ゲーム行動症「診断書」の取得方法|診断基準と病院選び

ゲーム行動症(ゲーム障害)は、近年のデジタル化社会において注目されている課題の一つです。
特に、ゲームの利用パターンが健康や日常生活に重大な支障をきたす場合、医学的な診断が必要となることがあります。
そして、その診断結果を公的に証明する書類として「診断書」が求められるケースも存在します。
この記事では、ゲーム行動症の診断書について、その基準や取得方法、診断後のサポートなど、皆さんが知りたいであろう情報を分かりやすく解説します。
診断書が必要な方、あるいはゲーム行動に関する悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

ゲーム行動症(ゲーム障害)とは?医学的定義と診断名

ゲーム行動症は、世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類であるICD-11において、精神、行動または神経発達の障害のカテゴリに分類される疾患です。
単なるゲームのやりすぎとは異なり、個人の健康、社会生活、学業、仕事などに重大な支障をきたす病的な状態を指します。

ICD-11における「ゲーム行動症」の定義

ICD-11では、「ゲーム行動症(Gaming disorder)」は、持続的または反復的なゲーム行動のパターンとして定義されています。
このパターンには、以下の3つの主要な特性が含まれます。

  • 制御の障害: ゲームをする頻度、強度、時間、期間、そしてゲームをいつ終了するかといったことに対する制御が著しく障害されている状態です。
    例えば、ゲームをやめようと思ってもやめられない、予定していた時間を大幅に超過してしまう、といった状況が該当します。
  • 優先順位の増加: ゲームを他の活動や関心事よりも優先するようになり、日常生活や人生において重要な他の領域(学業、仕事、人間関係、自己ケアなど)を犠牲にしてでもゲームを行う状態です。
  • 問題継続・エスカレート: ゲームによって健康、学業、仕事、社会生活、人間関係などに否定的な結果や問題が生じているにもかかわらず、ゲームを継続したり、さらにゲームに没頭したりする状態です。

これらの行動パターンが、個人的、家族的、社会的、教育的、職業的、またはその他の重要な機能領域において著しい障害を引き起こしている場合に、「ゲーム行動症」と診断される可能性があります。

ゲーム依存症との関係性

「ゲーム依存症」という言葉は、一般的に広く使われており、ゲーム行動症とほぼ同じ意味で理解されています。
医学的な診断名としては、ICD-11では「ゲーム行動症」が正式名称ですが、アメリカ精神医学会が定める診断基準DSM-5では「インターネット・ゲーム障害(Internet Gaming Disorder)」が診断基準案として示されています。

これらの用語は、いずれもゲームへの病的な没頭によって、生活に深刻な問題が生じている状態を指しています。
診断基準や名称にわずかな違いはありますが、根底にある問題や必要な対応は共通しています。
専門医療機関では、これらの医学的な診断基準に基づき、総合的に判断を行います。

精神疾患としての位置づけ

ゲーム行動症がICD-11において正式な疾患として登録されたことは、その問題が単なる趣味やライフスタイルの問題ではなく、治療を必要とする精神疾患であるという認識が国際的に広まったことを意味します。

精神疾患として位置づけられることにより、適切な医療的アプローチや社会的な支援の対象となりやすくなります。
他の精神疾患(例:うつ病、不安障害、注意欠如・多動症(ADHD)など)との合併も多く見られるため、専門的な診断と、個々の状況に合わせた治療計画が非常に重要になります。
精神疾患として診断されることで、本人や家族も問題の性質を理解しやすくなり、回復に向けた一歩を踏み出しやすくなることもあります。

ゲーム行動症と診断される基準(ICD-11)

ゲーム行動症の診断は、先述したICD-11の診断基準に基づき、専門の医師によって行われます。
診断には、単にゲーム時間が長いだけでなく、その行動パターンが本人の生活にどれだけ深刻な影響を与えているかが重視されます。

WHOが定める3つの診断要件

ICD-11におけるゲーム行動症の診断には、以下の3つの主要な要件を満たす必要があります。
これらの要件は、医師が患者さんの状態を評価する上で中心となります。

  • ゲーム行動を制御できない状態:
    ゲームを開始するかどうか、いつ開始するか。
    ゲームの頻度や時間、そしてゲームをどれくらいの期間続けるか。
    ゲームをいつ終了するか。
    これらの点において、本人が自分の行動をコントロールできなくなっている状態です。
    例えば、「今日は30分だけ」と決めていたのに何時間もやってしまう、ゲームを始めると食事や睡眠を忘れてしまう、といった状態が繰り返し見られる場合に該当します。
  • ゲームを他の活動より優先するようになる:
    日常生活における重要な関心事、人生の目標、そして日々の活動(学業、仕事、家族との時間、趣味、運動、自己ケアなど)よりも、ゲームを優先する状態です。
    ゲームのために学校や職場を欠席する、友人との約束をキャンセルする、趣味をやめる、といった行動が見られます。
    ゲームが生活の中心となり、他の全てが二の次になってしまう状態と言えます。
  • 問題が起きているにもかかわらずゲームを継続またはエスカレートさせる:
    ゲームによって、本人や周囲の人々(家族など)に否定的な結果や問題(健康問題、学業不振、失業、借金、人間関係の悪化など)が生じていることを認識しているにもかかわらず、ゲームをやめることができない、あるいはさらにゲームに没頭してしまう状態です。
    周囲から「ゲームをやりすぎだ」と指摘されても聞く耳を持たない、ゲームのせいで健康を害しても(睡眠不足、運動不足、食生活の乱れなど)ゲームを優先する、といった状況が含まれます。

これらの3つの要件が、一定期間にわたって持続的に観察されることが、診断の重要な要素となります。

診断に必要な期間(通常12ヶ月)

ICD-11の診断基準では、これらのゲーム行動パターンが通常12ヶ月以上にわたって持続していることが診断の要件とされています。
これは、一時的なゲームへの没頭と、病的なゲーム行動症とを区別するためです。

しかし、すべての診断要件が満たされており、かつ著しい機能障害が存在する場合は、12ヶ月よりも短い期間であってもゲーム行動症と診断されることがあります。
例えば、ゲームが原因で短期間のうちに学業を完全に放棄したり、職を失ったりするなど、生活への影響が非常に深刻な場合は、早期に診断が下される可能性があります。
この点は、医師が個々の状況を慎重に判断する際に考慮されます。

重症度による判断

診断基準を満たしているかどうかに加えて、そのゲーム行動が本人や家族の生活にどれだけ深刻な影響を与えているか、つまり重症度も診断において非常に重要視されます。

ゲームによって引き起こされる問題の範囲や程度は様々です。
学業や仕事の成績が低下する、遅刻や欠席が増えるといったことから、昼夜逆転、引きこもり、家族内暴力、借金、精神疾患(うつ病、不安障害など)の併発といった重篤なケースまであります。

医師は、単に診断基準に当てはまるかどうかだけでなく、これらの具体的な生活上の支障や苦痛の程度を詳しく聞き取り、総合的に判断して診断を行います。
診断書には、これらの診断名だけでなく、具体的な症状や生活への影響、重症度などが記載されることが一般的です。

ゲーム行動症の診断書が必要となるケース

ゲーム行動症と診断された場合、その診断結果を証明する「診断書」が必要となる場面がいくつか考えられます。
診断書は、本人の病状を公的に証明し、必要な手続きや支援を受けるために重要な役割を果たします。

学校や職場への提出

ゲーム行動症によって学業や仕事に支障が出ている場合、学校や職場に診断書の提出を求められることがあります。

  • 学校: 遅刻や欠席が続いている場合、休学手続きを行う場合、あるいは特別な学習支援や配慮(例:オンライン授業への切り替え、課題の調整など)を求める際に、病状を証明する診断書が必要になることがあります。
    診断書によって、単なる「怠け」ではなく、病気による困難であることを理解してもらいやすくなります。
  • 職場: 欠勤や遅刻が増えた、業務に集中できないといった状況の改善を求める場合、休職や時短勤務などの制度を利用する場合に、診断書が必要となります。
    診断書は、労務管理上の手続きや、職場復帰支援プログラムの策定において重要な資料となります。

診断書には、診断名、現在の症状、ゲーム行動が学業や仕事に与えている具体的な影響、今後の治療見込みなどが記載されます。
提出先(学校または職場)の指示に従って、必要な情報が記載されているか確認しましょう。

医療費控除の手続き

ゲーム行動症の治療は、医師による診察、カウンセリング、必要に応じて薬物療法など、医療行為として行われます。
これらの治療にかかった費用は、一定額を超えると医療費控除の対象となる場合があります。

医療費控除を受けるためには、確定申告時に医療費の領収書などが必要となりますが、病状を証明する書類として診断書の提出を求められることもあります。
特に、治療期間が長かったり、高額な医療費がかかったりした場合には、診断書が重要な補足資料となります。
医療費控除の詳細については、最寄りの税務署や自治体の窓口に確認してください。

公的な支援制度の利用検討

ゲーム行動症が重度化し、他の精神疾患を合併しているなど、日常生活や社会生活を送る上で著しい困難を抱えている場合、公的な支援制度の利用を検討することがあります。

  • 障害者手帳: 精神障害者保健福祉手帳などの取得を検討する場合、診断書が必要となります。
    ただし、ゲーム行動症単体で手帳の対象となるかはケースバイケースであり、他の精神疾患の合併など、総合的な病状や生活への支障の程度によって判断されます。
    手帳を取得することで、様々な福祉サービスや割引制度を利用できるようになります。
  • 自立支援医療制度: 精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。
    この制度を利用するためにも、医師による診断書(意見書)が必要となります。
    この制度が適用されることで、通院や薬代の負担を大きく減らすことができます。

これらの公的な支援制度の利用には、診断書だけでなく、申請手続きや審査が必要となります。
制度の詳細については、自治体の精神保健福祉担当窓口や精神保健福祉センターに相談することをおすすめします。

その他の理由

上記以外にも、ゲーム行動症の診断書が必要となるケースはあります。

  • 家族への説明: 家族がゲーム行動を「甘え」や「だらしない」と捉えている場合、診断書を見せることで病気であるという理解を得やすくなることがあります。
    家族全体で問題に向き合い、治療やサポート体制を築くために役立ちます。
  • 自己理解: 診断書によって、自分が抱えている問題が医学的に定義された疾患であることを認識し、病気として受け入れるための一助となることがあります。
    自身の状況を客観的に理解することで、治療へのモチベーション向上につながることもあります。
  • 将来の計画: 引きこもりからの社会復帰を目指すリハビリ施設や、就労移行支援事業所などを利用する際に、本人の病状や特性を伝える資料として診断書が必要となることがあります。

診断書が必要となる具体的な場面や、記載すべき内容は、提出先や目的によって異なります。
診断書の発行を依頼する際は、必ずその使用目的を医師に伝え、必要な情報が記載されているか確認することが重要です。

ゲーム行動症の診断を受ける場所と診断書取得の流れ

ゲーム行動症の診断は、専門的な知識と経験を持つ医師によって行われる必要があります。
診断書を取得するためには、まず適切な医療機関を受診し、診断を受けることが第一歩です。

専門医療機関(精神科・心療内科)の重要性

ゲーム行動症は精神疾患に分類されるため、診断および治療は精神科または心療内科の専門医が行います。
特に、依存症の治療経験が豊富な医療機関を選ぶことが推奨されます。

  • 精神科: 精神疾患全般を専門とする診療科です。
    ゲーム行動症を含む依存症治療に特化した専門外来を設けている病院もあります。
  • 心療内科: ストレスや心理的な要因が関係して体に症状が現れる心身症を中心に診察しますが、うつ病や不安障害などの精神疾患も扱います。
    ゲーム行動症に合併しやすい精神症状も診察できる場合があります。

かかりつけの医師がいる場合はまず相談してみるのも良いですが、ゲーム行動症の診断や治療経験が豊富かどうかを確認することが重要です。
どこに相談すれば良いか分からない場合は、地域の精神保健福祉センターや保健所に問い合わせて、適切な医療機関を紹介してもらうことも可能です。

診断までの一般的な流れ

ゲーム行動症の診断を受けるための一般的な流れは以下の通りです。
医療機関によって詳細は異なりますが、概ねこのようなステップを踏みます。

  • 医療機関の予約: 精神科や心療内科は予約制のところが多いため、事前に電話やインターネットで予約を取ります。
    初診であることを伝え、ゲームに関する相談であることを伝えるとスムーズです。
    ゲーム行動症の専門外来があれば、そちらを予約します。
  • 問診票の記入: 受診当日、または事前に、問診票を記入します。
    氏名、住所、連絡先といった基本情報に加え、現在の症状(ゲームの利用状況、生活への影響、身体症状、精神症状など)、既往歴、服用中の薬、家族構成、生育歴などについて詳しく記入します。
    ゲームに関する具体的な行動(一日のゲーム時間、どのようなゲームをしているか、いつから問題が始まったかなど)についても詳細に聞かれることが多いです。
  • 医師による診察: 医師が問診票の内容に基づき、本人から直接症状や困りごとについて聞き取ります。
    ICD-11の診断基準に照らし合わせながら、ゲーム行動のパターン、生活への影響、精神状態などを評価します。
    必要に応じて、家族からの情報提供も診断の助けとなります(本人の同意が得られる場合や、未成年の場合など)。
  • 心理検査・補助的な検査: 診断をより正確に行うために、心理検査(質問紙法による依存度チェック、性格検査、知能検査など)が行われることがあります。
    また、身体的な問題(睡眠障害、栄養不足など)や、他の精神疾患(うつ病、不安障害、ADHDなど)の合併の可能性を調べるために、血液検査や簡単な身体検査が行われることもあります。
  • 診断結果の説明と治療方針の相談: 医師が、診察や検査の結果を踏まえて診断名を伝え、その診断に至った根拠について説明します。
    ゲーム行動症と診断された場合は、病気についての説明とともに、今後の治療方針(カウンセリング、家族支援、必要に応じた薬物療法など)について提案や相談が行われます。

診断は一度の診察で確定する場合もありますが、数回の診察や検査を経て総合的に判断されることもあります。
特に依存症は、本人の自己申告だけでは把握しきれない側面もあるため、多角的な視点からの評価が重要となります。

診断書の発行手続きと費用

診断書は、診断が確定した後、医師に依頼することで発行してもらえます。

  1. 診断書の発行依頼: 診断後、受付や診察室で「診断書を発行してほしい」と伝えます。
    どのような目的で使用する診断書か(例:学校提出用、職場提出用、公的制度申請用など)を具体的に伝えてください。
    提出先によって、診断書の様式や記載項目が異なる場合があります。
  2. 必要な情報提供: 提出先の指定様式がある場合は、その様式を医療機関に渡します。
    特に様式がない場合でも、診断書に記載してほしい項目(診断名、病状、ゲーム行動による具体的な支障、就学・就労への見解、治療経過、今後の見込みなど)について、医師や医療機関の担当者に伝えましょう。
  3. 診断書の発行: 依頼を受けてから診断書の作成には数日から数週間かかることがあります。
    完成したら、医療機関から連絡が入ることが多いです。
  4. 費用の支払いと受け取り: 診断書を受け取る際に、発行にかかる費用を支払います。

診断書の発行にかかる費用は、医療機関や診断書の種類(定型のものか、詳細な記載が必要なものかなど)によって異なります。
健康保険が適用される医療行為(診察、検査など)とは異なり、診断書の発行費用は自費(保険適用外)となるのが一般的です。
費用は、数千円から1万円程度が目安となることが多いですが、事前に医療機関に確認することをおすすめします。

診断書はプライバシーに関わる重要な書類ですので、管理には十分注意しましょう。

ゲーム行動症の診断後の治療とサポート

ゲーム行動症は診断を受けるだけでなく、その後の治療とサポートが非常に重要です。
診断は、問題解決への扉を開ける最初の一歩に過ぎません。
適切な治療を受けることで、ゲームへの依存状態から回復し、健康的な生活を取り戻すことが可能になります。

治療方法の種類(認知行動療法など)

ゲーム行動症の治療の中心は、精神療法(カウンセリング)です。
ゲームに対する考え方や行動パターンを変えていくことを目指します。

  • 認知行動療法(CBT): ゲーム行動症に対して最も有効性が報告されている治療法の一つです。
    ゲームに関する非機能的な考え方(例:「ゲームをしている時だけが楽しい」「ゲームをやめると居場所がなくなる」など)や、問題のある行動パターン(例:ストレス解消のためにゲームをする、寝る直前までゲームをするなど)を特定し、それらをより健康的で建設的なものに変えていくことを目指します。
    具体的な目標設定(例:一日のゲーム時間を決める、ゲーム以外の代替活動を見つけるなど)や、その達成に向けたスキル(衝動のコントロール、ストレス対処法など)の習得も行います。
  • 動機づけ面接: 本人のゲーム行動を変えたいという内的な動機を引き出し、強化するアプローチです。
    本人が自身の問題点や変化の必要性を自覚し、治療に積極的に取り組む意欲を高めることを目指します。
  • 家族療法: ゲーム行動症は本人だけでなく、家族全体に影響を及ぼします。
    家族療法では、家族の関係性を改善し、ゲーム行動に関するコミュニケーションの仕方を見直すなど、家族全体で問題に取り組むための支援を行います。
    家族がゲーム行動症を理解し、本人をサポートするための方法を学ぶことも重要です。
  • 薬物療法: ゲーム行動症自体に直接的に効く特効薬はありません。
    しかし、ゲーム行動症にうつ病、不安障害、ADHD、睡眠障害などの他の精神疾患や身体的な問題が合併している場合には、それらの症状を軽減するために薬物療法が行われることがあります。
    例えば、抑うつや不安が強い場合には抗うつ薬や抗不安薬、注意力の問題がある場合にはADHD治療薬などが処方されることがあります。
    薬物療法は、精神療法を効果的に進めるための補助的な役割を果たすことが多いです。

これらの治療法は単独で行われることもありますが、個々の患者さんの状況に応じて組み合わせて実施されることが一般的です。
医師やカウンセラーとよく相談し、本人に合った治療計画を立てることが重要です。

家族や周囲ができること

ゲーム行動症からの回復には、家族や周囲の理解とサポートが不可欠です。
本人を一方的に責めるのではなく、病気として捉え、根気強く向き合う姿勢が求められます。

  • 病気の理解: ゲーム行動症が精神疾患であることを理解し、本人の苦痛や困難に寄り添う姿勢を示すことが大切です。
    単なる意志の弱さや怠けではないことを理解することで、本人への対応の仕方が変わってきます。
  • コミュニケーション: ゲームやそれによって生じている問題について、本人と建設的に話し合う機会を持つことが重要です。
    ただし、感情的に責めたり、一方的に決めつけたりするのではなく、本人の気持ちや考えを聞きながら、冷静に事実(例:ゲーム時間の増加、学業の遅れ、健康状態の悪化など)を伝えるように心がけましょう。
  • 治療への働きかけと同行: 専門医療機関への受診を勧めたり、初診時に同行したりすることも有効です。
    本人だけでは医療機関へのハードルが高い場合もあります。
  • 環境調整: 本人の同意を得た上で、ゲームができる環境(ゲーム機やスマートフォンの使用時間のルール作り、使用場所の制限など)を調整することも、回復をサポートする上で有効な場合があります。
    ただし、本人の反発を招かないよう、一方的な制限ではなく話し合いながら進めることが望ましいです。
  • 代替活動の提案: ゲーム以外の興味や関心を広げるような活動(スポーツ、趣味、友人との交流など)を提案し、本人と一緒に取り組む機会を持つことも大切です。
  • 家族自身のケア: ゲーム行動症の問題に直面している家族も、大きな精神的負担を抱えていることが少なくありません。
    家族だけで抱え込まず、家族会に参加したり、医療機関や相談機関のサポートを受けたりするなど、家族自身のケアも非常に重要です。

相談窓口や支援機関

ゲーム行動症に関する悩みは、専門医療機関以外にも様々な相談窓口や支援機関に相談することができます。

相談窓口・支援機関 役割・特徴
精神保健福祉センター 各都道府県・政令指定都市に設置されている専門機関。精神保健福祉に関する相談、情報提供、医療機関や支援機関の紹介、デイケアなどのプログラム提供。
保健所 地域住民の健康に関する相談窓口。精神保健に関する相談も受け付けており、必要に応じて専門機関を紹介。
依存症専門医療機関 ゲーム依存症を含む様々な依存症の診断・治療に特化した医療機関。専門的な治療プログラム(入院・外来)を提供している場合がある。
精神科・心療内科 一般的な精神疾患の診療に加え、ゲーム行動症の診断・治療を行う医療機関。
いのちの電話、よりそいホットラインなど 匿名で相談できる電話相談窓口。精神的な苦痛や悩みを誰かに聞いてもらいたい場合に利用できる。
自助グループ 同じような問題を抱える人たちが集まり、経験や気持ちを分かち合い、お互いをサポートするグループ(例:GAM-ANONなど)。

これらの相談窓口や支援機関は、診断や治療だけでなく、ゲーム行動に関する悩みや不安を聞いてもらったり、具体的な解決策や利用できる社会資源について情報を得たりする場としても活用できます。
一人で悩まず、まずは相談してみることが大切です。

ゲーム行動症に関するよくある質問

ゲーム行動症やその診断に関して、多くの方が疑問に思われることについて、よくある質問形式で回答します。

ゲーム依存症と判断される基準は?

医学的な診断基準としては、WHOのICD-11における「ゲーム行動症」の診断基準が用いられます。
これは、以下の3つの主要な行動パターンが持続的に見られ、かつ生活に著しい支障が生じている場合に診断されるものです。
1. ゲーム行動の制御ができない
2. ゲームを他の活動より優先する
3. 問題が起きてもゲームを継続・エスカレートさせる
これらの行動パターンが通常12ヶ月以上持続していることが基準となります(ただし、重症の場合は期間が短くても診断されることがあります)。

ゲーム依存症の診断名は?

ICD-11では正式な診断名は「ゲーム行動症(Gaming disorder)」です。
一般的には「ゲーム依存症」「ネット依存症」などと呼ばれることもありますが、医療機関での診断書などには「ゲーム行動症」またはそれに類する医学的名称が記載されることが一般的です。

ゲーム依存症は精神疾患ですか?

はい、ゲーム依存症(ゲーム行動症)は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-11において、精神、行動または神経発達の障害のカテゴリに分類される精神疾患です。
病気として診断され、治療の対象となります。

ゲーム障害は国際疾病ですか?

はい、ゲーム障害(ゲーム行動症)は、WHOのICD-11に登録されており、国際的な疾病分類として認められています。
これにより、世界中で統一的な基準に基づいた診断や統計が可能となりました。

ゲーム依存症の原因は?

ゲーム依存症の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

  • ゲーム側の要因: 達成感や報酬が得られやすいゲームデザイン、ソーシャル要素、常に新しいコンテンツが提供される点など。
  • 個人の要因: ストレスや不安を抱えやすい性格、衝動性の高さ、他の精神疾患(ADHD、うつ病、不安障害など)の合併、自己肯定感の低さなど。
  • 環境的要因: 家庭や学校・職場での問題、人間関係の希薄さ、ゲームが容易に入手・利用できる環境など。

これらの要因が組み合わさることで、特定の個人がゲーム依存症を発症するリスクが高まると考えられています。

ゲーム依存症の治し方(大人向け)

ゲーム依存症の治療は、専門医療機関(精神科・心療内科)で行われることが基本です。
治療の中心は、認知行動療法などの精神療法(カウンセリング)です。
ゲームに対する考え方や行動パターンを変え、問題解決スキルやストレス対処法を身につけることを目指します。
必要に応じて、合併する精神疾患に対して薬物療法が行われることもあります。
また、家族のサポートや、同じ悩みを抱える人との交流(自助グループ)も回復に役立ちます。
治療には本人の「変わりたい」という意欲が不可欠です。

ゲーム依存症を自覚させるには?

ゲーム依存症の本人に病気であることを自覚させることは難しい場合があります。
本人は問題を認めたがらないことも多いからです。
一方的に責めたり、感情的に訴えたりしても反発を招きやすいです。
大切なのは、ゲームによって生じている具体的な問題点(例:睡眠不足による体調不良、借金、仕事のミス、家族との口論など)を、感情的にならずに冷静かつ具体的に伝えることです。
そして、本人の苦痛や困難に寄り添いながら、「一緒に解決策を考えよう」「専門家(医師やカウンセラー)に相談してみないか」と提案する姿勢が効果的です。
家族だけで抱え込まず、専門機関に相談し、本人への適切な働きかけ方についてアドバイスをもらうことも有効です。

ゲーム依存症の特徴は?

ゲーム依存症(ゲーム行動症)の主な特徴は、ICD-11の診断基準で示される3つの要件です。

  • 制御困難: ゲーム時間や頻度を自分でコントロールできない。
  • ゲーム最優先: 学業、仕事、人間関係など、他の重要な活動よりもゲームを優先する。
  • 問題継続: ゲームによって問題(健康、学業、仕事、人間関係など)が生じているのにやめられない、またはさらにゲームに没頭する。

これらの行動パターンが持続し、生活に著しい支障が生じていることが特徴です。
その他、ゲームをしていないときに落ち着かない、イライラするといった離脱症状や、ゲーム時間を偽る、借金をしてでもゲームをするといった行動が見られることもあります。

ゲーム行動症の診断書の取得を検討されている方へ

ゲーム行動症(ゲーム障害)の診断書は、様々な場面で皆さんの状況を説明し、必要な手続きや支援を受ける上で役立つ重要な書類です。
学校や職場への提出、公的な支援制度の利用検討など、診断書が必要となる理由は人それぞれです。

もしあなたがゲーム行動によって日常生活に困難を感じていたり、ご家族がそのような状況にあったりして、診断書が必要かもしれないと感じているのであれば、まずは専門医療機関への相談を検討してください。
精神科や心療内科の専門医は、ゲーム行動症に関する正確な診断を行い、皆さんの状況に合わせた診断書を発行することができます。

診断書を取得すること自体が目的ではなく、診断を受けることによって自身の状況を正確に理解し、適切な治療やサポートへと繋げていくことが何よりも大切です。
一人で悩まず、専門家の力を借りて、ゲーム行動症からの回復、そして健康的な生活を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。


免責事項: 本記事はゲーム行動症の診断書に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を保証するものではありません。
個々の状況については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

  • 公開

関連記事