拒食症で診断書が必要になったら?もらい方・費用・使い道を解説

拒食症は、食べることを極端に制限したり、過度な運動をしたりすることで、健康を損なう深刻な病気です。体重の減少だけでなく、心や体にも様々な影響を及ぼし、日常生活を送ることが困難になることもあります。そんな時、病状を証明するために「診断書」が必要になることがあります。会社や学校への提出、各種公的な申請など、診断書が必要となる場面は多岐にわたります。しかし、「どうすれば診断書をもらえるの?」「どんなことが書かれているの?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、拒食症の診断書について、その役割や必要となるケース、診断基準、発行手続き、注意点などを分かりやすく解説します。診断書を通じて、適切なサポートを受けるための第一歩を踏み出しましょう。

拒食症の診断書とは?基礎知識

拒食症の診断書は、医師が患者さんの病状、診断名、病状の程度、今後の見込み、療養上必要な事項などを記載した公的な書類です。この診断書は、患者さんが拒食症であることを第三者に証明するために使用されます。

診断書の役割と利用目的

診断書の主な役割は、病状の客観的な証明です。これにより、患者さんは病気であることを理由に、会社や学校、行政機関などから必要な配慮やサポートを受けることができます。
診断書が利用される主な目的には以下のようなものがあります。

病状の証明: 拒食症であること、その病状がどの程度であるかを客観的に証明します。
休職・休学の申請: 病状が仕事や学業に支障をきたす場合に、休職や休学の必要性を裏付ける根拠となります。
各種制度の申請: 傷病手当金、障害年金、自立支援医療費制度などの公的な支援制度を利用する際に、申請書類の一部として提出が求められます。
職場や学校での配慮: 復職・復学にあたり、勤務時間や業務内容、学業スケジュールなどに配慮を求める際に、病状や必要な配慮事項を伝えるために使用されます。
保険金の請求: 加入している生命保険や医療保険から給付金を受け取る際に、診断書の提出が必要となる場合があります。

診断書は単なる病名が書かれた紙ではなく、患者さんが社会生活を送る上で必要なサポートを得るための重要なツールと言えます。

拒食症で診断書が必要となる主なケース

拒食症の診断書が必要となる具体的なケースは様々です。代表的なものをいくつかご紹介します。

会社を休む、または休職する: 病状により勤務を続けることが困難になった場合。診断書に基づいて休職が認められ、傷病手当金の申請も可能になることがあります。
学校を休む、または休学する: 学生の場合、病状により通学や学業に支障が出る場合。診断書を提出することで、欠席が正当な理由と認められたり、休学が許可されたりします。
傷病手当金を申請する: 会社の健康保険に加入している方が、病気や怪我で働くことができず、給与の支払いを受けられなくなった場合に、生活保障として支給される手当です。申請には医師の証明が必要になります。
障害年金を申請する: 病気や怪我によって生活や仕事が制限されるようになった場合に支給される公的な年金です。摂食障害も対象となり得ますが、認定基準は詳細に定められています。
自立支援医療費制度を利用する: 心身の障害を持つ方が、医療費の自己負担額を軽減できる制度です。精神通院医療の対象疾患として摂食障害も含まれます。
ハローワークで就職活動を行う: 病状を理解してもらい、自身の体調に合った仕事を探す際に、診断書の提出や医師の意見書の提出を求められることがあります。
裁判所や行政機関への提出: 特定の手続き(例:成年後見制度の利用など)において、本人の精神状態を証明するために診断書が必要となる場合があります。

これらのケース以外にも、個別の状況に応じて診断書が必要になることがあります。まずは主治医に相談し、診断書が必要な理由や提出先について具体的に伝えましょう。

拒食症の診断基準と診断書への記載

診断書は、医師が専門的な診断基準に基づいて患者さんの状態を評価し、その結果を記載するものです。拒食症の診断基準は internationally accepted されており、診断書の内容もこれらの基準に沿って記述されます。

拒食症の一般的な診断基準(DSM-5など)

拒食症(神経性やせ症)の診断は、主に精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の最新版、DSM-5-TRや、疾病及び関連保健問題の国際統計分類であるICD-11といった診断基準に基づいて行われます。
DSM-5-TRにおける神経性やせ症の主な診断基準は以下の通りです。

必要とされるよりも著しく低い体重であること: 年齢、性別、発達曲線、身体的健康に基づき、ミニマムノーマル体重よりも低い体重を維持していること。
体重増加、あるいは太ることへの強い恐怖: たとえ低体重であっても、体重が増えることや太ることに対して極端な恐怖心を抱いていること。
自分の体重や体型に対する認識の歪み: 自分の体重や体型の感じ方、評価に著しい歪みがあり、自己評価が過度に体重や体型に影響されていること。または、現在の低体重の深刻さを認識していないこと。

これらの基準を満たす場合に、医師は神経性やせ症(拒食症)と診断します。診断書には、これらの基準に基づいた医師の診断が記載されることになります。

BMIによる重症度分類

神経性やせ症の診断基準では、体重の低さを「著しく低い」と表現しますが、その重症度を判断する際にはBMI(Body Mass Index:体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)が客観的な指標として用いられます。DSM-5-TRにおける成人の重症度分類は以下の通りです。

重症度分類 BMI
軽度 17.0 kg/m² 以上 18.5 kg/m² 未満
中等度 16.0 kg/m² 以上 17.0 kg/m² 未満
重度 15.0 kg/m² 以上 16.0 kg/m² 未満
最重度 15.0 kg/m² 未満

診断書には、診断名とともに、現在のBMIや病状の重症度が記載されることがあります。特に、休職や各種申請において、病状の深刻さを伝える上でBMIは重要な情報となり得ます。ただし、BMIだけで病状の全てが決まるわけではなく、精神状態や身体合併症なども含めて総合的に評価されます。

診断書に記載される項目

診断書の様式は提出先や医療機関によって異なりますが、一般的に以下のような項目が記載されます。

  • 患者情報: 氏名、生年月日、性別など。
  • 傷病名(診断名): 神経性やせ症(拒食症)など、正式な診断名が記載されます。必要に応じてサブタイプ(例:制限型、過食/排出型)が追記されることもあります。
  • 発症年月日: 病状が始まったおおよその日付。
  • 診断確定年月日: 医師が診断を確定した日付。
  • 現在の病状: 現在の体重(BMI)、身体的な状態(例:貧血、電解質異常、無月経など)、精神的な状態(例:抑うつ、不安、強迫観念など)、摂食行動の特徴(例:食事制限の状況、過食や排出行為の有無と頻度など)などが具体的に記載されます。前述のBMIによる重症度分類に触れられることもあります。
  • 既往歴: 過去に罹患した重要な病気や怪我。
  • 治療経過: これまでの治療内容(例:入院治療、通院頻度、薬物療法、精神療法など)や、それに対する反応などが記載されます。
  • 今後の見込み: 予後や回復の見込みについて、医師の判断が記載されます。
  • 療養上必要な事項: 休養期間の必要性、就労や就学に関する意見(例:休職・休学が必要、短時間勤務が望ましい、特定の業務は避けるべきなど)、日常生活での注意点(例:食事に関する指示、通院の必要性など)などが具体的に記載されます。提出先に求める配慮の内容に合わせて、医師が必要と判断した事項が盛り込まれます。
  • 診断書作成年月日: 診断書が作成された日付。
  • 医療機関情報: 医療機関名、所在地、電話番号など。
  • 医師情報: 医師の氏名、所属、押印など。

これらの情報が詳細に記載されることで、診断書の提出先は患者さんの病状を正確に理解し、適切な判断や対応を行うことが可能になります。特に「現在の病状」と「療養上必要な事項」は、提出先が最も重視する項目の一つです。

診断書の発行手続きと流れ

拒食症の診断書が必要になった場合、どのように依頼し、発行してもらうのでしょうか。発行手続きと流れについて解説します。

診断書を依頼できる医療機関の種類

拒食症の診断書は、拒食症の診断と治療を行っている医療機関で依頼することができます。主に以下の医療機関が挙げられます。

  • 精神科・心療内科: 拒食症は精神疾患の一つであり、精神科や心療内科が専門です。これらの科で継続的に治療を受けている場合は、主治医に診断書の発行を依頼します。
  • 総合病院の精神科・心療内科: 身体合併症を伴う重症例の場合、総合病院で入院治療を受けていることもあります。その場合も、入院先の精神科医または担当医に依頼します。
  • 一般の内科など: 摂食障害の初期段階で、体重減少などの身体症状を訴えて内科を受診することもあります。ただし、拒食症の診断や専門的な治療は精神科や心療内科で行われることが多いため、内科医が診断書を発行できるかどうかはケースバイケースです。可能であれば、精神科や心療内科を受診し、診断書の発行を依頼するのが一般的です。

重要なのは、過去に一度受診したことがあるだけで、継続的な治療を受けていない医療機関では、現在の正確な病状を把握できないため、診断書の発行が難しい場合があるということです。診断書は、患者さんの現在の状態を医師が判断し、証明する書類だからです。

受診から診断書発行までのステップ

診断書の発行は、一般的に以下のステップで進められます。

  1. 主治医に相談する: まずは、現在治療を受けている主治医に、診断書が必要な旨を伝えます。診断書の提出先や、診断書が必要な目的(例:会社に提出して休職したい、傷病手当金を申請したいなど)を具体的に伝えましょう。提出先から特定の様式の診断書を指定されている場合は、その様式を持参します。
  2. 医師による診察・病状の確認: 医師は、診断書作成のために改めて患者さんの病状を確認します。診察や問診、必要に応じて体重測定やその他の検査が行われます。これまでの治療経過や、現在の生活状況、困っていることなども詳しく医師に伝えましょう。診断書に記載してほしい内容について、医師と相談することも可能です。ただし、医師は事実に基づいて記載するため、希望通りの内容になるとは限りません。
  3. 診断書の作成依頼と支払い: 医師が診断書作成を承諾したら、事務窓口などで正式な依頼手続きを行います。この際に、診断書の種類や枚数を確認し、費用を支払います。診断書作成には文書料がかかります。
  4. 診断書の作成: 医師が患者さんの病状に基づき、診断書を作成します。作成には数日から1週間程度かかることが一般的ですが、医療機関の混雑状況や診断書の内容によっては、それ以上かかることもあります。急ぎで必要な場合は、その旨を事前に伝えておくと良いでしょう。ただし、即日発行は難しい場合が多いです。
  5. 診断書の受け取り: 診断書が完成したら、医療機関から連絡が入るか、指定された日以降に受け取りに行きます。受け取り時には本人確認が必要な場合があります。診断書の内容に間違いがないか、提出先の要件を満たしているかなどを確認しましょう。

診断書の発行には時間がかかる場合があるため、必要な期日から余裕を持って依頼することが大切です。

医師への適切な伝え方

診断書の発行を依頼する際には、医師に以下の点を明確に伝えることが重要です。

  • 診断書の提出先: 会社、学校、市区町村役場、年金事務所など、どこに提出するのかを具体的に伝えます。
  • 診断書が必要な目的: なぜ診断書が必要なのか(例:休職するため、傷病手当金を申請するため、障害年金を申請するためなど)を具体的に説明します。目的によって、診断書に記載すべき内容の重点が変わることがあります。
  • 提出先の指定様式の有無: 提出先から指定された診断書の様式がある場合は、必ず持参して医師に渡します。指定がない場合は、医療機関で用意されている様式を使用します。
  • 診断書に記載してほしい内容(希望があれば): 例えば、「〇月〇日まで休職が必要である旨を記載してほしい」「復職にあたり、短時間勤務を希望する旨を記載してほしい」など、提出先に伝わらない困りごとや希望する配慮について具体的に伝えましょう。ただし、前述の通り、医師は医学的な判断に基づいて記載するため、必ずしも希望通りになるとは限りません。重要なのは、困っている状況を正確に伝えることです。
  • 必要な期日: 診断書の提出期限が決まっている場合は、その期日を伝え、発行にどれくらいかかるかを確認します。

医師は、患者さんの状況を理解し、適切な診断書を作成するために、これらの情報が必要です。遠慮せずに、必要な情報を正確に伝えるように心がけましょう。

診断書が発行されないケースと注意点

診断書は、医師が医学的な判断に基づき発行する書類です。そのため、必ずしも全てのケースで希望通りに発行されるとは限りません。診断書が発行されないケースや、発行に関する注意点について解説します。

診断書発行の前提となる医師法上の要件

医師は、医師法に基づき、診察した患者さんから診断書の発行を求められた場合、正当な理由なくこれを拒否することはできません。しかし、「正当な理由」がある場合には、発行を拒否することが認められています。診断書は単なる証明書ではなく、医師の責任において患者さんの病状を証明する重要な書類であるため、医師は慎重に判断を行います。
診断書発行の前提として、以下の点が重要になります。

  • 実際に患者さんを診察していること: 診断書は、医師が自ら診察し、患者さんの病状を医学的に判断した結果を記載するものです。したがって、一度も診察したことのない方や、過去の診察から長期間経過しており現在の病状を把握できない方に対しては、診断書を発行することはできません。
  • 診断が確定していること: 診断書に記載される傷病名は、医師が医学的な根拠に基づき確定した診断名である必要があります。まだ診断がついていない段階や、診断が曖昧な状態では、診断書を発行することは困難です。
  • 記載内容が医学的事実に基づいていること: 診断書に記載される病状や療養上の意見などは、医師の医学的な判断に基づいた事実である必要があります。患者さんやその家族の希望であっても、医学的な根拠がない内容や事実と異なる内容を記載することはできません。

これらの要件を満たさない場合は、「正当な理由」として診断書の発行が拒否される可能性があります。

診断書の発行を断られる理由

前述の医師法上の要件を踏まえ、診断書の発行を断られる具体的な理由としては、以下のようなものが考えられます。

  • 診断が確定していない: まだ診察の初期段階で、拒食症と確定診断がついていない場合。
  • 現在の病状を医師が把握できていない: 以前受診していたが、長期間通院が途絶えており、現在の正確な状態を医師が把握できない場合。
  • 診断書に記載する内容が医学的事実と異なる: 患者さんが希望する内容(例:「〇ヶ月以上の休職が必要」など)が、医師の医学的な判断や客観的な病状と一致しない場合。
  • 診断書の提出先や目的が不明確、または不適切: 診断書の提出先や目的が不明確であったり、診断書がその目的のために不適切であると医師が判断した場合。
  • 不正な目的での依頼: 保険金詐欺など、不正な目的で診断書を取得しようとしていると医師が判断した場合。
  • 医師の専門外である: 拒食症が専門ではない科の医師に依頼した場合など。ただし、一般的には必要に応じて専門医への紹介が行われます。
  • 患者さんとの信頼関係が著しく損なわれている: 医師と患者さんの間で信頼関係が築けていない場合など。

診断書の発行を断られた場合は、その理由を医師に確認することが大切です。理由が病状の把握に関するものであれば、改めて現在の状態を詳しく説明したり、継続的な通院が必要になったりするかもしれません。

診断書発行にかかる費用と期間

診断書の発行には、医療機関ごとに定められた文書料がかかります。これは保険適用外の自費負担となります。

  • 費用相場: 診断書の費用は医療機関や診断書の種類(一般的なものか、特定の公的機関用のものかなど)によって異なりますが、概ね3,000円~10,000円程度が相場です。公的な申請(傷病手当金、障害年金など)に使用する診断書は、記載項目が多いため、費用が高くなる傾向があります。事前に医療機関の窓口で確認しておきましょう。
  • 発行期間: 診断書の作成には、医師が診察記録を確認し、内容を記載する時間が必要です。一般的には数日から1週間程度かかります。ただし、大型連休を挟む場合や、複数の医師の確認が必要な場合、診断書の内容が複雑な場合などは、2週間以上かかることもあります。必要な期日から十分に余裕を持って依頼するようにしましょう。

診断書が必要になった際は、費用と発行期間を事前に確認し、計画的に依頼することが重要です。

項目 概要 費用相場(目安) 発行期間(目安)
診断書種類 一般診断書 3,000円~5,000円 数日~1週間
公的機関提出用診断書(傷病手当金、障害年金など) 5,000円~10,000円 1週間~2週間
特定疾患診断書など 3,000円~8,000円 数日~2週間

※費用・期間は医療機関によって大きく異なります。必ず事前に確認してください。

拒食症で診断書が必要な具体的な利用シーン

拒食症の診断書は、患者さんが病状によって生じる様々な困難を乗り越え、社会生活を維持または再開するために利用されます。具体的な利用シーンとその際の診断書の役割について詳しく見ていきましょう。

会社や学校への提出(休職・休学申請)

病状が悪化し、会社での業務や学校での学業を継続することが困難になった場合、診断書を提出して休職や休学を申請することが一般的です。

  • 診断書の役割: 診断書は、患者さんが拒食症であり、そのため一定期間の休養や治療が必要であることを医学的に証明します。「〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで休職(または休学)を要する」といった具体的な期間や、「療養に専念する必要がある」「業務内容の軽減が必要」といった医師の意見が記載されます。
  • 提出時の注意点: 診断書を提出する際は、会社の就業規則や学校の学則を確認し、指定された手続きに沿って行います。診断書以外にも、休職・休学願などの書類が必要になる場合があります。診断書の控えを取っておくことをお勧めします。また、復職・復学時には、再び診断書(復職・復学可能である旨や、必要な配慮事項を記載したもの)の提出が求められることが多いです。

傷病手当金の申請

会社員などが拒食症により働くことができず、給与の支払いを受けられない場合に、健康保険から支給されるのが傷病手当金です。

  • 診断書の役割: 傷病手当金の申請には、「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を受ける欄があります。医師は、患者さんの労務不能期間(働くことができない期間)と病状について記載します。この証明に基づいて、健康保険組合などが支給の可否や期間を判断します。
  • 申請方法: 傷病手当金は、療養のために労務不能となった日から連続して3日間(待期期間)の後に、4日目以降の労務不能な日に対して支給されます。申請は通常、月ごとに行います。申請書には、事業主の証明欄と医師の証明欄があり、それぞれの項目を記入・証明してもらう必要があります。申請期限は、労務不能であった日ごとに、その翌日から2年以内です。
  • 注意点: 医師が労務不能と判断できる期間についてのみ証明が得られます。また、パートやアルバイトなど、加入している健康保険の種類によって制度の適用が異なる場合があります。ご自身の加入している健康保険組合や会社の担当部署に詳細を確認してください。

障害年金の申請

拒食症を含む摂食障害は、病状が長期にわたり、日常生活や社会生活に著しい制限を受ける場合に、障害年金の支給対象となり得ます。

  • 診断書の役割: 障害年金の申請には、「診断書(精神の障害用)」が必要です。この診断書には、病名、発病から現在までの病歴、現在の病状、日常生活能力の程度、就労状況などが詳細に記載されます。特に、日常生活能力の評価は年金の等級判定において非常に重要視されます。
  • 申請方法: 障害年金の申請は、原則として病気やケガで初めて医師の診察を受けた日(初診日)から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)以降に行うことができます。申請書類は複雑なため、専門家(社会保険労務士)に依頼したり、市区町村役場の国民年金担当窓口や年金事務所で相談しながら進める方が多いです。
  • 注意点: 摂食障害単体での障害年金受給は、認定基準が厳しく、必ずしも容易ではありません。特に、体重減少のみでなく、精神症状(抑うつ、不安、強迫観念など)や、それらによる日常生活や社会生活への具体的な支障の程度が重視されます。診断書には、これらの状況を正確に医師に記載してもらうことが非常に重要です。

摂食障害単体での年金受給について

摂食障害が障害年金の認定対象となるのは、「精神の障害」として判断される場合です。日本年金機構の定める障害認定基準では、精神の障害は、病状だけでなく、それによって日常生活や社会生活にどの程度の制限があるかが重視されます。
摂食障害の場合、体重の極端な減少や身体合併症だけでなく、それに伴う精神症状(強い不安や抑うつ、強迫観念、自己否定感など)や、社会的な引きこもり、対人関係の困難、就労困難といった状況が、日常生活能力の程度として評価されます。

  • 認定基準のポイント:
    病状の重さ(BMIだけでなく、精神症状や身体合併症の程度も含む)
    日常生活能力の制限の程度(食事、清潔保持、金銭管理、対人関係、社会性など)
    就労状況(仕事ができているか、できたとしても制限が大きいかなど)
    治療内容と効果(入院の必要性、治療への反応など)

これらの要素を総合的に判断して等級(1級、2級、3級)が決定されます。摂食障害単体で申請する場合、診断書に日常生活における具体的な困難さや、精神症状の詳細を漏れなく記載してもらうことが非常に重要です。障害年金に関する詳細は、年金事務所や専門家にご相談ください。

診断書以外の関連書類について

拒食症の病状や治療に関して、診断書以外にも必要となる可能性のある書類がいくつかあります。主な関連書類としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 紹介状: 別の医療機関を受診する場合や、専門医の診察を受ける場合に、現在の医療機関から発行される書類です。これまでの病歴や治療経過、検査結果などが記載されており、新しい医療機関での診療がスムーズに進むために役立ちます。
  • 意見書: 特定の目的のために、医師が医学的な意見をまとめた書類です。例えば、職場や学校に特定の配慮(例:休憩時間の確保、個別指導など)を求める際に、診断書とは別に意見書の提出が求められることがあります。診断書よりも、より具体的な療養上の配慮事項や、病状が日常生活や社会生活に与える影響について詳しく記載される傾向があります。
  • 診療情報提供書: 患者さんの同意に基づき、他の医療機関に診療情報を提供する際に作成される書類です。紹介状と似ていますが、特定の目的(例:転院、セカンドオピニオンなど)のために、より詳細な診療記録や検査データが含まれることがあります。
  • 身体計測記録: 拒食症では体重やBMIが重要な指標となるため、定期的な身体計測の記録が病状を示す上で役立つことがあります。診断書に記載されることもありますが、治療の経過を示すために別途提出を求められることもあります。
  • 検査結果: 貧血、電解質異常、ホルモンバランスの異常など、拒食症に伴う身体合併症を示す血液検査やその他の検査結果も、病状の深刻さを示す資料となり得ます。

これらの書類が必要になるかどうかは、提出先や申請する制度によって異なります。診断書の発行を依頼する際に、他に何か必要な書類があるか、提出先に事前に確認しておくことをお勧めします。そして、必要な書類があれば、併せて医師に発行を依頼しましょう。

専門医による適切な診断と治療の重要性

拒食症の診断書の取得は、適切な診断と治療を受けていることが大前提となります。診断書発行のためだけでなく、拒食症の回復のためにも、専門医による適切な医療を受けることが非常に重要です。

診断書発行のためにもまずは受診を

繰り返しになりますが、診断書は医師が実際に患者さんを診察し、医学的な根拠に基づいて発行する書類です。そのため、拒食症の診断書が必要になった場合は、まず医療機関を受診し、医師の診断を受ける必要があります。

  • 正確な診断: 専門医は、国際的な診断基準(DSM-5など)に基づき、患者さんの状態を詳細に評価し、正確な診断を行います。診断が確定しなければ、診断書を作成することはできません。
  • 病状の把握: 診断書には現在の病状が記載されます。医師は、診察、問診、身体計測、必要に応じた検査などを通じて、患者さんの現在の心身の状態を正確に把握します。
  • 治療計画: 診断書の取得と並行して、適切な治療計画が立てられます。拒食症の治療は、栄養状態の改善、身体合併症への対応、精神症状の治療、家族との関係調整など、多岐にわたります。診断書は、この治療プロセスの一環として発行されるものです。

診断書だけを目的として受診するのではなく、ご自身の健康と回復のために、まずは専門医の診察を受けることから始めましょう。適切な診断と治療こそが、診断書発行の最も確実な道であり、何よりもご自身の未来につながります。

拒食症に関するご相談・診断書の発行について

もし、ご自身または大切な方が拒食症の症状に悩んでおり、診断書の必要性を感じている場合は、一人で抱え込まずに専門の医療機関にご相談ください。
拒食症は専門的な知識と経験が必要な疾患です。精神科、心療内科、または摂食障害の専門外来のある医療機関を受診することをお勧めします。
当院では、拒食症を含む摂食障害に関する専門的な診断と治療を提供しております。患者さん一人ひとりの病状や状況に合わせて、丁寧な診察を行い、適切な治療計画をご提案いたします。
診断書の発行についても、病状に基づき、必要な手続きや記載内容についてご説明し、適切に対応させていただきます。会社や学校への提出、各種申請など、診断書の利用目的についてもご相談ください。
拒食症の治療は時間がかかることもありますが、適切な医療とサポートがあれば必ず回復への道は開けます。診断書の取得をきっかけに、ご自身の心身の健康を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。まずは、お気軽にご相談のご予約をお取りください。専門のスタッフが丁寧に対応させていただきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療機関への受診を強制するものではありません。医療機関の選択にあたっては、ご自身の状況に合わせて十分にご検討ください。

【免責事項】
本記事の情報は一般的な知識を提供するものであり、個々の病状や状況に関する医学的アドバイスや診断に代わるものではありません。拒食症の診断や治療、診断書の発行については、必ず医療機関を受診し、医師の判断に従ってください。本記事の情報に基づいて行った行為によって生じた損害については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。情報や制度は変更される可能性がありますので、最新の情報は関係機関にご確認ください。

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