インターネット依存症の症状チェックリスト|あなたは大丈夫?

インターネット依存症は、スマートフォンやパソコンの普及により、誰もが陥る可能性のある現代社会における深刻な問題の一つです。
インターネットやオンラインゲーム、SNSなどの利用がやめられなくなり、学業や仕事、人間関係など、日常生活に様々な支障をきたす状態を指します。
単に長時間利用しているだけでなく、その利用をコントロールできず、利用しないと強い不安やイライラを感じるのが特徴です。
この記事では、インターネット依存症の主な症状に焦点を当て、その診断基準や引き起こされる原因、そして具体的な対策や治療法について詳しく解説します。
ご自身や大切な人に気になる症状が見られる場合は、ぜひこの記事を参考に、現状を把握し、適切な対応を検討してみてください。

また、依存が進行すると、学業や仕事の失敗、経済的な困窮、人間関係の破綻、さらには引きこもりやうつ病など、様々な二次的な問題を引き起こす可能性があることです。
早期に症状に気づき、適切な対策を講じることが非常に重要となります。

インターネット依存症の主な症状

インターネット依存症の症状は多岐にわたり、精神面、身体面、行動面など、様々な領域に現れます。これらの症状が複数見られ、かつそれが継続的に、あるいは反復的に現れる場合に、依存が疑われます。

精神的な症状

インターネット依存症の精神的な症状は、比較的早期から現れることがあります。

  • 不安やイライラ: インターネットを利用できない時間や、利用時間を制限された際に、強い不安感やイライラ感、落ち着きのなさを感じます。これは、いわゆる離脱症状(禁断症状)の一つです。
  • 抑うつ: インターネット利用が中心となり、現実世界での活動や人間関係が疎かになることで、孤独感や自己肯定感の低下につながり、抑うつ状態に陥ることがあります。また、インターネットから離れた際に、虚無感や絶望感を感じることもあります。
  • 集中力の低下: インターネット上の刺激的な情報に慣れてしまうと、現実世界での単調な活動(勉強や仕事など)に集中することが難しくなります。常にインターネットのことを考えていたり、通知が気になったりすることも集中力を妨げます。
  • 現実逃避: 現実世界での悩みやストレスから逃れるために、インターネットの世界に没頭します。インターネットの中では理想の自分を演じられたり、悩みから一時的に解放されたりするため、ますます現実世界から遠ざかってしまう傾向があります。
  • 自己肯定感の低下: インターネット上での評価(「いいね」の数など)に一喜一憂したり、他者と比較して自己肯定感が低下したりすることがあります。また、依存によって学業や仕事がうまくいかなくなることも、自己肯定感をさらに下げる要因となります。

身体的な症状

インターネット依存症は、精神面だけでなく身体にも様々な影響を及ぼします。長時間同じ姿勢で画面を見続けることや、睡眠不足などが原因となります。

  • 睡眠障害: 夜遅くまでインターネットを利用することで、睡眠時間が削られたり、体内時計が乱れて昼夜逆転したりします。不眠や、寝ても疲れが取れないといった症状が現れます。
  • 眼精疲労・視力低下: 長時間画面を見続けることで、目が乾燥したり、霞んだり、痛みを伴ったりします。近視が進行することもあります。
  • 肩こり・腰痛: デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取り続けることにより、筋肉が緊張し、肩や首、腰などに痛みや凝りを感じます。
  • 頭痛: 眼精疲労や肩こり、睡眠不足などから頭痛が引き起こされることがあります。
  • 食欲不振または過食: インターネットに没頭するあまり食事を忘れて食欲不振になったり、逆にストレス解消のために食べ過ぎたりすることがあります。食生活が不規則になりがちです。
  • 運動不足: インターネットの利用が中心となることで、外出や運動の機会が減少し、体力や筋力が低下します。

行動に関する兆候

インターネット依存症では、その行動パターンに特徴的な兆候が見られます。

  • 利用時間のコントロールができない: 最初は少しだけのつもりが、気づくと何時間も経過している、予定していた時間を大幅に超えて利用してしまうといった状態が頻繁に起こります。
  • やめようとしてもやめられない: インターネットの利用を減らそう、あるいはやめようと決意しても、その決意を守ることができません。すぐに利用を再開してしまう、あるいは利用しないことで強い苦痛を感じ、結局利用を続けてしまいます。
  • 隠れて利用する: 家族や周囲に利用時間を知られたくない、あるいは咎められたくないという思いから、こっそり、隠れてインターネットを利用するようになります。深夜や早朝など、人目を避けて利用することも増えます。
  • 他の活動への興味喪失: かつて楽しんでいた趣味やスポーツ、友人との外出など、インターネット以外の活動に興味を失い、それらに費やす時間が極端に減少します。インターネットこそが唯一の楽しみであるかのような状態になります。
  • 学業や仕事の放置: インターネット利用を優先するあまり、宿題や課題に取り組まない、授業に出席しない、仕事中にインターネットをする、締め切りを守れないなど、学業や仕事に支障が出ます。
  • 嘘をつく: インターネットの利用時間や利用内容について、家族や周囲に嘘をついたり、ごまかしたりします。「少しだけやっていた」「もう終わった」などと偽ることがあります。

その他のサイン

上記以外にも、インターネット依存症のサインとして見られることがあります。

  • 金銭的な問題: オンラインゲームへの高額課金や、インターネットショッピングでの衝動買いなどにより、借金をしたり、経済的に困窮したりすることがあります。
  • 日常生活への支障: 入浴や着替えなどの身の回りのこと、食事の準備、掃除といった家事など、基本的な日常生活の維持が困難になることがあります。
  • 人間関係・社会生活への影響: 家族との会話が減少したり、友人との約束をキャンセルしてインターネットを優先したりすることで、人間関係が悪化します。引きこもり傾向が強まり、社会的な孤立を深めることもあります。

これらの症状は、単独で現れることもありますが、多くの場合、いくつか組み合わさって現れます。また、その程度や現れ方は個人差が大きいです。重要なのは、これらの症状が継続的に、あるいは反復的に現れ、本人の苦痛や生活上の支障につながっているかどうかという点です。

インターネット依存症の診断基準とチェックリスト

インターネット依存症の診断は、専門の医療機関(精神科、心療内科など)で行われます。診断にあたっては、医師が詳細な問診を行い、インターネット利用に関する行動パターン、それに伴う精神的・身体的な状態、生活への影響などを総合的に評価します。

一般的な診断基準(ヤングテストなど)

インターネット依存症の診断に用いられる代表的なツールとして、「インターネット依存度テスト(IAT:Internet Addiction Test)」、通称「ヤングテスト」があります。これは、アメリカのキンバリー・ヤング博士によって開発されたもので、インターネット利用に関する20項目の質問に回答することで、依存度を測るものです。

ヤングテストの質問項目は、例えば以下のような内容を含みます。(これは実際のヤングテストの一部であり、自己診断ツールではありません。正式なテストは専門家にご確認ください。

  • あなたがインターネットの利用時間をどのくらい気にかけているか
  • インターネットを優先するために睡眠時間を削ることがあるか
  • インターネットをしていない時にイライラや不安を感じるか
  • インターネットの利用時間について家族や友人に隠したり、嘘をついたりするか
  • インターネットの利用によって学業や仕事に悪影響が出ているか

これらの質問に対する回答を点数化し、合計点によって依存の可能性を判断するものです。ただし、このテストはあくまで目安であり、正式な診断は医師が行う必要があります。

また、前述の通り、国際的な診断基準であるDSM-5には「インターネットゲーム障害」が、ICD-11には「ゲーム障害」が新たな疾患として位置づけられています。これらの診断基準では、ゲーム利用に関して、以下の項目の中から一定数以上が一定期間継続している場合に診断が検討されます。

  • ゲームをする時間、頻度、状況のコントロールができない
  • ゲームをしないとイライラしたり、不安を感じたりする(離脱症状)
  • より多くの時間をゲームに費やす必要がある(耐性)
  • ゲーム以外の趣味や活動への関心を失う
  • ゲームによって生じた問題があるにもかかわらず、ゲームを続ける
  • ゲームをする時間や程度について嘘をつく
  • ゲームをするために人間関係や仕事、学業の機会を危うくしたり、失ったりする
  • 不快な気分(不安、罪悪感など)を解消するためにゲームをする

これらの基準も、インターネット依存症全般を評価する際の参考となります。

セルフチェックリスト

専門的な診断基準は医師によるものですが、ご自身やご家族の状況を把握するための簡単なセルフチェックリストも参考になります。以下の項目は、インターネット依存症の可能性を示唆する一般的なサインをまとめたものです。当てはまる項目が多いほど、依存の可能性が高いと考えられます。

インターネット依存症のセルフチェックリスト(目安)

  • インターネットをする時間のコントロールが難しく、やめようと思ってもやめられないことがある。
  • インターネットをしていない時に、落ち着きがなくなったり、イライラしたり、不安を感じたりする。
  • 満足感を得るために、インターネットをする時間や頻度が増えていく傾向がある。
  • インターネットをする時間を減らそうとしたり、やめようとしたりして、失敗した経験がある。
  • インターネットの利用時間について、家族や友人、周囲の人に嘘をついたり、隠したりしている。
  • インターネットの利用を優先するために、学業や仕事、家事、身の回りのことなどが疎かになっている。
  • インターネット以外の趣味や、かつて楽しかった活動への興味が薄れてしまった。
  • インターネットをするために、睡眠時間を削ったり、食事を抜いたりすることがよくある。
  • インターネットを利用して、嫌な気持ちや不安、ストレスから逃れようとすることがある。
  • インターネットの利用が原因で、人間関係が悪化したり、大切な機会を失ったりしたことがある。

結果の目安:

  • 0~2個: インターネット依存症の可能性は低いでしょう。しかし、油断せず適度な利用を心がけましょう。
  • 3~4個: 軽度のインターネット依存の可能性があります。利用時間や利用内容を見直すなど、意識的な対策を検討しましょう。
  • 5個以上: インターネット依存症の可能性が高いと考えられます。セルフケアだけでなく、専門機関への相談を強くおすすめします。

注意: このチェックリストはあくまで目安です。正確な診断は、専門医にご相談ください。

スマホやネット利用時間の目安

「1日何時間以上使ったらインターネット依存症」という明確な時間の基準はありません。なぜなら、インターネット利用の目的や内容、そしてそれが個人の生活に与える影響は人それぞれ異なるからです。仕事でインターネットを長時間利用する必要がある人もいれば、趣味で特定のサイトを閲覧する人もいます。

しかし、一般的に、日常生活(睡眠、食事、学業、仕事、対人交流など)に支障が出始めるほど長時間インターネットを利用している場合は、依存の可能性を疑うべき兆候と言えます。例えば、以下のような状態が見られる場合は、利用時間だけでなく、その利用の仕方や目的を見直す必要があります。

  • 睡眠時間を削って深夜や早朝までインターネットを利用している。
  • 勉強や仕事、家事をそっちのけでインターネットを利用している。
  • 食事中や会話中など、本来インターネットを利用すべきではない場面でも利用している。
  • 漠然と時間を潰すためにインターネットを利用している時間が非常に長い。
  • 利用時間を意識的に短くしようと思っても、それができない。

重要なのは、インターネット利用時間そのものの長さだけでなく、それが「コントロールできているか」「生活に悪影響が出ていないか」という点です。たとえ利用時間が短くても、利用しないときに強い不安を感じたり、利用を隠したりしている場合は注意が必要です。

インターネット依存症を引き起こす原因

インターネット依存症は、一つの原因だけで引き起こされるわけではありません。様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。主な原因として、心理的な要因、社会的な要因、その他の要因が挙げられます。

心理的な要因

個人の内面にある心理的な要因は、インターネット依存に大きく関わっています。

  • ストレス・不安・孤独感: 現実世界でのストレスや将来への不安、あるいは人間関係における孤独感などから逃れるために、インターネットの世界に居場所を求めたり、気を紛らわせたりすることがあります。インターネットの中では、現実の苦しさを忘れられる一時的な安らぎを得られると感じることが、依存につながる可能性があります。
  • 自己肯定感の低さ: 自分に自信がない、自分を価値のない存在だと感じている場合、インターネット上で簡単に達成感を得られたり、匿名で理想の自分を演じられたりすることに惹かれることがあります。オンラインゲームでの成功体験や、SNSでの「いいね」の数などが、現実世界で得られない自己肯定感を補う手段となり、依存を深める可能性があります。
  • 現実逃避願望: 現実世界での困難な状況や人間関係から目を背けたいという願望が強い場合、インターネットは手軽な逃避先となります。仮想世界での活動に没頭することで、現実の課題から一時的に解放された気分になることができます。
  • 他の精神疾患の合併: うつ病、不安障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、発達障害など、他の精神疾患を抱えている場合、インターネット依存を合併するリスクが高まります。例えば、ADHDの特性として衝動性が高いことや、注意が持続しにくいことが、インターネット利用のコントロールを困難にすることがあります。うつ病や不安障害の場合、インターネットが現実逃避の手段となることがあります。

社会的な要因

インターネットが普及し、私たちの生活に深く根ざした社会環境も、依存のリスクを高める要因となります。

  • インターネットへの容易なアクセス: スマートフォンやタブレット端末の普及により、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境が整ったことは、利用時間の増加や依存のしやすさにつながっています。
  • オンラインゲームやSNSの設計: オンラインゲームは、継続的なプレイを促すための報酬システム(レベルアップ、アイテム獲得など)や、他のプレイヤーとの競争・協力といった要素が巧妙に組み込まれています。SNSも、「いいね」やコメントによる承認欲求を満たすメカニズムや、新しい情報が次々に更新されることで、常にアクセスしたいという気持ちを刺激するように設計されています。これらの設計は、ユーザーを惹きつけ、長時間利用させることに繋がりやすい構造を持っています。
  • 社会的な孤立: 地域社会や職場、学校などでの人間関係が希薄になり、現実世界で十分にコミュニケーションを取る機会が少ない場合、インターネット上での交流に過度に依存してしまうことがあります。オンラインゲームのコミュニティやSNSでの繋がりが、現実世界での人間関係の代替となってしまうことがあります。
  • 文化的な影響: オンラインゲームやインターネットの利用に対する社会的な許容度が高い文化や環境も、依存が進みやすい要因となる可能性があります。

その他の要因

上記以外にも、以下のような要因がインターネット依存症の発症に関わる可能性があります。

  • 発達段階: 特に思春期は、自己同一性の確立や友人関係が重要になる時期であり、インターネット上での自己表現やコミュニケーション、オンラインゲームを通じた仲間作りなどに没頭しやすく、依存のリスクが高まる時期と言われています。脳の発達段階も関与している可能性があります。
  • 家族関係: 家族とのコミュニケーションが不足している、家庭内に問題がある、家族がインターネットに無関心あるいは過度に依存しているといった状況も、本人のインターネット依存に影響を与える可能性があります。
  • 遺伝的な影響の可能性: アルコール依存症などの他の依存症と同様に、インターネット依存症にも遺伝的な要因が関与している可能性が研究されていますが、現時点では明確な結論は出ていません。

これらの要因が単独、あるいは複数組み合わさることで、個人の脆弱性が高まり、インターネットへの過度な利用が依存へと進行するリスクが高まると考えられています。

インターネット依存症がもたらす影響

インターネット依存症は、本人の心身の健康はもちろん、学業、仕事、人間関係、経済状況など、日常生活の様々な側面に深刻な影響をもたらします。

健康(身体的・精神的)への影響

依存による不規則な生活や睡眠不足は、様々な健康問題を引き起こします。

  • 身体的な健康問題: 睡眠不足による疲労感や倦怠感、免疫力の低下、視力低下や眼精疲労、肩こり、腰痛、運動不足による肥満や生活習慣病(糖尿病、高血圧など)のリスク増加が挙げられます。食生活が乱れることによる栄養不足や偏りも問題となります。
  • 精神的な健康問題: 依存症そのものが精神的な苦痛を伴うだけでなく、抑うつ状態、不安障害、パニック障害などを合併するリスクが高まります。現実世界での失敗や孤立が、さらにこれらの精神疾患を悪化させる悪循環に陥ることもあります。また、深刻なケースでは、引きこもりや、将来への絶望感から自殺念慮に至る可能性も否定できません。

学業・仕事への影響

インターネット利用が中心となることで、学業や仕事に集中できなくなり、本来のパフォーマンスが著しく低下します。

  • 学業への影響: 授業中にインターネットをする、宿題や課題を期限内に提出できない、試験勉強に集中できない、といったことから成績が低下します。遅刻や欠席が増え、最終的には留年や退学に至るケースもあります。
  • 仕事への影響: 勤務中にインターネットをする、集中力が低下して業務効率が落ちる、遅刻や欠勤が増える、重要な会議や約束を忘れる、といったことから仕事の評価が下がり、降格や失業につながることがあります。

人間関係・社会生活への影響

インターネット上の関係を優先するあまり、現実世界での人間関係が希薄になったり、トラブルを引き起こしたりします。

  • 家族関係: 家族との会話が減り、閉じこもりがちになります。インターネットの利用時間や内容を巡って家族と衝突したり、嘘をついたりすることが増え、家族関係が悪化します。
  • 友人関係: 友人からの誘いを断ってインターネットを優先するようになり、次第に友人との関係が疎遠になります。オンラインゲームなどのインターネット上の知り合いとの交流は増えるかもしれませんが、現実世界での深い人間関係を築くことが難しくなります。
  • 社会性の欠如・孤立: 現実世界での対人交流が減ることで、コミュニケーション能力が低下したり、社会生活を送る上で必要なスキルが身につきにくくなったりします。学校や職場、地域社会から孤立し、引きこもり状態になるリスクが高まります。

経済的な問題

インターネット依存症は、時に深刻な経済的な問題を引き起こします。

  • 高額課金・浪費: オンラインゲームでのアイテム購入やガチャへの高額課金、インターネットショッピングでの衝動的な買い物などが原因で、多額の負債を抱えたり、家計を圧迫したりすることがあります。
  • 収入の減少: 学業や仕事への影響により、収入が減少したり、失業したりすることで、経済的に困窮する可能性があります。依存を続けるために、家族のお金を無断で持ち出したり、借金をしたりするケースも報告されています。

これらの影響は、依存の程度が重くなるにつれて深刻化する傾向があります。早期に問題に気づき、対処することが、これらの悪影響を最小限に抑えるために不可欠です。

インターネット依存症への対策と治療法

インターネット依存症から回復するためには、本人の気づきと、適切な対策、そして必要に応じて専門家のサポートが必要です。

セルフケアによる改善策

軽度のインターネット依存や、予防のためには、日常生活の中でできるセルフケアが有効です。

  • 利用時間の記録と見える化: 自分がどれくらいの時間、何にインターネットを使っているかを記録してみましょう。スマートフォンのスクリーンタイム機能などを活用するのも有効です。客観的に自分の利用状況を把握することが、改善の第一歩となります。
  • 利用ルールの設定: 1日に使える時間、インターネットを利用して良い場所や時間帯(例:寝室には持ち込まない、食事中は使わない)、利用しない曜日などを具体的に決めましょう。家族がいる場合は、一緒に話し合ってルールを決めるのも良い方法です。
  • 通知オフ: スマートフォンやSNSの通知をオフにすることで、インターネットに意識が向く回数を減らすことができます。
  • 代替となる活動を見つける: インターネット以外の、現実世界で楽しめる趣味や活動を見つけましょう。スポーツ、読書、音楽鑑賞、料理、ボランティア活動など、自分が興味を持てるもの、達成感を得られるものに取り組むことが大切です。
  • 睡眠時間の確保と生活リズムの改善: 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。朝日を浴びる、寝る前にスマートフォンの画面を見ない、といった工夫も有効です。
  • 現実世界での交流を増やす: 友人や家族と直接会って話す機会を増やしましょう。対面でのコミュニケーションは、インターネット上では得られない深い満足感や安心感を与えてくれます。
  • 「デジタルデトックス」の導入: 定期的に、短期間でも良いのでインターネットから完全に離れる時間を作りましょう。週末だけスマートフォンを家に置いて外出する、SNSから一時的にログアウトするなど、意識的にインターネットから距離を置くことで、利用習慣を見直すきっかけになります。

これらのセルフケアは、あくまで軽度の場合や予防に有効な方法です。症状が重い場合や、セルフケアだけでは改善が難しい場合は、専門家のサポートが必要となります。

専門機関での治療

インターネット依存症は、病気として専門的な治療が必要な場合があります。精神科、心療内科、依存症専門のクリニックなどが相談先となります。

  • 問診と診断: 医師による詳細な問診や心理テストなどを行い、インターネット依存症であるかどうかの診断を行います。合併する精神疾患(うつ病、ADHDなど)がないかも診断されます。
  • 認知行動療法(CBT): インターネット依存症の治療に有効とされる心理療法の一つです。インターネットへの過度な利用につながる考え方や行動パターンを特定し、より建設的な考え方や行動に変えていくことを目指します。インターネット以外の代替行動を見つけたり、衝動をコントロールする方法を学んだりします。
  • 集団療法: インターネット依存症の当事者同士が集まり、経験や悩みを共有し、互いにサポートし合う治療法です。自分だけではないと感じることで孤独感が軽減され、回復へのモチベーションを高めることができます。
  • 家族療法: インターネット依存症は、本人の問題だけでなく、家族全体の問題として捉えられることがあります。家族が依存症について理解を深め、本人への適切な接し方や、家族自身のストレス対処法などを学ぶ療法です。
  • 薬物療法: インターネット依存症そのものに特効薬はありませんが、合併している精神疾患(うつ病、不安障害など)や、不眠、イライラといった症状に対して、薬物療法が有効な場合があります。
  • 入院治療: 依存の程度が非常に重く、日常生活が著しく困難になっている場合や、他の精神疾患が重い場合は、入院して集中的な治療や生活リズムの再構築を行うことがあります。

相談窓口の利用

専門医療機関を受診する前に、まずは相談窓口を利用してみるのも良いでしょう。

相談窓口・機関 特徴
精神保健福祉センター 各都道府県・指定都市設置。公的な相談窓口。電話・来所相談。
よりそいホットライン 様々な困難を抱える人への電話相談。
インターネット依存症専門の相談機関 民間の専門機関や支援団体。専門的なアドバイスやサポート。
医療機関(精神科、心療内科) 診断、治療(認知行動療法、薬物療法など)が必要な場合。

どの窓口を選ぶかは、ご自身の状況や希望に合わせて検討しましょう。まずは匿名で相談できる窓口から始めてみるのも良いかもしれません。

ご家族ができること

ご家族がインターネット依存症かもしれない、あるいは既に診断を受けている場合、どのように接すれば良いのか悩むことも多いでしょう。ご家族のサポートは、本人の回復において非常に重要な役割を果たします。

  • インターネット依存症を病気として理解する: まず、インターネット依存症は単なるわがままや怠慢ではなく、専門的なサポートが必要な病気であるという認識を持つことが大切です。病気であるという理解があれば、本人を頭ごなしに責めるのではなく、回復に向けてサポートしようという気持ちを持つことができます。
  • 本人の気持ちに寄り添う: なぜインターネットに没頭するのか、どのような不安や悩みを抱えているのかなど、本人の気持ちに耳を傾け、寄り添う姿勢を示すことが重要です。一方的に利用を非難したり、インターネットを取り上げたりするだけでは、かえって反発を招き、問題がこじれる可能性があります。
  • 一緒にルールを話し合い、守る: 本人の状況に合わせて、インターネットの利用に関する具体的なルールを一緒に話し合って決めましょう。そして、決めたルールを家族も一緒に守ることが大切です。例えば、「家族みんなで〇時以降はスマートフォンを使わない」といったルールは、本人だけでなく家族全体の生活習慣を見直すきっかけにもなります。
  • 代替行動を促す: インターネット以外の、現実世界で楽しめる活動や、家族一緒にできる活動(散歩、料理、映画鑑賞など)を提案し、一緒に取り組んでみましょう。
  • 家族自身も相談機関を利用する: インターネット依存症の家族を支えることは、家族自身にも大きな負担となります。家族だけで抱え込まず、家族向けの相談窓口や支援団体などを利用して、専門家のアドバイスを受けたり、同じ悩みを持つ家族と交流したりすることも重要です。家族が適切にサポートを受けることで、本人への関わり方も改善され、回復につながりやすくなります。
  • 回復には時間がかかることを理解する: 依存症からの回復は一朝一夕には進まないことがほとんどです。焦らず、根気強く、本人の小さな変化や努力を認めながらサポートしていく姿勢が大切です。

ご家族だけで問題を解決しようとせず、外部のサポートを積極的に利用することが、本人にとっても家族にとっても良い結果につながります。

まとめ|インターネット依存症の症状に気づいたら

インターネット依存症は、現代社会において身近な問題であり、様々な症状を伴い、放置すると深刻な影響を及ぼす可能性があります。主な症状としては、インターネット利用のコントロールができない、利用しない時の不安やイライラ、学業や仕事への支障、人間関係の悪化、身体的な不調などが挙げられます。これらの症状に複数当てはまる場合は、インターネット依存症の可能性を疑い、早期に対処することが重要です。

この記事でご紹介したセルフチェックリストは、ご自身の状況を把握する上での目安となりますが、正確な診断は専門医によるものです。もしご自身やご家族に気になる症状が見られる場合は、一人で悩まず、まずは専門機関や相談窓口に相談してみることを強くおすすめします。精神保健福祉センターや医療機関、民間の支援団体など、様々な相談先があります。

インターネット依存症は回復可能な病気です。適切な対策や専門的な治療、そしてご家族のサポートがあれば、回復への道は開けます。症状に気づいたら、放置せず、まずは一歩を踏み出してみてください。

免責事項: この記事は、インターネット依存症に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。ご自身の症状や状態については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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