認知症の原因を徹底解説|種類・生活習慣・ストレスと予防策

認知症は、脳の病気やその他の原因によって認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指します。一口に認知症といっても、その原因となる病気は一つではなく、様々な種類があります。
原因によって症状の現れ方や進行も異なってくるため、原因を理解することは、適切なケアや治療、そして予防を考える上で非常に重要です。
この記事では、認知症の主な原因と種類、リスク因子、そして今日からできる予防策について詳しく解説します。

認知症とは?定義と症状の概要

認知症は、後天的な脳の障害により、記憶、思考、判断などの認知機能が全般的に低下し、社会生活や日常生活が困難になる状態です。単なる「もの忘れ」とは異なり、体験したこと全体を忘れてしまったり、時間や場所の感覚が失われたりすることがあります。

認知症の症状は、主に「中核症状」と「周辺症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」に分けられます。

中核症状は、脳の機能が直接的に障害されることによって起こる症状です。

  • 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。
  • 見当識障害: 時間、場所、人が分からなくなります。
  • 実行機能障害: 物事を計画し、順序立てて行うことが難しくなります。
  • 失語・失行・失認: 言葉の意味が分からなくなったり(失語)、体の動かし方が分からなくなったり(失行)、物の認識ができなくなったり(失認)します。

周辺症状(BPSD)は、中核症状に本人の性格や環境、人間関係などが複雑に絡み合って現れる精神症状や行動障害です。

  • 徘徊: 目的もなく歩き回る。
  • 不安・焦燥: 落ち着きがなく、イライラしたり不安になったりする。
  • 抑うつ: 気分が落ち込み、無気力になる。
  • 幻覚・妄想: 見えないものが見えたり(幻視)、現実ではないことを信じ込んだり(妄想)する。
  • 睡眠障害: 昼夜逆転など、睡眠のリズムが乱れる。
  • 介護への抵抗: 入浴や着替えなどを拒否する。

これらの症状の現れ方や程度は、認知症の原因となる病気の種類や進行度、個人の状態によって大きく異なります。認知症は進行性の疾患が多いですが、原因によっては適切な治療で症状が改善したり、進行を遅らせたりできる場合もあります。

認知症の主な原因となる病気の種類

認知症の原因となる病気は70種類以上あるとされていますが、その中でも頻度が高い主な原因疾患がいくつかあります。これらの疾患によって脳の障害される部位やメカニズムが異なり、それが認知症の種類や症状の違いとして現れます。

主な4大認知症とその原因は以下の通りです。

認知症の種類 主な原因 特徴的な症状
アルツハイマー型認知症 アミロイドβ、タウタンパク質の蓄積による脳神経細胞の破壊 進行性の記憶障害(特に新しい出来事)、見当識障害、実行機能障害など
脳血管性認知症 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 段階的な認知機能低下、麻痺や言語障害などの神経症状、感情失禁など
レビー小体型認知症 α-シヌクレインを含むレビー小体の蓄積 認知変動(日によって状態が大きく変わる)、幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害
前頭側頭型認知症 前頭葉や側頭葉の神経細胞の変性・脱落 人格変化、行動障害(万引き、暴言など)、言語障害(失語、言葉の繰り返し)

これらの主要な認知症について、さらに詳しく原因を見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症は、認知症の原因の中で最も多いタイプであり、全体の約6割を占めると言われています。その主な原因は、脳内に特定の異常なたんぱく質が蓄積することによって、脳の神経細胞が徐々に破壊されていくことです。

アミロイドβとタウタンパク質
アルツハイマー型認知症の発症には、「アミロイドβ」と「タウタンパク質」という2種類の異常なたんぱく質が深く関わっていると考えられています。

  • アミロイドβ: 本来、脳の神経細胞の活動によって生まれる老廃物のようなものですが、通常は分解・排出されます。しかし、何らかの原因で分解・排出がうまくいかなくなると、脳の神経細胞の外側に塊となって蓄積します。これを「老人斑」と呼び、神経細胞の働きを妨げたり、炎症を引き起こしたりすると考えられています。
  • タウタンパク質: 神経細胞の内部に存在するたんぱく質で、神経細胞の骨組みを保ったり、物質輸送を助けたりする役割を担っています。アルツハイマー型認知症では、このタウたんぱく質が異常な構造に変化し、神経細胞の内部に線維状に蓄積します。これを「神経原線維変化」と呼び、神経細胞の機能障害や死滅を引き起こします。

これらのたんぱく質の蓄積は、認知機能の低下が現れる何年も、場合によっては何十年も前から始まっていると考えられています。蓄積が進むにつれて脳全体が萎縮し、特に記憶に関わる海馬や、思考・判断を司る大脳皮質などが強く障害されます。

遺伝的要因
アルツハイマー型認知症には、まれに遺伝子の異常によって若い年齢で発症するタイプ(家族性アルツハイマー病)がありますが、これは全体の1%未満と非常に少ないです。多くの場合は高齢で発症する「孤発性アルツハイマー病」で、特定の遺伝子(例: アポリポ蛋白E ε4アリル)を持っていると発症リスクが高まるとされていますが、この遺伝子を持っている人が必ず発症するわけではありません。遺伝的要因よりも、むしろ生活習慣病などの後天的な要因の方が発症に大きく影響すると考えられています。

脳血管性認知症の原因

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の神経細胞に血液が届かなくなり、その結果として神経細胞が死滅したり機能が低下したりすることで起こる認知症です。アルツハイマー型に次いで多いタイプです。

脳血管障害の種類
脳血管障害には、大きく分けて以下の種類があります。

  • 脳梗塞: 脳の血管が詰まり、その先の脳組織に血液が流れなくなる状態です。小さな梗塞が多発して起こる「多発性脳梗塞」や、大きな梗塞が起こる場合などがあります。
  • 脳出血: 脳内の血管が破れて出血し、脳組織を圧迫したり破壊したりする状態です。

これらの脳血管障害によって、障害された脳の場所や範囲に応じて様々な症状が現れます。運動麻痺、感覚障害、言語障害などの神経症状を伴うことが多いのが特徴です。

段階的な進行
脳血管性認知症は、脳血管障害が起こるたびに階段状に症状が悪化することがあります。脳梗塞や脳出血を繰り返すことで、少しずつ認知機能が低下していくパターンです。ただし、障害された脳の部位によっては、アルツハイマー型のように緩やかに進行する場合もあります。

危険因子との関連
脳血管障害は、生活習慣病と密接に関連しています。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心疾患、喫煙、過度の飲酒、運動不足などは、脳血管障害の大きな危険因子です。これらのリスク因子を管理することが、脳血管性認知症の予防につながります。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊が蓄積することが原因で起こる認知症です。このレビー小体の主成分は、「α-シヌクレイン」というたんぱく質です。

レビー小体は、主に脳幹や大脳皮質に蓄積します。脳幹の特定の部位にレビー小体が蓄積すると、パーキンソン病の運動症状(手足の震え、体のこわばり、動きの遅さなど)が現れます。大脳皮質に蓄積すると、認知機能障害が起こります。

特徴的な症状
レビー小体型認知症の特徴は、認知機能の変動が大きいことです。日によって、あるいは時間帯によって、頭がはっきりしている時と混乱している時が大きく変動します。また、具体的な幻視(実際にはいない人や物が見える)が高頻度で現れることも大きな特徴です。さらに、睡眠中に夢の内容に合わせて大声を出したり暴れたりする「レム睡眠行動障害」が、認知機能障害が現れる何年も前から見られることがあります。

アルツハイマー型が記憶障害から始まることが多いのに対し、レビー小体型では初期から注意障害、実行機能障害、視空間認知障害(物の位置関係や奥行きが分からなくなる)などが目立つことがあります。

前頭側頭型認知症の原因

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が限局的に変性・脱落していくことで起こる認知症です。このタイプは、比較的若い年齢(40代〜60代)で発症することがあり、症状の現れ方が他の認知症とは大きく異なります。

原因となる病理
前頭側頭型認知症は、さらにいくつかのタイプに分類されますが、主な原因として、神経細胞内にタウたんぱく質やTDP-43といった特定の異常なたんぱく質が蓄積することが挙げられます。蓄積するたんぱく質の種類によって、病気の進行や症状に違いが見られます。

特徴的な症状
前頭葉は人格や社会性、行動を司り、側頭葉は言語や記憶に関わります。そのため、障害される部位によって以下のような特徴的な症状が現れます。

  • 行動障害型前頭側頭型認知症: 人格の変化、社会性の欠如、衝動的な行動、共感性の低下、同じ行動を繰り返す常同行動(毎日決まった時間に同じ場所へ行く、同じ物を食べ続けるなど)が目立ちます。感情のコントロールが難しくなったり、TPOをわきまえない言動が増えたりすることもあります。
  • 意味性認知症: 側頭葉(特に前部)の萎縮により、言葉の意味が理解できなくなったり、物の名前が思い出せなくなったりします。滑らかに話すことはできますが、内容が乏しくなります。
  • 進行性非流暢性失語: 言葉をスムーズに話せなくなり、たどたどしい話し方になります。文法的な誤りが増えたり、言葉を探すのに苦労したりします。

これらの症状は、初期には認知症と気づかれにくく、うつ病や統合失調症、あるいは単なる性格の変化と間違えられることもあります。

その他の原因による認知症

頻度の高い上記の4大認知症以外にも、認知症の原因となる病気は多数存在します。中には、早期に発見し適切な治療を行うことで、症状が劇的に改善したり、完全に回復したりする「治る認知症(可逆性認知症)」も含まれます。

その他の原因となる病気 特徴/原因 治療による改善の可能性
正常圧水頭症 脳脊髄液の流れが悪くなり、脳室が拡大して脳を圧迫する状態。歩行障害、尿失禁、認知機能障害(思考の遅れなど)が見られる。 シャント手術で改善可能
甲状腺機能低下症 甲状腺ホルモンの分泌が低下し、全身の代謝が悪くなる病気。意欲低下、うつ状態、記憶障害などが見られる。 ホルモン補充療法で改善可能
慢性硬膜下血腫 頭部外傷後、脳を覆う硬膜の下にゆっくりと血が溜まる状態。頭痛、片側の麻痺、認知機能障害(記銘力低下など)が見られる。 血腫除去手術で改善可能
ビタミン欠乏症 ビタミンB1(ウェルニッケ脳症・コルサコフ症候群)、ビタミンB12、葉酸などの不足。アルコール依存症などで起こりやすい。 ビタミン補充療法で改善可能
アルコール性認知症 長期間の過度な飲酒による脳の萎縮や栄養障害。記憶障害、実行機能障害、人格変化などが起こりやすい。 断酒と栄養改善で進行を遅らせたり、一部改善も
プリオン病 異常なたんぱく質(プリオン)が脳に蓄積し、急速に神経細胞を破壊する病気(クロイツフェルト・ヤコブ病など)。急速に進行する認知症。 現在のところ有効な治療法はない
脳炎、髄膜炎 脳や髄膜の炎症。発熱、頭痛、意識障害に加え、認知機能障害が起こる。 早期の治療で改善可能
梅毒(神経梅毒) 梅毒トレポネーマが脳や神経系に感染。様々な神経症状に加え、認知機能障害が見られることがある。 抗生物質による治療で改善可能

これらの「治る認知症」は、適切な診断と早期治療が極めて重要です。認知症の症状が現れた際には、「年だから仕方ない」と決めつけず、必ず医療機関を受診し、原因を特定することが大切です。

認知症になりやすい人の特徴とリスク因子

認知症の原因となる病気の発症には、様々な要因が関わっています。年齢は最大の認知症の原因でありリスク因子ですが、それ以外にも、遺伝的な要素や生活習慣、既往歴なども発症リスクに影響を与えます。これらのリスク因子を知ることは、認知症予防への第一歩となります。

生活習慣によるリスク(食事、運動、睡眠、喫煙、飲酒)

日々の生活習慣は、認知症の原因となりうる脳の健康に大きな影響を与えます。不健康な生活習慣は、脳血管障害やメタボリックシンドロームを引き起こし、結果として認知症のリスクを高める可能性があります。

  • 食事: 高カロリー、高脂肪、高塩分の食事は、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めます。これらの病気は脳血管を傷つけたり、脳機能に悪影響を及ぼしたりします。特に、加工食品や sugary drinks(砂糖入り飲料)の過剰摂取は注意が必要です。
  • 運動: 運動不足は、肥満や生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、脳への血流を悪化させ、脳機能の低下につながる可能性があります。
  • 睡眠: 睡眠不足や質の悪い睡眠は、脳内にアミロイドβなどの老廃物が蓄積しやすくなると考えられています。また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害も認知機能の低下と関連があることが指摘されています。
  • 喫煙: 喫煙は脳血管を含む全身の血管を傷つけ、脳卒中や心筋梗塞のリスクを大幅に高めます。これは脳血管性認知症の直接的な原因となります。また、アルツハイマー型認知症のリスクも高めることが研究で示されています。
  • 飲酒: 過度な飲酒は、脳細胞を直接傷つけたり、ビタミン不足を引き起こしたりして認知機能に悪影響を及ぼします。特に長期間にわたる大量の飲酒は、アルコール性認知症の原因となります。適量であればリスクは低いとされていますが、個人差が大きいため注意が必要です。

高血圧や糖尿病などの関連疾患

生活習慣病の中でも、特に高血圧、糖尿病、脂質異常症は、認知症、特に脳血管性認知症の強力なリスク因子です。これらの病気は、知らず知らずのうちに全身の血管を傷つけ、脳の血管も例外ではありません。

  • 高血圧: 血管に常に高い圧力がかかることで、血管の壁が厚く硬くなり(動脈硬化)、血管が詰まりやすくなったり破れやすくなったりします。これにより、脳梗塞や脳出血のリスクが高まり、脳血管性認知症の原因となります。また、高血圧はアルツハイマー型認知症のリスクも高める可能性が指摘されています。
  • 糖尿病: 血糖値が高い状態が続くと、全身の細い血管が傷つきやすくなります。脳の細い血管が障害されると、小さな脳梗塞が多発し、認知機能が徐々に低下することがあります(ラクナ梗塞による脳血管性認知症など)。糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスクも高めると考えられています。
  • 脂質異常症: 血液中のコレステロールや中性脂肪が高い状態が続くと、血管の壁にプラークがたまり、動脈硬化を進行させます。これは脳梗塞の原因となり、脳血管性認知症のリスクを高めます。

これらの生活習慣病は、単独でもリスクとなりますが、複数合併している場合はさらにリスクが高まります。また、肥満(特に内臓脂肪型肥満)や高血糖、高血圧、脂質異常症が複数重なった状態である「メタボリックシンドローム」も、認知症の重要なリスク因子と考えられています。

ストレスと認知症の関係

慢性的なストレスも、認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。ストレスは脳の機能を低下させたり、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増やしたりします。これらのホルモンは、脳の記憶に関わる海馬などの領域にダメージを与える可能性が考えられています。

また、ストレスは不眠や抑うつ、生活習慣の乱れ(暴飲暴食、喫煙など)につながることもあり、間接的に認知症のリスクを高める要因となります。社会的な孤立や人との交流の少なさも、心理的なストレスや脳への刺激の低下につながり、認知機能の低下と関連があると考えられています。

年齢や遺伝の影響

年齢: 認知症の最大の原因であり、最も重要なリスク因子は「加齢」です。年齢を重ねるにつれて、脳の神経細胞は徐々に減少したり機能が低下したりします。特に65歳を過ぎると認知症の発症率が上昇し、85歳以上では4人に1人以上が認知症であるという報告もあります。しかし、年齢を重ねたからといって必ず認知症になるわけではありません。

遺伝: 前述の通り、家族性アルツハイマー病のように特定の遺伝子異常で若くして発症するケースは非常に稀です。多くの認知症は、複数の遺伝子や環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。特定の遺伝子(例: アポリポ蛋白E ε4アリル)を持っていると発症リスクは高まりますが、これはあくまでリスクであり、発症を決定づけるものではありません。家族に認知症の人がいるからといって、自分も必ず発症するわけではないことを理解することが重要です。遺伝よりも、後天的なリスク因子である生活習慣病や生活習慣を管理することの方が、認知症予防にはより効果的であると考えられています。

認知症を予防するために今日からできること

認知症の原因は多岐にわたりますが、多くの認知症、特にアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症については、生活習慣を改善することで発症リスクを下げたり、進行を遅らせたりできる可能性が指摘されています。今日からできる具体的な予防策を実践しましょう。

食生活の改善による予防

バランスの取れた健康的な食事は、脳の機能を維持し、脳血管疾患のリスクを減らすために非常に重要です。

  • 推奨される食事パターン: 魚介類、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類、オリーブオイルなどを中心とした「地中海食」のような食事パターンが、認知症予防に効果があるという研究報告があります。青魚に含まれるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸は、脳の神経細胞を保護する働きが期待されています。
  • 積極的に摂りたい栄養素: ビタミンC、Eなどの抗酸化作用のある栄養素や、葉酸、ビタミンB12などのビタミンB群は、脳の健康に関与していると考えられています。色の濃い野菜や果物、豆類、魚などを積極的に摂りましょう。
  • 避けるべき食品: 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む肉の脂身や加工食品、スナック菓子、ファストフードなどは、動脈硬化を進めるため控えるようにしましょう。また、過剰な糖分の摂取も血管を傷つけ、認知症リスクを高める可能性があります。塩分の摂りすぎは高血圧の原因となるため注意が必要です。

適度な運動の実践

定期的な運動は、認知症予防に非常に効果的です。運動によって脳への血流が促進され、神経細胞の成長を促す物質(BDNFなど)が増加することが分かっています。また、運動は生活習慣病の予防・改善にもつながります。

  • どのような運動が良いか: ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動が推奨されます。週に150分程度(例えば、1日30分を週5日)の、少し息が弾む程度の運動を目指しましょう。筋力トレーニングも、全身の健康維持に役立ちます。
  • 続けることが重要: 運動の効果を持続させるためには、短期間でなく、習慣として続けることが大切です。無理のない範囲で、楽しみながら続けられる運動を見つけましょう。日常生活の中で、階段を使う、一駅分歩くなど、体を動かす機会を増やすことも有効です。

脳を活性化させる習慣

脳に適度な刺激を与えることは、認知機能の維持に役立ちます。

  • 知的な活動: 読書、文章を書く、計算、将棋や囲碁、パズルゲームなど、頭を使う活動は脳の機能を活性化させます。新しいことを学習する(語学、楽器など)のも脳に良い刺激を与えます。
  • コミュニケーションと社会参加: 人との交流は、脳の様々な領域を使い、認知機能の維持に役立ちます。孤立せず、積極的に外出したり、趣味のサークルやボランティア活動に参加したりしましょう。
  • 新しいことへの挑戦: いつも同じことばかりするのではなく、新しい場所へ行ったり、新しい趣味を始めたりするなど、普段と違う体験をすることも脳に良い刺激となります。

生活習慣病の適切な管理

高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を適切に管理することは、脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症の予防にもつながります。

  • 定期的な健康診断: 自分の血圧、血糖値、コレステロール値などを把握するために、定期的に健康診断を受けましょう。
  • 医師の指示に従う: 生活習慣病と診断された場合は、医師の指示に従い、食事療法や運動療法、必要であれば薬物療法を継続することが非常に重要です。自己判断で治療をやめたり、薬の服用を中断したりしないようにしましょう。
  • 禁煙・節酒: 喫煙はすぐにやめましょう。飲酒は適量に留めるか、控えるようにしましょう。

これらの予防策は、単独でなく組み合わせて行うことで、より効果が期待できます。健康的な生活習慣は、認知症だけでなく、心血管疾患やがんなど、他の様々な病気の予防にもつながります。

認知症の原因に関するよくある質問

認知症の原因や予防について、よくある質問にお答えします。

認知症になる一番の原因は何ですか?

認知症になる原因の中で最も多いのは、アルツハイマー型認知症です。認知症全体の約6割を占めると言われています。
アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβやタウタンパク質といった異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が破壊されることで起こります。

ただし、これはあくまで「一番多い原因」であり、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、他の様々な原因でも認知症は発症します。また、複数の原因が組み合わさって認知症になることもあります(混合型認知症)。認知症の症状が現れた場合は、原因を特定するために専門医の診察を受けることが大切です。

認知症になりやすい習慣はありますか?

はい、認知症になりやすいとされる生活習慣や病気は複数あります。これらは「リスク因子」と呼ばれます。主なリスク因子には以下のようなものがあります。

  • 不健康な食生活: 高脂肪、高糖分、高塩分の食事
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 過度な飲酒
  • 睡眠不足や睡眠障害
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病
  • 社会的な孤立
  • 頭部外傷の既往

これらの習慣を改善し、リスク因子を減らすことが認知症予防につながります。

認知症にならないために具体的にできることは?

認知症を完全に予防することは難しいかもしれませんが、発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりするために、今日からできる具体的なことがあります。

  1. バランスの取れた食事: 野菜、果物、魚、全粒穀物を中心とした健康的な食事を心がけ、脂っこいものや甘いものは控えめにします。
  2. 適度な運動: ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、週に数回、体を動かす習慣をつけます。
  3. 脳を積極的に使う: 読書、計算、ゲーム、新しい学習など、知的な活動を継続します。
  4. 人との交流を大切にする: 家族や友人とのコミュニケーションを増やし、社会的な活動に参加します。
  5. 生活習慣病の管理: 高血圧、糖尿病、脂質異常症などがある場合は、医師の指示に従い、しっかりと治療を行います。
  6. 禁煙・節酒: タバコはすぐにやめましょう。お酒は適量に留めます。
  7. 良質な睡眠をとる: 十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めるように努めます。
  8. ストレスをため込まない: 自分に合った方法でストレスを解消します。

これらの健康的な習慣を複合的に実践することが、認知症予防には効果的であると考えられています。

まとめ:認知症の原因理解と向き合い方

認知症の原因は一つではなく、アルツハイマー型認知症をはじめ、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、様々な病気が関与しています。原因によって症状の現れ方や進行が異なるため、適切な診断を受けて原因を特定することが、その後のケアや治療において非常に重要です。

年齢は最大の認知症の原因でありリスク因子ですが、それ以外にも、不健康な生活習慣や高血圧、糖尿病といった生活習慣病などが認知症のリスクを高めることが分かっています。これらのリスク因子を減らすために、食生活の改善、適度な運動、脳の活性化、生活習慣病の適切な管理といった予防策を実践することは、認知症の発症を遅らせたり、リスクを下げたりすることにつながります。

もし、ご自身やご家族に「もの忘れが多くなった」「以前と比べて言動が変わった」など、認知症かもしれないと感じる症状が現れた場合は、「年のせいだから」と放置せず、早めに医療機関(かかりつけ医、神経内科、精神科、脳神経外科など)に相談することが大切です。早期に原因を診断することで、治療が可能な認知症を見つけられたり、病気の進行を遅らせるための対策を始められたりする可能性があります。

認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、原因やリスク因子、予防策について正しく理解し、健康的な生活を心がけることで、病気と向き合い、より良い将来につなげることが可能です。希望を持って、今日からできることに取り組んでいきましょう。

免責事項: 本記事で提供する情報は、認知症の原因に関する一般的な知識を提供するためのものです。個々の症状や診断については、必ず専門の医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。本記事の情報のみに基づいて自己診断や治療を行うことはお控えください。

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