PTSD診断書とは?取得方法・費用・活用ケース(休職・賠償など)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断書について、その取得方法や診断基準、どのような場面で活用できるのかといった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
診断書は、PTSDによって生じている心身の不調や生活への影響を公的に証明するための重要な書類です。
これによって、適切なサポートを受けたり、法的な手続きを進めたりすることが可能になります。

この解説では、PTSDの診断書が必要となる具体的なケース、診断がどのように行われるのか、どこで診断書を取得できるのか、費用や注意点について詳しくご説明します。
診断書が必要かどうかわからない、どうすれば取得できるのか不安、といった方も、まずは落ち着いて情報を集め、適切な医療機関に相談することから始めてみましょう。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、生命の危険にかかわるような出来事(外傷的出来事)を体験したり、目撃したりすることによって生じる精神疾患です。
フラッシュバック、悪夢、関連するものを避ける行動、過覚醒(常に緊張している状態)などの症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

PTSDの診断書は、このような精神的な苦痛や機能障害が、専門医によってPTSDであると診断されたことを証明する公的な書類です。
この診断書が発行される主な目的は、診断を受けた方の現状や困難を、第三者(学校、勤務先、行政機関、裁判所など)に正確に伝えることにあります。

診断書が必要となる背景には、PTSDが目に見えにくい病気であり、その影響が周囲に理解されにくいという側面があります。
診断書があることで、客観的な証拠として病状を提示でき、必要な配慮やサポートを受けるための手続きを進めやすくなります。
例えば、休職や配置転換の相談、公的な支援制度の申請、法的な争いにおける病状の証明など、多岐にわたる場面でその必要性が生じます。
診断書は単なる病名の記載にとどまらず、現在の症状、それが日常生活や社会生活にどのように影響しているか、今後の見通しなどが記載され、診断を受けた方の状況を具体的に伝える役割を果たします。

どのような場面で診断書が必要になるか

PTSDの診断書は、様々な公的・私的な手続きにおいて、ご自身の病状を証明するために必要となります。
その用途は多岐にわたりますが、代表的な場面をいくつかご紹介します。

離婚や裁判での証明

離婚の話し合いや裁判において、PTSDの診断書が重要な証拠となることがあります。
特に、配偶者からの暴力(DV)やモラルハラスメントが原因でPTSDを発症した場合、その精神的な被害の大きさを具体的に示すために診断書が用いられます。

診断書には、外傷的出来事(例:配偶者からの暴力)と現在の精神症状(例:不安、不眠、フラッシュバック)との因果関係や、それがどの程度日常生活や社会生活に支障をきたしているかが記載されます。
これにより、精神的な苦痛に対する慰謝料請求の根拠となったり、親権や養育費に関する判断に影響を与えたりする可能性もあります。
また、離婚後の生活において、PTSDの症状による就労の困難さなどを説明するためにも利用されることがあります。

傷病手当金や障害年金などの申請

PTSDの症状により仕事を休まざるを得ない場合や、長期にわたり日常生活や就労に大きな制限を受ける場合、公的な経済的支援制度を利用できる可能性があります。

  • 傷病手当金: 健康保険に加入している方が、病気や怪我のために会社を休み、事業主から十分な給与が受けられない場合に支給される手当です。
    PTSDによる休職も支給対象となり得ますが、申請には医師の診断書が必要です。
    診断書には、労務不能である期間や病状の詳細が記載されます。
  • 障害年金: 病気や怪我によって生活や仕事が制限されるようになった場合に支給される年金です。
    PTSDも支給対象となり得ますが、障害の程度を定めるためには、医師の診断書(精神の障害用の診断書)が必要です。
    この診断書には、病気の経過、現在の症状、日常生活や社会生活の状況などが詳細に記載され、障害等級判定の重要な根拠となります。

これらの申請において、診断書は病状の客観的な証明となり、制度の利用可否や支給額を判断する上で不可欠な書類となります。

勤務先への提出

PTSDの症状によって、仕事の遂行に困難を感じたり、特定の業務や環境に耐えられなくなったりすることがあります。
このような場合、勤務先に診断書を提出することで、病状を理解してもらい、働き方について配慮や調整を相談することが可能です。

診断書には、現在の症状、必要な休息期間、避けるべき状況(例:騒がしい場所、特定の人物との接触)、可能な業務内容などが記載されます。
これにより、休職、時短勤務、部署異動、業務内容の変更などの具体的な配慮について、会社側と話し合うための根拠となります。
特に、職場環境が原因でPTSDを発症した場合や、職務に関連する外傷的出来事があった場合には、診断書が今後の労働環境改善や補償請求において重要な意味を持つこともあります。

勤務先への提出は、必ずしも義務ではありませんが、ご自身の健康を守り、適切なサポートを得ながら働くためには、診断書を活用することが有効な手段となります。

PTSDと診断されるには?診断基準とプロセス

PTSDの診断は、問診を通じて患者さんの心理状態や外傷的出来事の体験内容、それに伴う症状などを詳しく聞き取った上で、専門医が総合的に判断します。
特定の検査だけで診断が確定するものではなく、患者さんからの詳細な聞き取りと医師の専門的な知識・経験が不可欠です。

PTSDの主な診断基準(DSM-5など)

PTSDの診断は、世界的に広く用いられている診断基準に基づいて行われます。
代表的なものに、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(DSM-5)』があります。
DSM-5におけるPTSDの主な診断基準は以下の要素で構成されています。

基準項目 内容
基準A:外傷的出来事への曝露 実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事を、直接体験する、目撃する、近親者に起きた出来事であることを知る、嫌悪感を伴う形で外傷的出来事の詳細に繰り返し曝露される、のいずれか。
基準B:侵入症状 外傷的出来事に関連する侵入的な苦痛な記憶、悪夢、フラッシュバック、外傷的出来事に関連するキューに曝露された際の強い心理的苦痛や生理的反応、のうち1つ以上。
基準C:回避 外傷的出来事に関連する苦痛な記憶・思考・感情、または外傷的出来事に関連する外的なキュー(人、場所、会話など)を回避しようとする持続的な努力のうち1つ以上。
基準D:認知と気分の否定的変化 外傷的出来事に関する重要な側面を思い出せない、自己または世界に対する持続的で歪んだ否定的な信念、外傷的出来事の原因や結果に関する歪んだ自己非難や他者非難、持続的な否定的な感情状態、重要な活動への関心の著しい低下、他者からの孤立感、肯定的な感情を持続的に体験できないこと、のうち2つ以上。
基準E:覚醒度と反応性の著しい変化 易刺激性や怒りの爆発、無謀または自己破壊的な行動、過度に警戒している状態、過剰な驚愕反応、集中困難、睡眠障害、のうち2つ以上。
基準F:持続期間 基準B、C、D、Eの症状が1ヶ月以上持続していること。
基準G:機能障害 その障害が臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしていること。
基準H:除外診断 その障害が物質(例:薬物)または他の医学的状態によるものではないこと。

※DSM-5は専門家向けの診断基準であり、上記は概要です。正確な診断は必ず医師によって行われます。

医師はこれらの基準に基づき、患者さんの話から症状がどの基準に該当するか、期間は満たしているかなどを慎重に評価します。
他の精神疾患や身体疾患の可能性も考慮し、鑑別診断も行います。

診断を受けるまでの流れ

PTSDの診断を受けるまでの一般的な流れは以下のようになります。

  1. 医療機関の選定と予約: PTSDの診断は精神科医や心療内科医が行います。
    まずは、信頼できる精神科や心療内科を探し、予約を取ります。
    初診時には問診に時間をかけるため、予約なしでは受診できない場合や待ち時間が非常に長くなる場合があります。
  2. 予診票の記入: 受付を済ませると、予診票(問診票)の記入を求められます。
    ここには、氏名、連絡先、現在の症状、いつ頃から始まったか、どのような出来事を経験したか(可能な範囲で)、既往歴、服用中の薬、アレルギー、生活状況などを記入します。
    診断の重要な手がかりとなるため、できるだけ詳細に記入することが望ましいです。
  3. 医師による問診: 医師による診察(問診)が始まります。
    予診票の内容に基づき、医師がさらに詳しく質問します。
    具体的にどのような外傷的出来事だったのか、どのような症状(フラッシュバック、悪夢、回避行動、不安、不眠など)があるのか、それによって日常生活(仕事、学業、対人関係、睡眠など)にどのような影響が出ているのかを丁寧に聞き取ります。
    正直に、感じていることや困っていることを話すことが大切です。
    医師は、DSM-5などの診断基準に照らし合わせながら、PTSDの可能性を検討します。
  4. 診断と治療方針の説明: 問診の結果、医師がPTSDと診断した場合、その旨が告げられます。
    診断に至った根拠や、病状について説明があります。
    また、今後の治療方針(薬物療法、精神療法など)についても提案されます。
    診断書が必要な場合は、この際に医師に相談します。
  5. 診断書の発行依頼: 診断書が必要な理由(傷病手当金の申請、勤務先への提出など)を医師に伝えて、発行を依頼します。
    診断書の様式は提出先によって異なる場合があるため、もし指定の様式がある場合は持参しましょう。
    特に様式がなければ、医療機関所定の様式で作成してもらいます。

診断は医師との対話を通じて行われます。
つらい記憶を話すことは負担になることもありますが、正確な診断と適切なサポートのためにも、安心して話せる医師を選ぶことが重要です。

診断に必要な期間と「すぐもらえる」可能性

PTSDの診断に必要な期間や、診断書が「すぐもらえる」かどうかは、患者さんの状態や医療機関の方針によって大きく異なります。

診断に必要な期間:

多くの場合、PTSDの診断は1回の診察だけで確定するとは限りません。
特に、外傷的出来事の詳細な聞き取りや、他の精神疾患との鑑別診断には時間を要することがあります。
また、患者さんの症状が時間とともに変化することもあるため、複数回の診察を経て、経過を観察しながら慎重に診断が下されることも一般的です。
数週間から数ヶ月かけて診断が確定することもあります。

診断書が「すぐもらえる」可能性:

診断書は、医師が診断を確定した後に作成される書類です。
したがって、診断が確定していない段階では、診断書を発行することはできません。
また、診断書の作成には病状の詳細や生活への影響などを具体的に記載する必要があるため、一定の時間がかかります。

  • 初診で診断書が発行されるケース: 非常に典型的な症状があり、外傷的出来事との関連が明確で、患者さんの訴えから診断基準を明確に満たしていると医師が判断した場合など、ごくまれに初診で診断が確定し、診断書の発行を依頼できるケースがあります。
    しかし、これは例外的であり、多くの場合は複数回の診察が必要です。
  • 診断確定後の発行までの期間: 診断が確定してから診断書が発行されるまでの期間は、医療機関の事務手続きによって異なります。
    通常は数日から1週間、場合によってはそれ以上の時間がかかることもあります。
    特に、傷病手当金や障害年金などの複雑な様式の診断書は、記載内容が多く時間を要する傾向があります。

したがって、「すぐに診断書が欲しい」という希望があったとしても、医師の診断プロセスや事務手続きの時間を考慮する必要があります。
診断書が必要な期日がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、医師にその旨を相談することが重要です。

PTSDの診断書はどこでもらえる?適切な医療機関

PTSDの診断書は、PTSDの診断と治療を行っている精神科や心療内科で取得することができます。
これらの診療科の医師は、精神疾患に関する専門的な知識と経験を持っており、適切な診断と診断書の発行が可能です。

精神科・心療内科

PTSDの診断と診断書の発行を依頼できるのは、主に精神科または心療内科です。

  • 精神科: 精神疾患全般を専門とする診療科です。
    PTSDだけでなく、うつ病、統合失調症、不安障害など幅広い精神疾患の診断・治療を行います。
    PTSDのような複雑な精神症状や長期的な治療が必要な場合に対応できる専門医が多く在籍しています。
  • 心療内科: ストレスなど心の問題が原因となって体に症状が現れる「心身症」を中心に診る診療科ですが、うつ病や不安障害などの精神疾患も診療対象としています。
    PTSDについても診療している医療機関は多くあります。
    体の不調(不眠、頭痛、胃腸の不調など)を伴うPTSD症状がある場合、心療内科が適していることもあります。

どちらの診療科を選ぶか迷う場合は、ご自身の主な症状(精神的な苦痛が強いか、身体症状が強いかなど)や、医療機関のホームページなどで診療内容を確認してみましょう。
PTSDの診療に力を入れている、トラウマ治療の経験があるといった情報を参考にすることも有効です。

重要なのは、単に診断書を発行してもらうだけでなく、適切な診断を受け、必要であれば継続的な治療やサポートを受けられる医療機関を選ぶことです。
信頼できる医師との出会いが、回復への第一歩となります。
インターネットでの情報収集だけでなく、地域の精神保健福祉センターなどに相談してみるのも良いでしょう。

診断書の発行に必要な費用と期間

PTSDの診断書の発行には、費用と一定の期間がかかります。
これらは医療機関の種類(クリニックか、総合病院かなど)や、診断書の様式、記載内容の複雑さによって異なります。

費用:

診断書の発行費用は、公的な医療保険(健康保険)の適用外となる自費(自由診療)です。
そのため、医療機関がそれぞれ独自に料金を設定しています。

一般的な診断書の料金相場は、3,000円~10,000円程度です。

  • 簡単な診断名と病状のみを記載する診断書であれば比較的安価な傾向があります。
  • 傷病手当金や障害年金、後遺障害等級認定のための診断書など、詳細な病状、経過、日常生活や就労への影響、今後の見通しなどを詳細かつ専門的に記載する必要があるものは、料金が高くなる傾向があります。
    場合によっては1万円を超えることもあります。

受診する医療機関に、事前に診断書の発行にかかる費用を確認しておくことをおすすめします。

期間:

診断書の作成には、医師が診察に基づいて病状を整理し、正確に記載するための時間が必要です。
診断書が発行されるまでの期間は、医療機関や診断書の複雑さによって異なりますが、一般的には数日から1週間程度かかることが多いです。

  • 規模の大きな病院では、診断書作成の事務手続きに時間がかかる場合があり、10日以上かかることもあります。
  • クリニックでは比較的早く発行される傾向がありますが、それでも即日発行は難しいことがほとんどです。

診断書が必要な期日がある場合は、診察時に必ず医師や受付スタッフにその旨を伝え、発行までにかかる目安の期間を確認しておきましょう。
特に、提出期限が迫っている場合は、対応可能かどうか事前に医療機関に問い合わせておくことが賢明です。

項目 内容
費用 3,000円~10,000円程度(自費診療)
※記載内容の複雑さにより異なる
発行期間 数日~1週間程度(医療機関や診断書の様式、混雑状況により異なる)
注意点 事前に費用と期間を確認すること
指定様式があれば持参すること

PTSD診断書の具体的な内容と記載事項

PTSDの診断書には、患者さんの病状や生活状況などを正確に伝えるために、いくつかの重要な項目が記載されます。
記載内容は診断書の目的(提出先)によって異なりますが、一般的に含まれる主な事項は以下の通りです。

診断名、症状、原因、今後の見通しなど

PTSD診断書に通常記載される項目は以下の通りです。

  1. 宛名: 診断書を提出する機関名(例:〇〇会社御中、〇〇裁判所御中、〇〇年金事務所長殿 など)。
  2. 患者情報: 氏名、生年月日、性別など。
  3. 傷病名(診断名): 「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」など、正式な病名が記載されます。
    必要に応じて、関連する他の診断名(例:うつ病、パニック障害など)も併記される場合があります。
  4. 発症年月日/罹患年月日: 外傷的出来事を体験した日、またはPTSDの症状が現れ始めたおおよその年月日が記載されます。
  5. 主訴: 患者さんが医療機関を受診した際に訴えた主な症状や困りごと(例:「不眠」「不安」「フラッシュバック」「外出が困難」など)が記載されます。
  6. 現病歴/経過: 外傷的出来事の内容、その後の症状の経過、これまでの治療歴などが時系列で記載されます。
    診断に至るまでの重要な情報です。
  7. 現在の症状: 現在見られる具体的な症状が記載されます。
    DSM-5の診断基準に関連する症状(侵入症状、回避、認知と気分の否定的変化、覚醒度と反応性の変化)について、どのような状態であるか詳細に記述されます。
    例:「夜間に悪夢にうなされ、睡眠が中断される」「特定の場所(事故現場付近など)を避ける」「集中力が続かず、仕事に支障が出ている」「常に緊張しており、些細な音に過剰に反応する」など。
  8. 原因または誘因: PTSDの原因となった外傷的出来事の内容が記載されます(例:「〇〇年〇月頃に交通事故に遭った」「長期間にわたる職場でのハラスメント」「家庭内での暴力」など)。
    これが外傷性であることを医師が判断した上で記載されます。
  9. 生活状況/就労状況への影響: 症状が日常生活や社会生活(家庭生活、仕事、学業、対人関係、趣味など)にどのような具体的な影響を与えているかが記載されます。
    例:「症状のため通勤が困難である」「人との交流を避けるようになった」「家事が手につかない」「以前はできていた作業ができなくなった」など。
    傷病手当金や障害年金の申請では、この項目が特に重要視されます。
  10. 治療内容: 現在行われている治療法(薬物療法、精神療法、リハビリテーションなど)が記載されます。
  11. 今後の見通し(予後): 今後の病状の回復の見込みや、治療によってどの程度の改善が期待できるかなど、医師の医学的な見解が記載されます。
    短期的な見通しや、長期的な見通しが記載されることがあります。
  12. 診断書の発行日: 診断書が作成された年月日。
  13. 医療機関情報: 医療機関の名称、住所、電話番号など。
  14. 医師情報: 医師の氏名、所属、資格(精神科医、精神保健指定医など)、押印。

これらの情報は、提出先が患者さんの病状を正確に把握し、適切な判断(休職の判断、支援制度の適用、法的な評価など)を行うための根拠となります。
特に、症状の具体的な内容やそれが生活に与える影響は、診断書の目的に合わせて詳細に記載される必要があります。

PTSD診断書に関する注意点とリスク

PTSDの診断書を取得し利用する際には、いくつかの注意点と潜在的なリスクが存在します。
これらを理解しておくことは、診断書を適切に活用するために重要です。

「嘘」の診断書について

「嘘の診断書」とは、実際にはPTSDの診断基準を満たしていないにもかかわらず、診断書を作成・取得しようとする行為を指します。
このような行為は倫理的に問題があるだけでなく、法的な罰則の対象となる可能性もあります。

  • 医師にとってのリスク: 医師が虚偽の内容を含む診断書を作成することは、医師法に違反する行為です。
    医師免許の剥奪や停止といった重い処分が下される可能性があります。
    医師は医学的な根拠に基づいてのみ診断を行い、診断書を作成する義務があります。
  • 患者にとってのリスク: 虚偽の診断書を利用して公的な制度(傷病手当金、障害年金など)を不正に利用した場合、詐欺罪などの刑事罰の対象となる可能性があります。
    また、不正受給した金銭の返還を求められるだけでなく、その後の制度利用に大きな支障が出ることもあります。
  • 社会的な影響: 虚偽の診断書がまかり通ると、診断書の信頼性が失われ、本当に診断書を必要としている人が適切なサポートを受けられなくなる可能性があります。

診断書は、あくまで医師が医学的な判断に基づいて作成するものです。
もし診断書が必要な状況であれば、正直に自身の症状や困りごとを医師に伝え、適切な診断と、その診断に基づいた診断書の発行を依頼することが唯一の正しい方法です。
安易に「嘘の診断書」を求めたり、作成に応じたりすることは絶対に避けるべきです。

診断書がもたらす影響

診断書を取得し、提出することは、メリットだけでなくいくつかの影響をもたらす可能性があります。

メリット:

  • 病状の客観的な証明となり、必要なサポートや配慮を得やすくなる。
  • 公的な支援制度や保険制度を利用するための手続きが可能になる。
  • 法的な争いにおいて、精神的な被害の根拠を示すことができる。
  • 自身の状態を周囲に理解してもらいやすくなる。

注意点/リスク:

  • 診断名が記録に残ること: 診断書が作成されると、医療機関のカルテや、提出先(会社、役所など)の記録に診断名が残ります。
    これが将来的に、特定の職業に就く際に影響したり、生命保険や医療保険の加入・更新に影響を与えたりする可能性がゼロではありません。
    (ただし、個人情報保護の観点から、むやみに情報が公開されるわけではありません。)
  • 精神疾患のレッテルを貼られることへの不安: 診断名が付くことに対して、精神疾患であるというレッテルを貼られるのではないか、といった不安や抵抗を感じる方もいます。
  • 症状の固定化: 診断書の内容に意識が向きすぎると、自身の状態を診断書の記載内容に合わせて解釈してしまい、症状が固定化するような心理的な影響を受ける可能性も指摘されることがあります。
  • 周囲の反応: 診断書を提出したことで、周囲の人が過剰に心配したり、逆に偏見を持ったりする可能性も考えられます。

診断書は、あくまで現状を証明するためのツールです。
取得や利用を検討する際には、これらのメリットとデメリット(影響)を考慮し、本当に必要かどうか、医師とよく相談して判断することが大切です。
診断書が必要な具体的な理由や目的を明確にしておくことも重要です。

PTSD診断書が関連するケース別の解説

PTSD診断書は、様々な状況でその必要性が生じます。
ここでは、特定のケースにおいて診断書がどのように関連し、どのような役割を果たすのかを具体的に解説します。

離婚とPTSD診断書

離婚の原因が配偶者からのDV(家庭内暴力)やモラルハラスメントである場合、PTSDの診断書は非常に重要な意味を持ちます。

  • 精神的苦痛の証明: DVやモラハラは、身体的な傷だけでなく、深刻な精神的なダメージを与えます。
    PTSDの診断書は、これらの行為が原因でPTSDを発症し、精神的な苦痛を受けていることを医学的に証明する根拠となります。
  • 慰謝料請求の根拠: 離婚に伴う慰謝料は、相手の有責行為(離婚の原因を作った側の行為)によって受けた精神的な苦痛に対する賠償です。
    PTSDの診断書は、DVやモラハラといった相手の行為と、自身の精神的な被害(PTSD発症)との間の因果関係を示す証拠となり、慰謝料を請求する際の重要な根拠となります。
    診断書の記載内容(症状の重さ、期間、生活への影響など)が、慰謝料額の算定に影響を与える可能性もあります。
  • 裁判での証拠: 離婚調停や離婚裁判になった場合、診断書は裁判官や調停委員に対して、自身の受けた被害の深刻さや、PTSDによって生じている困難を伝えるための客観的な証拠となります。
  • 親権・養育費への影響: PTSDの症状が、子どもの養育能力や経済的な状況に影響を与えている場合、診断書が親権や養育費の決定において考慮されることがあります。
  • 今後の生活設計: PTSDの症状による就労困難さなどを診断書で示すことで、離婚後の経済的な自立に関する困難を説明し、財産分与や養育費の話し合いに影響を与える可能性もあります。

離婚におけるPTSD診断書は、単に病状を証明するだけでなく、自身の尊厳を守り、正当な権利を主張するために有効な手段となり得ます。
弁護士と相談しながら、診断書の活用について検討することが一般的です。

裁判(損害賠償など)とPTSD診断書

PTSDは、交通事故、犯罪被害、医療過誤、労働災害、いじめ、ハラスメントなど、様々な出来事を原因として発症する可能性があります。
これらの出来事によってPTSDを発症し、精神的な苦痛や生活上の困難を強いられた場合、加害者や関係者に対して損害賠償を請求する裁判を起こすことがあります。
この際、PTSDの診断書は損害賠償請求において極めて重要な証拠となります。

  • 損害の証明: 損害賠償は、被った損害(精神的な苦痛を含む)に対して行われます。
    PTSDの診断書は、外傷的出来事と精神疾患の発症との間の因果関係、病状の重さ、それが長期にわたり生活や就労に与えている影響などを医学的に証明する書類です。
    これにより、PTSDによって被った精神的な損害(慰謝料)や、症状による逸失利益(本来得られるはずだった収入が得られなくなった損害)などを具体的に主張するための根拠となります。
  • 後遺障害の証明: 特に交通事故や労働災害の場合、PTSDの症状が長期間持続し、回復が見込めない場合、後遺障害として認められる可能性があります。
    後遺障害の等級認定には、医師の診断書や意見書が不可欠です。
    診断書には、精神神経系の障害に関する詳細な評価が記載され、後遺障害等級の判断に大きく影響します。
    (後述の「交通事故によるPTSDと後遺障害等級」を参照ください。)
  • 裁判の進行: 診断書は、裁判官が事案を正確に理解し、被害の程度や因果関係を判断するための重要な資料となります。
    診断書の記載内容によって、裁判の争点や方向性が変わることもあります。

裁判で診断書を提出する際は、訴訟の目的や主張内容に合わせて、医師に診断書の記載事項について依頼する必要があります。
弁護士と連携を取りながら進めることが一般的です。

DV被害とPTSD診断書

前述の離婚のケースと重複する部分もありますが、配偶者や恋人などからのDV(ドメスティック・バイオレンス)被害は、PTSDの有力な原因の一つです。
DV被害者がPTSDの診断書を取得することは、以下のような点で重要です。

  • 被害の深刻さの証明: DVは、単なる喧嘩ではなく、支配と暴力によって相手を傷つける行為です。
    長期にわたる身体的、精神的、性的な暴力は、被害者に深い心の傷を残し、PTSDを発症させることがあります。
    診断書は、目に見えない心の傷であるPTSDという形で、被害の深刻さを医学的に証明します。
  • 保護命令の申立て: 裁判所に保護命令(接近禁止命令など)を申し立てる際、DVによって心身に重大な危害を受けたこと、または受ける恐れがあることを疎明(証明)する必要があります。
    PTSDの診断書は、精神的な危害を受けたことの有力な疎明資料となります。
  • 公的支援の利用: DV被害者を支援する自治体やNPO法人では、シェルターへの入居支援や経済的な支援などを行っています。
    これらの支援を受ける際に、被害の証明として診断書の提出を求められることがあります。
  • 回復への第一歩: DV被害者は、被害体験によって自己肯定感が著しく低下し、精神的に孤立することも少なくありません。
    PTSDと診断され、診断書を受け取ることで、自身の苦しみが病気によるものであることを認識し、回復に向けて治療を受けることの重要性を理解する一助となることがあります。

DV被害によるPTSDの診断書は、被害者が安全を確保し、社会的な支援を受け、回復への道を歩むために不可欠なツールとなり得ます。

交通事故によるPTSDと後遺障害等級(何級に該当するか)

交通事故は、PTSDの主な原因の一つです。
事故の衝撃、恐怖、自身の怪我や他者の怪我・死亡を目撃した経験などが、心に深い傷を残し、PTSDを発症させることがあります。
交通事故によるPTSDの場合、損害賠償請求において、自賠責保険や任意保険に対する後遺障害等級認定が重要な課題となります。

後遺障害とは、交通事故による怪我や病気が治療を続けても完治せず、将来にわたって残存する心身の機能障害のことです。
精神神経系の後遺障害としてPTSDが認定される場合があります。
後遺障害が認定されると、等級に応じて自賠責保険から障害保険金が支払われたり、任意保険会社や加害者に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求したりすることができます。

精神神経系の後遺障害等級は、労働能力の喪失の程度に応じて、別表第一(要介護)または別表第二(要介護以外)が適用されます。
PTSDの場合、一般的に別表第二が適用され、その症状の程度や就労への影響などによって、以下の等級(非器質性精神障害)に該当する可能性があります。

等級 障害の状態
第9級 神経系統の機能または精神の障害により、終身にわたり労務に服することができない者(ただし、常時介護を要する程度のもの以外)
第12級 神経系統の機能または精神の障害により、一般の就労は可能であるが、就労可能な職種の範囲が著しく制限される者
第14級 神経系統の機能または精神の障害により、就労可能な職種の範囲が相当程度制限される者

※上記は精神神経系の後遺障害等級のごく一部の抜粋であり、PTSDの症状や他の精神疾患の併存、治療状況、医師の診断などによって判断が異なります。

後遺障害等級認定のプロセス:

  1. 治療と症状固定: 交通事故後、精神科や心療内科で継続的な治療を受けます。
    一定期間治療を続けても症状が改善せず、これ以上治療効果が期待できない状態を「症状固定」といいます。
    後遺障害診断は、症状固定後に行われます。
  2. 医師による後遺障害診断書作成: 主治医(精神科医など)に、後遺障害診断書を作成してもらいます。
    診断書には、PTSDの症状の詳細、発症からの経過、治療内容、日常生活や就労への影響、予後などが詳細に記載されます。
    特に、就労能力への具体的な影響について、医師の医学的な評価が重要になります。
  3. 後遺障害等級の申請: 作成された後遺障害診断書などを保険会社に提出し、後遺障害等級の認定を申請します。
  4. 等級認定: 保険会社や自賠責損害調査事務所などが、提出された書類(診断書、カルテ、検査結果など)を基に、PTSDの症状が自賠責保険の後遺障害認定基準に照らしてどの等級に該当するかを判断します。

PTSDによる後遺障害等級認定は、その判断が難しい場合が多く、被害者と保険会社の間で争いになることも少なくありません。
適切な等級認定を受けるためには、PTSDの治療経験が豊富な精神科医に診断書を作成してもらうこと、弁護士に相談し、医学的な証拠収集や申請手続きのサポートを受けることが非常に重要になります。
診断書の内容が、等級認定の可否や等級に大きく影響します。

PTSD診断後のサポートと治療

PTSDと診断され、診断書を取得した後は、病状の回復を目指すための治療や、生活を立て直すための様々なサポートを利用することが重要です。
診断書は、これらのサポートにアクセスするための「鍵」となることがあります。

診断後の治療法

PTSDの主な治療法には、精神療法(カウンセリング)と薬物療法があります。
これらの治療を組み合わせることで、症状の軽減と回復を目指します。

  • 精神療法(カウンセリング): PTSDの治療において最も効果的とされる治療法の一つです。
    特に、トラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)や、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)などが有効とされています。
    これらの治療法では、安全な環境でトラウマ体験を処理し、それによって生じた誤った認知や感情を修正することを目指します。
    医師や臨床心理士などの専門家によって行われます。
  • 薬物療法: PTSDに伴う不眠、不安、抑うつなどの症状を軽減するために、抗うつ薬(特にSSRI)、抗不安薬、睡眠導入剤などが処方されることがあります。
    薬物療法は症状の緩和に役立ちますが、トラウマそのものを根本的に治療するものではありません。
    精神療法と併用されることが多いです。

治療には時間がかかることも少なくありませんが、適切な治療を受けることで、多くの人が症状を改善させ、より健康的な生活を取り戻すことが可能です。
診断書は、治療を受ける必要性を周囲に理解してもらうためにも役立ちます。

利用できる公的支援や制度

PTSDの診断書があることで、病状や生活状況に応じた様々な公的支援や制度を利用できる可能性があります。

  • 医療費助成制度: 自立支援医療(精神通院医療)の制度を利用できる場合があります。
    これは、精神疾患の通院医療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。
    原則として医療費の自己負担が1割になります。
    申請には医師の診断書が必要です。
  • 傷病手当金: 会社員などが病気や怪我で仕事を休んだ場合に健康保険から支給される手当です。
    PTSDによる休職も対象となり得ます。
    申請には医師の診断書が必要です。
  • 障害年金: 病気や怪我により生活や仕事が制限される場合に支給される年金です。
    PTSDも対象となり得ます。
    申請には医師の診断書が必要です。
  • 生活保護: 経済的に困窮し、働くことも困難な場合、生活保護制度を利用できる可能性があります。
    PTSDの症状によって就労が困難であることなどを診断書で示すことが、申請の際に考慮されることがあります。
  • ハローワークでの就労支援: PTSDの症状を抱えながら就職・復職を目指す場合、ハローワークで障害者向けの専門的な就労支援を受けることができます。
    障害者手帳の取得が必要な場合もあり、そのためには医師の診断書が必要です。
  • 精神障害者保健福祉手帳: 精神疾患の状態によって、一定の等級の手帳が交付されます。
    この手帳があると、税金の控除や公共料金の割引など様々な福祉サービスを受けられます。
    申請には医師の診断書が必要です。

これらの制度を利用することで、経済的な不安を軽減したり、社会復帰に向けたサポートを受けたりすることが可能になります。
利用できる制度は、病状、年齢、収入、家族構成などによって異なります。
まずは医師や、お住まいの自治体の福祉担当窓口、精神保健福祉センターなどに相談してみましょう。

PTSDの診断や診断書についてのご相談はこちら

PTSDの診断や診断書についてご不明な点やご不安なことがある場合は、一人で悩まず専門家に相談することが大切です。

まずは、お近くの精神科または心療内科を受診し、医師にご自身の症状や困りごとを相談してください。
診断書が必要かどうか、どのような目的で必要なのかについても、診察時に医師に伝えてみましょう。
医師は、医学的な見地から適切な診断を行い、診断書の必要性や内容についてアドバイスしてくれます。

また、診断書が必要となる手続き(傷病手当金、障害年金、裁判など)に関する具体的な疑問については、それぞれの制度の担当機関(健康保険組合、年金事務所、裁判所、弁護士など)に問い合わせることも重要です。

もし、どの医療機関に行けば良いか分からない、初めて精神科を受診するのが不安、といった場合は、以下のような機関に相談することも有効です。

  • 精神保健福祉センター: 各都道府県・政令指定都市に設置されており、精神保健福祉に関する相談や情報提供を行っています。
    医療機関に関する情報や、利用できる制度についてアドバイスをもらえます。
  • よりそいホットライン: どのような困難や悩みでも受け止めてくれる、24時間対応の電話相談窓口です。
    話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。
  • DV相談ナビ/DV相談プラス: DV被害に関する相談窓口です。
    PTSDの原因がDVである場合、診断書の必要性を含め、専門的なサポートを受けられます。
  • ワンストップ支援センター(性暴力被害者支援センター): 性暴力被害に関する相談窓口です。
    性暴力が原因でPTSDを発症した場合、医療的・法的な支援に関する情報やサポートを得られます。

診断書を取得することは、問題解決の一つの手段に過ぎません。
最も大切なのは、ご自身の心身の健康を取り戻し、安心して生活を送れるようになることです。
そのために必要なステップとして、診断や診断書について、専門家のアドバイスを得ながら進めていきましょう。

【まとめ】PTSDの診断書が必要な場合は専門医療機関へ

PTSDの診断書は、外傷的出来事によって生じた精神的な苦痛や機能障害がPTSDであると専門医が診断したことを証明する重要な書類です。
この診断書は、離婚や裁判における精神的被害の証明、傷病手当金や障害年金といった公的支援の申請、勤務先への病状説明と配慮の依頼など、様々な場面で必要とされます。

PTSDと診断されるためには、DSM-5などの診断基準に基づき、精神科医や心療内科医による丁寧な問診が必要です。
診断は通常、複数回の診察を経て慎重に行われるため、「すぐもらえる」わけではありません。
診断書の発行には自費で費用がかかり、数日から1週間程度の期間を要します。

診断書には、診断名、具体的な症状、原因となった出来事、日常生活や社会生活への影響、今後の見通しなどが記載されます。
内容は提出先によって異なりますが、病状を正確に伝えるための重要な情報が網羅されています。

診断書に関する注意点として、「嘘」の診断書は倫理的・法的に問題があり絶対に避けるべきです。
また、診断書を取得することによって診断名が記録に残るといった影響も理解しておく必要があります。

交通事故によるPTSDでは、後遺障害等級認定に関わる診断書が重要となり、その内容が等級の判断に大きく影響します。

PTSDと診断された後は、精神療法や薬物療法といった治療に加え、医療費助成や経済的な支援、就労支援など様々な公的支援制度を利用できます。
診断書はこれらのサポートを受けるための重要な書類となります。

PTSDの診断や診断書について、疑問や不安がある場合は、まず精神科や心療内科といった専門の医療機関にご相談ください。
ご自身の症状を正直に伝え、医師とともに今後の治療や必要な手続きについて話し合うことから始めましょう。
必要に応じて、自治体の福祉窓口や専門の相談機関も活用し、回復に向けた一歩を踏み出してください。

免責事項: この記事はPTSDの診断書に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療方針を決定するものではありません。
具体的な診断や治療、診断書の発行については、必ず専門の医師にご相談ください。
また、法的な手続きや公的支援制度の利用については、関係機関や専門家(弁護士、社会保険労務士など)にご確認ください。
掲載内容は情報更新のタイミングにより最新のものでない可能性があります。

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