親のうつ病を⼼配されている⽅へ~家族としてできる事~

親のうつ病を心配されているご家族の方へ

高齢化社会といわれて久しい現代は、高齢者特有の病気が増えています。高齢者のうつ病もそのひとつ。
そんな中、求められているのが、家族や身近な人が正しい知識を持ち、できるだけ早く適切な対応を取ること。今回は、高齢者の親を持つ方がうつ病発症を見逃さないために知っておくべきポイントを解説していきます。

高齢者のうつ病とは

加齢に伴う病気や体力の衰えに加え、脳の機能の衰えがその原因で、うつ病を発症しやすくなります。
さらに、「退職」「家族、友人などの病気や死」「子どもの自立」など生活環境の変化が大きいのも、高齢者の特徴。気分の落ち込む理由が増え、知らず知らずのうちにうつ病へとつながってしまう傾向にあるのです。

また、高齢者に多い、がんや脳卒中、認知症、パーキンソン病、糖尿病などの病気は、うつ病を併発しやすいともいわれています。「血管性うつ病」の場合があり、脳血管性障害の患者はうつ病の可能性が高いことも覚えておきましょう。
「1日中ボーッとしている」「なんとなく元気がない」という症状は、うつ病の特徴です。

高齢者うつ病特有の症状

若い人のうつ病にも見られる気分の落ち込みなどは、高齢者のうつ病にも見られる症状のひとつ。しかし、高齢者のうつ病は、まず初期症状が若い人のうつ病とは違います。 心の不調よりも、「頭痛」「胃痛」「息苦しさ」「しびれ」「めまい」など体の不調を訴えることが多いのです。そのため、内科などで検査をしても原因が分からず、精神科や心療内科を紹介されて、うつ病だったと分かるケースが少なくありません。
また、「妄想」や「不安・緊張」などの症状も出やすく、これは高齢者のうつ病特有の症状だといえるでしょう。強い焦燥感を抱く人も少なくなく、症状の進行をそのままにしておくと、自殺などにつながる危険性もあるので、精神科に相談するなど早めの対処が必要です。

高齢者うつ病のきっかけ

高齢者のうつ病は、退職や子供の独立といった「環境的要因」と、配偶者との死別、老化に伴う精神的・肉体的な衰えなどに代表される「心理的要因」の2つが主な原因だといわれています。

落ち込んでいることが、必ずしもうつ病であるとは限りません。しかし、不安や喪失感、漠然とした何かに対する強い焦りなどが見られる場合は、心理的要因によるうつ病である可能性が高いでしょう。
言動を注意深く観察し、判断が難しければ精神科などの専門医に相談することもときには必要です。

周りが気をつけたいうつ病のサイン

周りが気をつけたいうつ病のサイン

親子だと、親の言動の変化を「親も歳だしな」のひと言で片付けがちですが、その違和感をそのままにするのは危険です。以下のような違和感は、うつ病のサインかもしれません。
注意深く観察し、うつ病発症のサインを見逃さないようにしましょう。

高齢者のうつ病のサイン

  • ・無口になり、ずっとぼーっとしている
  • ・趣味や好きだったことに興味を示さなくなった
  • ・習慣だったことができなくない
  • ・不調を訴えるが、検査では異常が見当たらない
  • ・自殺願望をほのめかす

見るべきポイントは、「いつもと違う」という点。
おしゃべり好きな母が無口になったら心配してください。多趣味だった父が、どんな物事も面倒くさがるようになったら、病気の可能性を疑ってください。原因不明の不調が続くなら、内科や脳神経外科だけでなく、精神科や心療内科も受診しましょう。

高齢者のうつ病の対処法

親のうつ病を心配されているご家族の方へ

高齢者のうつ病の治療法は、主に「環境調整」「薬物療法」「精神療法」の3つがあります。
最近では「TMS治療」が新たなうつ病治療として注目されています。

環境調整

患者本人が生きる気力を取り戻せるよう、生活環境を整えてあげます。
高齢者のうつ病には自責の念があり、家事などを一生懸命手伝おうとしますが、無理はさせずに休ませてあげることが大切です。また、これが難しいポイントでもあるのですが、高齢者は休ませすぎもNGです。
高齢者はそもそも、筋力や気力が衰えやすいため、「何もしない」期間が寝たきりにつながって、認知症の発症を早めてしまう危険性があります。
散歩に一緒に行くなど体は活発に動かし、心はくつろげる環境を整えてあげましょう。

薬物療法

若い人のうつ病と同じく、抗うつ薬を使います。
ただし、血圧や排尿への影響がある薬もあるため、高齢者は体調によって使えない薬もあります。健康状態をしっかり調べ、必ず医師による処方を受けましょう。

精神療法

良かれと思っても、本人の精神状態によっては、「頑張れ」などの励ましが逆効果になってしまうこともあります。
病状や期間、その人のパーソナリティによって、治療としての接し方は違いますので、医師の指示に従いましょう。接し方を間違えると、自殺願望などへの刺激になってしまうこともあります。
家族が介護に疲れ切ってしまっているときなどは、入院も検討し、患者を支える家族も心身ともに健康でいられる環境を整えていくことが大切です。

TMS治療

薬の服用で効果が表れない方や薬の副作用が辛い方など、薬に頼らない新たなうつ病治療法として、TMS治療(磁気刺激治療)があります。
脳へ磁気による刺激を与えて、脳を活性化させ、うつ症状を和らげる治療になります。
副作用もほとんどない為、体に負担をかけない治療法として、高齢者のうつ病治療の選択肢の一つとなっています。

家族は高齢者の些細な変化に気付くことが大切

うつ病は、早期発見が早期回復に繋がります。
家族は年齢のせいだからと、高齢者の体や心の変化を見落とさず、些細なことでも気にかけて、早めに医療機関へ相談しましょう。
うつ病以外の病気が隠れている場合もあるのです。
大切な家族は、あなたの気付きで本来の健康を取り戻し、元気に長生きすることが可能になります。

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【プロフィール】
牧野 絵美
ライター・編集者、心理カウンセラー。人間観察が趣味で、取材や執筆においても対話と心理描写を得意とする。若いころは自身の繊細さに振り回され、うつ病を繰り返した。自分との向き合い方をつかんだ今は、誰にでも人生は変えられるということを伝えていきたい。

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