ナルコレプシー診断書のもらい方|必要な手続きと期間を解説

ナルコレプシーは、日中の強い眠気や情動脱力発作などを主な症状とする睡眠障害の一つです。これらの症状が日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼす場合、自身の状態を客観的に証明するために「診断書」が必要となることがあります。診断書は、病名や症状の程度、就労や学業への影響、必要な配慮など、医師の医学的な判断が記載された重要な書類です。この記事では、ナルコレプシーの診断書が必要となるのはどのような時か、診断書の取得方法、検査内容、記載される情報、費用、そして様々な活用先について詳しく解説します。診断書取得を検討されている方や、関係者の方はぜひ参考にしてください。

ナルコレプシーの診断書は、その症状が原因で日常生活や社会生活に困難を抱えている場合に、病状を証明し、適切な理解や配慮を得るために必要となります。具体的には、以下のような様々な場面で診断書の提出を求められたり、あるいは自己申告を補強するために利用されたりします。

会社や学校での配慮を求める場合

ナルコレプシーによる日中の強い眠気や集中力低下は、学業成績の低下や業務効率の悪化、さらには事故のリスクにつながることもあります。学校や職場で病状を伝え、休憩時間の確保や業務内容・時間に関する調整、居眠りに対する理解などの合理的配慮を求める際に、診断書は病状の深刻さや医学的な根拠を示す重要な書類となります。

休職・復職・退職の申請時

症状が重く、業務遂行が困難になった場合に休職を申請する際、診断書は医師による休業指示とその期間、および休職が必要な医学的理由を証明します。また、休職後に治療が進み症状が安定し、職場復帰を目指す際には、復職可能であることや、スムーズな職場復帰のために必要な配慮事項を記載した診断書が求められることがあります。症状が改善せず、やむを得ず退職を選択する場合も、病気療養のための退職であることを証明するために診断書を利用することがあります。

運転免許の取得・更新・再取得時

ナルコレプシーは、道路交通法において運転に適性があるかどうか慎重な判断が必要とされる病気の一つです。特に、日中の強い眠気や情動脱力発作が運転中に起こる可能性があり、重大な事故につながる危険性があるためです。運転免許の取得や更新、特に症状のために免許を取り消された後の再取得などにおいて、診断書の提出を求められる場合があります。診断書には、病状の程度、治療状況、運転能力への影響、専門医による運転の可否に関する意見などが記載され、公安委員会が運転の適性を判断する上で重要な資料となります。

障害年金やその他の公的支援制度の申請時

ナルコレプシーの症状が重く、長期にわたり日常生活や就労が著しく困難な場合、障害年金の受給対象となりうる可能性があります。障害年金の申請には、医師が作成した診断書が必須となります。診断書には、病名、発病からの経過、症状の程度、日常生活や労働能力への影響などが詳細に記載され、年金事務所が支給の可否や等級を判定するための根拠となります。その他、一部の医療費助成制度や福祉サービスを利用する際にも、診断書の提出が必要になる場合があります。

障害者雇用枠での就職活動

企業によっては、障害者手帳の所持者を対象とした障害者雇用枠を設けています。ナルコレプシーは精神障害者保健福祉手帳の対象となりうる病気であり、手帳の申請には医師の診断書が必要です。障害者雇用枠での就職活動においては、手帳の提示に加え、診断書の内容に基づいて企業側が提供できる合理的配慮について話し合いが行われます。

診断書は、単に病名を証明するだけでなく、その病気が個人の生活や能力に具体的にどのような影響を与えているかを、医学的な視点から明確に示すためのものです。必要となる場面を理解し、適切なタイミングで医師に相談することが重要です。

ナルコレプシー診断書の取得方法・発行の流れ

ナルコレプシーの診断書を取得するには、まず専門的な診断を受けることから始まります。診断書発行までの一般的な流れは以下の通りです。

  1. 専門医療機関の受診: 睡眠障害を専門とする医師がいる医療機関を受診します。
  2. 問診・診察: 医師による詳細な問診を受け、症状や生活状況について伝えます。
  3. 睡眠ポリグラフ検査(PSG): 睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図、呼吸などを記録する検査を受けます。通常、病院に一泊して行われます。
  4. 反復睡眠潜時検査(MSLT): PSGの翌日に行われることが多い検査で、日中の眠気の程度や入眠時のREM睡眠の出現頻度を評価します。
  5. 診断の確定: PSGとMSLTの結果、および問診などを総合して、医師がナルコレプシーと診断を確定します。
  6. 診断書の発行依頼: 診断が確定したら、診断書の作成を医師に依頼します。診断書の提出先(会社、年金事務所など)や目的を明確に伝えます。
  7. 診断書作成・受け取り: 依頼内容に基づいて医師が診断書を作成します。完成までに数日から数週間かかる場合があります。医療機関の窓口で費用を支払って受け取ります。

診断書を発行できる病院と何科を受診すべきか

ナルコレプシーの診断書は、ナルコレプシーの診断が可能で、かつ診断書の発行に対応している医療機関で取得できます。具体的には、以下のような医療機関や診療科が考えられます。

  • 睡眠専門外来: 睡眠障害全般の診断・治療に特化した専門外来です。ナルコレプシーの診断に必要なPSGやMSLTといった検査設備が整っていることが多く、診断実績も豊富です。
  • 神経内科: 脳や神経系の疾患を専門とする診療科です。ナルコレプシーも神経系の機能異常に関連する場合があるため、対応していることがあります。
  • 精神科: 精神疾患を専門とする診療科ですが、うつ病など精神疾患と間違われやすい睡眠障害の診断・治療を行っている場合があります。
  • 呼吸器内科: 睡眠時無呼吸症候群など呼吸に関する睡眠障害を主に扱いますが、睡眠障害全般に対応している場合もあります。

診断書の発行には、病状の診断だけでなく、症状が社会生活に与える影響など、患者さんの全体像を把握している医師が作成することが望ましいです。そのため、継続的に治療を受けている主治医に依頼するのが一般的です。初めて診断を受ける場合は、まず睡眠専門外来を標榜している病院を探すか、かかりつけ医に相談して専門医療機関を紹介してもらうのがスムーズでしょう。大学病院や総合病院には専門外来があることが多く、より専門的な診断や検査が可能です。

ナルコレプシー診断のための検査と証明方法

ナルコレプシーの診断は、患者さんの症状に関する問診に加え、客観的な睡眠検査によって行われます。これらの検査結果が、診断書において病状を証明する根拠となります。

主な検査:

  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG: Polysomnography): 睡眠中の様々な生理的データを記録する検査です。脳波(睡眠段階の判定)、眼球運動(レム睡眠の確認)、筋電図(レム睡眠時の筋弛緩など)、心電図、呼吸(気流、努力)、酸素飽和度、いびき、脚の動きなどを測定します。これにより、正確な睡眠時間や睡眠構造、睡眠中の異常所見(睡眠時無呼吸、周期性四肢運動など)を評価し、ナルコレプシー以外の睡眠障害を除外します。
  • 反復睡眠潜時検査(MSLT: Multiple Sleep Latency Test): PSGの翌日の日中に行われる検査です。2時間おきに合計4~5回、静かな暗い部屋で仮眠をとり、眠りにつくまでの時間(睡眠潜時)を測定します。ナルコレプシーの患者さんは、日中の眠気が強いため、平均睡眠潜時が著しく短くなります(通常8分未満)。また、入眠後すぐにレム睡眠が出現する(入眠時REM睡眠: SOREM)かどうかも重要な診断基準となります。

これらの検査結果と、患者さんの典型的な症状(日中の耐えがたい眠気、情動脱力発作など)に関する詳細な問診を総合して、ナルコレプシーの診断が確定されます。診断書には、これらの検査結果の概要や、診断基準に合致する具体的な症状が記載されることで、病状が客観的に証明されます。自己申告だけでは伝わりにくい症状の重さや、睡眠構造の異常などを、検査データに基づいて示すことが、診断書の重要な役割の一つです。

ナルコレプシーの診断基準(PSG・MSLTなど)

ナルコレプシーの診断は、国際的な診断基準である国際睡眠障害分類第3版(ICSD-3: International Classification of Sleep Disorders, Third Edition)や、それに準拠した日本の診断ガイドラインに基づいて行われます。主な診断基準には、以下の項目が含まれます。

  • 慢性的な日中の過眠: 少なくとも3ヶ月以上続く、回復感のない日中の過剰な眠気や、耐えがたいほどの眠気発作があること。
  • 客観的検査所見: PSGおよびMSLTで以下のいずれかの所見が認められること。
    • 平均睡眠潜時が8分以下(MSLTによる)。
    • MSLT中に2回以上の入眠時REM睡眠(SOREM: Sleep Onset REM sleep)が認められること。
  • 付随症状の有無: 情動脱力発作(カタプレキシー)、入眠時幻覚、睡眠麻痺などの付随症状があるかどうか。情動脱力発作はナルコレプシーに特徴的な症状であり、診断を強く支持します。

診断書には、これらの診断基準に照らし合わせた医師の判断が記載されます。特に、PSGやMSLTの結果から、患者さんが上記の基準を満たしていることが具体的に示されます。例えば、「MSLTにおける平均睡眠潜時 X分、SOREM X回を認め、ICSD-3のナルコレプシー診断基準を満たす」といった形で記載されることがあります。これにより、診断の根拠が明確に示されます。

ただし、診断基準を満たしていても、他の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、概日リズム睡眠障害など)や医学的・精神医学的状態、あるいは薬物の影響によって日中の過眠が引き起こされている可能性がないことを確認するための鑑別診断も重要です。診断書作成においては、これらの鑑別診断の結果も考慮されます。

ナルコレプシー診断書に記載される主な内容

ナルコレプシー診断書の形式は、提出先(会社、年金事務所、学校など)によって指定の様式がある場合と、医療機関独自の様式の場合があります。しかし、一般的に以下の内容が記載されます。

診断名と具体的な症状

診断書の冒頭には、正式な病名として「ナルコレプシー」または「ナルコレプシー(情動脱力発作を伴う/伴わない)」などが記載されます。それに続けて、患者さんが経験している具体的な症状が詳細に記載されます。

  • 日中の強い眠気: どの程度の頻度や強さで眠気を感じるか、抗いがたい眠気発作の有無など。
  • 情動脱力発作(カタプレキシー): 感情の動きに伴って体の力が抜ける発作の有無、頻度、誘因(笑う、怒る、驚くなど)、症状(膝ががくがくする、呂律が回らなくなるなど)。
  • 睡眠麻痺(金縛り): 睡眠の始まりや終わりに体が動かせなくなる現象の有無や頻度。
  • 入眠時幻覚・出眠時幻覚: 眠りにつく時や目覚める時に現実感のある夢のような体験をする現象の有無や頻度。
  • 夜間睡眠の障害: 寝つきの悪さ、夜間の頻繁な中途覚醒など。

これらの症状は、患者さんの自己申告に基づいて医師が記載しますが、必要に応じて家族からの情報や、医師が診察中に観察した様子なども加味されます。症状の記載は、病状の重さや特徴を伝える上で非常に重要です。

就労・日常生活への影響と必要な配慮

診断書では、ナルコレプシーの症状が患者さんの就労能力や学業、日常生活に具体的にどのような影響を及ぼしているかが記載されます。

  • 就労/学業への影響: 集中力の低下、居眠りによる業務中断やミス、会議中の居眠り、通勤中の危険など。具体的なエピソードが書かれることもあります。
  • 日常生活への影響: 家事、育児、運転、趣味活動など、日常生活における活動が症状によってどのように制限されているか。例えば、「日中の強い眠気のため、家事の途中で頻繁に眠ってしまう」「運転中に強い眠気を感じることがあり、運転を控えている」など。

これらの影響を踏まえ、医師が推奨する必要な配慮事項が記載される場合があります。これは、会社や学校、関係機関が患者さんを支援する上で具体的な行動指針となります。

  • 職場での配慮: 休憩時間の確保(特に昼食後)、短時間の仮眠の許可、業務内容の見直し(単調な作業を避けるなど)、勤務時間の調整(フレックスタイムなど)、リモートワークの検討など。
  • 学校での配慮: 授業中の仮眠の許可、定期試験や課題提出における配慮、通学方法の検討など。
  • その他: 運転に関する制限や条件(抗眠気薬の服用など)。

必要な配慮事項は、患者さんの症状や就労・学業環境によって異なりますが、診断書に具体的に記載することで、関係者とのコミュニケーションが円滑に進みやすくなります。

休職・療養の必要性および期間

症状が重く、現状の環境で業務遂行が困難な場合、医師は診断書で休職や療養の必要性について言及します。

  • 休職の必要性: 「症状の改善のため、〇ヶ月間の休職による療養を要する」といった形で、休職が必要であると医師が判断したことが示されます。
  • 推奨される休職期間: 症状の重さや回復の見込みなどを考慮して、具体的な休職期間(例: 3ヶ月、6ヶ月など)が記載されます。この期間はあくまで目安であり、病状に応じて延長や短縮されることがあります。
  • 療養方針: 休職期間中にどのような治療や療養が必要か(例: 十分な睡眠時間の確保、服薬治療の継続、生活リズムの調整、ストレスの軽減など)について記載されることがあります。
  • 復職の見通し: 症状が安定し、段階的な復職が可能となった場合には、「〇ヶ月後を目途に、軽作業から段階的な復職が可能と考えられる」といった記載がされることもあります。復職の条件として、服薬が安定していることや、日中の眠気がコントロールされていることなどが挙げられる場合もあります。

休職・療養に関する記載は、特に会社への休職申請や、傷病手当金などの申請において重要な情報となります。医師と患者さん、そして会社の三者間で、今後の治療や社会復帰に向けた計画を立てる上で重要な指針となります。

ナルコレプシー診断書にかかる費用

ナルコレプシー診断書の発行には、健康保険が適用されない自費扱いの文書料がかかります。診断書作成費用は、医療機関によって自由に定められているため、金額に幅があります。

  • 診断書作成費用: 一般的には5,000円から10,000円程度が目安とされていますが、提出先や記載内容が複雑な場合は、それ以上の費用がかかることもあります(例:障害年金申請用の診断書など)。医療機関によっては、ウェブサイトなどで診断書の種類ごとの料金を公開している場合もありますので、事前に確認すると良いでしょう。
  • 検査費用: 診断書発行の前提となるPSGやMSLTといった検査には、通常、健康保険が適用されます。ただし、保険適用の場合でも、自己負担割合(3割負担など)に応じた費用が発生します。検査の種類や入院の有無、個室利用などによって費用は異なりますが、数万円程度(自己負担額)となることが多いです。

したがって、ナルコレプシーの診断書を取得するまでには、検査費用に加えて診断書作成費用がかかることを考慮しておく必要があります。特に、初めて診断を受ける場合は、検査のための受診・入院費用が別途必要になります。事前に医療機関に費用の目安を確認しておくことをお勧めします。

ナルコレプシー診断書の主な活用先

ナルコレプシー診断書は、その内容に基づいて様々な場面で活用されます。主な活用先を詳しく見ていきましょう。

会社への提出:休職・復職・退職の申請

前述の通り、会社への診断書提出は、病状による就労困難を証明し、適切な手続きを進めるために不可欠です。

  • 休職申請: 診断書は、医師が病気療養のために一定期間の休職が必要と判断したことを会社に伝える正式な書類です。これにより、傷病手当金の申請(健康保険組合)など、休職に伴う手続きが進められます。
  • 復職申請: 休職期間を経て症状が安定し、職場復帰の目処が立った段階で、医師が作成する復職診断書を提出します。「復職可」であること、およびスムーズな職場復帰のために必要な段階的勤務や業務上の配慮事項(例:残業なし、定時での帰宅、休憩時間の確保など)が記載されます。会社は、この診断書を参考に、産業医面談などを経て復職可否や配慮内容を検討します。
  • 退職: 病状が重く、働き続けることが困難な場合に、病気療養を理由とした退職であることを会社に証明するために診断書を提出することがあります。

診断書を会社に提出することで、病状に対する会社の理解を深め、円滑な話し合いを進めることが期待できます。

運転免許の取得・更新と診断書

ナルコレプシーは、運転免許に関する手続きにおいて診断書の提出が重要となる病気です。道路交通法では、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、そううつ病、重度の眠りの病気など、安全な運転に支障を及ぼす可能性のある特定の病気について、公安委員会への申告義務や運転適性の判断が求められています。ナルコレプシーは、「重度の眠りの病気」に該当しうるため、公安委員会への申告が必要となる場合があります。

  • 診断書の提出: ナルコレプシーと診断された場合、運転免許センター等での適性検査において、診断書や専門医の意見書の提出を求められることがあります。診断書には、病状の程度、治療の状況(服薬の種類、効果)、日中の眠気や情動脱力発作が運転中に起こる可能性の有無、医師による運転の可否に関する意見などが記載されます。
  • 運転適性の判断: 公安委員会は、提出された診断書や意見書、本人の申し立てなどを総合的に判断し、運転免許の取得・更新の可否や、運転に条件を付けるかどうか(例:特定の時間帯の運転禁止、抗眠気薬の服用義務など)を決定します。

診断書は、本人の病状を医学的に証明し、専門医の視点から運転能力に関する見解を示すことで、公安委員会が適切に運転適性を判断するための重要な情報源となります。治療によって症状が安定していることを診断書で示すことができれば、運転免許の取得・更新が可能となる場合もあります。

障害者雇用やその他の制度利用

ナルコレプシーは、症状の程度によっては精神障害者保健福祉手帳の交付対象となりうる病気です。手帳を取得することで、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠での就職活動や、様々な福祉サービスを利用できるようになります。

  • 精神障害者保健福祉手帳の申請: 手帳の申請には、診断書の提出が必要です。診断書には、精神疾患(この場合は睡眠障害であるナルコレプシーが、精神障害の領域として判断される)の状態、能力障害の程度、日常生活への影響などが詳細に記載されます。手帳の等級(1級~3級)は、この診断書の内容に基づいて判定されます。
  • 障害者雇用: 障害者雇用枠での就職を目指す場合、企業は手帳の提示を求めるとともに、診断書や医師の意見書を参考に、提供できる合理的配慮(例:休憩室の利用、フレックスタイム、業務内容の調整など)について本人と話し合います。診断書は、企業が個々の障害特性を理解し、適切な配慮を行うための重要な情報源となります。
  • 障害年金: ナルコレプシーにより、長期にわたり日常生活や就労が困難な状態にある場合、障害年金(障害基礎年金または障害厚生年金)の申請が可能です。申請には、初診日から一定期間が経過した時点での病状を記載した診断書(年金機構指定の様式)が必須となります。診断書には、病歴、具体的な症状、日常生活能力の程度、労働能力への影響などが詳細に記載され、年金事務所が受給資格や等級を判定する基礎となります。
  • 医療費助成制度: 一部の自治体では、特定の難病や長期的な治療が必要な病気に対して医療費助成制度を設けている場合があります。ナルコレプシーがこれらの制度の対象となっている場合、診断書の提出が必要となることがあります。

診断書は、これらの公的支援制度を利用する上で、病状の医学的な証明、症状による能力障害の程度、必要な支援内容を示す重要な書類となります。様々な制度の窓口で診断書の提出を求められた際には、主治医に相談して適切な診断書を作成してもらいましょう。

ナルコレプシーの診断書取得に関するQ&A

ナルコレプシーの診断書について、よくある疑問とその回答をまとめました。

ナルコレプシーの証明方法は?

ナルコレプシーの証明方法として最も一般的で医学的に信頼性の高いものは、専門医が発行した診断書です。診断書には、客観的な睡眠検査(PSG、MSLT)の結果に基づいた確定診断名と、具体的な症状、日常生活や就労への影響などが記載されています。これにより、単なる自己申告ではなく、医学的な根拠をもって病状を証明することができます。会社や学校、公的機関などに病状を伝える際には、診断書の提出が求められることがほとんどです。

ナルコレプシー診断書にはどんなことが書いてありますか?

ナルコレプシー診断書には、主に以下の内容が記載されます。

  • 患者情報: 氏名、生年月日など
  • 医療機関情報: 病院名、医師名、所在地など
  • 病名: ナルコレプシー(必要に応じて、情動脱力発作の有無なども付記)
  • 診断根拠: 検査結果(PSG、MSLTの主な所見など)、経過、症状の詳細
  • 症状: 日中の眠気、情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚など、具体的な症状の種類、程度、頻度
  • 就労・日常生活への影響: 症状が仕事や学業、家事、運転などに具体的にどのような支障を来しているか
  • 必要な配慮: 職場や学校で推奨される具体的な配慮内容(休憩、仮眠、業務調整など)
  • 休職・療養の必要性および期間: 休職が必要か、推奨される期間、療養方針
  • 医師の意見: 治療状況、予後、運転適性に関する見解など(提出先によって異なる)
  • 発行年月日

これらの記載内容は、診断書の提出先や目的に応じて異なります。例えば、年金申請用の診断書では、日常生活能力や労働能力に関する詳細な記載が求められます。

ナルコレプシーで運転免許は取れますか?

ナルコレプシーと診断されていても、症状が適切に治療・コントロールされており、安全な運転に支障がないと専門医が判断した場合には、運転免許の取得や更新が可能となることがあります。ただし、最終的な判断は公安委員会が行います。

ナルコレプシーの診断を受けた場合は、まず必ず運転免許センター等に病状を申告し、専門医の診断書や意見書を提出する必要があります。公安委員会は、提出された書類や適性検査の結果を基に、運転の可否や、運転時間帯の制限、抗眠気薬の服用を条件とするなど、個別のケースに応じて判断を行います。

治療によって症状が安定していること、日中の眠気や情動脱力発作が運転中に起こる可能性が低いことを診断書で具体的に示すことが重要です。症状が重く、治療を行っても安全な運転が困難であると判断された場合は、免許の取得や更新ができない場合もあります。

ナルコレプシーは障害者雇用の対象になりますか?

はい、ナルコレプシーは、その症状によって日常生活や社会生活に困難がある場合、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となりうる病気です。精神障害者保健福祉手帳を取得すれば、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠での就職活動を行うことができます。

障害者雇用枠では、個々の障害特性に応じた合理的配慮(例:休憩時間の確保、勤務時間や業務内容の調整、体調不良時の柔軟な対応など)を受けながら働くことが可能です。障害者雇用での就職活動においては、手帳の提示に加え、病状や必要な配慮事項を具体的に伝えるために診断書が重要な役割を果たします。

ただし、手帳の交付や障害者雇用の対象となるかどうかは、病状の重さや日常生活への影響の程度によって判断されます。診断書は、これらの判断基準を満たしているかどうかを証明するための重要な書類となります。

まとめ:ナルコレプシー診断書取得のステップ

ナルコレプシーの診断書は、病状を医学的に証明し、日常生活や社会生活における様々な場面で適切な理解や支援を得るために非常に重要な書類です。診断書を取得するためには、以下のステップを踏むことになります。

  1. 睡眠専門医のいる医療機関を受診する: ナルコレプシーの診断・治療実績があり、診断書発行に対応している病院を探しましょう。神経内科や精神科、呼吸器内科の中に睡眠専門外来があることが多いです。
  2. 必要な検査を受ける: ナルコレプシーの確定診断には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と反復睡眠潜時検査(MSLT)といった客観的な睡眠検査が不可欠です。これらの検査結果が診断書の根拠となります。
  3. 診断が確定したら医師に診断書の発行を依頼する: 診断確定後、診断書の提出先や目的を医師に明確に伝えて作成を依頼します。
  4. 診断書を受け取る: 完成した診断書を医療機関の窓口で受け取ります。文書料は自費負担となります。

診断書の内容は、病名、具体的な症状、症状による影響、必要な配慮事項、休職の要否など、多岐にわたります。この診断書を、会社への休職・復職申請、運転免許関連の手続き、障害年金や精神障害者保健福祉手帳の申請など、様々な場面で活用することができます。

ナルコレプシーと診断され、日常生活や社会生活に困難を感じている方は、一人で悩まず、まず専門医に相談し、ご自身の状況に合わせて診断書の取得を検討してみてください。診断書を適切に活用することで、より良い治療環境や生活環境を整えることが可能になります。


【免責事項】

この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。ナルコレプシーの診断や治療、診断書の発行については、必ず専門の医師にご相談ください。記載されている制度や手続きに関する情報は、執筆時点のものであり、法改正等により変更される可能性があります。最新の情報は、関係機関にご確認ください。

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