人紹介、職業訓練の案内 就職希望者
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まずは、お住まいの地域の保健所や市町村の福祉窓口、または発達障害者支援センターに相談してみるのが良いでしょう。
これらの機関は、適切な医療機関や支援サービスの情報を提供してくれたり、相談に乗ってくれたりします。

医療機関を受診する場合は、発達障害の診断や診療を行っているか、事前に電話などで確認することをおすすめします。
医師によって専門分野が異なるため、発達障害に詳しい医師を選ぶことが重要です。

アスペルガー症候群との向き合い方・サポート

アスペルガー症候群(ASD)は治る病気ではありませんが、特性を理解し、適切なサポートを受けることで、生きづらさを軽減し、より自分らしく社会生活を送ることが可能になります
本人だけでなく、家族や周囲の人々が特性を理解し、適切な接し方を学ぶことが非常に重要です。

特性を理解することの重要性

自身の特性がアスペルガー症候群(ASD)に由来するものだと理解することは、自己肯定感を高めることにつながります。
それまで「なぜ自分は他の人と同じようにできないのだろう」「努力が足りないのだろうか」と自分を責めていた原因が、脳の機能の特性によるものであると分かるからです。

特性を理解することで、苦手なことの原因が分かり、無理に克服しようとするのではなく、工夫したり、周囲に配慮を求めたりするといった現実的な対処が可能になります。
例えば、急な予定変更が苦手なら、事前に変更の可能性を知らせてもらうようお願いする、マルチタスクが苦手なら、一つずつ順番に業務をこなす工夫をする、といった具合です。

また、アスペルガー症候群の特性は、困難な側面がある一方で、特定の分野への深い集中力、豊富な知識、正直さ、ルールや規則を厳守する真面目さといった強みにもなり得ます。
自分の強みを理解し、それを活かせる環境を見つけることも、より充実した人生を送る上で大切です。

周囲の人々が特性を理解することも、本人の生きづらさを軽減するために不可欠です。
「困った人」ではなく「困っている人」として捉え、どのようなサポートが必要なのかを一緒に考える姿勢が重要です。

周囲ができる接し方・会話例

アスペルガー症候群(ASD)の人とのコミュニケーションや関わり方において、周囲の理解と配慮は非常に重要です。
以下に、具体的な接し方や会話の例を挙げます。

  • 言葉は分かりやすく、具体的に伝える: 曖昧な表現や比喩、皮肉は避け、何を、どうしてほしいのかを具体的に、明確に伝えましょう。
    • (例)「ちょっとこれお願いね」→「〇〇さん、この書類を△△時までに××部に持って行ってもらえますか?」
    • (例)「場の空気読んでね」→「今、みんな真剣な話をしているから、静かに聞いていようか」
  • 視覚的な情報も活用する: 口頭での説明だけでなく、メモや図、リストなど、視覚的な情報も合わせて伝えると理解が深まります。
    • (例)仕事の手順を伝えるときに、口頭だけでなくマニュアルやチェックリストを見せる。
    • (例)今日の予定を紙に書いて貼っておく。
  • 予定変更は事前に知らせる: 予定の変更や予期せぬ出来事は不安や混乱を招きやすいため、できるだけ早めに、理由も含めて伝えましょう。
    • (例)「明日の会議の時間が10時から11時に変更になったよ。
      資料の準備をお願いします。」
  • 興味のある話題に耳を傾ける: 特定の興味に深く詳しいことが多いので、その話題については真剣に聞き、共感する姿勢を見せると、安心感につながり、信頼関係を築きやすくなります。
    ただし、話が一方的になりすぎないように、適度に相槌を打ったり、質問をしたりすることも必要です。
  • 否定的な言葉よりも肯定的な言葉を使う: 苦手なことや失敗に焦点を当てるのではなく、できたことや努力を認め、肯定的な言葉で伝えましょう。
    • (例)「またミスしたの?」→「この部分はよくできていたね。
      次はここを一緒に確認してみよう。」
  • プライベートな空間を尊重する: 過剰な接触や、一方的にパーソナルスペースに入り込むのは避け、適切な距離感を保ちましょう。
  • 無理に共感を求めない: 相手の気持ちを察したり、共感したりするのが苦手な場合があることを理解し、感情的な反応を過度に期待しないようにしましょう。
  • 感覚過敏への配慮: 特定の音や光などが苦手な場合は、可能であれば環境を調整したり、休憩できる場所を設けたりといった配慮を検討しましょう。
  • 休息も重要であることを理解する: 社会生活を送る上で過剰適応している場合、帰宅後や休日にぐったりしてしまうことがあります。
    これは怠けているのではなく、特性のために大きなエネルギーを使っているためであることを理解し、休息が必要であることを認めましょう。

大切なのは、本人の特性を責めるのではなく、理解しようと努め、お互いが過ごしやすくなるための方法を一緒に探していく姿勢です。

利用できる支援やサービス

アスペルガー症候群(ASD)の特性を持つ人が、日常生活、学業、仕事などで抱える困難を軽減するために、様々な支援やサービスを利用することができます。

支援・サービス名 内容の例
医療機関(精神科など) 診断、服薬治療(二次障害に対して)、カウンセリング、ペアレントトレーニング、特性に関する医学的アドバイス
発達障害者支援センター 発達障害に関する総合的な相談支援、各種情報提供、関係機関との連携調整、専門機関の紹介
地域の相談支援事業所 サービス等利用計画の作成、福祉サービスの利用調整、日常生活に関する相談支援
就労移行支援事業所 一般企業への就職を目指す人のための訓練(ビジネススキル、コミュニケーション練習など)、求職活動支援
就労継続支援事業所(A型・B型) 一般企業での就労が難しい人のための働く場と機会の提供、生産活動の機会提供
地域活動支援センター 創作的活動や生産活動の機会提供、地域交流の促進、日常生活に関する相談支援
放課後等デイサービス(児童) 学校の授業終了後や休日などに利用できる、創作活動や学習支援、集団での活動を通じた社会性やコミュニケーションスキルの訓練
自立訓練(生活訓練) 地域で自立した日常生活や社会生活を送るための必要な訓練(コミュニケーション、金銭管理、掃除など)の提供
ペアレントトレーニング 子供の発達特性を理解し、肯定的な関わり方を学ぶための保護者向けのプログラム
ピアサポート 同じ発達障害を持つ者同士が経験を共有し、支え合う場
当事者会・家族会 同じ悩みを持つ人たちが集まり、情報交換や交流を行う場
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など) 公共料金や税金の減免、交通機関の割引、就職における障害者枠の利用などが可能になる場合がある
障害年金 一定の障害状態にある場合に支給される年金

これらの支援は、本人の年齢、特性の程度、困りごとの内容、お住まいの地域などによって利用できるものが異なります。
まずは、発達障害者支援センター地域の相談支援事業所に相談し、どのような支援が本人に合っているのか、どのように利用できるのかといった情報を得ることが第一歩となります。

診断を受けていなくても相談できる機関もあります。
専門家と繋がり、適切なサポートを受けることで、本人だけでなく家族も抱える負担を軽減し、より良い生活を送るための道が開けるはずです。

まとめ

アスペルガー症候群は、現在「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名に含まれる発達障害の一つです。
その主な特徴は、対人コミュニケーションや相互作用の困難さ、そして限定された興味や反復的な行動、活動に見られます。
知的な遅れや言語発達の遅れが目立たない場合に、かつてアスペルガー症候群と呼ばれていました。

これらの特性は、子供から大人まで様々な形で現れ、日常生活や社会生活において人間関係や仕事、学業などで困難を引き起こすことがあります。
特に大人になってから、社会生活の複雑さの中で自身の特性による生きづらさに気づく方も少なくありません。
また、女性は特性をカモフラージュする傾向があるため、診断が遅れることもあります。

重要なのは、「アスペルガー症候群だから〇〇ができない」と決めつけるのではなく、一人ひとりの持つ固有の特性を理解することです。
どのような状況で困難を感じやすいのか、どのようなことに強い興味や能力があるのかを知ることが、自己理解や適切な対処、そして強みを活かすことにつながります。

もし、ご自身やご家族にアスペルガー症候群の特性が当てはまるかもしれないと感じ、困りごとがある場合は、一人で悩まずに専門の医療機関や相談機関に相談してください。
精神科医や児童精神科医による診断を受けることで、自身の特性をより深く理解でき、発達障害者支援センターや地域の相談窓口、就労支援機関など、適切な支援サービスにつながることができます。

アスペルガー症候群の特性は多様であり、困難がある一方で、特定の分野で才能を発揮したり、誠実で真面目であったりといった良い側面も多くあります。
特性を理解し、周囲も適切な知識を持って接することで、本人も周囲もより安心して過ごせる社会を築いていくことが大切です。

免責事項: 本記事は、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)に関する一般的な情報提供を目的としています。
診断や治療を目的とするものではなく、医学的な助言や診断に代わるものではありません。
ご自身の状態や気になる症状については、必ず専門の医療機関にご相談ください。
また、紹介している支援サービスは、お住まいの地域や個別の状況によって利用条件が異なります。
詳細については、各機関にお問い合わせください。

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