もしかして持続性気分障害?主な症状と見分け方【うつ病との違い】

長引く気分の落ち込みや、何となく晴れない気持ちに悩んでいませんか?それは、「持続性気分障害(気分変調症)」と呼ばれる心の不調かもしれません。これは、大うつ病のような激しい症状ではないものの、軽い抑うつ状態が何年も続くことが特徴です。本記事では、持続性気分障害の主な症状、うつ病との違い、診断基準、原因、治療法、そして日常生活への影響や周囲の人ができることについて、分かりやすく解説します。もし、「もしかして自分かも…」と感じたら、一人で抱え込まず、ぜひ専門家への相談を検討してみてください。

持続性気分障害(気分変調症)とは

持続性気分障害とは、以前は「気分変調症」や「慢性うつ病」と呼ばれていた、長期間にわたって軽度な抑うつ状態が続く気分障害の一つです。多くの場合、ゆううつな気分や興味・関心の低下が2年以上(子どもや青年では1年以上)にわたってほとんど毎日、1日の大半を占めます。

大うつ病と比べると、症状は比較的軽いことが多いですが、その状態が慢性的に続くため、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。本人は「自分の本来の性格だ」「昔からこういうものだ」と思い込んでしまい、病気であることに気づきにくいケースも少なくありません。しかし、これは適切な治療によって改善が見込める心の不調です。

持続性気分障害の主な症状

持続性気分障害の診断には、特定の症状が一定期間続くことが必要です。ここでは、DSM-5(診断と統計マニュアル第5版)で示されている主な症状について詳しく見ていきましょう。これらの症状は、抑うつ気分の期間中に見られるものです。

気分の落ち込み・抑うつ気分

持続性気分障害の最も中心的な症状は、気分の落ち込みや抑うつ気分です。これは単に一時的に気分が滅入るというレベルではなく、「ゆううつ」「悲しい」「暗い気持ち」といった感覚が、ほとんど毎日、1日の大半にわたって続く点が重要です。本人も「気分が晴れない」「楽しめない」と感じていることが多いですが、中にはこの状態が当たり前になりすぎて、自分では「普通」と感じている人もいます。ただし、客観的に見ると、表情が暗い、元気がない、といった様子が見られることがあります。この抑うつ気分が、診断基準となる2年以上の期間にわたり存在し続けることが特徴です。

食欲の変化・睡眠障害

食欲の変化や睡眠のトラブルも、持続性気分障害でよく見られる症状です。食欲の変化としては、食欲が異常に増える(過食)か、逆に食欲がなくなり量が減る(食欲不振)かのどちらかが現れることがあります。体重の増減を伴う場合もあります。睡眠障害としては、寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうといった「不眠」と、逆に寝すぎてしまう、日中も眠気が強いといった「過眠」のどちらかが現れることがあります。これらの症状は、体のリズムが乱れているサインであり、気分の落ち込みと深く関連しています。

疲労感・気力の低下

体がだるい、疲れやすい、何をやるにも億劫だと感じるなど、疲労感や気力の低下も持続性気分障害の典型的な症状です。これは、十分に休息をとっても回復しない慢性の疲労であることが多いです。エネルギーが不足している感覚があり、普段なら簡単にできることでも、始めるのに強い抵抗を感じたり、途中で投げ出したくなったりします。趣味や好きなことに対しても興味が失われ、活動量が著しく低下することにつながります。この気力の低下は、日常生活や仕事・学業に大きな支障をきたす原因となります。

集中力や決断力の低下

物事に集中できない、注意が散漫になる、といった集中力の低下も見られます。本を読んでも内容が頭に入ってこない、人の話に集中できない、といった形で現れることがあります。また、簡単なことでもなかなか決められない、選択肢があると迷ってしまい結論を出せない、といった決断力の低下も生じます。「何をしても無駄だ」「どうせうまくいかない」といった悲観的な考えが根底にあるため、物事を前向きに考えたり、スムーズに判断したりすることが難しくなるのです。これにより、仕事の効率が落ちたり、学業に支障が出たりすることが多くなります。

自尊心の低下・絶望感

自分自身の価値を低く評価してしまう、自信がない、といった自尊心の低下も重要な症状です。過去の失敗をいつまでも悔やんだり、自分を責め続けたりすることがあります。「自分は何をやってもダメだ」「人より劣っている」といった否定的な自己評価が強固になり、自己肯定感が非常に低くなります。さらに、「将来に希望が持てない」「この状態がずっと続くのではないか」といった絶望感を抱くことも少なくありません。これは、長期間にわたって抑うつ状態が続くことによる影響であり、本人をさらに苦しめる要因となります。

DSM-5による持続性気分障害の診断基準

アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』は、精神疾患の診断において世界的に広く用いられています。持続性気分障害の診断基準も、このマニュアルに示されています。以下に、DSM-5における持続性気分障害の主な診断基準の概要を説明します。これらの基準を満たすかどうかを総合的に判断するのは、医師の専門的な知識と経験が必要です。

診断基準項目 詳細
A. 抑うつ気分 成人では少なくとも2年間、子どもや青年では少なくとも1年間にわたって、ほとんど毎日、1日の大半を抑うつ気分であると訴えるか、あるいは他者からそう観察される。
B. 抑うつ気分に加え、以下の症状のうち2つ以上が存在する 1. 食欲不振または過食
2. 不眠または過眠
3. 疲労感または気力の低下
4. 集中力低下または決断困難
5. 自尊心の低下
6. 絶望感
C. 上記の2年(または1年)の期間中、上記の項目AおよびBの症状が同時に存在しない期間が2ヶ月を超えることがない。 長期間続くことの重要性:一時的な気分の落ち込みではなく、慢性的な状態であることを示しています。
D. 2年(または1年)の間に大うつ病エピソードの基準が継続して満たされたことはない。
(注:ただし、持続性気分障害の最初の2年間より前に大うつ病エピソードが存在することはありうるし、持続性気分障害に大うつ病エピソードが重なること(二重うつ病)もありうる。)
うつ病との鑑別点:持続性気分障害は、大うつ病エピソードのような激しい症状が一定期間続く状態とは異なります。ただし、これらが同時に起こる「二重うつ病」という状態も存在します。
E. 躁病エピソードまたは軽躁病エピソードの基準が満たされたことがない。また、気分循環性障害の診断基準も満たされない。 双極性障害等との鑑別点:気分の高揚や活発な状態(躁状態、軽躁状態)が見られる双極性障害などとは異なる疾患であることを示しています。
F. 統合失調症スペクトラム障害や他の精神病性障害ではうまく説明されない。 幻覚や妄想といった精神病症状が中心となる他の疾患ではないことを確認します。
G. 物質(例:乱用薬物、医薬品)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。 薬物の影響や体の病気が原因ではないことを確認します。精神的な診断の前に、身体的な原因を除外することが重要です。
H. その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。 症状によって、本人が苦痛を感じていたり、仕事や学校、家庭生活などで問題が生じていたりすることが、診断の要件となります。単に「気分が落ち込むことがある」というレベルとは異なります。

DSM-5では、「持続性抑うつ障害(Persistent Depressive Disorder)」という名称が用いられており、これまでの気分変調症や慢性うつ病の一部が含まれています。これらの基準を満たすかどうかは、医師が患者さんの話を聞き、詳細な問診や診察を通して判断します。

うつ病との違い・鑑別点

持続性気分障害と大うつ病は、どちらも抑うつ状態を特徴とする気分障害ですが、いくつかの重要な違いがあります。これらの違いを理解することは、適切な診断と治療につながります。

症状の強さと持続期間

最も大きな違いは、症状の「強さ」と「持続期間」です。

特徴 持続性気分障害(気分変調症) 大うつ病
症状の強さ 比較的軽度なことが多い(DSM-5の診断基準項目が2つ以上あれば該当) 比較的重度なことが多い(DSM-5の診断基準項目が5つ以上必要)
持続期間 長期間(成人で2年以上、子ども・青年で1年以上)続く 短期間(典型的には数ヶ月程度)の「エピソード」として現れる
始まり方 比較的ゆるやかに始まることが多い 比較的急激に始まることが多い

持続性気分障害は、症状が重くないために本人も周囲も病気と気づきにくい傾向がありますが、その状態が何年も続くことで、本人の「普通」のレベルが下がってしまい、人生の質が低下してしまうことがあります。一方、大うつ病は、症状が強く、日常生活が著しく困難になるため、比較的早期に受診につながりやすい傾向があります。

ただし、持続性気分障害の患者さんが、大うつ病のエピソードを経験することもあり、これを「二重うつ病(Double Depression)」と呼びます。この場合、普段から軽いうつ状態がある人が、さらに重い大うつ病の状態に陥るため、より症状が複雑になり、治療も難しくなることがあります。

気分変動の特徴

気分の変動の仕方も、両者で異なる場合があります。

持続性気分障害の場合、抑うつ気分は「ほとんど毎日、1日の大半」にわたって存在し、気分の波は比較的少ないことが多いです。本人は常に「ローテンション」な状態にあると感じているかもしれません。

一方、大うつ病のエピソード中は、症状の強さ自体に波がある場合があります。また、朝方に気分が最も落ち込み、午後から夕方にかけてやや改善するといった日内変動が見られることもあります(ただし、これは大うつ病のすべてに見られるわけではありません)。

また、大うつ病では、一時的に気分が良くなる期間(通常気分に戻る寛解期)があるのに対し、持続性気分障害では、診断基準の期間中(2年以上)、症状がない期間が2ヶ月を超えることがない、という点が大きな違いです。

持続性気分障害の原因と関連要因

持続性気分障害の原因は、一つの要因によって引き起こされるものではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。生物学的要因、心理的要因、社会環境的要因などが互いに影響し合っていると考えられています。

生物学的要因

脳内の神経伝達物質の働きのバランスが崩れることが、気分の変動に関与していると考えられています。特に、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質の機能異常が、抑うつ状態に関係しているという研究があります。これらの物質は、気分、意欲、睡眠、食欲など、持続性気分障害でみられる症状に関わる働きをしています。

また、遺伝的な素因も関連している可能性が指摘されています。近親者に気分障害を持つ人がいる場合、持続性気分障害を発症しやすい傾向があると考えられています。ただし、これはあくまで「なりやすさ」であり、遺伝だけで必ず発症するわけではありません。

脳の特定の部位(例えば、感情や情動に関わる脳の領域)の機能や構造のわずかな違いが関与している可能性も研究されています。

心理的要因

心理的な要因も、持続性気分障害の発症や持続に大きく関わります。

  • 幼少期の経験: 幼少期に、親との関係性の問題、ネグレクト、虐待、喪失体験(親との死別・離別など)といったストレスやトラウマを経験した人は、大人になってから持続性気分障害を発症しやすいという報告があります。これらの経験が、自己肯定感の低さや人間関係の持ち方に影響を与え、慢性的な抑うつ状態につながることがあります。

  • 性格傾向: 悲観的に物事を考える傾向、内向的、完璧主義、自分に厳しいといった性格傾向を持つ人も、ストレスに対して脆弱になり、持続性気分障害を発症しやすいと考えられています。また、「どうせ自分にはできない」「何をやっても無駄だ」といったネガティブな思考パターン(認知の歪み)が定着しやすいことも、慢性的な抑うつ状態を維持させる要因となります。

  • ストレスへの脆弱性: ストレスに対する対処能力(コーピングスキル)が低いことや、些細なことでも深く傷ついてしまうといったストレスへの脆弱性も関連します。

社会環境的要因

私たちが置かれている社会的な環境も、持続性気分障害の発症や経過に影響を及ぼします。

  • 慢性的なストレス: 仕事での過重な責任や人間関係の問題、経済的な困難、家族の問題、介護疲れなど、長期間にわたって続く慢性的なストレスは、持続性気分障害の重要な誘因・悪化要因となります。ストレスが継続することで、心身ともに疲弊し、気分の落ち込みから抜け出しにくくなります。

  • サポート不足: 家族や友人、職場の同僚など、周囲からの精神的なサポートや理解が得られない状況も、孤立感や孤独感を強め、抑うつ状態を悪化させることがあります。悩みを打ち明けられる相手がいない、相談できる場所がない、といった状況は、本人の回復を妨げます。

このように、持続性気分障害は、単一の原因ではなく、様々な要因が複雑に絡み合って生じる疾患であると考えられています。

持続性気分障害の治療法

持続性気分障害の治療には、薬物療法と精神療法が中心となります。これらの治療法を組み合わせることで、症状の改善や寛解(症状が落ち着いた状態)を目指します。長期間にわたる治療が必要となることが多いですが、適切な治療を継続することで、生活の質を向上させることが可能です。

薬物療法(SSRI, SNRIなど)

薬物療法では、主に抗うつ薬が使用されます。抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、抑うつ状態を改善する効果が期待できます。持続性気分障害に対してよく処方される抗うつ薬には、以下の種類があります。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): 脳内のセロトニンの働きを高めることで、気分の落ち込みや不安を和らげる効果があります。比較的副作用が少ないとされています。主なものに、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラムなどがあります。

  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬): セロトニンだけでなく、ノルアドレナリンの働きも高めることで、気分の落ち込みや意欲の低下に効果を発揮します。主なものに、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプランなどがあります。

  • NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬): ノルアドレナリンとセロトニンの両方に作用しますが、他のタイプの抗うつ薬とは異なるメカニズムで効果を発揮します。眠気を催しやすいという特徴がありますが、不安や不眠の改善に有効な場合があります。主なものに、ミルタザピンがあります。

抗うつ薬の効果が現れるまでには、通常2週間から数ヶ月かかります。すぐに効果が実感できなくても、医師の指示通りに服用を続けることが重要です。また、副作用が現れることもありますが、多くは一時的なものです。気になる症状があれば、必ず医師に相談してください。自己判断で薬の量を調整したり、服用を中止したりすることは危険です。

持続性気分障害の場合、症状が慢性化しているため、再発予防のために寛解後も一定期間(例えば1年以上)薬物療法を継続することが推奨されることが多いです。治療期間や薬の種類・量は、患者さんの症状や体質、合併症などを考慮して医師が判断します。

精神療法(認知行動療法など)

精神療法は、薬物療法と同様に持続性気分障害の重要な治療法です。医師や臨床心理士、公認心理師などの専門家との対話を通じて、病気への理解を深め、症状に対処する方法を身につけていきます。特に有効性が高いとされるのは、認知行動療法(CBT)です。

  • 認知行動療法(CBT): 気分の落ち込みや抑うつ状態は、物事の捉え方(認知)と行動が深く関連しているという考えに基づいた治療法です。悲観的・否定的な考え方(認知の歪み)に気づき、より現実的でバランスの取れた考え方に修正することを目指します。また、抑うつ状態によって活動量が低下している場合に、少しずつ行動を増やしていく(行動活性化)といったアプローチも行います。CBTによって、問題解決スキルやストレス対処能力を高めることが期待できます。

  • 対人関係療法(IPT): 対人関係の問題が気分の落ち込みに影響している場合に有効な治療法です。人間関係におけるパターンや問題を特定し、コミュニケーションスキルを向上させることで、対人関係を改善し、気分の回復を目指します。

  • 精神力動的精神療法: 過去の経験や無意識の葛藤が現在の問題にどのように影響しているのかを探求していく治療法です。長期的な視点で、自己理解を深めることを目指します。

精神療法は、個別のセッションで行われる場合と、グループで行われる場合があります。治療期間は、通常数ヶ月から1年以上かかることがあります。薬物療法と精神療法を組み合わせることで、単独で治療するよりも効果が高いという研究結果も多くあります。

持続性気分障害と仕事・生活への影響

持続性気分障害は、長期間にわたる軽度な抑うつ状態が続くため、日常生活や仕事、社会生活に様々な影響を及ぼす可能性があります。

障害者手帳・障害年金について

精神的な疾患によって長期にわたり日常生活や社会生活に制限がある場合、精神障害者保健福祉手帳や障害年金の対象となる可能性があります。持続性気分障害の場合も、症状の程度や就労状況などによっては、これらの制度の利用を検討できます。

  • 精神障害者保健福祉手帳: 精神疾患によって、日常生活や社会生活に一定の制限を受ける人が取得できる手帳です。等級に応じて、公共料金の割引や税金の控除、雇用での配慮などが受けられる場合があります。診断から6ヶ月以上経過していることが申請の要件の一つとなります。

  • 障害年金: 病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取れる年金です。国民年金または厚生年金に加入している期間に発症し、一定の障害状態にあることが要件となります。初診日から1年6ヶ月が経過した時点(障害認定日)で、障害の程度が認定基準に該当するかどうかで支給が決まります。

これらの制度は、経済的な支援や社会的なサービスへのアクセスを容易にすることで、本人の生活を支えることを目的としています。申請には医師の診断書などが必要となり、手続きには時間と手間がかかります。詳細は、市区町村の障害福祉窓口や年金事務所に相談することをお勧めします。

仕事との両立と対処法

持続性気分障害の症状は比較的軽度なため、仕事を続けている人も多くいますが、集中力の低下、疲労感、意欲の低下といった症状は、仕事の効率を下げたり、ミスを増やしたり、締め切りを守れなくなったりと、様々な困難を引き起こす可能性があります。

仕事との両立のためにできることとして、以下のような対処法が考えられます。

  • 症状の理解と自己管理: 自分の症状の特徴を理解し、どのような時に症状が悪化しやすいのかを把握することが大切です。休息をこまめにとる、睡眠時間を確保するなど、体調管理を意識しましょう。

  • 職場の理解と配慮: 可能であれば、信頼できる上司や同僚に病状を伝え、理解と協力を求めることも有効です。業務内容の調整、勤務時間の変更、休憩時間の確保など、症状に合わせた配慮をお願いできる場合があります。企業の産業医やEAP(従業員支援プログラム)に相談することもできます。

  • 仕事のペース調整: 無理なスケジュールを立てず、タスクを細分化して少しずつ取り組むなど、仕事のペースを調整しましょう。完璧を目指しすぎず、できる範囲で取り組むことも重要です。

  • 休息と気分転換: 仕事の合間に休憩をとったり、終業後にリラックスできる時間を持ったりすることが大切です。趣味や軽い運動など、気分転換になる活動を取り入れましょう。

  • 休職・復職の検討: 症状が重く、就労が困難な場合は、一時的な休職も選択肢の一つです。十分な休息と治療に専念し、回復してから復職を目指すことができます。復職の際には、リワークプログラムの利用なども有効です。

持続性気分障害は、長期間の治療とセルフケア、そして周囲の理解とサポートが必要となる疾患です。一人で抱え込まず、専門家や職場の相談窓口などを活用しながら、仕事と生活のバランスをとっていくことが大切です。

周囲の人ができること:持続性気分障害の方への接し方

身近な人が持続性気分障害かもしれないと感じたとき、どのように接すれば良いのでしょうか。本人にとっては、自身の状態を理解してもらえないことが更なる孤立につながることもあります。ここでは、周囲の人ができる具体的なサポートについて解説します。

  • 本人の話を傾聴する: 最も大切なのは、本人の話を否定せず、 Judgementせず、耳を傾けることです。アドバイスをしたり、無理に励ましたりするのではなく、「そう感じているんだね」と気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
  • 無理に「頑張れ」と言わない: 持続性気分障害の人は、すでに十分に「頑張っている」と感じていることがほとんどです。「頑張れ」「気合を入れれば大丈夫」といった言葉は、本人を追い詰めてしまう可能性があります。「辛いね」「しんどいね」と、その辛さを認めてあげる言葉の方が、本人にとっては支えになります。
  • 病気への理解を深める: 持続性気分障害がどのような病気なのかを知ることは、本人への理解につながります。「性格の問題ではないこと」「治療で改善が見込めること」などを理解することで、本人への接し方も変わってきます。
  • 専門家への受診を勧める: もし本人が医療機関を受診していないのであれば、優しく受診を勧めてみましょう。「専門家に見てもらった方が、気持ちが楽になるかもしれないよ」「一人で悩まなくて大丈夫だよ」といった言葉で、受診へのハードルを下げるサポートができます。ただし、無理強いは禁物です。
  • 日常生活のサポート: 症状によって家事や身の回りのことが億劫になっている場合、できる範囲で具体的なサポートを提供することも有効です。買い物に一緒に行く、食事を作るのを手伝う、といった小さな手助けでも、本人にとっては大きな支えになります。ただし、何でもかんでもやってあげるのではなく、本人が自分でできることを奪わないように配慮が必要です。
  • 休息を促し、見守る: 疲れている様子が見られたら、無理せず休むように促しましょう。すぐに回復しなくても、焦らず見守る姿勢が大切です。
  • 本人のペースを尊重する: 治療や回復には時間がかかることを理解し、本人のペースを尊重しましょう。急かしたり、過度な期待をかけたりすることは避けてください。
  • 自分自身のケアも大切に: 周囲の人がサポートを続けるためには、自分自身も無理をせず、休息をとったり、自分の気持ちをケアしたりすることが大切です。一人で抱え込まず、他の家族や専門機関に相談することも検討しましょう。

持続性気分障害は、本人だけでなく、周囲の人にとっても負担の大きい病気です。根気強い理解とサポートが、本人の回復には不可欠です。

持続性気分障害に関するよくある質問

持続性気分障害について、患者さんやそのご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

持続性気分障害は完治しますか?

持続性気分障害は、症状が長期にわたって続く慢性の経過をたどることが多い疾患です。「完治」という言葉の定義にもよりますが、症状が全くなくなる「寛解」を目指すことは十分に可能です。しかし、症状が改善しても、ストレスや生活環境の変化によって再発する可能性もあります。そのため、治療によって症状が落ち着いた後も、医師と相談しながら再発予防のための治療(薬物療法や精神療法の継続、セルフケアなど)を続けることが重要となります。長期的な視点での管理が必要となる疾患と言えます。

持続性抑うつ障害の人はどんな性格ですか?

持続性気分障害(持続性抑うつ障害)と診断される人に、特定の決まった性格があるわけではありません。しかし、この疾患になりやすい、あるいは症状と関連しやすいと考えられる性格傾向や考え方のパターンはいくつか指摘されています。例えば、真面目で責任感が強い、完璧主義、内向的、悲観的に物事を捉えがち、自分に厳しい、といった傾向を持つ人が、ストレスを抱え込みやすく、持続的な気分の落ち込みにつながることがあります。ただし、これはあくまで傾向であり、これらの性格傾向を持つ人すべてが発症するわけではありませんし、これらの傾向がない人が発症することもあります。性格というよりは、ストレスへの対処の仕方や認知のパターンといった側面に注目することが多いです。

持続性抑うつ障害の治し方は?

持続性気分障害(持続性抑うつ障害)に対する標準的な治療法は、主に「薬物療法」と「精神療法」の組み合わせです。

  • 薬物療法: 抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)が使用されます。脳内の神経伝達物質のバランスを整え、気分の落ち込みや他の症状を改善する効果が期待できます。症状が改善した後も、再発予防のために一定期間継続して服用することが推奨されることが多いです。

  • 精神療法: 認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)などが有効とされています。物事の捉え方や行動パターンを改善したり、対人関係の問題に対処したりすることで、症状を軽減し、再発を防ぐスキルを身につけることを目指します。

多くの場合、薬物療法と精神療法を併用することで、より高い効果が期待できます。どちらか一方だけを行う場合や、患者さんの状態に合わせて治療法を選択・調整する場合もあります。重要なのは、自己判断で対処しようとせず、必ず精神科や心療内科の専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることです。医師とよく相談しながら、自分に合った治療法を見つけていくことが回復への第一歩となります。

まとめ:持続性気分障害の症状に気づいたら専門家へ相談を

持続性気分障害(気分変調症、持続性抑うつ障害)は、大うつ病ほど症状は重くないものの、ゆううつな気分や意欲の低下といった抑うつ状態が長期間(成人で2年以上)にわたって続くことが特徴です。気分の落ち込みに加え、食欲や睡眠の変化、疲労感、集中力・決断力の低下、自尊心の低下、絶望感といった様々な症状が見られます。これらの症状は、本人が「いつものこと」「自分の性格だ」と思い込み、病気であることに気づきにくい場合も少なくありません。

しかし、持続性気分障害は、放置すると生活の質を著しく低下させたり、大うつ病を合併したりするリスクを高める可能性があります。原因は単一ではなく、生物学的、心理的、社会環境的な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

幸いなことに、持続性気分障害は適切な治療によって改善が見込める疾患です。治療の中心は、抗うつ薬による薬物療法と、認知行動療法などの精神療法です。これらの治療を組み合わせることで、症状の軽減や寛解を目指し、より充実した日常生活を送ることが可能になります。

もし、あなた自身やあなたの身近な人が、長期間にわたって気分の落ち込みや、ここで解説したような症状に悩んでいるのであれば、一人で抱え込まず、精神科や心療内科の専門家に相談することをお勧めします。早期に専門家の診断を受け、適切な治療を開始することが、回復への最も重要な一歩となります。


【免責事項】

本記事は、持続性気分障害に関する一般的な情報を提供することを目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。記事中の情報は、医学の進歩や研究によって変更される可能性があります。個々の症状や治療については、必ず医師や専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いません。

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