摂食障害は、食事や体重、体型に関する考え方や行動に深刻な問題が生じる病気です。
単に「食べすぎ」「食べなさすぎ」といった個人の意志の問題ではなく、複雑な心理的・身体的要因が絡み合った精神疾患であり、放置すると心身に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、摂食障害の主な種類とその特徴的な症状、身体や精神への影響、そして早期に気づくためのサインや相談先について詳しく解説します。ご自身や大切な方の「気になる」行動や状態について理解を深め、適切な対応につながる一助となれば幸いです。

摂食障害の症状とは？種類別の特徴と身体・精神への影響

摂食障害は、主に「神経性やせ症（拒食症）」と「神経性過食症（過食症）」に大別されますが、これらの診断基準を完全に満たさないものの治療が必要な状態や、その他の種類の摂食障害も存在します。それぞれの病気によって、現れる症状や経過は異なります。

摂食障害の主な種類と症状

ここでは、代表的な摂食障害の種類とその具体的な症状について掘り下げて見ていきましょう。

神経性やせ症（拒食症）の症状

神経性やせ症は、極端な食事制限によって体重が著しく減少することが中心となる病気です。本来、必要なエネルギーを摂取しているにもかかわらず、体重が増えることや肥満になることに対して強い恐怖を感じ、意図的に食事をコントロールしようとします。

神経性やせ症に見られる身体的な症状

神経性やせ症の最も顕著な特徴は、標準体重と比較して著しく低い体重です。これは、年齢、性別、発達段階、身体の健康状態を考慮した上で判断されます。単に痩せているだけでなく、低体重が続くことで身体に様々な影響が現れます。

• 体重減少と低体重: 標準体重（BMI18.5未満が目安、特に17未満で重症度が増す）を大きく下回る状態が続きます。にもかかわらず、本人は「もっと痩せなければ」と感じています。
• 月経異常（女性）: 低体重や栄養不足により、無月経（3ヶ月以上月経が止まる）となることが非常に多いです。これは体が妊娠を継続できない状態と判断し、生殖機能を停止させるためです。
• 徐脈・低血圧: 心拍数が減少し（徐脈）、血圧が低くなることがあります。これは代謝が低下し、身体がエネルギーを節約しようとする反応です。めまいや立ちくらみの原因になります。
• 低体温: 体温調節機能が低下し、常に寒さを感じたり、体温が低くなったりします。
• 皮膚や髪の変化: 皮膚が乾燥したり、体毛（特に産毛）が増えたり（うぶ毛の増加）、髪が抜けやすくなったりすることがあります。
• むくみ: 特に足などにむくみが見られることがあります。
• 骨密度の低下: 長期化すると、骨がもろくなり、骨粗鬆症のリスクが高まります。若い年齢での骨粗鬆症は、その後の健康に深刻な影響を及ぼします。
• 消化器系の問題: 便秘、腹痛、胃もたれなどが起こりやすくなります。
• 疲労感・筋力低下: エネルギー不足により、体が疲れやすく、筋力が低下します。

これらの身体症状は、体が生き延びるためにエネルギーを極限まで節約しようとする結果として現れます。

神経性やせ症に見られる精神的な症状

神経性やせ症は、身体的な症状だけでなく、精神面にも大きな影響を及ぼします。

• 体重増加への強い恐怖: 体重が増えること、あるいは太ることを極端に恐れます。
• 体型や体重への歪んだ認識: 実際に痩せているにも関わらず、「自分は太っている」と感じたり、自分の体型の一部（お腹、太ももなど）だけが太いと思い込んだりします。自己評価を体型や体重に過度に結びつけます。
• 完璧主義・強迫性: 食事のルールを厳格に守ろうとしたり、完璧に痩せようとしたりする傾向があります。食べるものや量に対して強いこだわりを持つこともあります。
• 抑うつ・不安: 気分が落ち込んだり、イライラしたり、不安を感じやすくなります。特に、食事の場面や体重測定の際に強い不安を感じることがあります。
• 孤立: 食事に関する問題を隠すために、人との会食を避けたり、外出を控えたりして、社会的に孤立することがあります。
• 睡眠障害: 寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めるなど、睡眠に問題が生じることがあります。
• 集中力や思考力の低下: 栄養不足により、頭がぼうっとする、物事に集中できない、考えがまとまらないといった症状が出ることがあります。
• 自傷行為や自殺リスク: 精神的な苦痛が大きく、自傷行為に走ったり、自殺を考えたりするリスクが高まるため、注意が必要です。

神経性やせ症には、食事制限のみを行う「制限型」と、食事制限に加えて過食や代償行動（嘔吐など）を伴う「過食・排出型」があります。過食・排出型は、神経性過食症と似た症状を持ちますが、決定的な違いは「低体重であること」です。

神経性過食症（過食症）の症状

神経性過食症は、制御不能な過食エピソードと、その後の不適切な代償行動が特徴です。体重は標準かそれ以上のことが多いですが、体重や体型に対する強いこだわりや自己評価の低さを伴います。

神経性過食症に見られる摂食行動の症状

• 過食エピソード: 通常の人が同じ時間、同じ状況で食べる量よりも明らかに多い量を、短時間（例えば2時間以内）で食べます。「食べるのを止められない」「自分でコントロールできない」という感覚を伴います。衝動的に起こることが多く、ストレスや感情の不安定さが引き金になることがあります。
• 秘密の食事: 過食を隠すために、人目を避けてこっそり食べることがあります。
• 食べるものへのこだわり: 特定の食べ物をまとめて食べる、普段は避けているものを衝動的に食べるなど、過食の内容に特徴が見られることがあります。

神経性過食症に見られる代償行動

過食によって体重が増えることへの恐怖や、過食してしまったことへの罪悪感から、体重増加を防ぐための行動（代償行動）を行います。

• 自己誘発性嘔吐: 指や物を喉に入れて意図的に吐き出します。最も一般的な代償行動です。
• 下剤や利尿剤の乱用: 体重を減らす目的で、本来の用途を超えて大量に服用します。
• 過剰な運動: 過食した分のカロリーを消費しようと、長時間や激しい運動を行います。
• 絶食: 過食した翌日や数日間、食事を一切摂らない、あるいは極端に制限する。

これらの代償行動は、過食の後に体重が増えることへの不安を一時的に和らげるために行われますが、実際には体重コントロールに効果が薄いだけでなく、身体に深刻なダメージを与えます。

神経性過食症に見られる精神的な症状

神経性過食症も、精神的な苦痛を伴います。

• 自己肯定感の低さ: 自分自身の価値を、体型や体重、食事のコントロールができているかどうかに過度に依存させ、自己肯定感が非常に低くなりがちです。
• 抑うつ・不安: 過食や代償行動を繰り返すことへの罪悪感や自己嫌悪から、気分が落ち込んだり、不安になったりします。
• 衝動性: 過食以外にも、買い物やアルコール、薬物など、他の衝動的な行動を伴うことがあります。
• 対人関係の困難: 自分の問題を隠そうとしたり、感情のコントロールが難しかったりすることから、人との関係を築くのが難しくなることがあります。
• 感情の不安定さ: 気分の波が激しく、感情をうまく処理できないことが、過食の引き金になることがあります。
• 自傷行為や自殺リスク: 精神的な苦痛が大きく、自傷行為や自殺リスクも無視できません。

神経性過食症に見られる身体的な症状

神経性過食症の身体症状は、主に代償行動によって引き起こされます。神経性やせ症のような低体重に伴う症状とは異なります。

• 電解質異常: 嘔吐や下剤・利尿剤の乱用により、体内の電解質バランス（カリウム、ナトリウムなど）が崩れます。これは心臓の機能に影響を与え、不整脈などの命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。
• 歯のエナメル質侵食: 繰り返しの嘔吐により、胃酸が歯に触れ、エナメル質が溶けて虫歯になりやすくなります。
• 唾液腺の腫れ: 特に耳下腺や顎下腺が腫れて、顔がむくんで見えることがあります。
• 食道炎・胃炎: 嘔吐によって食道や胃の粘膜が炎症を起こすことがあります。まれに食道破裂を起こすこともあります。
• 便秘: 下剤を乱用すると、自然な排便機能が低下し、下剤なしでは排便できなくなることがあります。
• むくみ: 体内の水分バランスが崩れて、むくみが生じることがあります。

神経性過食症の人は、体重が標準範囲内にあるため、周囲から病気だと気づかれにくいことがあります。しかし、本人は過食と代償行動を繰り返すことに強い苦痛を感じており、心身へのダメージも深刻です。

回避・制限性食物摂取症の症状

回避・制限性食物摂取症（ARFID：Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder）は、体型や体重へのこだわりとは無関係に、特定の理由から栄養摂取が不十分になる新しい診断名です。

主な原因としては、以下のようなものがあります。

• 特定の感覚特性（見た目、匂い、食感、温度など）に対する嫌悪感: 特定の食品の見た目や食感などが受け付けられず、食べられるものが極端に限定されます。
• 食べることに伴う嫌な経験: 過去に嘔吐した経験や窒息しそうになった経験などがトラウマとなり、食べることを恐れるようになります。
• 食欲不振または食べることに興味がない: 食事にあまり関心を示さず、必要な量を食べられません。

これにより、以下のような症状が現れます。

• 著しい体重減少、または小児期では期待される体重増加や発達の遅れ
• 著しい栄養欠乏
• 経管栄養や栄養補助食品への依存
• 心理社会的機能の顕著な妨げ

この病気は、小児期に始まることが多いですが、成人にも見られます。神経性やせ症との大きな違いは、「体型や体重への歪んだ認識や、太ることへの恐怖がない」という点です。

その他の摂食障害の症状

上記の診断基準を完全に満たさない場合でも、摂食障害の症状が現れており、臨床的に問題がある状態は「特定不能の摂食障害（OSFED：Other Specified Feeding or Eating Disorder）」や「特定されない摂食障害（UNSFED：Unspecified Feeding or Eating Disorder）」として診断され、治療が必要です。

OSFEDに含まれる例としては、以下のようなものがあります。

• 非定型神経性やせ症: 神経性やせ症の基準は満たすが、体重が標準範囲内であるケース。
• 過食エピソード障害: 神経性過食症のような過食エピソードはあるが、代償行動を伴わないケース。
• 神経性過食症、低頻度および/または限定された期間: 神経性過食症の基準は満たすが、過食や代償行動の頻度が週1回未満、または罹患期間が3ヶ月未満のケース。
• 排出障害: 過食は伴わないが、食べたものを吐き出すなどの排出行動を繰り返すケース。
• 夜間摂食症候群: 夜間に目が覚めて食べる、あるいは夕食後に過剰に食べることで苦痛を感じるケース。

また、これらの主要な摂食障害とは別に、以下のようなものもあります。

• 異食症: 栄養のないもの（紙、粘土、髪の毛など）を食べ続ける病気。
• 反芻障害: 食べたものを意図的に吐き戻し、再び噛んだり飲み込んだりする病気。

摂食障害は多様な形で現れるため、「典型的な症状に当てはまらないから大丈夫」と自己判断せず、少しでも気になる症状があれば専門家に相談することが重要です。

摂食障害の初期症状と気づきにくい特徴

摂食障害は、病気が進行するにつれて症状が顕著になりますが、初期には気づきにくいサインが多くあります。特に、本人や家族が「健康的なダイエット」や「食が細くなっただけ」と思い込んでいる間に進行してしまうことがあります。

初期に見られる可能性のあるサイン

• 食事量の変化: 急に食事量が減る、特定の食品（特に炭水化物や脂質）を避けるようになる、食事を抜く回数が増える。
• 食べるスピードの変化: 極端にゆっくり食べる、あるいは反対に早食いになる。
• 食事中の行動の変化: 食事を細かくちぎる、水やお茶を大量に飲む、食事中に席を立つことが増える。
• 食べ物へのこだわり: 特定の食品のカロリーや栄養成分を異常に気にする、賞味期限や原材料に過度にこだわる。
• 体重や体型への関心の高まり: 頻繁に体重計に乗る、鏡で体型をチェックする回数が増える、自分の体型についてネガティブな発言が増える。
• 運動習慣の変化: 急に運動を始める、あるいは運動量が異常に増え、疲れているのに止められない。
• 感情の変化: 気分が不安定になる、イライラしやすくなる、以前より感情を表に出さなくなる。
• 社会性の変化: 人との会食を避ける、友人と出かけるより一人で過ごすことを好むようになる。

気づきにくい特徴

• 「健康志向」に見える: 野菜中心の食事にしたり、運動を習慣にしたりすることは、一見健康的で良い習慣に見えるため、周囲が異常に気づきにくいことがあります。しかし、それが極端であったり、体重への恐怖に基づいていたりする場合は注意が必要です。
• 隠そうとする: 摂食障害の人は、自分の食行動や体重へのこだわりを周囲に知られたくないと感じ、隠そうとすることが多いです。食事を終えたように装ったり、食べたものを吐いたことを隠したりします。
• 病識がない: 特に神経性やせ症の場合、著しく痩せているにも関わらず、自分は痩せているとは考えていない、あるいは痩せていることが問題だと思っていないことがあります。これは病気による認識の歪みであり、治療を拒否する原因にもなります。
• 感情の表現が苦手: 自分の感情、特にネガティブな感情を言葉で表現するのが苦手な人が、食行動によってその感情を発散しようとすることがあります。悲しい、辛いといった気持ちを、過食や絶食という行動で埋めようとするため、本人の内面の苦痛が外からは見えにくいことがあります。

これらのサインは、一つだけで摂食障害と判断することはできませんが、複数が当てはまる場合や、以前と比べて明らかに様子がおかしいと感じる場合は、注意深く見守り、適切な対応を検討することが大切です。

摂食障害が多い年代と性別の傾向

摂食障害は、どの年代、どの性別にも起こりうる病気ですが、特に発症しやすい傾向があります。

• 年代:
  • 思春期から青年期: 摂食障害の発症が最も多い時期です。身体の成長に伴う変化、学校や社会での人間関係、将来への不安、体型や容姿への意識の高まりなどが複雑に絡み合います。
  • 成人期: 成人になってから発症するケースや、思春期から持ち越して慢性化するケースもあります。仕事のストレス、ライフステージの変化（結婚、出産など）、加齢に伴う体型の変化などが影響することがあります。
  • 小児期: 回避・制限性食物摂取症は小児期に発症することが多いですが、神経性やせ症や神経性過食症が10歳未満で発症するケースも報告されています。
• 性別:
  • 女性: 全体的に見て、男性よりも女性の発症率が圧倒的に高いとされています。背景には、社会的な「痩せていること」への価値観や、女性ホルモンの影響などが関連していると考えられています。
  • 男性: 男性にも摂食障害は存在しますが、女性に比べて少なく、診断や支援につながりにくい傾向があります。男性の場合、「筋肉質になりたい」という願望から過剰な食事制限や運動、サプリメントの乱用につながることもあります。
  • 性的マイノリティ: 性的指向や性自認においてマイノリティに属する人々は、マジョリティに比べて摂食障害の発症リスクが高いとする研究結果もあり、社会的孤立や偏見、自己肯定感の低さなどが影響していると考えられています。

これらの傾向はあくまで一般的なものであり、傾向に当てはまらないからといって摂食障害にならないわけではありません。重要なのは、年齢や性別に関わらず、気になる症状があれば専門家に相談することです。

摂食障害が身体や精神に与える影響

摂食障害は、単に食行動の問題に留まらず、全身の健康に深刻な影響を及ぼします。病気が長引くほど、その影響は大きくなります。

身体への影響

摂食障害の種類や重症度、罹患期間によって現れる影響は異なりますが、以下のようなものがあります。

影響を受ける主な器官・機能	神経性やせ症（拒食症）	神経性過食症（過食症）
全身	著しい低体重、成長停止（小児期）	標準体重〜過体重が多い
循環器系	徐脈、低血圧、不整脈、心筋萎縮、心不全リスク	電解質異常による不整脈、心停止リスク
内分泌系	無月経、性ホルモン低下、甲状腺機能低下、骨粗鬆症	月経不順（過食・排出型）、電解質異常による影響
消化器系	便秘、腹痛、胃もたれ、胃内容物排出遅延	食道炎、胃炎、胃拡張、便秘（下剤乱用による）、歯のエナメル質侵食、唾液腺の腫れ
腎臓・電解質	脱水、電解質異常（重症の場合）	脱水、重度の電解質異常
皮膚・毛髪	皮膚乾燥、うぶ毛の増加、脱毛	皮膚乾燥（脱水）、唾液腺の腫れによる顔のむくみ
骨	骨密度の低下、骨折リスクの上昇（特に若年者）
脳	脳萎縮の可能性、集中力・記憶力低下	電解質異常による影響

これらの身体的な問題は、命に関わるものも含まれます。特に、極端な低体重や重度の電解質異常は、緊急性の高い状態となることがあります。回復には時間がかかり、一部の影響（骨密度の低下など）は完全に元に戻らない可能性もあります。

精神への影響

身体的な問題と同様に、精神的な影響も深刻です。

• 抑うつや不安障害: 摂食障害の多くは、抑うつや不安障害を合併しています。過食や体重へのこだわりが、これらの感情を悪化させることもあります。
• 強迫性障害: 特定の食べ物や食習慣、運動などに異常にこだわる強迫的な思考や行動を伴うことがあります。
• 境界性パーソナリティ障害: 感情の不安定さ、衝動性、対人関係の問題などを特徴とする境界性パーソナリティ障害を合併するケースも見られます。
• 自傷行為: 精神的な苦痛を和らげるために、リストカットなどの自傷行為を行うことがあります。
• 自殺リスク: 摂食障害は、精神疾患の中でも自殺リスクが高い病気の一つです。特に、抑うつ症状が重い場合や、孤立している場合にリスクが高まります。
• 薬物・アルコール依存: 摂食障害の苦痛から逃れるために、薬物やアルコールに依存してしまうことがあります。

社会生活への影響

• 対人関係の困難: 食事や体型に関する問題を隠そうとしたり、感情が不安定になったりすることで、家族や友人との関係が悪化し、孤立することがあります。
• 学業や仕事への影響: 集中力や思考力の低下、疲労感、体調不良などにより、学業や仕事に支障をきたすことがあります。休学や休職、退職につながることも少なくありません。
• 経済的な問題: 過食のための食費がかさんだり、代償行動のための商品（下剤など）を購入したりすることで、経済的に困窮することがあります。

摂食障害は、本人の身体と心を蝕むだけでなく、家族の関係性や社会生活にも大きな影響を及ぼす病気です。早期に適切な治療を開始することが、これらの影響を最小限に抑えるために非常に重要です。

摂食障害かなと思ったら：相談先と受診の目安

もし、ご自身や大切な人に摂食障害かもしれないと気になる症状や行動が見られる場合、一人で抱え込まず、ためらわずに専門機関に相談することが大切です。摂食障害は回復可能な病気であり、適切な支援があれば改善することができます。

相談先

どこに相談すればよいか迷う場合は、以下の窓口や専門機関を検討してみてください。

相談先の種類	特徴	連絡先/探し方
精神科・心療内科	摂食障害の診断や治療（薬物療法、精神療法など）を行う専門機関。	かかりつけ医に紹介してもらう、インターネットで「摂食障害 〇〇市 病院」などと検索、地域の精神保健福祉センターに相談して紹介を受ける。摂食障害の専門病棟や専門外来を持つ病院もあります。
保健所・精神保健福祉センター	地域住民の健康に関する相談窓口。精神保健福祉士などが、専門的な相談に乗ったり、適切な医療機関や支援機関を紹介したりしてくれます。	各自治体のウェブサイトで連絡先を確認できます。
自助グループ・家族会	摂食障害の当事者や家族が集まり、経験や情報を共有し、支え合う場。	摂食障害関連のNPOや患者団体などが運営しています。インターネットで検索するか、医療機関や保健所に問い合わせて紹介を受けることができます。
学校の相談室	学生の場合、学校のカウンセラーや養護教諭に相談できます。	在籍する学校に確認してください。
職場の健康相談室	職場に設置されている場合、産業医やカウンセラーに相談できます。	勤務先に確認してください。
公的な相談窓口	精神的な悩みや健康に関する一般的な相談に乗ってくれる窓口。	厚生労働省のウェブサイトなどで紹介されています。（例：よりそいホットライン、こころの健康相談統一ダイヤルなど）

受診の目安

以下のようなサインが見られる場合は、できるだけ早く専門機関を受診することを強くお勧めします。

• 体重が著しく減少している、または標準体重を大幅に下回っている
• 過食エピソードを繰り返している
• 過食の後に自己誘発性嘔吐や下剤乱用などの代償行動を行っている
• 食事の量や内容に対するこだわりが強く、日常生活に支障が出ている
• 「太るのが怖い」「痩せなければならない」という考えが頭から離れない
• 自分の体型や体重に対して異常なほど気にしている
• 無月経やめまい、立ちくらみ、疲れやすさなど、身体的な不調がある
• 気分がひどく落ち込んでいる、強い不安を感じる、イライラしやすい
• 一人で食べようとする、人との会食を避けるようになる
• 自傷行為をしている、あるいは死にたいと考えることがある

これらの症状は、摂食障害の可能性があるサインです。特に、体重の著しい減少や身体的な不調がある場合は、早急な医療的介入が必要な場合があります。

本人に病識がなく、受診を拒むことも少なくありません。その場合は、まず家族や信頼できる人が上記の相談窓口に連絡し、どう対応すればよいかアドバイスを求めることから始めるのが良いでしょう。回復への第一歩は、「助けを求めること」です。

【まとめ】摂食障害の症状を知り、早期の相談へ

摂食障害は、外見からは分かりにくいことも多く、本人も問題を隠そうとすることがあるため、気づきにくい病気です。しかし、放置すれば心身に深刻な影響を及ぼし、回復には時間がかかる可能性があります。

この記事で解説したように、摂食障害の症状は種類によって異なります。神経性やせ症の主な症状は低体重と体重増加への強い恐怖、神経性過食症は過食と代償行動、回避・制限性食物摂取症は体型に関わらない栄養摂取の困難です。これらの病気は、身体的な不調や精神的な苦痛、そして社会生活の困難を伴います。

もし、ご自身や身近な人に気になるサインが見られたら、「気のせい」や「一時的なもの」と決めつけず、この記事でご紹介したような専門機関に相談することを検討してください。

摂食障害は、適切な治療と周囲のサポートがあれば、回復が十分に可能な病気です。一人で悩まず、専門家の力を借りながら、回復への道を歩み始めることが大切です。早期発見・早期治療が、回復への鍵となります。

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免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的診断や治療に代わるものではありません。ご自身の症状についてご心配な場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けてください。