ギャンブル依存症は治る?効果的な治療法と回復への道

ギャンブル依存症は、単なる癖や気の緩みではなく、「やめたくてもやめられない」病気です。
ご本人だけでなく、ご家族も深く苦しむことが多く、一人でこの問題に立ち向かうのは非常に困難です。
しかし、適切な治療とサポートがあれば、回復は十分に可能です。

この記事では、ギャンブル依存症の様々な治療法や回復への道筋、そして具体的な相談先について詳しく解説します。
今、ギャンブルの問題に直面しているあなた、あるいはあなたの大切な方が、回復への第一歩を踏み出すための情報が見つかるはずです。
一人で抱え込まず、この記事をきっかけに専門機関や支援団体に相談してみましょう。

ギャンブル依存症とは?その定義と診断基準

ギャンブル依存症(病的賭博、ギャンブル障害とも呼ばれます)は、ギャンブル行為に対する衝動をコントロールできなくなる精神疾患の一つです。
厚生労働省の定義によれば、「ギャンブル等にのめり込むことにより、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態」を指します。
これは本人の意志の弱さではなく、脳機能の変化が関与する複雑な病気であり、進行性で慢性的な経過をたどることが特徴です。

アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)では、「持続的かつ反復性の問題賭博行動を特徴とする」として、以下の9つの基準のうち4つ以上に該当する場合にギャンブル障害と診断されることが一般的です(診断は専門医が行います)。

  • 多額の金銭を得ようとして、賭け金の額を増やす必要がある。
  • ギャンブルを減らす、またはやめる努力をしても落ち着きがなく、いらいらする。
  • ギャンブルをコントロールする、減らす、またはやめる努力を繰り返し失敗してきた。
  • ギャンブルに心を奪われている(例:これまでのギャンブル体験を反芻したり、次に勝負をしようとする気持ちを前もって考えたり、ギャンブルをしながら金銭を得る方法を考える)。
  • 苦痛な気分(罪悪感、不安、抑うつなど)のとき、ギャンブルをする。
  • ギャンブルで金をすった後、またすぐにつぎ込んで取り戻そうとする(追銭)。
  • ギャンブル行為を隠すために、家族、治療者、その他の人にうそをつく。
  • ギャンブルのために、人間関係、仕事、学業、または職業上の機会を危険にさらした、または失った。
  • ギャンブルによって絶望的な金銭状態に陥った後、その状況を打開するために他人に金銭的援助を頼る。

これらの基準からもわかるように、ギャンブル依存症は単に「お金を使いすぎる」といったレベルではなく、自分の意思では行動を制御できなくなり、様々な人間関係や社会生活に深刻な問題を引き起こす病気です。

ギャンブル依存症の主な治療法

ギャンブル依存症の治療は、様々なアプローチを組み合わせることで効果が高まります。
主な治療法には、専門医療機関での治療、公的な相談機関の利用、自助グループへの参加などがあります。
これらを単独で行うのではなく、それぞれの長所を活かして複合的に取り組むことが回復への鍵となります。

専門医療機関での治療

精神科や心療内科の中には、依存症治療を専門に行っている医療機関があります。
ここでは、医師や看護師、精神保健福祉士、臨床心理士などがチームを組んで、医学的・心理的な側面から包括的な治療を行います。

入院治療と外来治療

医療機関での治療には、大きく分けて入院治療と外来治療があります。

  • 入院治療: ギャンブルから物理的に隔離された環境で、集中的な治療プログラムに取り組みます。
    重度の依存症で、借金や家族関係の破綻が深刻な場合、あるいは本人のギャンブルへの衝動が非常に強い場合などに検討されます。
    規則正しい生活を送りながら、依存症に関する教育プログラム、集団療法、個別療法などを受け、回復に向けた基礎を築きます。
    ギャンブル行動だけでなく、背景にある心理的な問題や合併症(うつ病、不安障害など)の治療も同時に行える点が強みです。
  • 外来治療: 日常生活を送りながら、医療機関に定期的に通院して治療を受けます。
    症状が比較的落ち着いている場合や、仕事などで入院が難しい場合に選択されます。
    個別カウンセリングや集団療法、必要に応じて薬物療法などを組み合わせ、ギャンブル衝動への対処法を学び、回復を維持するためのスキルを身につけます。
    家族向けのプログラムが用意されている場合もあります。

どちらの治療法が適しているかは、依存症の重症度や本人の状況、家庭環境などによって異なります。
まずは専門医に相談し、自分に合った治療計画を立てることが重要です。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、ギャンブル依存症治療において最も広く用いられている心理療法の一つです。
ギャンブルに関する「考え方(認知)」と「行動」のパターンに働きかけ、それらをより健康的なものに変えていくことを目指します。

具体的には、以下のような点に取り組みます。

  • ギャンブルを引き起こす状況や感情(トリガー)を特定し、それらにどう対処するかを学びます。
  • ギャンブルに関する非現実的な考え方(例:「次はきっと大勝ちできる」「負けた分を取り返さないと」)に気づき、より現実的な考え方に修正します。
  • ギャー行為の代替となる健康的で楽しい活動を見つけ、実践します。
  • 衝動が起きた時の対処スキル(例:気晴らし、衝動が過ぎ去るのを待つ、信頼できる人に連絡するなど)を身につけます。
  • 問題解決スキルやストレス対処法を学び、日常生活での困難にうまく対処できるようになります。

CBTは、専門の訓練を受けた医療従事者(臨床心理士、精神保健福祉士など)によって行われます。
外来での個別セッションや、集団療法として他の回復者と共に行われることもあります。

薬物療法の現状(依存症に効く特効薬はない)

ギャンブル依存症そのものを「治す」特効薬は、現在のところ存在しません。
しかし、薬物療法が補助的に用いられることはあります。

  • 合併症の治療: ギャンブル依存症の患者さんには、うつ病や不安障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの精神疾患を合併しているケースが多く見られます。
    これらの合併症がギャンブル行動を悪化させている場合、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されることがあります。
  • 衝動性の抑制: 一部の薬剤(例:オピオイド拮抗薬、一部の抗精神病薬など)が、ギャンブルへの衝動や欲求を抑えるのに一定の効果を示す可能性が研究されています。
    ただし、その効果には個人差があり、まだ確立された治療法とまでは言えません。
  • 離脱症状の緩和: ギャンブルを急にやめることで生じるかもしれない不眠やイライラといった離脱症状に対して、一時的に薬が処方されることもあります。

薬物療法はあくまで治療全体の一部であり、CBTや自助グループへの参加といった心理社会的アプローチと組み合わせて行われるのが一般的です。
薬に頼るだけでなく、根本的な行動変容を目指すことが重要です。

公的な相談機関を利用する

専門医療機関への受診に抵抗がある場合や、まずはどこに相談すれば良いか分からないといった場合は、公的な相談機関を利用することから始めるのがおすすめです。
これらの機関では、無料で専門的な相談や情報提供、適切な支援先への橋渡しを行っています。

精神保健福祉センター

各都道府県・政令指定都市に設置されている機関です。
精神保健福祉に関する専門的な知識を持つスタッフ(精神科医、精神保健福祉士、臨床心理士など)が配置されており、依存症についても専門的な相談に応じています。

  • ギャンブル依存症に関する知識や情報提供
  • 本人や家族からの相談
  • 医療機関や自助グループなど、適切な支援機関の紹介
  • 回復に向けたプログラムや家族教室の開催(センターによる)

匿名での相談も可能な場合が多く、プライバシーに配慮されています。
まずは電話や窓口での相談から始めてみましょう。

保健所

地域に根差した健康に関する総合的な相談窓口です。
依存症に関する相談も受け付けており、身近な場所で気軽に相談できる点がメリットです。

  • ギャンブル依存症に関する一般的な相談
  • 地域の専門医療機関や相談機関の情報提供
  • 必要に応じて、より専門的な機関への紹介

精神保健福祉センターほど専門特化はしていませんが、最初の窓口として利用しやすいでしょう。

依存症専門相談ダイヤル

近年、全国共通の依存症専門相談ダイヤルが開設されています。
専門の相談員が、ギャンブル依存症を含む様々な依存症に関する相談に匿名で応じてくれます。

  • 電話一本で、どこからでも相談可能
  • 専門的な知識を持った相談員が対応
  • 適切な医療機関や支援団体などの情報提供

電話相談は、時間や場所を選ばずに利用できるため、初めて相談する方や、すぐに誰かに話を聞いてほしいという場合に特に有効です。

自助グループ(GAなど)への参加

自助グループは、同じ問題を抱える人々が集まり、経験を共有し、互いを支え合いながら回復を目指す場です。
ギャンブル依存症においては、GA(Gamblers Anonymous:ギャンブラーズ・アノニマス)が代表的な自助グループです。

  • 匿名性: 参加者のプライバシーが守られます。
    本名や職業などを明かす必要はありません。
  • 経験の共有: 自分の苦しみや経験を話し、他の参加者の話を聞くことで、「自分だけではない」という孤独感から解放され、回復への希望を得られます。
  • 仲間からのサポート: 依存症を理解する仲間と繋がることで、精神的な支えを得られます。
  • 回復プログラム: GAでは「12ステップ」と呼ばれる回復のためのプログラムに取り組むことで、依存症から回復し、より良い生き方を学ぶことができます。
  • 費用: 基本的に参加費は無料ですが、会場費などのために寄付を募ることがあります。

自助グループは専門家による治療とは異なりますが、回復のプロセスにおいて非常に重要な役割を果たします。
仲間の存在は、長期的な回復を維持する上で大きな力となります。

また、ギャンブル依存症の本人の問題だけでなく、その家族のための自助グループも存在します。
代表的なものにギャマノン(Gam-Anon)があります。
家族もまた依存症の影響を受け、「共依存」といった問題を抱えることがあります。
ギャマノンでは、同じようにギャンブル依存症の家族を持つ人々が集まり、経験を分かち合い、家族自身の回復を目指します。

家族がギャンブル依存症の方にできる対応・サポート

ギャンブル依存症は本人だけの問題ではなく、家族も深刻な影響を受けます。
家族ができることは、本人をコントロールすることではなく、病気について正しく理解し、適切なサポートを行い、そして何より自分自身を大切にすることです。

  • 病気として理解する: 「だらしない」「意志が弱い」といった感情的な非難ではなく、「病気なのだ」と理解することが第一歩です。
    本人を責めるのではなく、病気からの回復をサポートするという視点を持つことが大切です。
  • 一人で抱え込まない: 家族だけで問題を解決しようとせず、医療機関や相談機関、家族向けの自助グループ(ギャマノンなど)に相談しましょう。
    家族自身もサポートが必要です。
  • お金の管理を見直す: 借金の肩代わりを繰り返すことは、本人の回復を遅らせることがほとんどです。
    「もう二度と肩代わりしない」と毅然とした態度で伝え、お金の管理を家族が行う、使えるお金を制限するといった対策が必要です。
    キャッシュカードや通帳を預かる、本人にお金を持たせないなども検討します。
  • 正直な気持ちを伝える: ギャンブルによって家族がどれだけ傷つき、苦しんでいるかを冷静に、しかし正直に伝えましょう。
    感情的に怒鳴るのではなく、「あなたがギャンブルをすることで、私はこんなに心配で眠れない」「家族旅行に行けなくなって悲しい」のように、「私(I)」を主語にして伝えることが有効です。
  • 回復への一歩を応援する: 本人が治療や自助グループ参加に前向きになったら、それを全面的にサポートします。
    ただし、無理強いは逆効果になることがあります。
    まずは相談に行ってみよう、という小さな一歩を促すことから始めましょう。
  • 「共依存」に注意する: 家族が、本人の問題を解決しようと必死になりすぎるあまり、本人の依存行動を間接的に支えてしまったり、本人の顔色をうかがって生活の中心が本人になってしまう状態を共依存と呼びます。
    家族自身の幸せや健康がおろそかにならないように、自分自身も専門家や自助グループのサポートを受け、適切な距離感を保つことが重要です。

家族の対応は非常に難しく、大きな葛藤を伴います。
家族向けの支援プログラムや自助グループに参加し、同じ境遇の仲間と繋がること、そして専門家の助言を得ることが、家族自身の回復にも繋がります。

ギャンブル依存症の回復率と克服について

「ギャンブル依存症は本当に治るのだろうか?」と不安に思われる方もいるかもしれません。
回復の定義や個人差はありますが、希望を持って治療に取り組むことは非常に重要です。

ギャンブル依存症は「治る」病気か?(慢性疾患としての理解)

ギャンブル依存症は、高血圧や糖尿病のような慢性疾患として理解されることが多いです。
これらの病気は、完全に「消え去る」というよりは、治療によって症状をコントロールし、健康な状態を維持していくことが目標となります。

ギャンブル依存症における「回復」も、多くの場合は「ギャンブル行為を完全にやめ、健康的な社会生活を送れる状態を維持する」ことを指します。
一度依存症になった脳の機能が完全に元に戻るわけではないため、再発のリスクは常に存在します。
しかし、これは回復が不可能という意味ではありません。
適切な治療や支援を継続することで、ギャンブルのない生活を送り、人間関係や仕事を回復させ、自分らしい人生を取り戻すことは十分に可能です。

「完治」という言葉にとらわれすぎず、「回復」という長期的なプロセスとして捉えることが、回復への道筋を歩む上で大切です。

自力でギャンブル依存症を治すことの難しさ

「自分の意志でギャンブルをやめればいいだけだ」と考える人もいますが、ギャンブル依存症を自力で克服するのは極めて困難です。
病気が進行すると、脳の報酬系と呼ばれる快感に関わる部位がギャンブルによって過剰に刺激され、正常な判断や衝動の抑制が効きにくくなります。

  • 強い渇望(クラビング): ギャンブルへの耐え難い衝動が襲ってくることがあります。
  • 否認: 自分が病気であること、深刻な問題を抱えていることを認められない心理状態になります。
  • 合理化: ギャンブルを続けるための言い訳を考え出し、自分自身を正当化します。
  • 離脱症状: ギャンブルができないと、イライラ、不安、不眠などの不快な症状が現れることがあります。

これらの症状は、本人の意志の力だけではどうにもならないレベルに達していることが多いです。
そのため、専門家による医学的・心理的なアプローチや、同じ苦しみを分かち合える仲間との繋がりが不可欠となります。
一人で抱え込まず、「助けが必要だ」と認めることが、回復への最初の、そして最も重要な一歩となります。

ギャンブル依存症を克服した人の共通点

ギャンブル依存症から回復し、安定した生活を送っている人々にはいくつかの共通点が見られます。

  • 依存症を病気であると認め、否認を手放す: まずは自分がギャンブル依存症であるという現実を受け入れることから始まります。
  • 助けを求める勇気を持つ: 一人で解決しようとせず、専門家や支援団体、信頼できる人に助けを求めます。
  • 治療やプログラムに積極的に取り組む: 医療機関での治療、CBT、自助グループへの参加など、回復のためのプログラムに真摯に取り組みます。
  • 正直さを大切にする: 自分自身や周囲の人に対して正直であること、特にギャンブルに関することをごまかさないことが重要です。
  • 生活習慣を見直す: 規則正しい生活を送り、健全な人間関係を築き、ギャンブル以外の活動に時間とエネルギーを向けます。
  • 経済的な問題に向き合う: 借金などの金銭的な問題から逃げず、専門家の助けを借りながら解決に取り組みます。
  • 再発予防策を講じる: 再発のトリガーを知り、対処法を身につけ、万が一スリップ(一時的なギャンブル行為)した場合の対処法を事前に決めておきます。
  • 仲間との繋がりを大切にする: 自助グループなどで出会った仲間と連絡を取り合い、支え合います。

回復への道は決して平坦ではありませんが、これらの共通点を持つ人々は、困難を乗り越えて回復を維持しています。
これは、特別な人だけが可能なのではなく、誰にでも可能性があることを示しています。

ギャンブル依存症に関するよくある質問(PAA/関連検索)

ギャンブル依存症やその治療に関して、多くの方が疑問に思う点をまとめました。

ギャンブル依存症はどうやって治すの?

ギャンブル依存症の治療には、主に以下の方法があります。

  • 専門医療機関(精神科など)での治療: 認知行動療法などの心理療法、必要に応じた薬物療法、入院治療など。
  • 公的な相談機関の利用: 精神保健福祉センターや保健所などでの相談、情報提供。
  • 自助グループ(GAなど)への参加: 仲間との経験共有、回復プログラム(12ステップ)。

これらの方法を単独ではなく、組み合わせて行うことが効果的です。
本人の状況や重症度に応じて、適切な治療計画が立てられます。

ギャンブル依存を辞める方法はありますか?

ギャンブル依存を辞めるためには、まず「自分一人では難しい病気である」という認識を持つことが重要です。
そして、以下のステップを踏むことが推奨されます。

  • 自分がギャンブル依存症であることを認める(否認を手放す)。
  • 専門家(医師、カウンセラー)や支援団体、自助グループに相談する。
  • 治療プログラムや自助グループに継続的に参加する。
  • ギャンブルができない環境を作る(お金の管理、立ち入り禁止など)。
  • ギャンブル以外の健康的な活動や趣味を見つける。
  • 再発予防のための対処法を身につける。

意志の力だけに頼るのではなく、外部のサポートを積極的に活用することが回復への鍵となります。

ギャンブル依存症の回復率はどれくらい?

ギャンブル依存症の回復率に関する正確な統計は難しいですが、研究によると、治療や自助グループなどのサポートを受けた人の回復率は、何もしない人に比べて有意に高いことが示されています。
回復の定義(完全にギャンブルをしない、問題なくコントロールできるなど)や、サポートの継続期間によって数値は変動しますが、継続的な治療や支援を受けることで、多くの人がギャンブルのない生活を取り戻し、維持できるようになります。
大切なのは、回復は「可能である」と信じ、諦めずに取り組むことです。

ギャンブル依存症の人は何歳が多い?

ギャンブル依存症は、特定の年齢層に偏らず、思春期から高齢者まで幅広い年代で発症する可能性があります。
ただし、統計的には20代から50代の男性に多い傾向が見られます。
しかし、近年は女性や高齢者の間でも問題が顕在化してきており、性別や年齢にかかわらず注意が必要です。

ギャンブル依存症をやめさせるには?

本人に治療の意思がない場合、周囲の人が無理やりやめさせることは非常に難しいです。
依存症からの回復は、本人の「変わりたい」という意思から始まるからです。
しかし、家族や周囲の人ができることはあります。

  • 病気について学び、理解する。
  • 本人を責めるのではなく、回復を応援する姿勢を示す。
  • お金の管理など、ギャンブルができない環境を作る。
  • 家族自身が専門家や支援団体に相談し、適切な対応を学ぶ(共依存にならない)。
  • 回復の機会(治療や相談)について情報提供し、促す。

家族や周囲の人が孤立せず、適切なサポートを受けることが、結果的に本人の回復のきっかけとなることもあります。

ギャンブル依存症の方にかける言葉は?

非難したり、感情的に責めたりする言葉は避けましょう。
「なぜやめられないの」「いい加減にしなさい」といった言葉は、本人をさらに追い詰めるだけです。

代わりに、病気と理解し、回復を応援する姿勢を示す言葉を選ぶことが大切です。

  • 「あなたが苦しんでいるのがわかるよ。
    何か私にできることはないかな?」
  • 「ギャンブル依存症は病気だと聞いたよ。
    一緒に相談できるところを探してみないか?」
  • 「あなたのことを大切に思っているからこそ、この問題を解決してほしいんだ。」
  • 「一人で抱え込まなくていいんだよ。」

正直な気持ちを伝えつつも、温かい言葉や回復への希望を示す言葉が、本人が助けを求める勇気を持つきっかけになるかもしれません。

ギャンブル依存症の末期症状とは?

ギャンブル依存症が進行し、末期的な状態になると、以下のような深刻な問題が生じます。

  • 多額の借金、破産
  • 家族関係の崩壊、離婚、孤立
  • 失業、学業放棄
  • 心身の健康悪化(うつ病、不安障害、不眠、栄養失調など)
  • 違法行為への手を染める(詐欺、窃盗など)
  • 自殺企図

末期症状に至る前に、早期に専門的な支援を受けることが極めて重要です。

ギャンブル依存症の原因には幼少期が関係ある?

ギャンブル依存症の単一の特定の原因は解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
幼少期の経験が影響する可能性も指摘されています。

  • 遺伝的要因: 家族に依存症の方がいる場合、発症リスクが高まる可能性があります。
  • 環境要因: 幼少期にギャンブルに触れる機会が多かった、家庭内にストレスが多かった、愛情や安定した関係に恵まれなかった、虐待の経験など。
  • 心理的要因: 衝動性が高い、リスクを恐れない、刺激を求めやすい性格傾向、自己肯定感が低い、ストレス対処が苦手、完璧主義など。
  • 脳機能の変化: ギャンブルを繰り返すことで、脳の報酬系や衝動を抑制する部位の機能が変化することが分かっています。

特定の幼少期の経験が必ず依存症につながるわけではありませんが、発症の背景に影響を与える可能性はあります。
原因を特定することよりも、現在の問題を解決し、回復を目指すことに焦点を当てることが重要です。

ギャンブル依存症から回復するために大切なこと

ギャンブル依存症からの回復は、一夜にして成し遂げられるものではなく、継続的な努力とサポートが必要です。
回復のために特に大切なことをいくつかご紹介します。

まずは依存症である現実を受け入れる

回復への第一歩は、自分がギャンブル依存症という病気であること、そして一人ではコントロールできない状態にあることを、正直に認めることです。
「いつでもやめられる」「自分は大丈夫」といった否認の気持ちが強い間は、なかなか治療や支援に繋がることができません。
辛い現実かもしれませんが、これを受け入れることが回復への扉を開くことになります。

専門家や支援団体の力を借りる

依存症は「助けが必要な病気」です。
医療機関の専門家(医師、カウンセラー)、公的な相談機関、そして自助グループといった外部の力を積極的に借りることが回復には不可欠です。
専門家は病気に関する正しい知識を提供し、適切な治療法を提案してくれます。
自助グループでは、同じ悩みを抱える仲間との繋がりを通じて、精神的な支えと回復のための知恵を得られます。
一人で抱え込まず、様々なサポートを組み合わせて活用しましょう。

ギャンブル以外の趣味や活動を見つける

ギャンブルに費やしていた時間やエネルギーを、健康的で建設的な活動に向けることが大切です。
新しい趣味を見つけたり、スポーツをしたり、ボランティア活動に参加したり、友人や家族と健全な時間を過ごしたりするなど、ギャンブル以外の「楽しい」と感じられることを見つけましょう。
これにより、生活に充実感が生まれ、ギャンブルへの衝動から意識をそらすことができます。

経済的な問題を整理する(借金問題など)

ギャンブル依存症には、多くの場合、借金問題が伴います。
この経済的な問題を放置したままでは、回復は困難です。
借金取りからの取り立てや返済のプレッシャーが、再びギャンブルに走るきっかけとなることもあります。
弁護士や司法書士などの専門家(法テラス、消費者ホットラインなど)に相談し、債務整理などの法的な手続きも検討しましょう。
お金の問題をクリアにすることが、精神的な安定にもつながります。

再発予防のための対策

ギャンブル依存症は慢性疾患であり、回復後も再発のリスクはゼロにはなりません。
そのため、再発を予防するための対策を講じることが非常に重要です。

  • 再発のサインやトリガーを知る: どのような状況(例:強いストレス、孤独、特定の場所や人)でギャンブルをしたくなるか、どのような感情(例:イライラ、退屈、ゆううつ)が湧くと危険かを知っておく。
  • 対処法を身につける: 衝動が起きた時にどう対処するか(例:深呼吸する、信頼できる人に電話する、その場を離れる、代替行動をする)を事前に練習しておく。
  • 避けるべき状況や場所を特定する: パチンコ店や競馬場などのギャンブル関連施設、ギャンブルの話をする友人など、再発のリスクを高めるものは避ける。
  • SOSを出す練習をする: 苦しくなったときに、ためらわずに信頼できる人(家族、支援者、自助グループの仲間など)に助けを求める練習をしておく。

定期的に自助グループに参加したり、相談機関と連絡を取り合ったりすることも、再発予防に役立ちます。

ギャンブル依存症の相談窓口・支援団体一覧

ギャンブル依存症からの回復をサポートしてくれる様々な機関や団体があります。
一人で悩まず、まずは下記の窓口に相談してみましょう。

機関・団体名 対象者 主な相談内容 費用 連絡方法(代表例)
医療機関
(精神科・心療内科)
ギャンブル依存症本人、家族 診断、治療計画、薬物療法、心理療法(CBTなど)、入院治療・外来治療 保険適用 電話、Webサイトからの予約、紹介状が必要な場合あり
精神保健福祉センター ギャンブル依存症本人、家族 専門相談、情報提供、支援機関紹介、家族教室、リハビリプログラム(センターによる) 無料 電話、窓口(予約制が多い)
保健所 ギャンブル依存症本人、家族 一般相談、地域の支援機関情報提供、専門機関への橋渡し 無料 電話、窓口
依存症回復支援施設 ギャンブル依存症本人 入寮による集中的な回復プログラム(グループワーク、カウンセリング、生活支援) 入所費用 電話、Webサイトからの問い合わせ、見学
自助グループ(GA) ギャンブル依存症本人 経験の共有、仲間との繋がり、12ステッププログラム 無料(任意寄付) 各地の会場、オンラインミーティング(GA日本インフォメーションセンターのWebサイト参照)
自助グループ(ギャマノン) ギャンブル依存症の家族、友人など 家族自身の苦しみの共有、回復のための知恵、仲間との繋がり 無料(任意寄付) 各地の会場、オンラインミーティング(ギャマノン日本のWebサイト参照)
依存症専門相談ダイヤル ギャンブル依存症本人、家族、関係者 電話による匿名相談、情報提供、支援機関紹介 無料 全国共通番号(後述)
消費者ホットライン 借金問題に悩む方 多重債務に関する相談、解決のための情報提供 無料 電話(188番)
法テラス 借金問題に悩む方、法的な問題全般 借金問題を含む法的な相談、弁護士・司法書士紹介、無料相談や費用扶助制度 無料相談あり 電話、窓口

依存症専門相談ダイヤル: 0120-189-525 (フリーダイヤル、一部時間帯で対応)
消費者ホットライン: 188 (いやや) (局番なし、最寄りの消費生活センター等に繋がります)
法テラス: 0570-078374 (おなやみなし) (PHS・IP電話からは 03-6745-5600)

これらの窓口は、あなたの状況に応じた適切なサポートや情報を提供してくれます。
「どこに相談すればいいか分からない」と迷ったら、まずは連絡しやすいところから一歩踏み出してみましょう。

まとめ:ギャンブル依存症は治療・回復が可能です。一人で抱え込まず、相談から始めましょう。

ギャンブル依存症は、意志の力だけではなかなか克服できない深刻な病気です。
しかし、決して回復できない病気ではありません。
適切な治療法と支援を受けることで、ギャンブルのない、自分らしい健康的な生活を取り戻すことは十分に可能です。

この記事でご紹介したように、ギャンブル依存症には様々な治療法(医療機関での治療、認知行動療法、薬物療法)や、回復をサポートしてくれる機関・団体(精神保健福祉センター、保健所、依存症専門相談ダイヤル、自助グループ)が存在します。
これらのサポートを積極的に活用することが、回復への最も確実な道です。

もしあなたが、あるいはあなたの大切な人がギャンブルの問題で苦しんでいるなら、一人で抱え込まず、まずは相談してみましょう。
一歩踏み出す勇気が、回復への扉を開きます。

免責事項: 本記事はギャンブル依存症に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の症状に対する診断や治療を推奨するものではありません。
具体的な診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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