ゲーム行動症（ゲーム依存症）は、近年世界的に注目されている心の健康問題の一つです。過度なゲームプレイによって日常生活に支障が生じ、やめたくてもやめられない状態を指します。なぜ、特定の人がゲーム行動症に陥ってしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、脳の働き、ゲームの持つ特性、個人の心理状態、そして周囲の環境など、様々な要因が複雑に絡み合っています。

この記事では、ゲーム行動症の定義から始まり、その主な原因を多角的な視点から掘り下げて解説します。原因を理解することは、適切な対策や予防につながる第一歩です。ご自身や大切な人がゲームとの関わり方で悩んでいる場合、ぜひ最後まで読んで、問題解決の糸口を見つけてください。

ゲーム行動症は、単にゲームが好きで長時間プレイすることとは異なります。世界保健機関（WHO）が定める国際疾病分類第11版（ICD-11）において、疾患として正式に分類されました。これは、ゲーム行動症が個人の健康や社会生活に与える影響の大きさが国際的に認識されたことを意味します。

ゲーム行動症の定義と診断基準（ICD-11）

ICD-11におけるゲーム行動症（Gaming disorder）の定義は、持続的または反復的なゲーム行動パターンであり、以下の3つの特徴が少なくとも12ヶ月間見られる場合に診断が検討されます。ただし、症状が重篤な場合は12ヶ月未満でも診断されることがあります。

• ゲーム行動の制御の障害: ゲームの開始、頻度、強度、継続時間、終了、および状況に関して制御することができない状態です。
  例えば、「少しだけやろうと思っていたのに、気づいたら朝になっていた」「やめようと決意したのに、すぐに再開してしまう」といった状況が該当します。
• ゲームを他の活動よりも優先する: 生活上の関心事や日々の活動よりもゲームを優先するようになります。以前は楽しんでいた趣味や友人との交流、学業や仕事などが疎かになり、ゲームが生活の中心となってしまいます。
• 否定的な結果が生じているにもかかわらずゲーム行動を継続またはエスカレートさせる: ゲームによって、個人や家族、社会、学業、職業、その他の重要な機能の領域において重大な障害が生じているにもかかわらず、ゲームを続けてしまう、あるいはさらにゲームに費やす時間や強度が増していく状態です。
  例えば、成績が著しく下がった、仕事を失った、家族との関係が悪化した、健康を損なったなど、明らかな問題が起きているにもかかわらず、ゲームをやめられない、といった状況です。

これらの特徴が、臨床的に診断可能な程度の苦痛や、社会、学業、職業など重要な領域における機能の著しい障害を引き起こしている場合に、ゲーム行動症と診断される可能性があります。重要な点は、これらの行動パターンが個人的な苦痛や機能障害を引き起こしているかどうかです。

ゲーム行動症になる主な原因

ゲーム行動症に陥る原因は多岐にわたり、単一の要因で説明できるものではありません。多くの場合、複数の要因が複合的に影響し合って発症すると考えられています。ここでは、主な原因をいくつか掘り下げて解説します。

脳のメカニズムによる原因

人間の脳には、快感や報酬を感じることで特定の行動を強化する「報酬系」と呼ばれる神経回路があります。この報酬系は、生存に必要な行動（食事、休息など）を促すために進化しましたが、ゲームもこの報酬系を強く活性化させることが分かっています。

ドーパミン分泌と報酬系の関係

ゲームをプレイしているとき、目標達成（レベルアップ、敵を倒す、クエストクリアなど）や予期せぬ良い出来事（レアアイテム入手、大当たりなど）が起こると、脳内の報酬系からドーパミンという神経伝達物質が放出されます。ドーパミンは快感や喜び、達成感といったポジティブな感情をもたらし、「この行動は良いものだ」と脳に学習させます。これにより、「またゲームをプレイしたい」という欲求が強まります。

ゲームは、このようなドーパミン放出を促す刺激を非常に効率よく、かつ頻繁に提供するように設計されています。例えば、敵を倒すごとに経験値やアイテムが得られる、パズルを解くたびに次のステージに進める、といった形で、短い間隔で様々な報酬が用意されています。これにより、脳の報酬系が過剰に活性化され続け、ゲームをプレイすることが強く習慣化されてしまう可能性があります。

さらに、ゲームを「やめよう」とするとき、脳の前頭前野という部分が衝動を抑える働きをしますが、ゲームに没頭しすぎると、この前頭前野の機能が一時的に低下したり、報酬系の過剰な活性化に打ち負かされたりすることがあります。結果として、ゲームをやめたいと思っても、衝動を制御することが難しくなり、「やめられない」状態に陥りやすくなります。

ゲーム自体の特性による原因

ゲーム行動症は、個人の要因だけでなく、ゲームそのものが持つ様々な特性も大きく関わっています。ゲームはプレイヤーを楽しませ、継続的にプレイしてもらうために、非常に巧妙なデザインが施されています。

達成感や報酬を得やすいゲーム設計

多くのゲームは、プレイヤーが努力すれば何らかの形で報われるように設計されています。簡単なものから難しいものまで多様な目標が設定されており、それをクリアするたびに達成感や報酬（経験値、アイテム、スキル、称号など）が得られます。現実世界ではすぐに得られないような大きな達成感や特別な報酬を、ゲーム内では比較的容易に、あるいは短期間で手に入れることができます。この「努力すれば報われる」という感覚が、プレイヤーを強く惹きつけ、さらにプレイを続けるモチベーションとなります。特に、現実世界で達成感を得る機会が少ないと感じている人にとっては、ゲーム内での成功体験が大きな意味を持つことがあります。

ソーシャル機能や競争要素

オンラインゲームでは、他のプレイヤーと一緒にプレイしたり、交流したりする機能が充実しています。チームで協力して敵を倒したり、困難なクエストをクリアしたりすることで、仲間との連帯感や達成感を共有できます。また、ランキングシステムや対戦モードなど、他のプレイヤーと競争する要素も多く、勝利したときの優越感や、もっと強くなりたいという向上心がプレイを継続する原動力となります。ゲーム内のコミュニティに居場所を見つけたり、友人とのつながりを保つためにゲームを続けたりする人も少なくありません。現実世界で人間関係を築くのが苦手な人にとって、ゲーム内のソーシャル機能は重要な交流の場となることがあります。

終わりがない継続的なアップデート

多くのオンラインゲームやスマートフォンゲームは、一度完成して終わりではなく、定期的に新しいコンテンツ（ストーリー、キャラクター、イベント、機能など）が追加される形で運営されています。これにより、プレイヤーは常に新しい目標や楽しみを見つけることができ、ゲームに対する興味を持続させることができます。「次に何が来るんだろう」「今のイベントを逃したくない」といった気持ちが、継続的なプレイを促します。ゲームに「終わり」がないため、やめるきっかけを見つけにくく、ずるずるとプレイし続けてしまう要因となり得ます。

個人の心理的・性格的な原因

ゲーム行動症に陥りやすい背景には、個人の内面的な要因も深く関わっています。特定の心理状態や性格傾向を持つ人が、ゲームに過度に依存しやすい傾向が見られます。

ストレスや現実逃避したい心理

日常生活で強いストレスを感じている人、あるいは現実の困難な状況（学業不振、仕事の失敗、人間関係の問題など）から逃避したいという気持ちが強い人は、ゲームに没頭することで一時的に辛い現実を忘れたり、気分転換を図ったりしようとすることがあります。ゲームの世界では、現実の悩みから解放され、別の自分になって活躍できる感覚を得られるため、逃避行動が強化されやすくなります。しかし、これは根本的な問題解決にはならず、ゲームへの没頭が現実の状況をさらに悪化させ、さらなるストレスを生むという悪循環に陥ることが少なくありません。

自己肯定感の低さや不安感

自己肯定感が低く、自分に自信が持てない人も、ゲーム行動症のリスクが高いと言われます。ゲーム内では、努力次第で明確な成果（レベルアップ、アイテム獲得、勝利など）が得られやすく、他のプレイヤーから認められたり、感謝されたりする機会もあります。これにより、現実世界では得にくい達成感や承認欲求を満たすことができます。ゲーム内の成功体験を通じて自己肯定感を一時的に高めようとしますが、これも現実の問題解決には繋がらず、ゲームをしない状態での不安感や虚無感を増幅させる可能性があります。

孤立感や孤独感

社会的な孤立感や孤独を感じている人も、ゲーム行動症に陥りやすい傾向があります。特にオンラインゲームは、匿名で他のプレイヤーと繋がることができるため、現実世界での人間関係に困難を感じている人にとって、居心地の良いコミュニティとなることがあります。ゲーム内の友人との交流や協力プレイを通じて、所属感や一体感を得ることができます。しかし、これがゲーム以外の現実的な人間関係の構築を妨げ、孤立を深めてしまうリスクも伴います。

他の精神疾患との関連

ゲーム行動症は、他の精神疾患と関連があることが指摘されています。例えば、うつ病、不安障害、ADHD（注意欠陥・多動性障害）、ASD（自閉スペクトラム症）といった疾患を持つ人は、ゲーム行動症を併発しやすい、あるいはこれらの疾患がゲーム行動症の発症リスクを高める可能性が考えられています。例えば、うつ病による気分の落ち込みや意欲低下から現実逃避としてゲームに没頭したり、ADHDの衝動性や注意の偏りからゲームに過度に集中してしまったり、ASDの特性から対人関係の難しさをゲーム内の交流で補おうとしたりすることがあります。ただし、これらの疾患がゲーム行動症の「原因」であるとは限らず、併存することが多いという関係性です。

環境要因による原因

個人の内面やゲームの特性だけでなく、育ってきた環境や現在の生活環境もゲーム行動症の発症に大きく影響します。

家庭環境（親子の関わり、ルール設定）

家庭環境は、特に子どもや若者のゲーム行動に大きな影響を与えます。親子のコミュニケーションが不足していたり、親がゲームに対して無関心であったりする場合、子どもはゲームに没頭しやすくなる可能性があります。逆に、過度に干渉したり、頭ごなしにゲームを禁止したりすることも、反発心を招き、隠れてゲームをするようになるなど逆効果になることがあります。

ゲームに関する家庭内でのルール設定（プレイ時間、場所、課金など）が曖昧であったり、守られなかったりすることも問題になり得ます。明確で一貫性のあるルールがあり、それが家族間で話し合われて決められ、守られている家庭では、子どもがゲーム行動症に陥るリスクが低いと考えられます。また、親自身が過度にゲームや他のメディアに依存している場合、子どももその行動を模倣してしまう可能性があります。

学校や職場での人間関係

学校でのいじめや孤立、あるいは職場でのパワハラや人間関係のトラブルなど、所属するコミュニティでの困難も、ゲームへの逃避行動につながることがあります。現実世界での居場所が見つけられないと感じる人が、ゲーム内で承認されたり、仲間と繋がったりすることに価値を見出し、ゲームに没頭していくパターンです。学校や職場でのストレスが、ゲーム時間を増やす引き金となることがあります。

友人や周囲のゲーム行動

周囲にゲームを日常的に長時間プレイしている友人や仲間が多い環境も、ゲーム行動症のリスクを高めます。一緒にプレイする仲間がいることでゲームがより楽しく感じられたり、「みんながやっているから自分もやらないと」という同調圧力が働いたりすることがあります。また、ゲーム内での交流が現実の友人関係と強く結びついている場合、ゲームをやめることが友人との繋がりを失うことのように感じられ、ゲームを続ける理由になることがあります。

ゲーム行動症になりやすい人・年齢の特徴

ゲーム行動症は誰にでも起こりうる可能性がありますが、特定の年齢層や性格傾向を持つ人がよりなりやすい傾向が見られます。

なりやすい年齢層（思春期など）

ゲーム行動症は、特に思春期から青年期にかけて発症リスクが高いと言われています。この時期は、脳の前頭前野（衝動制御や理性的な判断を司る部分）がまだ発達途上であり、感情や衝動をコントロールすることが難しい傾向があります。また、自己アイデンティティの確立や、友人関係、学業、将来への不安など、様々なストレスや課題に直面しやすい時期でもあります。このような時期に、ゲームが手軽なストレス解消法や現実逃避の手段となりやすく、依存に繋がりやすいと考えられます。しかし、成人でも、仕事や人間関係のストレス、孤独などを背景にゲーム行動症を発症するケースは少なくありません。

性格的な傾向

ゲーム行動症と関連が指摘される性格特性には、以下のようなものがあります。

• 衝動性が高い: 計画性がなく、思いついた行動をすぐにとってしまう傾向がある人は、ゲームを始めるとやめ時を決められなかったり、課金に対する衝動を抑えられなかったりすることがあります。
• 新しい刺激を求める傾向（Novelty Seeking）: 新しいものや珍しいものに強く惹かれ、リスクを顧みずに行動する傾向がある人は、ゲームの新しいアップデートやイベントに強く惹きつけられ、プレイがエスカレートしやすい可能性があります。
• 完璧主義・こだわりが強い: ゲーム内の目標達成に強くこだわり、全てをやり遂げないと気が済まないという傾向がある人は、長時間プレイに繋がりやすいことがあります。
• 内向的・人付き合いが苦手: 現実世界での対人関係構築に困難を感じている人は、ゲーム内の匿名性やコミュニティに安らぎを見出し、ゲームに没頭しやすい傾向があります。
• 自己肯定感が低い: 前述したように、ゲーム内の成功体験で自己肯定感を補おうとする可能性があります。

これらの性格特性を持つ人が必ずゲーム行動症になるわけではありませんが、リスク要因の一つとなり得ると考えられています。

ゲーム行動症によって引き起こされる症状・影響

ゲーム行動症は、個人の健康だけでなく、学業、仕事、社会生活など、様々な側面に深刻な影響を及ぼします。原因を知ることと同様に、どのような問題が起こりうるかを理解することも重要です。

身体的な症状（睡眠障害、眼精疲労など）

長時間のゲームプレイは、身体に様々な不調を引き起こします。

• 睡眠障害: 夜遅くまでゲームをすることによって、睡眠時間が削られたり、生活リズムが乱れたりします。これは日中の眠気や集中力低下、さらには免疫力の低下にも繋がります。
• 眼精疲労: 画面を長時間見続けることによる目の疲れ、ドライアイ、視力低下などが起こりやすくなります。
• 体の痛み: 同じ姿勢で長時間ゲームをすることによる肩こり、首の痛み、腰痛、腱鞘炎などが起こることがあります。
• 食生活の乱れ: ゲームに集中するあまり、食事を抜いたり、インスタント食品や菓子類で済ませたりすることが増え、栄養バランスが偏ることがあります。
• 運動不足: ゲーム時間が増えることで、体を動かす機会が減り、運動不足による肥満や体力低下を招く可能性があります。

精神的・行動的な症状（学業・仕事への影響、引きこもり）

ゲーム行動症は、精神面や行動面にも大きな影響を与えます。

• 感情の不安定さ: ゲームができないときに強いイライラや不機嫌になる、ゲームをしているときだけ機嫌が良い、といった感情の起伏が激しくなることがあります。
• 集中力・注意力の低下: 脳が常にゲームの刺激を求めている状態になり、ゲーム以外の活動（勉強、仕事、会話など）への集中力が続かなくなることがあります。
• 学業・仕事への影響: 学校に遅刻・欠席が増える、授業中に眠ってしまう、成績が著しく低下する、仕事にミスが増える、遅刻・欠勤を繰り返す、といった問題が生じます。最悪の場合、留年・退学、失職に至ることもあります。
• 嘘や隠し事: ゲーム時間を隠したり、ゲームに関する嘘をついたりすることが増えます。
• 引きこもり: ゲーム以外の活動に興味を失い、外出を避けるようになり、社会的に孤立し、引きこもりの状態になることがあります。

社会生活への影響

ゲーム行動症は、個人を取り巻く社会生活にも深刻な影響を及ぼします。

• 家族との関係悪化: ゲーム時間を巡って家族と口論になることが増え、信頼関係が損なわれます。食事を一緒に摂らない、会話がなくなるなど、家庭内のコミュニケーションが途絶えることもあります。
• 友人関係の変化: ゲームをしない友人との交流が減り、ゲーム仲間とのみ付き合うようになることがあります。ゲームができない状況になると、友人との約束を破ったり、ドタキャンしたりすることもあります。
• 経済的な問題: ゲームへの課金によって、貯金を使い果たしたり、借金をしたりすることがあります。これは本人だけでなく、家族の家計にも影響を与えます。
• 法的な問題: 未成年者が親に無断で高額課金を行う、ゲームを巡るトラブルから犯罪に巻き込まれたり加害者になったりする、といった法的な問題に発展する可能性もゼロではありません。

これらの症状や影響は、ゲーム行動症が単なる「趣味のやりすぎ」ではなく、放置すると個人とその周囲の人々の人生に深刻なダメージを与える疾患であることを示しています。

ゲーム行動症の診断と対策・治療法

ゲーム行動症の可能性に気づいたら、適切な診断を受け、対策を講じることが重要です。問題を早期に認識し、適切な行動をとることで、回復の道が開けます。

セルフチェックによる確認

正式な診断は医師が行いますが、まずはご自身や家族のゲーム行動について、以下の項目でセルフチェックをしてみましょう。これはあくまで目安であり、診断ではありません。

• ゲームをする時間や量を自分でコントロールすることが難しいと感じるか？
• ゲーム以外の趣味や活動への関心が薄れたり、疎かになったりしているか？
• ゲームをすることによって、家族、友人、学業、仕事などで問題が起きているか？
• 問題が起きているにもかかわらず、ゲームを続けてしまうか？
• ゲームをしないと落ち着かず、イライラしたり不安になったりするか？
• ゲーム時間を隠したり、嘘をついたりすることがあるか？

これらの項目に複数当てはまる場合、ゲーム行動症の可能性が考えられます。

自分でできるゲーム行動の見直し

セルフチェックで気になる点があった場合や、ゲーム時間を減らしたいと思っている場合は、まずは自分でできることから始めてみましょう。

• ゲーム時間の目標設定: 具体的なプレイ時間や曜日を決め、アラームなどを活用して時間を管理する。
• ゲーム以外の活動を増やす: 以前楽しんでいた趣味を再開したり、運動をしたり、友人と直接会って話をしたりするなど、ゲーム以外の活動時間を意識的に増やす。
• 生活リズムの改善: 決まった時間に寝て起きて、食事をしっかり摂るなど、規則正しい生活を心がける。
• ゲーム環境の調整: 寝室にゲーム機やスマートフォンを持ち込まない、ゲームをする場所をリビングなど共有スペースに限定するなど、ゲームをしやすい環境を変える。
• ストレス対処法の習得: ゲーム以外の方法でストレスを解消する方法（リラクゼーション、運動、相談など）を見つける。
• ゲーム仲間との距離の取り方: ゲーム内での過度な交流を控えたり、ゲーム以外の話題で会話したりするなど、ゲーム仲間との関係性を見直す。

これらの対策は、あくまで自分でできる範囲のものであり、問題が根深い場合や、自分だけではコントロールが難しいと感じる場合は、専門家のサポートが必要です。

専門機関（病院）への相談と治療

ゲーム行動症は精神疾患として認識されており、専門機関での診断と治療が可能です。まずは精神科や心療内科、あるいは依存症専門外来を受診することを検討しましょう。どこに相談すれば良いかわからない場合は、精神保健福祉センターや地域の相談窓口に問い合わせるのも良いでしょう。

医師や心理士などの専門家は、患者さんのゲーム行動の状況、背景にある心理的な問題、他の精神疾患の有無などを詳しく評価し、診断を行います。診断に基づき、一人ひとりに合った治療計画が立てられます。

認知行動療法や家族療法

ゲーム行動症の主な治療法には、精神療法があります。

• 認知行動療法（CBT）: ゲーム行動に至る考え方（認知）や行動パターンに焦点を当て、それをより適応的なものに変えていく治療法です。「ゲームをやめると落ち着かない」「ゲームをしないと友達が離れていく」といった非合理的な考え方を修正し、ゲーム以外の方法でストレスに対処したり、人間関係を築いたりする方法を学びます。
• 家族療法: ゲーム行動症は本人だけでなく、家族にも大きな影響を与えます。家族療法では、家族全体でゲーム行動症について理解を深め、本人への適切な関わり方やサポート体制を築くことを目指します。家族間のコミュニケーションを改善し、問題解決に向けて協力していくことを促します。

必要に応じて、併存する他の精神疾患（うつ病、不安障害など）に対する薬物療法が行われることもあります。また、自助グループへの参加も、同じ悩みを抱える仲間と支え合いながら回復を目指す上で有効な手段となります。

治療法	概要	主な目的
認知行動療法	ゲームに関する考え方や行動パターンを修正する。	ゲームへの衝動を制御し、代替行動を増やす。
家族療法	家族全体で問題理解を深め、適切な関わり方やサポート体制を築く。	家族関係の改善、本人へのサポート強化。
薬物療法	併存するうつ病や不安障害など、他の精神疾患に対して行われることがある。	併存疾患の症状緩和、ゲーム行動症の改善を間接的にサポート。
自助グループ参加	同じ悩みを持つ人同士が集まり、経験や情報を共有し、お互いを支え合う。	孤立感の軽減、回復へのモチベーション維持。
環境調整・サポート	家庭内ルールの見直し、学校や職場との連携、デイケアなどの社会資源の活用。	ゲームから距離を置き、現実生活への適応をサポートする。

治療には時間がかかることがありますが、焦らず、専門家と協力しながら一歩ずつ進んでいくことが大切です。

まとめ：ゲーム行動症の原因を知り、適切な対策を

ゲーム行動症の原因は、脳の働き、ゲームの特性、個人の心理、そして環境要因など、様々な要素が複雑に絡み合っています。単にゲームが好きだから、意志が弱いから、といった単純な理由で片付けられるものではありません。

• 脳の報酬系がゲームによって過剰に活性化されること。
• ゲームが達成感や報酬、ソーシャルな繋がり、終わりなき刺激を提供するように設計されていること。
• ストレスや不安、自己肯定感の低さといった個人の心理的な脆弱性があること。
• 家庭内の問題、人間関係の困難、周囲の環境が影響すること。

これらの原因が重なり合うことで、ゲーム行動症に陥るリスクが高まります。そして、一度発症すると、身体的、精神的、社会的な様々な問題を引き起こし、本人の生活を大きく障害します。

もし、ご自身や大切な人がゲーム行動症の可能性に悩んでいるのであれば、まずは原因への理解を深めることが第一歩です。そして、セルフチェックで現状を確認し、自分でできることから対策を始めてみましょう。しかし、一人で抱え込まず、必要であれば精神科医や心理士などの専門機関に相談することが非常に重要です。専門家のサポートを得ながら、適切な診断と治療を受けることで、ゲーム行動症から回復し、健康的な生活を取り戻すことが可能です。

問題に気づき、原因を知ることは、決して責められることではありません。適切な知識とサポートがあれば、必ず状況は改善します。勇気を持って一歩を踏み出し、専門家や周囲の人に相談してみてください。

免責事項: 本記事の情報は一般的な知識を提供するものであり、医療的な診断や助言を代替するものではありません。個々の状況に関する診断や治療については、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。