自傷行為で診断書が必要なケースとは?もらい方や使える制度

自傷行為を経験されている方や、そのご家族にとって、診断書が必要になる場面があるかもしれません。学校や職場への提出、各種公的手続きなどで、自傷行為やそれに伴う精神的な不調に関する診断書が求められることがあります。しかし、「どこでもらえるの?」「費用はどのくらいかかるの?」「どんなことが書かれるの?」といった疑問を抱えている方も少なくないでしょう。

この情報では、自傷行為に関する診断書の取得方法、かかる費用、記載される内容、そしてどのようなケースで診断書が必要になるのかについて、精神科・心療内科医の一般的な知見に基づき解説します。診断書について知りたい方、取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

自傷行為と診断書の必要性

自傷行為とは、意図的に自らの身体を傷つける行為全般を指します。これは、抑えきれない苦痛や感情を表現する手段であったり、精神的な痛みを和らげようとしたり、現実感を取り戻そうとしたりするなど、様々な背景や目的を持っています。自傷行為そのものが病気として診断されるわけではありませんが、多くの場合、うつ病、不安障害、境界性パーソナリティ障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、何らかの精神疾患や心理的な問題と関連しています。

診断書は、医師が患者さんの心身の状態を医学的な観点から証明する書類です。自傷行為に関連する診断書が必要となるのは、主に以下のような状況が考えられます。

  • 社会生活上の困難の証明: 自傷行為やそれに伴う精神的な不調が原因で、学業や仕事に支障が出ている場合に、その状況を第三者(学校、職場など)に説明し、理解や配慮を得るため。
  • 公的手続きの根拠: 傷病手当金や障害年金、精神障害者保健福祉手帳などの申請において、診断書が病状や労働・生活能力の程度を示す重要な証拠となるため。
  • 治療や支援の必要性の提示: 専門的な治療や心理的サポートが必要であることを、関係機関(医療機関、福祉施設、行政など)に示すため。
  • 法的手続き: 裁判や調停などにおいて、精神状態が争点となる場合に、医学的な根拠として提出するため。

このように、自傷行為に関する診断書は、ご本人が抱える困難を客観的に示し、必要な支援や理解を得るための重要なツールとなり得ます。

自傷行為の診断書のもらい方

自傷行為に関する診断書を取得するには、まず医療機関を受診し、医師に相談する必要があります。診断書は、患者さんの病状や経過を把握している医師が、その時点での医学的判断に基づいて作成します。

診断書を発行できる医療機関

自傷行為やそれに伴う精神的な問題を専門的に扱っている医療機関は、主に精神科心療内科です。これらの診療科では、精神疾患の診断や治療、カウンセリングなどが行われており、自傷行為の背景にある問題を適切に評価することができます。

  • 精神科: 精神疾患全般を扱い、診断、薬物療法、精神療法などを行います。自傷行為の背景に統合失調症や双極性障害などの重い精神疾患がある場合や、専門的な治療が必要な場合に適しています。
  • 心療内科: ストレスなど心因が原因で体に症状が現れる「心身症」を中心に扱いますが、うつ病や不安障害などの精神疾患も診療範囲としています。自傷行為の背景にストレス関連疾患や気分障害などがある場合に適しています。

既に精神科や心療内科に通院されている場合は、主治医に診断書の発行を依頼することになります。まだ受診したことがない場合は、まず精神科または心療内科を受診し、自傷行為や精神的な不調について相談することから始めます。

かかりつけの内科医などに相談することも不可能ではありませんが、自傷行為の背景にある精神的な問題の診断や評価は精神科医や心療内科医の専門分野です。正確な診断や、提出先に理解されやすい診断書を作成してもらうためには、専門医の診察を受けることが望ましいでしょう。

受診から診断書発行までの流れ

診断書の発行は、初診時または再診時に医師に依頼します。具体的な流れは医療機関によって多少異なりますが、一般的なステップは以下の通りです。

  1. 医療機関の選択と予約: 精神科または心療内科を選び、予約します。予約時に、診断書発行を希望する旨を伝えておくとスムーズな場合がありますが、診察を受けてから相談しても構いません。
  2. 受診と診察: 予約した日時に医療機関を受診します。医師との面談では、自傷行為を始めたきっかけ、頻度、方法、具体的な状況、それによって困っていること、他に抱えている精神的な症状などを詳しく伝えます。医師は、患者さんの話を丁寧に聞き、必要に応じて心理検査などを行うこともあります。
  3. 診断書発行の依頼: 診察の中で、医師に診断書の発行を依頼します。診断書の提出先(学校、職場、役所など)と、診断書が必要な目的(休学・休職、手当金の申請など)を具体的に伝えてください。提出先から指定された診断書様式がある場合は、必ず持参しましょう。
  4. 診断書作成と支払い: 医師が診察内容に基づいて診断書を作成します。診断書の作成には、通常数日から1週間程度かかります。医療機関によっては、即日発行に対応している場合もありますが、予約状況や診断内容によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。診断書作成にかかる費用を支払い、診断書を受け取ります。郵送での受け取りが可能な場合もあります。

診断書は、医師が診察した時点での病状に基づいて作成されるため、病状が変化した場合は改めて診察を受け、新しい診断書を作成してもらう必要が生じることもあります。

医師に相談する際のポイント

自傷行為について医師に相談し、診断書を発行してもらうためには、いくつかのポイントがあります。

  • 正直に話す: 自傷行為は隠したい気持ちになることが多いかもしれませんが、医師に正直に話すことが最も重要です。いつから、どのような方法で、どのくらいの頻度で自傷行為をしているのか、どのような時にしたくなるのか、その時の気持ちなどを具体的に伝えましょう。正直に話すことで、医師はあなたの苦痛や状況を正確に理解し、適切な診断や治療、そして診断書作成に繋げることができます。
  • 診断書が必要な理由と目的を明確に伝える: 診断書をどこに提出するのか、そしてその診断書によって何を得たいのか(例:仕事を休みたい、学校での課題の締め切りを延ばしてもらいたい、傷病手当金を申請したいなど)を具体的に伝えましょう。目的を明確に伝えることで、医師は診断書にどのような情報を盛り込むべきかを判断しやすくなります。
  • 困っている具体的な状況を伝える: 自傷行為や精神的な不調によって、日常生活や社会生活で具体的にどのようなことに困っているのかを伝えましょう。例えば、「朝起きられない」「電車に乗れない」「集中力が続かず仕事でミスが増えた」「人との関わりが億劫になった」など、具体的なエピソードを交えて話すと、医師はあなたの苦痛の度合いや生活への影響をより深く理解できます。
  • 提出先の指定様式の有無を確認する: 提出先によっては、特定の診断書様式を用意している場合があります。役所の手続きや会社の規定など、提出先の担当部署に事前に確認し、指定様式がある場合は必ず持参して医師に渡してください。
  • 診断書の記載内容について希望があれば伝える: 必須ではありませんが、診断書に盛り込んでほしい内容(例:休職が必要な期間、就労上の配慮事項など)について、希望があれば医師に相談してみましょう。ただし、医師は医学的判断に基づいて記載内容を決定するため、必ずしも全ての希望が叶うわけではないことを理解しておきましょう。

医師との信頼関係を築き、安心して話せる環境で相談することが、診断書の適切な発行に繋がります。

自傷行為の診断書にかかる費用

診断書の発行には費用がかかります。これは、診断書の作成が健康保険の適用外となる自費診療に分類されるためです。

保険適用と自費について

医療機関での診察や治療そのものには、通常、健康保険が適用されます。例えば、自傷行為の背景にあるうつ病の診断や、それに対する薬物療法、カウンセリングなどにかかる費用は、原則として健康保険が適用され、自己負担は通常3割となります。

一方、診断書の作成料は、健康保険が適用されません。これは、診断書が治療行為そのものではなく、個別の目的のために作成される書類であるためです。したがって、診断書の発行にかかる費用は、全額自己負担となります。

診断書作成料は、医療機関の種類(病院、クリニックなど)や規模、診断書の種類(簡単なもの、詳細なものなど)、そして医療機関ごとの料金設定によって異なります。一般的な相場としては、3,000円から10,000円程度が多いですが、専門性の高い診断書や、詳細な記載が必要な場合は、それ以上の費用がかかることもあります。

費用について不安がある場合は、診断書の発行を依頼する際に、受付や医師に事前に確認しておくことをお勧めします。また、診断書作成料とは別に、診察料や薬剤費など、その日の診療にかかる費用が発生することも忘れないでください。

自傷行為の診断書に記載される内容

自傷行為に関する診断書には、提出先の要求や診断の目的によって様々な内容が記載されますが、一般的には以下の項目が含まれます。

  • 患者情報: 氏名、生年月日、住所など。
  • 傷病名: 医師が医学的に診断した病名。
  • 診断年月日: 医師がその診断を下した日付。
  • 初診年月日: 初めてその医療機関を受診した日付。
  • 病状: 現在の病状、自傷行為の種類、頻度、時期、その他の精神症状など。
  • 経過: 現在に至るまでの病状の変化や治療の経過。
  • 今後の見通し(予後): 治療によって病状が改善する可能性や、回復までにかかる期間など。
  • 就労・学業に関する意見: 仕事や学校への出席の可否、休業や休学の必要性、職場や学校での配慮事項など、提出先の目的に応じた具体的な意見。
  • 診断書発行日: 診断書を作成した日付。
  • 医療機関情報: 医療機関の名称、所在地、連絡先。
  • 医師情報: 医師の氏名、医師免許番号、署名または記名押印。

傷病名について

先述したように、自傷行為そのものは診断名ではありません。診断書に記載される「傷病名」は、自傷行為の背景にある精神疾患や心理的な問題を指します。例えば、以下のような病名が記載される可能性があります。

診断名例 補足
うつ病(Depression) 抑うつ気分や興味・喜びの喪失が主な症状で、自傷行為を伴うことがある。
双極性障害(Bipolar Disorder) 気分が高揚する躁状態と落ち込むうつ状態を繰り返し、自傷行為のリスクがある。
境界性パーソナリティ障害 対人関係、自己像、感情、行動の不安定さが特徴で、衝動的な自傷行為が多い。
不安障害(Anxiety Disorder) 過度な不安や恐怖が主な症状で、パニック発作などを伴い、自傷行為に至ることも。
適応障害(Adjustment Disorder) ストレスが原因で心身に症状が現れ、自傷行為につながることがある。
外傷後ストレス障害(PTSD) 心的外傷体験後に発症し、フラッシュバックなどを伴い、自傷行為を伴うことがある。
強迫性障害(OCD) 不安を伴う思考や行動が特徴で、まれに自傷行為につながることがある。

診断名は、医師の医学的判断に基づいて決定されます。正確な診断名がつくことで、適切な治療に繋がるだけでなく、各種公的手続きにおいても病状の根拠として有効になります。

具体的な症状の記載

診断書では、傷病名だけでなく、自傷行為の種類、頻度、時期、そしてそれによって患者さんがどのような状態にあるのかといった具体的な症状が記載されます。

例えば、

「〇〇(具体的な自傷行為、例:リストカット)を週に数回行う。」
「〇〇をした後、強い後悔や自己嫌悪に苛まれる。」
「不眠が続き、日中の倦怠感が著しい。」
「集中力の低下により、業務遂行能力が著しく低下している。」
「対人関係において強い不安を感じ、出勤が困難になっている。」

など、自傷行為そのものの状況や、それに伴う精神的・身体的な不調、そしてそれが日常生活や社会生活に及ぼしている影響などが具体的に記載されることで、診断書の提出先が患者さんの状況をより深く理解できるようになります。

就労・学業に関する意見

学校や職場に提出する診断書には、就労や学業に関する医師の意見が重要な項目となります。これは、診断書が必要となる目的の根幹となる部分です。

具体的な記載内容としては、以下のようなものがあります。

  • 休業・休学の必要性: 「本人の病状を鑑みると、現時点での就労(または就学)は困難であり、〇ヶ月間の休業(または休学)を要する。」のように、具体的な期間を示すことが多いです。
  • 復職・復学の条件: 休業・休学後に復帰する際の条件として、「まずは短時間勤務からの開始が望ましい」「対人関係の少ない部署への配置転換が望ましい」「週に〇回の通院治療が必要」などが記載されることがあります。
  • 就労・学業上の配慮事項: 現在の業務内容や学習環境で継続する場合に必要な配慮として、「残業を免除すること」「出張を免除すること」「精神的な負担の大きい業務を避けること」「試験時間を延長すること」「別室での受験を許可すること」などが具体的に記載されます。
  • 現在の能力評価: 「集中力の維持が困難」「判断力が低下している」「人とのコミュニケーションに困難がある」など、病状が就労・学業に具体的にどのような影響を与えているかについて、医師の評価が記載されることもあります。

これらの意見は、提出先が患者さんの状況を理解し、適切な対応や支援を検討するための重要な情報となります。

自傷行為の診断書が必要なケース

自傷行為に関する診断書が必要となるのは、個人の状況や目的によって様々ですが、ここでは代表的なケースをいくつか紹介します。

仕事を休む・辞める場合

自傷行為やそれに伴う精神的な不調により、仕事に行くことが困難になったり、業務を遂行できなくなったりした場合に、診断書が必要になります。

  • 休職手続き: 会社に病状を証明し、一定期間の休職を申請する際に診断書が求められます。診断書には、休職の必要性や期間、復職の見通しなどが記載されます。
  • 退職理由の明確化: 病気が原因で退職する場合に、退職理由を会社に説明し、円滑な手続きを進めるために診断書を提出することがあります。
  • 傷病手当金の申請: 健康保険から給与の一部が支給される傷病手当金を申請する際に、医師の証明として診断書(または傷病手当金申請書の一部である療養担当者記入欄)が必要になります。病状、就労不能期間などが記載されます。
  • 障害者雇用での応募: 精神障害者保健福祉手帳などを取得している場合、診断書が障害の程度を証明する書類として、障害者雇用での応募に役立つことがあります。

診断書を提出することで、会社側も病状を理解し、適切な対応(休職許可、配置転換、業務内容の調整など)を検討しやすくなります。

学校を休む・配慮を求める場合

学生の場合、自傷行為や精神的な不調が学業に支障をきたす場合に、診断書が必要となることがあります。

  • 休学手続き: 一定期間学校を休む「休学」の手続きを行う際に、診断書が必要となります。休学の必要性や期間、復学の見通しなどが記載されます。
  • 出席停止の理由: 病状により授業に出席できない場合に、欠席理由を証明するために診断書を提出することがあります。
  • 学業上の配慮の申請: 試験時間の延長、別室での受験、課題の提出期限の延長、単位取得の要件緩和など、学業における特別な配慮を学校に申請する際に診断書が必要となります。病状が学業にどのように影響しているのか、どのような配慮が必要なのかが記載されます。
  • 精神的サポート体制の構築: スクールカウンセラーや養護教諭、クラス担任などが生徒の状況を理解し、適切なサポートを行うために、保護者を通じて診断書の情報を共有することがあります(ただし、プライバシーへの配慮が必要です)。

学校側に病状を伝えることで、理解を得られ、安心して学業を継続したり、回復に専念したりするための環境を整えることに繋がります。

傷病手当金・障害年金の申請

傷病手当金や障害年金は、病気や怪我によって働くことが困難になった場合に、生活を保障するための公的な制度です。これらの制度を利用する際には、医師の作成する診断書が重要な書類となります。

  • 傷病手当金: 会社員などが健康保険に加入している場合に、病気や怪我で連続して4日以上仕事を休み、給与の支払いがない期間について支給される手当金です。申請には、医師による「傷病手当金支給申請書」への証明(傷病名、病状、労務不能と認めた期間など)が必要です。
  • 障害年金: 病気や怪我によって、日常生活や仕事に著しい制限がある場合に支給される年金です。申請には、医師が作成する「診断書(精神の障害用)」が必要です。この診断書には、病状、日常生活能力、就労状況などが詳細に記載され、障害等級の判定に大きく影響します。

傷病手当金や障害年金の申請における診断書は、提出先である健康保険組合や日本年金機構が指定する様式を用いるのが一般的です。医師に依頼する際は、どの制度に申請するのかを明確に伝え、必要な様式を準備しましょう。

その他の公的手続き

自傷行為に関連する精神的な不調は、上記以外にも様々な公的手続きに関わることがあります。

  • 精神障害者保健福祉手帳の申請: 精神疾患により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある場合に取得できる手帳です。公共料金の割引や税金の控除など、様々な支援を受けることができます。申請には、医師の診断書が必要です。
  • 自立支援医療(精神通院医療)の申請: 精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。利用するためには、医師の診断書が必要になります。
  • 生活保護の申請: 病状により就労が困難で生活に困窮している場合、生活保護を申請する際に、病状を証明する診断書が必要となることがあります。
  • 裁判や行政手続き: 病状が、親権や後見、損害賠償、犯罪に対する責任能力など、法的な争点となる場合に、医師の診断書が医学的な証拠として提出されることがあります。

これらの手続きにおいても、診断書はご自身の状況を客観的に示す重要な書類となります。

自傷行為の診断書に関する注意点

自傷行為の診断書を取得・利用するにあたっては、いくつか注意しておきたい点があります。

診断書の有効期限

診断書自体に「有効期限」が明確に定められているわけではありません。診断書は、医師がその診断書を作成した「発行日」時点での患者さんの病状を証明するものです。

しかし、病状は時間の経過とともに変化する可能性があります。そのため、診断書の提出先によっては、「発行から〇ヶ月以内のもの」のように、直近の診断書を求められることがあります。特に、休職期間の延長や、傷病手当金・障害年金の更新手続きなど、継続的な支援やサービスを利用する場合には、定期的に新しい診断書が必要となることが多いです。

診断書を提出する際には、提出先が必要とする診断書の要件(発行時期の目安など)を事前に確認しておくことが重要です。病状が大きく変化したと感じる場合や、提出先から新しい診断書を求められた場合は、改めて医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

診断書を書いてもらえない場合

医師に診断書の発行を依頼しても、すぐに書いてもらえない場合や、希望する内容で書いてもらえない場合があります。その理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • 診断が確定していない: 自傷行為は、その背景にある精神疾患を診断することが重要です。医師がまだ診断を確定できていない場合、診断書を作成できないことがあります。診断にはある程度の診察回数や情報収集が必要な場合があります。
  • 病状が診断書を必要とするほどではないと医師が判断した場合: 医師が、患者さんの現在の病状は、診断書を発行して公的な手続きや社会生活上の配慮が必要となるほどではない、と判断した場合です。
  • 医師と患者の信頼関係が十分に築けていない: 医師が患者さんの状況を十分に把握できていない場合や、患者さんが医師に対して正直に話せていない場合など、信頼関係が不足していると、医師は責任を持って診断書を作成することが難しくなります。
  • 希望する内容が医学的な事実と異なる: 患者さんが希望する診断名や病状、必要な配慮などが、医師の医学的判断と異なる場合、医師は患者さんの希望通りに記載することはできません。診断書は、あくまで医師の客観的な証明書だからです。

もし診断書をすぐに書いてもらえなかったり、発行を断られたりした場合は、その理由を医師に丁寧に尋ねてみましょう。診断に至るまでのプロセスについて説明を受けたり、診断書が必要な理由を改めて伝えたりすることで、解決の糸口が見つかることがあります。どうしても納得できない場合や、医師とのコミュニケーションが難しい場合は、別の医療機関でセカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。

セカンドオピニオンについて

自傷行為の診断や治療方針について、現在の主治医以外の別の医師の意見を聞きたいと考える場合、セカンドオピニオンを利用することができます。セカンドオピニオンは、より適切な治療法を選択したり、病状に対する理解を深めたりするために有効な手段です。

診断書発行についても、セカンドオピニオンの際に相談することが可能です。ただし、セカンドオピニオンは、あくまで「意見を聞く」ことが目的であり、基本的にその場での診断や治療は行われません。したがって、セカンドオピニオンを受けた医師に、その場で診断書を書いてもらうことは難しいでしょう。

もし、セカンドオピニオンを受けた医師に診断書を書いてもらいたい場合は、改めてその医療機関で継続的な診察を受け、病状を十分に把握してもらった上で依頼する必要があります。診断書の発行を目的とする場合は、セカンドオピニオンではなく、別の医療機関での「新規受診」として予約する方がスムーズな場合があります。

まとめ

自傷行為に関する診断書は、ご本人が抱える困難を社会に伝え、必要な理解や支援を得るための重要な書類です。精神科や心療内科を受診し、医師に正直に状況を伝えることで、適切な診断書を取得することができます。

診断書の発行には費用がかかりますが、それは自傷行為の背景にある精神的な苦痛が、単なる個人的な問題ではなく、医学的な配慮や社会的な支援が必要な状態であることを客観的に示すための投資と考えることもできます。

診断書を取得し、学校や職場、各種公的手続きに利用することで、休養が必要な期間を確保したり、学業や就労環境における負担を軽減したり、経済的な支援を受けたりすることが可能になります。これにより、回復に向けた治療に専念できる環境を整えることができるでしょう。

診断書が必要になった際は、一人で悩まず、まずは信頼できる医療機関に相談してみてください。医師とともに、ご自身の状況に合った診断書を作成し、より良い未来へと繋げていきましょう。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的診断や治療法を示すものではありません。ご自身の状況については、必ず精神科や心療内科などの専門医にご相談ください。診断書に関する詳細や手続きについては、各医療機関や提出先にご確認ください。

  • 公開

関連記事