HSPの『治療法』を解説 | 生きづらさを解消し楽になる方法

過敏性紫斑病(HSP)は、主に皮膚の紫斑、関節の痛み、腹痛、そして腎臓の症状を特徴とする血管炎の一種です。正式にはIgA血管炎とも呼ばれます。
特に子どもに多く見られますが、大人にも発症することがあり、小児とは異なる特徴を持つ場合があります。

HSPの症状が現れたとき、「この紫斑は何だろう?」「お腹が痛いのはHSPのせい?」「治療法はあるの?」「どれくらいで治るの?」など、さまざまな疑問や不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、過敏性紫斑病(HSP)の原因から主な症状、診断方法、そして症状に合わせた具体的な治療法、さらには経過や予後、日常生活での注意点までを詳しく解説します。

もし、ご自身やご家族にHSPが疑われる症状が見られる場合は、この記事で得た知識を参考に、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けていただくことが非常に重要です。

過敏性紫斑病(HSP)とは?原因と症状

過敏性紫斑病(HSP)は、全身の小さな血管に炎症(血管炎)が起こる病気です。この血管炎によって、血管から血液成分が漏れ出し、様々な症状が現れます。特に皮膚、関節、消化管、腎臓に症状が出やすいのが特徴です。

HSPの別名:血管性紫斑病、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病

過敏性紫斑病は、その特徴から「血管性紫斑病」と呼ばれることもあります。また、病気の発見者であるドイツの医師シェーンラインとヘノッホの名前にちなんで、「シェーンライン・ヘノッホ紫斑病」とも呼ばれていましたが、近年では血管炎に関する国際的な分類において「IgA血管炎」という名称が用いられることが一般的になっています。これは、炎症を起こした血管の壁に免疫グロブリンA(IgA)という抗体が付着していることが病気の原因メカニズムの一つと考えられているためです。

主な原因は?感染や薬剤との関連

HSPの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、体の免疫システムが異常な反応を起こすことによって血管に炎症が引き起こされると考えられています。誘因として最もよく知られているのは、溶連菌などの細菌やウイルスによる感染症、特に風邪などの上気道炎です。感染をきっかけに免疫反応が過剰に働き、自分の血管を攻撃してしまう一種の自己免疫反応と考えられています。

その他にも、特定の薬剤(抗生物質など)、食物アレルギー、虫刺され、予防接種などがHSPの発症に関与している可能性が指摘されています。しかし、誘因が特定できない場合も多くあります。

見られる主な症状:紫斑、腹痛、関節痛、腎症状

HSPで最も特徴的な症状は、皮膚に現れる「紫斑」です。その他に腹痛、関節痛、腎症状がよく見られます。これらの症状が組み合わさって現れることが多いことから、「四主徴」と呼ばれることがあります。

  1. 紫斑(purpura)
    最も一般的で初期に現れることが多い症状です。最初は小さな赤い点状の出血斑として現れ、徐々に広がって押しても消えない赤紫色や茶色っぽい斑点になります。HSPの紫斑は、皮膚の表面から少し盛り上がっているように触れることができるのが特徴です(触知可能紫斑)。主に重力がかかる下肢(すねや足首)や臀部(お尻)に多く現れますが、肘や手など他の部位にもできることがあります。紫斑の大きさや数は人によって異なり、数日から数週間かけて新しい紫斑が出現したり、既存の紫斑の色が変化したりします。
  2. 腹痛(abdominal pain)
    HSP患者さんの約半数に見られる症状です。血管炎が消化管の血管に起こることで、腹痛や吐き気、嘔吐などが起こります。強い腹痛を訴えることがあり、腸管からの出血により血便が見られることもあります。まれに、腸の一部が他の腸管に入り込んでしまう「腸重積」という重篤な合併症を引き起こすことがあり、注意が必要です。腹痛は紫斑よりも遅れて現れることもあります。
  3. 関節痛(arthralgia)
    特に足首や膝などの比較的大きな関節に痛みを伴うことがあります。関節の腫れや熱感を伴うこともありますが、関節自体が破壊されることはなく、炎症が治まれば関節の症状も改善します。関節痛は紫斑と同時、あるいは先に現れることもあります。
  4. 腎症状(renal involvement)
    HSPで最も重要な合併症の一つであり、紫斑病性腎炎と呼ばれます。HSP患者さんの約半数に腎臓の症状が現れるとされています。初期には、尿検査で蛋白尿や血尿が見られる程度で、自覚症状がないことが多いです。しかし、一部のケースでは、腎炎が進行し、慢性腎臓病や腎不全に至る可能性があります。特に大人のHSPでは腎炎の合併率が高く、重症化しやすい傾向があるため、注意深い経過観察が不可欠です。腎症状は、他の症状よりも遅れて現れることがあるため、皮膚の症状が改善した後も定期的な腎機能のチェックが重要です。

これらの四主徴以外にも、発熱や頭痛などの全身症状が見られることがあります。また、まれに肺や脳、心臓などの血管にも炎症が起こることがありますが、これは非常に稀なケースです。

小児と大人のHSPの違い

HSPは主に4歳から7歳の子どもに多く発症しますが、大人にも見られます。小児のHSPの多くは比較的軽症で、予後も良好なことが多いですが、大人のHSPは小児とは異なる特徴を持つことがあります。

特徴 小児のHSP 大人のHSP
発症年齢 4〜7歳にピーク 全年齢にわたるが、成人以降
発症頻度 高い 低い
紫斑 典型的、下肢・臀部中心 非典型的、全身に出現することも
腹痛 比較的多い 比較的多い
関節痛 比較的多い 比較的多い
腎症状 約半数に見られる 小児よりも高い(約60〜80%)
腎炎の重症度 軽症が多い 重症化しやすい傾向
再発率 約30〜40% 小児よりも高い傾向
予後 良好なことが多い(腎炎がなければ) 腎炎の重症度によって異なる

このように、大人のHSPは小児に比べて腎炎の合併率が高く、腎炎が重症化しやすい傾向があります。そのため、大人のHSPではより慎重な診断と治療、そして長期的な経過観察が必要となることが多いです。

HSPの診断方法

HSPの診断は、主に患者さんの症状(特に特徴的な触知可能紫斑)や身体診察の結果、そしていくつかの検査結果を組み合わせて行われます。診断基準(EULAR/PRINTO/PRES分類など)も参考にされます。

どのような検査を行うか

HSPが疑われる場合、以下のような検査が行われます。

  • 血液検査:
    • 炎症の程度を調べる検査(CRP、白血球数など)
    • 腎機能の評価(クレアチニン、尿素窒素など)
    • 貧血の有無
    • 血小板数の確認(血小板が減少する他の紫斑病との区別)
    • ASO値(溶連菌感染の既往を示す値、誘因として感染が疑われる場合に測定)
    • 免疫グロブリンの値(IgAの上昇が見られることがある)
  • 尿検査:
    最も重要な検査の一つです。尿の中に赤血球(血尿)やタンパク質(蛋白尿)が出ていないかを確認します。HSPでは、腎臓の血管炎によって血尿や蛋白尿が出ることが多く、腎臓の障害の有無や程度を把握するために繰り返し行われます。
  • 皮膚生検:
    診断を確定するために行われることがあります。皮膚にできた紫斑の一部を小さく切り取り、顕微鏡で詳しく調べます。HSPの紫斑の組織では、血管の壁に炎症細胞が集まり、特に免疫グロブリンA(IgA)という抗体が沈着していることが確認できます。これがHSP(IgA血管炎)の診断の重要な根拠となります。
  • 便検査:
    腹痛や下血がある場合に、便の中に血液が混じっていないかを確認します。
  • 画像検査:
    強い腹痛がある場合や、腸重積などの合併症が疑われる場合には、腹部超音波検査やX線検査、CT検査などが行われることがあります。

これらの検査結果と、患者さんの詳しい症状の経過、身体診察の結果を総合的に判断してHSPの診断が行われます。HSPに似た症状を示す他の病気(薬剤性血管炎、他のタイプの血管炎、血小板減少性紫斑病など)を除外することも重要です。

HSPの主な治療法:症状に合わせたアプローチ

HSPの治療は、症状の重症度や合併症の有無によって異なります。多くの場合、安静と症状を和らげる対症療法が中心となりますが、重い症状や合併症がある場合には、炎症を抑えるための薬物療法が必要になります。

基本的な治療方針:安静と対症療法

HSPの多くは、適切な治療と安静によって自然に軽快していく経過をたどります。そのため、治療の基本は「安静」と、現れている症状に対する「対症療法」です。

  • 安静: 特に下肢に紫斑が多く出ている場合は、立っている時間が長いと重力の影響で紫斑が悪化したり、むくみが出やすくなったりします。できるだけ安静にして、下肢を高く保つことが勧められます。紫斑が消えるまで、学校や仕事を休んで自宅で静かに過ごすことが推奨される場合もあります。
  • 対症療法: 痛みや不快な症状を和らげるための治療です。

紫斑や関節痛への治療

皮膚の紫斑自体に特別な治療は必要ないことがほとんどですが、広範囲に及ぶ場合や痛みを伴う場合は、ステロイドの塗り薬が処方されることがあります。

関節痛に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という種類の痛み止めが処方されることが一般的です。これらの薬は痛みを和らげるだけでなく、関節の炎症を抑える効果も期待できます。ただし、NSAIDsは胃腸に負担をかけることがあるため、医師の指示に従って服用することが重要です。関節痛が強く、NSAIDsでも改善しない場合や、腹痛などの他の症状も伴う場合は、ステロイドの内服薬が用いられることがあります。

腹痛への治療

腹痛はHSPの症状の中でも特に患者さんにとってつらい症状の一つです。腹痛が強い場合は、食事を控えて腸を休ませる「絶食」が必要となることがあります。点滴で水分や栄養を補給します。痛みを和らげるために鎮痛薬が使用されますが、NSAIDsは消化管の血管炎を悪化させる可能性があるため、慎重に使用されるか、避けるべきとされています。腹痛が非常に強い場合や、血便を伴う場合、腸重積が疑われる場合には、炎症を強く抑えるためにステロイドの内服や点滴が行われます。腸重積を起こした場合は、緊急の治療(高圧浣腸や手術)が必要になることもあります。

腎炎の治療:ステロイドや免疫抑制剤

紫斑病性腎炎は、HSPの予後を左右する最も重要な合併症です。尿検査で血尿や蛋白尿が見られたら、腎臓の専門医と連携して治療方針を検討します。腎炎の治療は、その重症度によって異なります。

  • 軽症の腎炎(軽度の血尿・蛋白尿のみ): 安静を保ちながら、定期的な尿検査で経過を観察することが多いです。
  • 中等症〜重症の腎炎(多量の蛋白尿、腎機能の低下など): 炎症を強力に抑えるために、ステロイド療法が中心となります。ステロイドは、炎症の原因となっている免疫反応を抑える効果があります。短期間に大量のステロイドを投与するパルス療法や、一定期間内服を続ける治療法などがあります。ステロイドは効果が高い一方で、ムーンフェイス(顔が丸くなる)、血糖値の上昇、胃潰瘍、骨粗鬆症などの副作用が出ることがあります。
  • ステロイドの効果が不十分な場合や、腎炎が進行する場合: ステロイドに加えて、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤が使用されることがあります。これらの薬剤は、過剰な免疫反応をさらに抑制することで腎臓への攻撃を抑え、腎炎の進行を防ぐことを目指します。ただし、免疫力が低下するため、感染症にかかりやすくなるなどの副作用にも注意が必要です。
  • 血圧が高い場合: 腎臓の負担を減らし、腎機能の低下を防ぐために、ACE阻害薬やARBなどの降圧薬が使用されることもあります。

腎炎の治療は長期にわたることが多く、治療中も定期的に血液検査や尿検査を行い、腎機能や薬剤の効果・副作用を慎重に評価しながら進められます。

入院が必要となるケース

HSPの症状が重い場合や、特定の合併症が疑われる場合には、入院して集中的な治療や観察が必要となることがあります。入院の目安となるのは以下のような場合です。

  • 強い腹痛や消化管出血(血便など)がある場合
  • 腸重積が疑われる場合
  • 重症の紫斑(広範囲、潰瘍形成など)がある場合
  • 強い関節痛で歩行が困難な場合
  • 中等症以上の紫斑病性腎炎が認められる場合
  • 全身状態が悪く、経口での水分・食事が十分に摂取できない場合
  • 乳児など、症状の観察や管理が難しい場合

入院中は、安静を保ち、点滴による治療や栄養補給、バイタルサインや尿量の厳密な管理、定期的な検査などが行われます。

HSPの経過と予後:自然治癒する?治療期間は?

HSPの多くは、数週間から数ヶ月で症状が改善し、予後も良好です。しかし、その経過や予後は、特に腎臓の合併症の有無によって大きく異なります。

自然治癒の可能性と期間

HSPは、多くの場合、特別な治療をしなくても自然に軽快する病気です。軽症であれば、安静にしているだけで数週間以内に症状が落ち着くことも珍しくありません。しかし、自己判断で放置せず、必ず医療機関を受診することが大切です。医師の診断を受けて、重症度や合併症の有無を確認し、適切な治療方針を決定することが重要です。

HSPの典型的な経過としては、紫斑が繰り返し出たり消えたりしながら、全体として徐々に改善していくことが多いです。紫斑や関節痛、腹痛などの症状は、通常1ヶ月以内に改善することがほとんどです。ただし、症状が完全に消失するまでの期間は個人差があり、数ヶ月かかる場合もあります。腎炎を合併した場合は、治療期間がさらに長くなり、数ヶ月から数年以上、あるいは生涯にわたる経過観察が必要となることもあります。

再発について

HSPは、一度治っても再発することが少なくない病気です。特に、最初の症状が改善してから数ヶ月以内に再発することが多いとされています。再発率は約30〜40%程度と言われていますが、文献によってはそれ以上の数値が報告されている場合もあります。

再発の誘因としては、再び感染症にかかることや、特定の食べ物や薬剤の摂取などが考えられています。再発時の症状は、初回と同様のパターンをとることもあれば、症状の組み合わせや重症度が異なる場合もあります。再発を繰り返すたびに腎炎が悪化するリスクがあるため、再発した場合も必ず医療機関を受診し、医師の指示に従って対応することが重要です。

重大な合併症:紫斑病性腎炎

前述した通り、紫斑病性腎炎はHSPで最も注意すべき合併症です。HSP患者さんの約半数に腎症状が現れますが、そのうち慢性腎炎や腎不全に進行するのは一部のケースです。しかし、一度慢性化してしまうと治療が難しくなるため、早期に腎炎を発見し、適切に管理することがHSP治療において非常に重要視されます。

腎炎の重症度は、尿検査や必要に応じて腎生検の結果で評価されます。重症度が高い腎炎の場合、強力な免疫抑制療法が必要となり、予後も慎重に見極める必要があります。特に大人のHSPや、尿検査異常が長期間続く場合、多量の蛋白尿が見られる場合、腎機能が低下している場合などは、腎炎が慢性化するリスクが高いと考えられています。

そのため、HSPと診断されたら、たとえ軽症であっても、そして皮膚の紫斑などの症状が完全に消えた後も、数ヶ月から数年間は定期的に尿検査を行い、腎臓の状態をチェックすることが強く推奨されます。この定期的な経過観察は、紫斑病性腎炎の早期発見と、必要に応じた迅速な治療開始のために欠かせません。

HSPに関するQ&A

HSPについて、患者さんやご家族がよく抱く疑問にお答えします。

紫斑はかゆみを伴う?

HSPの紫斑は、個人差がありますが、かゆみや痛みを伴うことがあります。特に新しく出てきた紫斑や、炎症が強い紫斑では、軽いかゆみや押したときの痛みが感じられることがあります。ただし、強いかゆみは伴わないことの方が多いです。紫斑のかゆみが強い場合は、他の皮膚疾患の可能性も考えられるため、医師に相談してください。

どのような病院・診療科を受診すべきか

HSPが疑われる症状、特に紫斑が見られた場合、まずはかかりつけ医や最寄りの医療機関を受診しましょう。小児の場合は小児科、大人の場合は内科を受診するのが一般的です。皮膚症状が主体であれば皮膚科、関節症状が強ければ整形外科、腹痛が強い場合は消化器内科を受診することも考えられます。

HSPは全身の血管炎であるため、様々な臓器に症状が現れる可能性があります。初期診断はかかりつけ医や小児科医、皮膚科医などが行うことが多いですが、症状によっては専門医(腎臓内科医、消化器内科医など)との連携が必要となります。特に紫斑病性腎炎が認められた場合は、腎臓専門医による詳しい検査や治療が必要となります。

その他のよくある質問

  • Q: HSPは感染しますか?
    A: HSPは感染症をきっかけに発症することはありますが、病気自体が人から人に感染するものではありません。
  • Q: HSPの治療中に食事で気をつけることはありますか?
    A: 一般的に、HSPの治療中に特別な食事制限はありません。バランスの取れた食事を心がけることが大切です。ただし、特定の食物アレルギーがHSPの誘因と考えられている場合は、原因となる食物を避ける必要があります。また、紫斑病性腎炎を合併している場合は、医師の指示に従ってタンパク質や塩分の摂取を制限する必要がある場合があります。
  • Q: ステロイド治療の副作用が心配です。
    A: ステロイドはHSP、特に重症例や腎炎の治療に非常に有効な薬剤ですが、副作用があることも事実です。副作用の現れ方や程度は、使用する量や期間によって異なります。短期間の使用であれば副作用は比較的少ないことが多いですが、長期にわたって使用する場合は、ムーンフェイス、体重増加、血糖値の上昇、高血圧、骨粗鬆症、感染症にかかりやすくなるなどの副作用に注意が必要です。医師はこれらの副作用を考慮しながら、必要最小限の量と期間でステロイドを使用するように調整します。副作用について心配な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談してください。
  • Q: 運動はしてもいいですか?
    A: 症状がある期間は安静が重要です。特に紫斑が多く出ている間は、運動によって紫斑が悪化したり、関節痛がひどくなったりすることがあります。症状が落ち着いて、医師の許可があれば、徐々に日常生活や運動に戻していくことができます。無理せず、体調に合わせて活動することが大切です。

HSP治療における注意点と生活上の工夫

HSPの治療を円滑に進め、再発や合併症を防ぐためには、医療機関での治療だけでなく、ご家庭での注意点や生活上の工夫も重要です。

安静の重要性

繰り返しになりますが、HSPの活動期には安静が非常に重要です。特に下肢に紫斑が多く見られる場合は、立ち仕事や長時間歩くことを避け、横になって過ごす時間を増やしましょう。座っている時も、可能であれば足を少し高くすると、下肢の血流の滞りを防ぎ、紫斑の改善に役立つことがあります。
子どもさんの場合は、遊びを制限して家で静かに過ごさせる必要があります。安静期間の長さは、症状の程度や合併症の有無によって異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。

食事や水分摂取

基本的には偏食をせず、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。食欲がない場合は、無理せず、消化の良いものを少量ずつ摂るようにしましょう。腹痛がある場合は、絶食が必要なこともあります。

水分摂取に関しては、脱水を防ぐためにも、普段通り十分な水分を摂ることが推奨されます。ただし、紫斑病性腎炎を合併し、むくみが強い場合や腎機能が低下している場合は、水分や塩分の摂取制限が必要となることがあります。この点も医師の指示に従ってください。

また、特定の食品に対するアレルギーがHSPの誘因となっている可能性がある場合は、原因食品を特定し、それを避けることが再発予防につながる可能性があります。

その他の生活上の注意点

  • 感染予防: 風邪などの感染症がHSPの誘因となることがあるため、手洗い、うがいを励行し、人混みを避けるなど、日頃から感染予防に努めることが大切です。
  • 薬剤の使用: 市販薬も含め、何か新しい薬を使用する際は、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。HSPの発症や再発に関与する可能性のある薬剤もあります。
  • 定期的な受診と検査: 特に紫斑病性腎炎を合併している場合や、腎炎のリスクが高いと判断された場合は、症状が落ち着いた後も、数ヶ月から数年にわたり定期的に医療機関を受診し、尿検査や血液検査を受けることが非常に重要です。腎炎の早期発見と適切な管理が、長期的な予後を守るために不可欠です。医師の指示されたスケジュールで確実に受診するようにしましょう。
  • 皮膚の保護: 紫斑が出ている皮膚はデリケートになっていることがあります。強い摩擦や圧迫を避け、清潔を保ちましょう。必要に応じて保湿を行うことも推奨されます。

まとめ:HSP治療は早期診断と適切な管理が鍵

過敏性紫斑病(HSP)は、皮膚の紫斑を特徴とし、腹痛、関節痛、腎症状などを伴う全身の血管炎です。主に小児に多く見られますが、大人にも発症し、大人の場合は腎炎の合併率が高く、重症化しやすい傾向があります。

HSPの多くは自然に軽快する予後良好な疾患ですが、最も重要な合併症である紫斑病性腎炎には注意が必要です。腎炎は自覚症状に乏しいまま進行することがあり、慢性腎臓病や腎不全に至るリスクがあるため、早期発見と適切な管理が非常に重要です。

HSPが疑われる症状が見られたら、自己判断せずに速やかに医療機関を受診しましょう。医師による正確な診断に基づき、症状の重症度や合併症の有無に応じた適切な治療(安静、対症療法、ステロイド、免疫抑制剤など)が行われます。

治療期間は症状の程度によって異なりますが、数週間から数ヶ月で改善することが多いです。しかし、腎炎を合併した場合は長期的な治療や経過観察が必要となります。HSPは再発することもあるため、症状が落ち着いた後も、特に腎臓の状態を把握するために、医師の指示に従って定期的な尿検査などの経過観察を続けることが極めて大切です。

HSPの治療と管理には、医療機関での治療に加え、ご家庭での安静の維持や感染予防などの生活上の工夫も重要となります。この情報が、HSPについて理解を深め、適切な対応をとる一助となれば幸いです。

免責事項: 本記事はHSP(過敏性紫斑病)に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や病状に関しては、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいた行為によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いません。

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