性同一性障害の治療法を解説|診断・ホルモン・手術の種類と流れ

性同一性障害 治療法|種類・流れ・費用・保険適用

性同一性障害(近年では「性別不合」と呼ばれることも増えています)は、ご自身の生物学的な性と、ご自身が認識している性別(性自認)が一致せず、社会生活において継続的な苦痛を感じている状態を指します。
これは病気ではなく、多様な性のあり方の一つとして理解されるべきものです。

治療法と聞くと、外科的な手術を想像される方も多いかもしれません。しかし、治療は手術だけではありません。精神的なサポートから始まり、ホルモン療法、そして希望に応じた様々な医療的アプローチを含みます。これらの治療は、その人が自分らしく、社会で生きやすい状態を目指すためのサポートです。

本記事では、性同一性障害(性別不合)に関する様々な治療法について、その種類、一般的な流れ、かかる費用、そして保険適用の現状までを詳しく解説します。治療をご検討されている方、または関心をお持ちの方にとって、正しい知識を得るための一助となれば幸いです。

性同一性障害とは?治療の前に知っておくべきこと

性同一性障害(性別不合)とは、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11)において、「性の健康に関連する状態」の中に分類され、「性別不合(Gender incongruence)」という診断名が用いられています。これは、従来の精神疾患という分類から変更され、多様な性の一つのあり方として捉えられるようになったことを意味します。

治療の目的は、生物学的な性と性自認の不一致によって生じる苦痛を軽減し、その人が望む性別で社会生活を送れるようにサポートすることです。治療を受けるかどうか、どの治療を選択するかは、個々人の性自認、身体の状態、生活環境、価値観などによって大きく異なります。全ての方がすべての治療を受けるわけではなく、一人ひとりに合わせたテーラーメイドのアプローチが重要となります。

治療を開始する前には、まず専門の医療機関を受診し、診断を受けることが一般的です。この診断プロセスは、ご自身の性自認を明確にし、今後どのようなステップを踏むことが望ましいかを医療者と共に検討するための大切な過程です。診断には、通常複数の専門医による評価が必要とされます。

治療は、決して強制されるものではありません。ご自身の意思に基づき、納得した上で進めることが何よりも大切です。治療に関する正確な情報を得て、ご自身の心と体に向き合い、信頼できる医療チームと共に、最善の選択をしていきましょう。

性同一性障害の主な治療法

性同一性障害(性別不合)に対する医療的なアプローチは多岐にわたります。個人のニーズや希望に応じて、精神療法、ホルモン療法、手術療法などが組み合わせて行われます。ここでは、それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。

精神療法(カウンセリング)

精神療法は、性同一性障害(性別不合)の診断プロセスにおいて非常に重要な役割を果たします。単に診断を下すだけでなく、ご自身の性自認について深く探求し、自身の感情や経験を整理するのを助けます。また、カミングアウトに関する悩み、人間関係の問題、社会生活上の困難など、性別不合に関連する様々な精神的な課題に対処するためのサポートも行います。

精神療法を通じて、ご自身が抱える苦痛の原因を理解し、対処方法を学ぶことができます。また、将来の治療計画や、どのようなステップを踏むことがご自身にとって最善かを医療者と共に考える上でも、精神療法は欠かせない要素となります。治療全体を通じて継続的に行われる場合もあります。

ホルモン療法

ホルモン療法は、身体を自身が認識する性別に近づけることを目的とした医療的アプローチです。治療を受ける方の性自認に応じて、女性化ホルモン療法(FtMの方の場合は男性化ホルモン療法)または男性化ホルモン療法(MtFの方の場合は女性化ホルモン療法)が行われます。

  • 女性化ホルモン療法(MtF:男性から女性へ移行したい方)
    女性ホルモン(エストロゲンなど)を投与することで、男性的な特徴を抑え、女性的な特徴を発現させます。期待される効果としては、皮膚が滑らかになる、体脂肪のつき方が変わる(腰や太ももなど)、乳房が発達する、体毛が薄くなる、筋肉量が減るなどが挙げられます。声の変化(低くなる)は期待できません。同時に、男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑える薬剤(抗アンドロゲン薬)が併用されることもあります。

  • 男性化ホルモン療法(FtM:女性から男性へ移行したい方)
    男性ホルモン(テストステロンなど)を投与することで、女性的な特徴を抑え、男性的な特徴を発現させます。期待される効果としては、声が低くなる、体毛が増える、筋肉量が増える、脂肪のつき方が変わる、月経が停止するなどが挙げられます。乳房の縮小は限定的です。

ホルモン療法は、内服薬、注射、貼付剤など様々な方法で行われます。効果が現れるまでには時間がかかり、個人差があります。また、ホルモン療法には血栓症や骨密度への影響など、副作用やリスクも伴います。治療開始前には、医師から十分な説明を受け、リスクとベネフィットを理解することが重要です。定期的な通院と血液検査などによる経過観察が必要となります。

手術療法(性別適合手術)

手術療法は、性同一性障害(性別不合)の方が、ご自身の身体を性自認にさらに適合させることを目的として行う外科的な治療です。全ての方が手術を希望するわけではなく、また全ての手術を同時に行うわけでもありません。個々人の希望や必要性に応じて、段階的に、または特定の手術のみを選択することが一般的です。性別適合手術(SRS: Sex Reassignment Surgery または GAS: Gender Affirmation Surgery)は、大きく分けて乳房の手術、性腺(子宮・卵巣、睾丸)の摘出、外性器の手術などがあります。

手術を受けるためには、通常、特定の診断基準を満たしていること、精神科医を含む複数の医師による診断があること、ホルモン療法を一定期間受けていること、といった要件が定められています。

乳房切除術(FtM)

女性から男性へ移行したい方(FtM)で、乳房の膨らみをなくし、胸を平らにする手術です。男性的な体型に近づけるために行われます。手術方法にはいくつかの種類があり、乳房の大きさや皮膚のたるみなどによって最適な方法が選択されます。傷跡が残る点は理解しておく必要があります。

子宮・卵巣摘出術(FtM)

女性から男性へ移行したい方(FtM)で、子宮と卵巣を摘出する手術です。月経をなくし、生殖能力をなくすことを目的とします。同時に、ホルモン療法を継続しない場合でも、女性ホルモンの主要な分泌源をなくすことができます。手術は腹腔鏡手術で行われることが多く、身体への負担は比較的少ない傾向があります。

睾丸摘出術(MtF)

男性から女性へ移行したい方(MtF)で、睾丸を摘出する手術です。男性ホルモン(テストステロン)の主要な分泌源をなくすことを目的とします。この手術を行うことで、女性ホルモン療法単独でも効果が出やすくなることがあります。

外性器手術

外性器手術は、身体の性別を性自認に適合させる最も大きな手術の一つです。男性から女性へ移行したい方(MtF)の場合は膣形成術、女性から男性へ移行したい方(FtM)の場合は陰茎形成術や陰嚢形成術などが行われます。

  • 膣形成術(MtF): 陰茎や陰嚢の皮膚、腸の一部などを用いて、膣を形成する手術です。性交が可能となる膣を作ることを目指しますが、術後のケア(ダイレーション)が継続的に必要となります。

  • 陰茎形成術(FtM): 腕や太ももの皮膚、腹部の皮膚などを用いて、陰茎を形成する手術です。尿道を延長し、立位での排尿が可能となるようにする手術と、性交可能な陰茎を作るための手術があり、複数の手術を組み合わせて行われることが多いです。複雑な手術であり、合併症のリスクも比較的高いため、十分な情報収集と検討が必要です。

  • 陰嚢形成術(FtM): 陰唇やその他の皮膚を用いて、陰嚢を形成する手術です。睾丸インプラントを挿入することもあります。

外性器手術は、いずれも高度な技術を要する複雑な手術です。手術のリスク、回復期間、術後のケア、期待できる結果について、執刀医と十分に話し合うことが不可欠です。また、これらの手術を行うことで生殖能力は基本的に失われます。将来的に子供を持つことを希望する場合は、手術前に生殖能力温存に関する選択肢(卵子や精子の凍結保存など)について検討することが重要です。

その他の医療的アプローチ

性同一性障害(性別不合)に対する医療的アプローチは、ホルモンや手術だけにとどまりません。外見を性自認に近づけるための様々な方法があります。

  • 音声訓練: 声を性自認に合うように変化させるためのトレーニングです。特にMtFの方が女性らしい声質や話し方を目指す場合に行われます。専門の言語聴覚士による指導を受けることが有効です。

  • 脱毛: 体毛を減らすための医療的なアプローチです。MtFの方が顔や体の毛を脱毛する場合や、FtMの方が特定の部位(胸など)の毛を脱毛する場合などがあります。レーザー脱毛や電気脱毛などが行われます。

  • 美容整形: 外性器手術や乳房手術以外の、顔や体の輪郭、鼻、喉仏などの形を調整するための美容整形手術を希望する方もいます。これらの手術は、性別適合手術とは区別されることがあり、保険適用外となることが多いです。

  • その他: ファッション、ヘアスタイル、メイクなど、セルフケアによる外見調整も、自分らしく生きる上で重要な要素となります。

これらのその他のアプローチも、個人のQOL(生活の質)を向上させるために重要な役割を果たします。

性同一性障害の治療の流れとステップ

性同一性障害(性別不合)の治療は、一般的に段階的に進められます。診断から始まり、個人のニーズに合わせた治療選択、そして必要に応じて法的な手続きへと繋がっていきます。標準的な流れはありますが、個々人の状況によってステップや順序は異なります。

診断基準とプロセス

治療の出発点となるのは、性同一性障害(性別不合)の診断です。診断は、精神科医を含む複数の専門医チームによって行われることが推奨されています。日本の精神科医で構成される診断と治療のガイドラインも存在し、国際的な診断基準(ICD-11など)やガイドライン(WA PATH Standards of Careなど)も参考にされます。

診断プロセスでは、ご本人の性自認、性別違和の始まりと持続期間、性別違和によって生じる苦痛の程度、過去の生育歴、精神的な健康状態などが詳しく評価されます。これには通常、複数回の面談や心理検査が含まれます。診断は、ご自身の性自認を再確認し、適切な医療的・社会的サポートに繋がるための重要なステップです。

治療の開始判断

診断が確定した後、すぐに全ての治療が開始されるわけではありません。治療を開始するかどうか、どの治療から始めるかについては、ご本人、ご家族(未成年の場合)、そして医療チームが十分に話し合って決定されます。治療開始の判断には、以下のような要素が考慮されます。

  • ご本人の意思: 治療に対する明確で持続的な意思があること。

  • 性別違和の程度: 性別違和による苦痛が、治療によって軽減される可能性が高いこと。

  • 精神的な安定: 治療に耐えうる精神状態であること。他の精神疾患がある場合は、まずそちらの治療を優先することもあります。

  • 年齢: 未成年の場合は、年齢に応じた配慮が必要です。

  • リスクとベネフィットの理解: 治療に伴うリスクや副作用、期待できる効果について十分に理解していること。

これらの要素を総合的に判断し、ご本人にとって最善のタイミングと方法で治療が開始されます。

各治療法の進行

診断と治療開始の判断が下されたら、具体的な治療が始まります。一般的な進行は以下のようになりますが、個々人の希望や状況によって大きく異なります。

  1. 精神療法: 診断プロセスと並行して開始されることが多く、治療中も継続される場合があります。ご自身の内面と向き合い、精神的なサポートを受けるための重要なステップです。

  2. ホルモン療法: 精神療法と並行して、または診断後に開始されることが多い治療です。身体を性自認に近づけることを目的とし、効果が現れるまでには数ヶ月から数年かかります。定期的な通院と検査が必要不可欠です。

  3. 手術療法: 手術を受けるには、通常、診断後一定期間のホルモン療法を受けていることなどが要件となります。乳房切除術や性腺摘出術は比較的早期に行われることもありますが、外性器手術はより慎重な検討と準備が必要です。複数の手術を段階的に行うことが一般的です。手術によっては、国内で行う場合と海外で行う場合があります。

すべての治療を受ける必要はありません。例えば、ホルモン療法のみを行い、手術は希望しないという選択も可能です。ご自身のペースで、納得のいく形で治療を進めることが最も重要です。

性同一性障害の治療にかかる費用と保険適用

性同一性障害(性別不合)の治療には、精神療法、ホルモン療法、手術療法などがあり、それぞれにかかる費用や保険適用の状況が異なります。経済的な負担は大きな問題となるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

ホルモン療法の費用と保険適用

ホルモン療法の費用は、使用する薬剤の種類(内服薬、注射、貼付剤など)、用量、通院頻度によって異なります。一般的に、毎月数千円から数万円程度の費用がかかります。

かつてホルモン療法は保険適用外の自由診療でしたが、近年、保険適用となる条件が拡大しています。特定の診断基準を満たし、専門医によって「性同一性障害」と診断された場合、ホルモン療法が保険適用されることがあります。ただし、保険適用には施設基準や医師の要件などがあり、全ての医療機関で保険適用となるわけではありません。事前に医療機関に確認が必要です。

保険適用となった場合、医療費の自己負担は原則3割となります。高額になった場合は、高額療養費制度を利用できる可能性があります。

手術療法の費用と保険適用

手術療法の費用は、手術の種類、術式、医療機関(国内か海外か)によって大きく異なります。

  • 国内での手術:

    • 乳房切除術:数十万円から100万円程度
    • 子宮・卵巣摘出術:数十万円程度
    • 睾丸摘出術:数十万円程度
    • 外性器手術(膣形成術、陰茎形成術など):100万円から数百万円程度

国内で性別適合手術を行う場合、保険適用となる条件が少しずつ整備されています。特定の診断基準を満たし、専門医チームによる診断がある場合など、一定の要件を満たせば保険適用となる手術もあります(例: 乳房切除術、子宮・卵巣摘出術、睾丸摘出術など)。しかし、外性器手術については、保険適用となるケースは限定的であり、自由診療となることが一般的です。保険適用となる場合でも、個室料や先進医療費など、保険外の費用が発生する場合があります。

  • 海外での手術:
    海外で性別適合手術を受ける方も多くいらっしゃいます。費用は国や医療機関によって異なりますが、一般的に国内での手術と比較して費用が抑えられる場合があります。しかし、渡航費、滞在費、通訳費用などが別途かかるため、総額では国内と同程度、またはそれ以上になることもあります。また、海外での手術は日本の健康保険や高額療養費制度の対象外となることが原則です。術後の合併症などがあった場合の対応も国内と異なるため、慎重な検討が必要です。

費用については、各医療機関によって設定が大きく異なります。カウンセリング時に詳細な費用を確認し、見積もりを取ることをお勧めします。また、医療費控除や高額療養費制度など、利用できる公的な制度についても確認しておきましょう。

治療の種類 保険適用の現状(国内) 費用目安(自由診療の場合)
精神療法 一部保険適用 数千円〜数万円/回
ホルモン療法 条件を満たせば保険適用 数千円〜数万円/月
乳房切除術(FtM) 条件を満たせば保険適用 数十万円〜100万円程度
性腺摘出術(FtM/MtF) 条件を満たせば保険適用 数十万円程度
外性器手術(MtF/FtM) 保険適用外の場合が多い 100万円〜数百万円程度
音声訓練 一部保険適用される場合あり 数千円〜数万円/回
脱毛、美容整形 原則保険適用外 内容による

※ 上記は一般的な目安であり、医療機関や個人の状況によって異なります。必ず受診予定の医療機関に直接ご確認ください。

性別変更と法的な手続き(特例法)

性同一性障害(性別不合)の当事者の方が、戸籍上の性別を自認する性別に変更するためには、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(通称:特例法)」に基づく家庭裁判所への申立てが必要です。

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の概要

この法律は、性同一性障害の方々が、社会生活上の困難を軽減し、より自分らしく生きられるように、一定の要件を満たせば戸籍上の性別を変更することを認めるものです。これにより、パスポート、運転免許証などの公的な書類も、変更後の性別で取得できるようになります。

性別変更の要件

特例法に基づき戸籍上の性別を変更するためには、以下の全ての要件を満たす必要があります(2024年1月現在)。

  1. 二人以上の医師により性同一性障害であることが診断されていること。
  2. 20歳以上であること。
  3. 現に婚姻をしていないこと。
  4. 現に未成年の子がいないこと。
  5. 生殖腺がないこと、又は生殖腺の機能に永続的に欠ける状態にあること(生殖機能の喪失要件)。
  6. その身体について、その性別にかかる身体の他の性別に係る部分のうち、外部から見て他の性別の身体と区別することが困難となる程度であること(外観要件)。

かつては5と6の要件(生殖機能の喪失と外観)について、性別適合手術を受けなければ性別変更できないという解釈がされていました。しかし、2023年10月に最高裁判所は、この手術要件について「個人の権利を制約する憲法に違反する可能性がある」との判断を示しました。これにより、今後、法改正や新たな運用基準の見直しが進む可能性があります。

【2024年1月時点の状況】

  • 最高裁の判断を受け、多くの家庭裁判所では、性別変更の申立てにおいて、生殖機能の喪失要件のみを満たせば、外観要件としての性器手術は必須としない運用に変更されています。
  • ただし、乳房切除や睾丸摘出といった性腺に関わる手術や、ホルモン療法による生殖機能の永続的な喪失をもって「生殖腺がないこと、又は生殖腺の機能に永続的に欠ける状態にあること」の要件を満たす必要があります。
  • 外観要件についても、単に性器手術の有無だけでなく、ホルモン療法による身体の変化など、総合的に判断される方向へと変化しています。

今後の法改正や運用基準の変更については、最新の情報を確認することが重要です。申立てを検討される場合は、専門の医療機関や法律の専門家(弁護士など)に相談することをお勧めします。

家庭裁判所への申立て手続きには、診断書、戸籍謄本、住民票などの書類準備が必要です。申立て後、家庭裁判所による調査や審問が行われ、最終的に性別変更の許可・不許可が決定されます。

信頼できる医療機関の選び方

性同一性障害(性別不合)の治療は専門性が高く、信頼できる医療機関を選ぶことが非常に重要です。誤った情報や不適切な治療は、心身に大きな負担をかける可能性があります。以下の点を参考に、慎重に医療機関を選びましょう。

  1. 専門性: 性同一性障害(性別不合)の診療に経験があり、専門的な知識を持った医師(精神科医、内分泌代謝科医、形成外科医、泌尿器科医、産婦人科医など)がいるかを確認しましょう。日本精神神経学会や日本GID学会などが認定する専門医がいる医療機関は、一定の基準を満たしていると考えられます。

  2. 多職種連携: 精神科医、内分泌代謝科医、外科医、看護師、カウンセラーなど、様々な専門職が連携して診療を行っている医療機関が望ましいです。チームでサポートしてくれる体制があるか確認しましょう。

  3. 情報公開: 治療内容、リスク、費用、保険適用の有無などについて、透明性を持って分かりやすく説明してくれるか確認しましょう。ウェブサイトなどで情報が公開されているかも参考になります。

  4. インフォームド・コンセント: 治療の内容や選択肢について、ご自身が十分に理解し、納得した上で同意できるような丁寧な説明があるか重要です。一方的に治療方針を決めたり、不安を煽ったりするような医療機関は避けましょう。

  5. 通いやすさ: 精神療法やホルモン療法は継続的な通院が必要です。地理的なアクセスや診療時間なども考慮に入れましょう。

  6. セカンドオピニオン: 一つの医療機関の意見だけでなく、複数の医療機関の意見を聞く「セカンドオピニオン」を受けることも大切です。特に大きな手術を検討する場合などは、異なる医師の見解を聞くことで、より納得して治療を選択できます。

  7. 当事者の評判: 当事者コミュニティや支援団体からの情報も参考になりますが、あくまで個人の経験談であるため、情報の真偽や偏りには注意が必要です。

治療はご自身の心と体に関わる重要な選択です。複数の医療機関を受診し、比較検討しながら、ご自身にとって最も信頼でき、安心して任せられると感じる医療機関を選びましょう。

性同一性障害治療に関するQ&A

性同一性障害(性別不合)の治療に関して、よくある質問とその回答をまとめました。

性同一性障害は生まれつきですか?

性同一性障害(性別不合)の明確な原因は、現在の医学では特定されていません。しかし、脳の構造や機能、遺伝的要因、胎児期のホルモンの影響など、様々な生物学的な要因が複雑に関与している可能性が指摘されています。これは、後天的な環境や育てられ方によって決まるものではなく、個人の意思や努力で変えられるものではないと考えられています。生まれ持った性の多様性の一つとして理解が進んでいます。

治療をしないという選択肢はありますか?

はい、治療をしないという選択肢も十分にあり得ます。性同一性障害(性別不合)と診断されたからといって、必ずしも医療的な治療(ホルモン療法や手術)を受けなければならないわけではありません。性別違和による苦痛が少ない場合や、手術やホルモン療法を望まない方もいらっしゃいます。精神療法やカウンセリング、あるいは社会的なサポートのみで十分と感じる方もいます。治療はあくまで、ご自身が自分らしく社会で生きやすい状態を目指すための手段であり、個人の意思と選択に基づきます。

未成年でも治療は受けられますか?

未成年の方が性同一性障害(性別不合)の診断や治療を受ける場合、成人とは異なる慎重な配慮が必要です。思春期前の子どもに対しては、診断を急がず、精神的なサポートやカウンセリングを中心に行います。思春期に入り、性別違和が持続的であると判断された場合は、ホルモン療法の一環として、二次性徴の発現を一時的に抑制するためのGnRHアゴニスト製剤の使用が検討されることがあります(思春期ブロッカー)。性ホルモンの投与や手術療法は、通常、本人の意思能力が十分であると判断され、かつ成人年齢に達してから行われることが一般的です。未成年の場合の治療方針は、ご本人、ご家族、そして医療チームが十分に話し合い、長期的な視点で慎重に決定されます。

まとめ:性同一性障害の治療法を知り、自分らしい道を見つけるために

性同一性障害(性別不合)の治療は、その人が抱える性別違和による苦痛を軽減し、自分らしい性別で社会生活を送れるようにサポートするための多様な医療的アプローチを含みます。精神療法、ホルモン療法、手術療法など、様々な選択肢があり、全ての方が全ての治療を受けるわけではなく、個人のニーズや希望に応じてテーラーメイドで行われます。

治療は診断から始まり、医療チームとの話し合いを通じて進められます。費用や保険適用の状況は治療の種類や医療機関によって異なりますが、保険適用となる範囲が拡大しており、高額療養費制度なども利用できる可能性があります。また、戸籍上の性別変更には法的な手続きが必要ですが、手術要件に関する最高裁の判断により、今後の運用や法改正が見込まれます。

治療を検討される際は、まず信頼できる専門の医療機関を受診し、正確な情報を得ることが何よりも大切です。ご自身の心と体に向き合い、リスクとベネフィットを十分に理解した上で、納得のいく選択をしてください。

性同一性障害(性別不合)は、個人の多様な性のあり方の一つです。治療は、その人が自分らしく、尊厳を持って生きていくための大切な一歩となり得ます。この記事が、性同一性障害の治療法について理解を深め、ご自身の道を見つけるための一助となれば幸いです。

【免責事項】

本記事は、性同一性障害(性別不合)の治療法に関する一般的な情報提供を目的としています。個々人の状況によって最適な治療法は異なります。具体的な診断や治療については、必ず専門の医療機関を受診し、医師にご相談ください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、筆者および掲載者は一切の責任を負いかねます。

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