てんかんは、脳の神経細胞の電気的な活動が一時的に乱れることによって、てんかん発作が繰り返し起こる病気です。てんかん発作は、意識を失ったり、全身がけいれんしたり、体の特定の部分が勝手に動いたり、感覚が変わったりと、非常に多様な症状として現れます。

なぜ脳の電気的な活動が乱れるのか、その背景には様々な要因が考えられます。てんかんの原因を深く理解することは、適切な診断を受け、その人に合った最適な治療法を見つける上で非常に重要です。原因が特定できれば、その原因に対する治療を同時に行うことで、発作の抑制だけでなく、病状全体の改善につながる可能性もあります。また、原因を知ることで、将来の見通し（予後）や、遺伝の可能性についても理解が深まります。

この記事では、てんかんが起きる様々な原因について、医学的な視点から分かりやすく解説します。原因を特定できる場合とできない場合の違い、年齢によって異なる原因の傾向、そして発作を誘発する様々な要因についても詳しく見ていきましょう。てんかんの原因について正しい知識を身につけることは、ご本人だけでなく、ご家族や周囲の方々にとっても、てんかんと向き合い、より良い生活を送るための第一歩となるでしょう。

てんかんの原因

てんかんが起きる主な理由とは

てんかん発作は、脳内の神経細胞が過剰かつ同期的に発火することによって引き起こされます。例えるなら、脳内でショートサーキットが起きているような状態です。通常、脳の電気信号は秩序だって伝わっていますが、何らかの原因によってこのバランスが崩れると、異常な電気活動が発生し、てんかん発作につながるのです。

てんかんの原因は多岐にわたり、そのメカニズムも完全に解明されているわけではありません。しかし、現在の医学では、てんかんの原因を大きく二つに分類して考えるのが一般的です。一つは「症候性てんかん」と呼ばれ、脳に何らかの具体的な病変や異常が見つかる場合です。もう一つは「特発性てんかん」と呼ばれ、現在の検査では明確な原因となる病変や異常が見つからない場合です。この分類は、診断や治療方針を決定する上で重要な手がかりとなります。

てんかんの原因を特定できる症候性てんかん

症候性てんかんは、てんかんの原因が脳の構造的な問題、遺伝子の異常、あるいは感染症、免疫系の異常、代謝系の異常など、何らかの特定の病気や状態に起因していることが明らかであるてんかんです。これらの原因は、脳の神経細胞のネットワークや機能に影響を与え、てんかん発作を起こしやすくします。

構造的異常によるてんかんの原因

脳の構造的な異常は、てんかんの原因として非常に重要です。これは、脳の一部分や全体の形や組織に、生まれつき、あるいは後天的に変化が生じている状態を指します。これらの異常が存在すると、その部位の神経細胞が異常な電気活動を起こしやすくなったり、正常な脳機能との連携がうまくいかなくなったりして、てんかん発作が発生します。

具体的な構造的異常としては、以下のようなものが挙げられます。

• 脳腫瘍: 脳にできる腫瘍自体が神経細胞を刺激したり、周囲の脳組織を圧迫・破壊したりすることで、異常な電気活動を引き起こすことがあります。腫瘍の種類や発生部位、成長速度によっててんかん発作のタイプや頻度は異なります。
• 脳卒中の後遺症: 脳梗塞や脳出血によって脳組織が損傷を受けると、その傷跡（瘢痕）が神経細胞の異常な興奮の原因となることがあります。脳卒中発症後、しばらく経ってからてんかんが発症することも少なくありません。
• 頭部外傷の後遺症: 重度の頭部外傷を受けた場合、脳挫傷や脳内出血などによって脳組織が損傷し、それが後にてんかんの原因となることがあります。特に、外傷の程度が重いほど、また脳を覆う硬膜を損傷するような開放性外傷の場合にリスクが高まると言われています。
• 脳の発達異常: 妊娠中や出生後の早期に脳が正常に発達しなかった結果生じる異常も、てんかんの重要な原因です。例えば、大脳皮質形成異常（脳の表面のシワや層構造の異常）、焦点皮質異形成（脳の一部分の細胞の配列や性質の異常）などがあり、これらは難治性てんかんの原因となることもあります。
• 血管奇形: 脳の血管が異常な構造をしている場合（例: 動静脈奇形、海綿状血管腫など）、出血や血流の異常によって周囲の脳組織が影響を受け、てんかん発作の原因となることがあります。
• 周産期脳障害: 出産前、出産中、出産後に赤ちゃんが脳に損傷を受けた場合（例: 低酸素性虚血性脳症、脳室内出血など）、それが原因で乳幼児期や将来にてんかんを発症することがあります。

これらの構造的異常は、MRIやCTといった脳画像検査によって特定されることが多いです。原因となる病変が見つかった場合、可能であれば手術によって病変を取り除くことがてんかん発作の抑制につながることもあります。

遺伝子異常によるてんかんの原因

近年、遺伝子解析技術の進歩により、てんかんの原因として特定の遺伝子異常が関与しているケースが数多く見つかっています。遺伝子異常によるてんかんは、生まれつき持っている遺伝子の変化が、脳の神経細胞の機能やネットワークの形成に影響を与え、てんかん発作を引き起こしやすくする場合を指します。

遺伝子異常が原因となるてんかんには様々なタイプがあり、その全てが親から子に遺伝するわけではありません。多くの場合、遺伝子の変化は本人に初めて生じたもの（新生突然変異）であることもあります。また、同じ遺伝子に変異があっても、てんかんのタイプや重症度は人によって異なるなど、複雑な側面もあります。

具体的な遺伝子異常によるてんかんの例としては、以下のようなものが知られています。

• 遺伝性チャンネル病: 神経細胞の興奮性を調節するイオンチャネル（ナトリウムチャネル、カリウムチャネルなど）の機能に関わる遺伝子の変異が原因で起こるてんかんです。これらのチャネルの異常は、神経細胞の電気活動を不安定にし、発作を引き起こしやすくします。ドラベ症候群（SCN1A遺伝子変異が関与することが多い）などが代表的です。
• 遺伝性症候群に伴うてんかん: 特定の遺伝子異常が原因で全身に様々な症状が現れる症候群の一部としててんかんが見られる場合があります。例えば、レット症候群、結節性硬化症、神経線維腫症などがあります。これらの症候群では、脳の発達異常や腫瘍、代謝異常などが原因となり、てんかんを合併しやすいことが知られています。
• その他の遺伝子異常: イオンチャネル以外の様々な遺伝子（神経細胞間の情報伝達に関わる分子、脳の発達に関わる分子などの遺伝子）の変異もてんかんの原因となることが報告されています。

遺伝子異常がてんかんの原因として疑われる場合、血液や唾液などを使った遺伝子検査が行われることがあります。原因遺伝子が特定されると、病気のメカニズムの理解が進み、より効果的な治療法（例えば、特定のチャネルを標的とする薬剤）の開発や選択につながる可能性が出てきています。しかし、遺伝子異常がてんかんの唯一の原因であるとは限らず、他の要因との複合的な関与も考えられています。

感染症によるてんかんの原因

脳や脳を覆う髄膜に感染が起きると、炎症が生じ、神経細胞がダメージを受けたり、脳の機能が障害されたりして、てんかんの原因となることがあります。感染症によるてんかんは、感染そのものが原因となる場合と、感染が治癒した後の後遺症としててんかんが発症する場合があります。

てんかんの原因となりうる主な感染症は以下の通りです。

• 脳炎: ウイルス（ヘルペスウイルス、日本脳炎ウイルスなど）、細菌、真菌などが脳に感染して炎症を引き起こす病気です。脳炎では、脳の実質が直接的に障害されるため、てんかん発作が起こりやすく、重症化すると難治性てんかんの原因となることもあります。
• 髄膜炎: 細菌やウイルスが脳を覆う髄膜に感染して炎症を起こす病気です。特に細菌性髄膜炎は重症化しやすく、脳への影響からてんかん発作を引き起こしたり、後遺症としててんかんが残ったりするリスクがあります。
• 脳膿瘍: 細菌などが脳内に塊を作って炎症を起こす状態です。周囲の脳組織を圧迫・破壊し、てんかんの原因となります。
• 神経梅毒、神経ライム病、神経嚢虫症など: これらは比較的稀ですが、特定の病原体による感染が脳に影響を及ぼし、てんかんの原因となることがあります。特に発展途上国では、寄生虫感染（神経嚢虫症など）がてんかんの主要な原因の一つとなっています。

感染症が原因のてんかんでは、感染症そのものの治療と並行して、てんかん発作に対する治療が行われます。感染による脳の損傷がてんかんの原因となっている場合、感染が治癒した後もてんかん発作が続くことがあり、長期的なてんかん治療が必要となります。感染症の予防（ワクチン接種など）は、てんかんの予防という観点からも重要です。

免疫が関わるてんかんの原因

近年注目されているてんかんの原因の一つに、免疫系の異常が関与するタイプがあります。これは、本来は体を病原体などから守る免疫システムが、誤って自身の脳組織を攻撃してしまうことによって引き起こされるてんかんです。このような状態は自己免疫性脳炎と呼ばれ、様々な種類の自己抗体が脳の特定の部位や神経細胞の機能に関わる分子を攻撃することで生じます。

自己免疫性脳炎によるてんかんの例としては、以下のようなものが挙げられます。

• 抗NMDA受容体脳炎: NMDA受容体という脳の神経細胞にある分子に対する自己抗体が原因で起こる自己免疫性脳炎です。精神症状、不随意運動、自律神経症状とともに、てんかん発作が頻繁に起こることが特徴です。
• 抗VGKC複合体抗体関連脳炎（辺縁系脳炎など）: 電圧依存性カリウムチャネル（VGKC）複合体などに対する自己抗体が原因で起こる脳炎です。記憶障害、精神症状に加え、しばしばてんかん発作（特に辺縁系由来の焦点発作）が見られます。
• その他の自己抗体関連脳炎: 抗AMPA受容体抗体、抗GABA受容体抗体など、様々な自己抗体がてんかんの原因となることが報告されています。

免疫が関わるてんかんは、脳画像検査で異常が見られる場合もありますが、血液や脳脊髄液の検査で自己抗体を検出することによって診断が確定されることが多いです。このタイプのてんかんは、免疫抑制療法（ステロイド、免疫グロブリン療法、血漿交換療法など）がてんかん発作の抑制や病状の改善に有効である点が特徴です。適切な診断と早期の免疫療法が、予後を大きく左右する可能性があります。

代謝異常によるてんかんの原因

体の代謝機能に生まれつき異常がある病気（先天性代謝異常症）の一部では、脳の機能が障害され、てんかんの原因となることがあります。代謝異常症では、特定の酵素の欠損などにより、体内で必要な物質が作られなかったり、有害な物質が蓄積したりします。これらの異常が脳の神経細胞に影響を与え、てんかん発作を引き起こします。

代謝異常によるてんかんは比較的稀ですが、重症なてんかんの原因となることもあります。特に乳幼児期に発症するてんかんの中に、代謝異常が隠れていることがあります。

てんかんの原因となりうる主な代謝異常症の例としては、以下のようなものがあります。

• ミトコンドリア病: 細胞のエネルギー産生を担うミトコンドリアの機能に異常がある病気です。脳はエネルギーを多く消費するため、ミトコンドリア機能の障害は脳機能に大きな影響を与え、てんかん発作や様々な神経症状を引き起こします。
• ピリドキシン依存性てんかん: ビタミンB6（ピリドキシン）の代謝に関わる酵素の異常により起こる非常に稀なてんかんです。通常の抗てんかん薬が効きにくいですが、ビタミンB6を大量に投与することで劇的に発作が抑制されることがあります。
• グルコーストランスポーター1欠損症（GLUT1欠損症）: 脳にブドウ糖を運ぶタンパク質（GLUT1）の機能に異常がある病気です。脳がエネルギー源であるブドウ糖を十分に利用できず、てんかん発作や発達遅滞、運動障害などを引き起こします。ケトン食療法が有効な場合があります。
• 尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症など: アミノ酸や有機酸の代謝に関わる酵素の異常によって、体内に有害な物質が蓄積し、脳に影響を与えててんかんの原因となることがあります。

代謝異常が原因のてんかんは、血液検査、尿検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査などによって診断されます。診断がつけば、原因となっている代謝経路に応じた特殊な食事療法やサプリメントの投与、あるいは特定の薬物療法などが行われることがあります。早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。

原因が特定できない特発性てんかん

症候性てんかんとは異なり、特発性てんかんは、現在の医学的な検査（脳画像検査、代謝検査など）ではてんかん発作の原因となる脳の構造的な異常や特定の疾患が見つからないてんかんです。以前は「原因不明てんかん」とも呼ばれていましたが、「特発性」という言葉には、遺伝的な要因が強く関与している可能性が高いという意味合いが含まれています。

特発性てんかんは、脳自体に明らかな病変がないにも関わらず、なぜてんかん発作が起きるのでしょうか。これは、神経細胞の機能やネットワークの「素質」として、生まれつき発作を起こしやすい性質を持っているためと考えられています。この「素質」には、前述した遺伝子異常が関わっている可能性が指摘されていますが、現在の技術では全ての遺伝子異常を特定できるわけではありませんし、複数の遺伝子や環境要因が複雑に絡み合っている可能性も考えられています。

特発性てんかんは、特定の年齢で発症しやすく、てんかん波のパターンや臨床症状に特徴的なパターンを示すことが多いです。これらの特徴に基づいて、さらに細かく「てんかん症候群」として分類されることがあります。

• 小児欠神てんかん: 小児期に発症する特発性てんかんで、数十秒間の意識消失発作（欠神発作）が特徴です。脳波検査で特徴的な棘徐波複合が見られます。
• ローランドてんかん（中心・側頭部に棘波を持つ小児期てんかん）: 学童期に発症する特発性てんかんで、夜間の顔や手の片側のぴくつき、感覚異常などが特徴です。自然に軽快することが多いです。
• 若年ミオクロニーてんかん: 思春期に発症する特発性てんかんで、朝方に両手や肩などがぴくつくミオクロニー発作が特徴です。光刺激や睡眠不足で発作が誘発されやすい性質があります。

特発性てんかんの場合、原因となる病変がないため、外科治療の対象とはならないことがほとんどです。治療の中心は抗てんかん薬による発作の抑制となります。特定のてんかん症候群に分類できれば、その症候群に対して有効性が高いとされる薬剤を選択することが可能になります。また、遺伝的な素因が関与している可能性が高いため、遺伝カウンセリングが有用な場合もあります。特発性てんかんの多くは、適切な治療によって発作をコントロールし、通常の生活を送ることが可能です。

年齢によるてんかんの原因の違い

てんかんは、乳幼児から高齢者まで、どの年齢でも発症する可能性があります。しかし、発症する年齢層によって、その原因の傾向が異なることが知られています。これは、年齢ごとに脳の発達段階が異なったり、罹患しやすい病気が違ったりするためです。

小児てんかんに多い原因

小児期、特に乳幼児期にてんかんが発症した場合、以下のような原因が多い傾向にあります。

• 周産期脳障害: 出産前後の脳へのダメージ（低酸素、外傷、出血など）は、乳幼児期てんかんの重要な原因です。脳の発達が未熟な時期に受けた損傷が、その後のてんかん発作につながることがあります。
• 先天性脳奇形: 妊娠中に脳の形成がうまくいかずに生じる先天的な構造異常（皮質形成異常、脳梁欠損など）も、出生後早期からてんかん発作を引き起こす原因となります。
• 遺伝子異常: 前述した遺伝性てんかん症候群や、特定の遺伝子変異によるてんかんは、小児期に発症することが多いです。特に難治性てんかんの中に遺伝子異常が見つかるケースが増えています。
• 中枢神経感染症: 脳炎や髄膜炎といった感染症は、脳に炎症や損傷を引き起こし、急性期の発作や後遺症としてのてんかんの原因となります。
• 代謝異常症: 稀ではありますが、先天性の代謝異常が原因で、乳幼児期に重症なてんかんとして現れることがあります。
• 熱性けいれんの既往: 高熱に伴ってけいれんを起こす熱性けいれん自体はてんかんではありませんが、特に複雑型熱性けいれん（長時間続く、左右どちらかに偏るなど）を経験したお子さんの一部は、将来にてんかんを発症するリスクがわずかに高まると言われています。

小児てんかんの原因を診断するためには、出生歴、発達歴、家族歴などの詳細な問診に加え、脳波検査、MRIなどの画像検査、必要に応じて遺伝子検査や代謝検査が行われます。原因に応じた適切な治療と、発達を支援するための取り組みが重要となります。

成人てんかんに多い原因（てんかん 原因 大人 ストレス）

成人期に初めててんかんが発症した場合、小児期とは異なる原因が多い傾向にあります。「てんかん 原因 大人 ストレス」という検索も多いですが、ストレスはてんかん発作を誘発する要因ではありますが、直接の原因（発症のきっかけとなる脳の異常そのもの）となることは稀です。成人のてんかんの原因としては、以下のようなものが一般的です。

• 脳卒中: 脳梗塞や脳出血は、成人のてんかん、特に高齢者のてんかんの最も一般的な原因の一つです。脳卒中による脳組織の損傷が、てんかん原性（発作を起こしやすい性質）を持つ部位を作り出します。
• 頭部外傷: 成人期に受けた重度の頭部外傷も、後にてんかんの原因となることがあります。交通事故や転落などによる外傷歴は重要な問診項目です。
• 脳腫瘍: 成人期に発生する脳腫瘍が、周囲の脳組織を刺激したり圧迫したりすることでてんかん発作を引き起こすことがあります。てんかん発作が脳腫瘍発見の最初の症状となることも少なくありません。
• 中枢神経感染症の後遺症: 小児期と同様に、成人期に脳炎や髄膜炎にかかり、その後にてんかんが残ることがあります。
• アルコール関連: 長期間にわたる大量の飲酒は、脳にダメージを与えててんかんの原因となることがあります。また、アルコール依存症の方が断酒する際に生じる離脱症状としててんかん発作が起こることもあります。
• 神経変性疾患: アルツハイマー病やその他の認知症など、加齢に伴う神経変性疾患も、脳の機能が徐々に低下する過程でてんかん発作を合併することがあります。特に高齢者のてんかんの原因として増えています。

成人のてんかんの原因を調べる際には、詳細な病歴の聴取（特に外傷、脳卒中、感染症、飲酒歴など）に加え、脳波検査、そして原因となる病変がないかを確認するためのMRIやCTといった画像検査が重要です。ストレスそのものがてんかんの原因となるわけではありませんが、日々の生活習慣や体調の変化（ストレス、睡眠不足など）が発作を誘発する可能性については、次の項目で詳しく解説します。

てんかん発作の誘発原因（てんかん発作 誘発原因）

てんかんの原因（脳の発作を起こしやすい素地や病変）がある人が、発作を起こしやすい特定の状況や刺激にさらされると、実際に発作が引き起こされることがあります。これらを「てんかん発作の誘発原因」あるいは「誘発因子」と呼びます。「てんかん発作 誘発原因」を知り、これらの要因を避けることは、発作の頻度を減らし、てんかんをうまく管理していく上で非常に重要です。誘発因子は、てんかんの種類や個人によって異なります。

ストレスは直接の原因ではなく誘発要因（てんかん 原因 ストレス）

「てんかん 原因 ストレス」と検索される方が多いように、ストレスとてんかん発作の間には関連があると感じている方は少なくありません。しかし、現在の医学的な理解では、ストレスそのものが脳に構造的な変化を起こさせたり、遺伝子異常を引き起こしたりして、てんかん「発症」の直接的な原因となることは稀であると考えられています。

むしろ、ストレスは、てんかんを持つ人の脳の興奮性を高め、発作が起こりやすい状態を作り出す「誘発要因」として作用すると考えられています。強い精神的なストレスや、慢性的なストレスにさらされることは、脳内の神経伝達物質のバランスを崩したり、睡眠パターンを乱したりすることがあります。これらの変化が、発作を起こしやすい素地のある脳では、発作の引き金となる可能性があるのです。

例えば、仕事や学業での大きなプレッシャー、人間関係の悩み、喪失体験などが強いストレスとなり、その後に発作が起こるという経験をする方はいます。しかし、これはストレスがてんかんを「引き起こした」のではなく、ストレスが既存のてんかんの発作を「誘発した」と理解するのが適切です。

したがって、てんかんを持つ方にとって、ストレスを完全に避けることは難しいかもしれませんが、ストレスを適切に管理するスキルを身につけることや、リラクゼーション法を取り入れることは、発作のコントロールに役立つ可能性があります。しかし、ストレス管理だけでてんかんの治療ができるわけではないため、医師の指示に従い、適切に抗てんかん薬を服用することが最も重要です。

睡眠不足による発作誘発

睡眠不足は、てんかん発作の最も一般的な誘発原因の一つとして広く知られています。十分な睡眠をとらないと、脳の神経細胞の活動パターンが乱れ、興奮性が高まることが分かっています。この状態は、発作を起こしやすい素地のある脳では、発作の閾値（発作が起こるために必要な刺激のレベル）を下げることになり、普段よりも発作が起こりやすくなります。

特に、寝不足の後に起きる覚醒時や、睡眠から覚醒への移行期に発作が起こりやすいタイプのてんかんもあります。例えば、若年ミオクロニーてんかんや全般てんかんの一部では、睡眠不足が顕著な誘発因子となります。

規則正しい睡眠習慣を確立することは、てんかんを持つ方にとって非常に重要です。夜更かしを避け、毎日同じ時間に寝て起きるように心がけることが、発作の予防につながります。しかし、どうしても睡眠時間が短くなってしまう場合もあるかもしれません。そのような場合は、昼間に短時間の仮眠をとるなど、できる範囲で睡眠を補う工夫も有効な場合があります。主治医と相談しながら、ご自身のてんかんタイプに合った睡眠習慣についてアドバイスを受けることが大切です。

光刺激による発作誘発

特定の視覚刺激、特に点滅する光や規則的な幾何学模様などによっててんかん発作が誘発されるタイプのてんかんがあり、「光過敏性てんかん」と呼ばれます。全てのてんかん患者さんに当てはまるわけではなく、てんかん患者さん全体の数パーセントに見られると言われています。特に小児や思春期に多く見られます。

光刺激による発作誘発の例としては、以下のような状況が挙げられます。

• テレビやビデオゲーム: 画面の点滅、高速な場面転換、特定の映像パターンなどが発作の引き金となることがあります。
• ディスコやクラブのストロボライト: 強い点滅光は発作を誘発しやすい刺激です。
• 自然光: 木漏れ日や、車の窓から差し込む日光が規則的に点滅する状況（並木道やトンネルなど）でも発作が誘発されることがあります。
• 特定の模様: チェック柄やストライプなどの規則的な模様を見ることも、稀に発作の誘発につながることがあります。

光過敏性てんかんを持つ方は、これらの刺激を避けることが発作予防に不可欠です。テレビを見る際は画面から離れる、部屋を明るくする、ゲームは休憩を挟みながら行うなどの対策が有効です。また、点滅刺激を軽減する特殊な眼鏡（ブルーライトカットや偏光レンズなど）が有効な場合もあります。ご自身やご家族が光過敏性てんかんの可能性がある場合は、専門医に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

飲酒や喫煙による発作誘発

アルコールとニコチンは、どちらも脳の神経細胞の活動に影響を与える物質であり、てんかん発作の誘発原因となる可能性があります。

• 飲酒: 少量のアルコールであれば通常問題にならないことが多いですが、大量の飲酒はてんかん発作のリスクを高めることが知られています。特に、飲酒している最中よりも、アルコールが抜けていく過程（離脱期）に発作が起こりやすい傾向があります。これは、アルコールが脳の興奮を抑える方向に働いた後、急にアルコールがなくなると、その反動で脳が過剰に興奮しやすくなるためと考えられています。また、慢性的な大量飲酒は脳自体にダメージを与え、てんかんの原因となる可能性もあります。てんかんを持つ方は、飲酒量について主治医と相談し、可能であれば控えるか、適量にとどめることが推奨されます。
• 喫煙: タバコに含まれるニコチンは脳を興奮させる作用があり、てんかん発作を誘発する可能性があると言われています。また、喫煙は全身の血管に悪影響を及ぼし、脳卒中などのてんかんの原因となりうる病気のリスクも高めます。てんかんを持つ方にとって、禁煙はてんかん管理だけでなく、全身の健康のためにも非常に重要です。

薬物による発作誘発

てんかんの治療薬（抗てんかん薬）以外の様々な薬剤が、てんかん発作を誘発する可能性があります。これは、特定の薬剤が脳の神経細胞の興奮性を高めたり、てんかん発作の閾値を下げたりするためです。

てんかん患者さんが注意すべき発作を誘発する可能性のある薬剤としては、以下のようなものがあります。

• 抗うつ薬: 特定の抗うつ薬（例：ブプロピオンなど）は、発作閾値を下げる可能性が指摘されています。
• 抗精神病薬: 特に低力価の旧世代の抗精神病薬や、特定の非定型抗精神病薬は、発作を起こしやすくすることがあります。
• 一部の抗菌薬: ペニシリン系やフルオロキノロン系の一部の薬剤が、てんかん発作を誘発する可能性があります。
• 鎮痛薬: 非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の一部や、オピオイド系鎮痛薬（特にトラマドール）は、発作閾値を下げるリスクがあります。
• 気管支拡張薬: テオフィリンなどの薬剤が、脳の興奮性を高めることがあります。
• 局所麻酔薬: 高用量の場合や、誤って血管内に注入された場合に発作を起こす可能性があります。

これらの薬剤は、必ずしも全てのてんかん患者さんで発作を誘発するわけではありませんが、てんかんの既往がある方は、これらの薬剤を使用する際に注意が必要です。他の病気で医療機関を受診する際には、必ずてんかんがあること、現在服用している抗てんかん薬の種類などを医師や薬剤師に伝えるようにしましょう。これにより、発作を誘発する可能性のある薬剤を避けるか、必要に応じて抗てんかん薬の量を調整するなどの対応が可能になります。また、違法薬物（コカイン、アンフェタミンなど）の使用は、脳に強い影響を与え、てんかん発作を非常に高率に誘発するため、絶対に避けるべきです。

発熱や体調不良による発作誘発

てんかん患者さんでは、発熱や風邪、その他の体調不良が発作を誘発することがあります。体調が悪い時は、体の恒常性が保たれにくくなり、電解質バランスの変化や脳の代謝状態の変化などが起こりやすくなります。これらの変化が、発作を起こしやすい脳では、発作の引き金となることがあるのです。

特に小児期には、高熱がてんかん発作を誘発しやすいことが知られています（熱性けいれんとは異なりますが、てんかんを持つお子さんでも熱によって発作が誘発されることがあります）。感染症による体調不良は、発熱だけでなく、全身の炎症反応や脱水なども伴うことがあり、これら全てが脳の興奮性に影響を与える可能性があります。

体調不良の際は、無理をせず休息を十分にとることが大切です。また、発熱がある場合は、医師の指示に従い、解熱剤を適切に使用することも発作予防につながる可能性があります。体調が悪い時に発作が増える傾向がある場合は、主治医に相談し、体調不良時の対応についてあらかじめ計画を立てておくことが望ましいでしょう。

てんかん患者さんが避けるべきこと（てんかん してはいけないこと）

これまでに解説した誘発原因を踏まえ、てんかん患者さんが発作の頻度を減らすために、日常生活で意識して避けるべきことや注意すべきことを以下にまとめます。「てんかん してはいけないこと」として厳密に全てが禁止されるわけではありませんが、可能な範囲で意識することが大切です。

• 睡眠不足: 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。夜更かしや徹夜は避けることが重要です。
• 過度のストレス: ストレスをゼロにすることは不可能ですが、自分に合ったストレス解消法を見つけたり、一人で抱え込まずに周囲に相談したりして、ストレスを適切に管理しましょう。
• 大量の飲酒や喫煙: アルコールは離脱時に発作を誘発しやすく、喫煙も発作閾値を下げる可能性があります。飲酒量については医師と相談し、禁煙を強くお勧めします。
• 特定の光刺激: 光過敏性てんかんの方は、点滅する光や特定の模様を避ける必要があります。テレビを見る際は画面から離れる、暗い部屋でテレビやゲームを長時間行わないなどの注意が必要です。
• 医師に無断での服薬中止や変更: 抗てんかん薬を自己判断で中止したり、量を減らしたりすると、発作が再発したり、重積状態（発作が止まらなくなる危険な状態）になったりするリスクが非常に高まります。必ず医師の指示に従って服用してください。
• 危険な状況: 高所での作業、泳ぐこと（監視なし）、火を扱う作業など、発作が起きた場合に重大な事故につながる可能性のある状況では、十分な注意が必要です。てんかんの種類や発作のコントロール状況によって、可能な活動範囲は異なりますので、主治医とよく相談しましょう。
• 特定の薬剤の無計画な使用: てんかん患者さんが、てんかん治療薬以外の薬を服用する際には、発作を誘発する可能性のある薬剤がないか、医師や薬剤師に確認することが非常に重要です。市販薬やサプリメントについても同様です。

これらの注意点を守ることは、てんかんと上手に付き合い、安全な生活を送る上で役立ちます。しかし、過度に制限しすぎると生活の質が低下してしまう可能性もあります。ご自身のてんかんの種類や発作の状況に合わせて、無理のない範囲で取り組むことが大切です。

てんかんになりやすい人とは（てんかんになりやすい人）

どのような人がてんかんを発症しやすいのでしょうか。「てんかんになりやすい人」には、いくつかの傾向やリスク因子があります。これらのリスク因子を持っているからといって必ずてんかんを発症するわけではありませんが、他の人よりも発症する可能性が高いと考えられます。

特定の原因を持つ人

てんかんの原因の項目で詳しく解説したように、以下のような特定の病気や状態を持つ人は、てんかんを発症しやすいことが知られています。

• 脳の構造的異常がある人: 先天性の脳奇形、過去の重度の頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍などによって脳に損傷がある、あるいは形成異常がある人。
• 特定の遺伝子異常を持つ人: てんかんに関連する特定の遺伝子の変異を持つ人。ただし、同じ遺伝子異常があっても発症しない人もいるなど、発症には他の要因も関与します。
• 過去に重症な中枢神経感染症にかかった人: 脳炎や髄膜炎の後遺症として、てんかんが残ることがあります。
• 特定の代謝異常症を持つ人: 一部の先天性代謝異常症は、高率にてんかんを合併します。
• アルコール依存症の既往がある人: 慢性的なアルコール摂取や離脱症状は、てんかん発症のリスクを高めます。

これらの原因が明らかである場合、症候性てんかんとして診断されます。

発症しやすい年齢層（小児・高齢者）

てんかんは、特定の年齢層で発症率が高い傾向があります。

• 小児（特に乳幼児期）: 脳が急速に発達している時期であり、周産期脳障害、先天性脳奇形、遺伝子異常、中枢神経感染症などが原因となりやすく、てんかんの発症率が高い時期です。
• 高齢者: 加齢に伴う脳の変化に加え、脳卒中、脳腫瘍、神経変性疾患（アルツハイマー病など）といったてんかんの原因となりうる病気にかかりやすくなるため、てんかんの発症率が高まります。

思春期や成人期にもてんかんは発症しますが、乳幼児期と高齢期に比べると発症率は相対的に低い傾向があります。ただし、脳外傷や脳卒中といった原因は成人期にも重要です。

てんかんに見られる主な症状（てんかん 症状）

てんかんの原因を考える上で、「てんかん 症状」について理解しておくことも重要です。てんかん発作の症状は、脳のどの部分で異常な電気活動が始まるか、そしてどこまで広がるかによって非常に多様です。主な症状としては、以下のようなものがあります。

• 全身けいれん（強直間代発作）: 全身が硬直し、その後手足がガクガクと規則的にけいれんする発作です。意識を失い、舌を噛んだり、失禁したりすることがあります。
• 意識消失: 体を動かさずに、ぼーっとして一点を見つめたり、呼びかけに反応がなくなったりする発作です。数十秒で終わることが多いです（欠神発作など）。
• 体の部分的な動き（焦点運動発作）: 手や足、顔の一部などが意図せずピクピクと動いたり、硬直したりする発作です。意識がある場合とない場合があります。
• 感覚の変化（焦点感覚発作）: 体の一部にしびれや痛みを感じたり、実際にはない匂いや音、光が見えたりする発作です。
• 精神症状や自律神経症状（焦点非運動発作など）: 恐怖や不安を感じたり、胃の不快感、心臓がドキドキしたり、鳥肌が立ったりするなど、様々な症状が現れることがあります。
• 自動症: 意識がぼんやりした状態で、口をもぐもぐさせる、服をまさぐる、意味のない言葉を発するなど、目的のない動作を繰り返す発作です。

これらの発作症状は、脳の異常な電気活動が起きている部位を推測する手がかりとなります。例えば、手足のけいれんは運動野、感覚の変化は感覚野、意識消失や自動症は側頭葉など、特定の脳部位の異常が示唆されることがあります。医師は、どのような症状の発作が、いつ、どのくらいの頻度で起きるのかを詳細に問診し、てんかんの原因やタイプを特定する上で重要な情報とします。ご自身の発作症状を正確に医師に伝えることが、適切な診断につながります。

てんかん患者さんの特性について（てんかん持ちの人の特徴）

「てんかん持ちの人の特徴」として、てんかんであること自体が直接的に性格や知能、あるいは外見などに特徴的な影響を与えるわけではありません。てんかんを持つ人々の特性は、他の人々と多様であるのと同様に非常に多様です。

しかし、以下のような点については、てんかんの原因や発作の種類、治療状況などによって影響が見られる場合があります。

• 原因疾患による特性: てんかんの原因が脳の発達障害や遺伝性症候群である場合、それらの原因疾患に伴う発達の遅れ、知的障害、行動上の問題などの特性が見られることがあります。てんかん発作そのものによる特性ではなく、原因となった病気による特性です。
• 発作の影響: 頻繁な発作、特に意識を失う発作が繰り返される場合、学習や記憶に影響が出たり、集中力が低下したりすることがあります。また、発作が起きることへの不安や恐怖から、消極的になったり、抑うつ状態になったりすることもあります。
• 抗てんかん薬の影響: 抗てんかん薬の種類によっては、眠気、集中力の低下、気分の変化などの副作用が見られることがあります。これらの副作用は、てんかん患者さんの日中の活動性や精神状態に影響を与える可能性があります。
• 社会的な側面: てんかんに対する社会の誤解や偏見から、差別や孤立を感じることがあり、これが心理的な負担となることがあります。

重要なのは、てんかんを持つこと自体がその人の性格や能力を決定づけるものではないということです。てんかんの適切な治療とサポートによって、多くの人が社会生活を送り、それぞれの能力を発揮しています。てんかん患者さんの多様性を理解し、偏見を持たずに接することが大切です。

てんかんの原因特定のための診断

てんかんの診断は、まず発作が本当にてんかん発作であるかを確認することから始まります。そして、てんかんであると診断された場合、次に重要となるのがその原因を特定することです。てんかんの原因特定は、最も効果的な治療法を選択し、予後を予測するために不可欠なステップです。てんかんの原因特定のためには、様々な医学的な検査が組み合わせて行われます。

主な診断方法（問診、脳波検査、画像検査など）

てんかんの原因を特定するために行われる主な診断方法には、以下のようなものがあります。これらの検査は、専門医の判断に基づいて必要に応じて実施されます。

診断方法	内容	原因特定の観点からわかること
問診	発作の種類、頻度、持続時間、発作時の状況（誘発因子など）、発症年齢、既往歴（頭部外傷、脳卒中、感染症など）、家族歴、周産期歴、発達歴、服用中の薬など。家族や目撃者からの情報も非常に重要。	発作のタイプから異常な電気活動が起こっている脳の部位を推測します。既往歴や家族歴から、症候性てんかんや遺伝性てんかんの可能性を示唆する情報が得られます。誘発因子についても情報収集します。
脳波検査	頭皮に電極をつけ、脳の電気活動を記録する検査です。通常は安静時（覚醒時や睡眠時）に行いますが、必要に応じて賦活法（過呼吸、光刺激など）を加えて記録します。長時間ビデオ脳波モニタリングを行うこともあります。	てんかん患者さんの脳波には、発作時だけでなく、発作と発作の間にも「てんかん性放電」（異常な電気活動の波形）が見られることがあります。この放電が出ている部位やパターンから、てんかんの原因やタイプ（全般てんかんか焦点てんかんかなど）を推測する重要な手がかりとなります。
画像検査	MRI (磁気共鳴画像法): 脳の断層画像を詳細に映し出す検査です。小さな病変や、脳の発達異常なども捉えることができます。てんかんの画像検査として最も重要視されます。 CT (コンピュータ断層撮影法): MRIに比べて分解能は劣りますが、簡便に行え、出血や石灰化などを捉えやすい特徴があります。緊急時などに用いられることがあります。	脳腫瘍、脳卒中の後遺症、頭部外傷による損傷、脳の発達異常、血管奇形など、てんかんの原因となりうる脳の構造的な病変の有無や場所、大きさを特定します。特定の病変が見つかれば、症候性てんかんである可能性が高まります。
血液検査	全身の状態（貧血、炎症など）や、特定の病気（感染症、自己免疫疾患、代謝異常症など）の診断に役立つ項目を調べます。必要に応じて、自己抗体や代謝産物の測定、遺伝子検査が行われます。	免疫が関わるてんかん（自己免疫性脳炎）の原因となる自己抗体の有無を確認したり、代謝異常症の原因となる特定の物質の濃度を測定したりします。遺伝子検査では、特定のてんかん症候群や遺伝子異常を診断し、遺伝性てんかんの原因を特定します。
脳脊髄液検査	腰椎穿刺によって脳脊髄液を採取し、細胞数、タンパク質、糖、病原体、自己抗体などを調べます。	中枢神経感染症（脳炎、髄膜炎）や、免疫が関わるてんかん（自己免疫性脳炎）などの原因を特定する上で重要な情報が得られます。

これらの検査結果と、詳細な問診で得られた情報を総合的に評価することによって、てんかんの原因を特定、あるいは原因が特定できない特発性てんかんであると診断されます。

専門医への相談の重要性

てんかんは診断や原因特定が容易ではない病気であり、適切な治療を行うためには専門的な知識と経験が必要です。てんかんかな？と思われる症状がある場合や、てんかんと診断された場合は、必ずてんかんに詳しい専門医（脳神経内科医、小児神経科医など）の診察を受けることが非常に重要です。

専門医は、詳細な問診と適切な検査計画を立て、正確な診断を行います。てんかんの原因を特定するためには、多角的な視点からの評価が必要です。また、てんかんと間違えやすい他の病気（失神、心因性非てんかん性発作など）との鑑別診断も重要です。

自己判断でてんかんと決めつけたり、インターネット上の情報だけで原因を判断したりすることは危険です。誤った情報に基づいて対応すると、適切な治療が遅れたり、かえって病状を悪化させたりする可能性があります。専門医に相談することで、てんかんの原因について正確な情報に基づいた診断と、その人に合った最適な治療計画を立てることができます。てんかんの原因を理解することは、治療の成功と、より良い予後につながる第一歩です。

てんかんの原因を理解し適切な治療へ

てんかんの原因が何であるかを理解することは、てんかんの治療戦略を立てる上で非常に大きな意味を持ちます。てんかんは、単に発作を抑えるだけでなく、原因となっている病気があればそれに対する治療も同時に行うことが望ましい場合が多いからです。

例えば、てんかんの原因が脳腫瘍であれば、腫瘍の摘出手術がてんかん発作の抑制につながる可能性があります。構造的な病変が原因であれば、その病変部位を切除するてんかん外科手術が有効な場合があります。感染症が原因であれば、原因菌やウイルスに対する治療を行います。免疫が関わるてんかんであれば、免疫抑制療法が効果を示すことがあります。遺伝子異常が特定できれば、その遺伝子に関連したメカニズムに作用する新しい治療法が開発される可能性がありますし、特定の遺伝子異常に伴う代謝異常に対しては食事療法などが有効な場合もあります。

一方、現在の検査では明確な原因が見つからない特発性てんかんの場合でも、原因が遺伝的な素因にあると理解することで、将来的な見通しや遺伝カウンセリングの必要性について考えることができます。また、特定のてんかん症候群として分類できれば、その症候群に有効な抗てんかん薬を選択することが可能になります。

てんかんの原因が特定できても、できなくても、多くのてんかんは適切な抗てんかん薬による治療で発作を抑制することが可能です。てんかん治療の目標は、発作をなくすか、あるいは発作があっても日常生活に支障がないレベルまで減らし、安全で質の高い生活を送ることです。

てんかんの原因は複雑で多岐にわたりますが、医学の進歩により、原因の解明が進み、より tailored（その人に合わせた）な治療法が開発されつつあります。てんかんと診断されたら、一人で悩まず、てんかんの原因や治療法について専門医とよく話し合い、納得して治療に取り組むことが大切です。原因を理解し、主体的に治療に参加することで、てんかんを克服し、より良い未来を築いていくことが可能です。てんかんは治る可能性がある病気であり、たとえ発作が完全に止まらなくても、様々なサポートを活用しながら、前向きに生活を送ることができます。

【免責事項】
この記事で提供する情報は、てんかんの原因に関する一般的な知識の提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。てんかんの診断や治療については、必ず医師の診察を受け、専門医の指示に従ってください。個々の病状は多様であり、この記事の情報が全ての人に当てはまるわけではありません。